高速道路を走行中、追越車線を走り続けると良くないことはご存知でしょうか。
知らずに走行してしまうと、安全を脅かすばかりか、思わぬ反則金や違反点数が発生することがあります。
本記事では、高速道路における追越車線の正しい使い方や違反となるケースを詳しく解説し、その上で安全運転のために知っておくべきポイントを紹介します。
業務やプライベートで高速道路を利用することがある方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
そもそも「追越車線」とは

高速道路における追越車線とは、走行車線を走行する車両を追い越す際に一時的に使用する車線のことです。
2車線以上ある高速道路の場合、一番右端の車線が追越車線に該当します。
追い越しをする場合は、追い越しが完了したら、速やかに走行車線に戻ることが原則とされています。
そのため、以下のケース以外では走行が認められていません。
- 追い越しをする場合
- 工事などで走行車線が限定されている場合
- 緊急車両に進路を譲る場合
- そのほかの道路状況でやむを得ない場合
高速道路の追越車線のルール

次に、高速道路の追越車線におけるルールを紹介します。
ルール1:追越車線を走り続けてはいけない
高速道路における走行の基本は「キープレフト」です。
これは、車両は原則として左側の車線を走行しなければならないというルールです。
したがって、追越車線は、あくまでほかの車両を追い越すために、一時的に使用する車線であることを理解しておく必要があります。
車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によって指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となっているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。
引用元:道路交通法第二十条|e-Gov法令検索
追い越しが完了したら、速やかに走行車線(一番右の追い越し車線以外の車線)に戻るのがルールです。
追越車線を走り続けることは「車両通行帯違反」となります。
車両は、追越しをするとき、第二十五条第一項若しくは第二項、第三十四条第一項から第五項まで若しくは第三十五条の二の規定により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、第三十五条第一項の規定に従い通行するとき、第二十六条の二第三項の規定によりその通行している車両通行帯をそのまま通行するとき、第四十条第二項の規定により一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前二項の規定によらないことができる。この場合において、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。
引用元:道路交通法第二十条三号|e-Gov法令検索
ただし、どの程度の距離を走り続けたら違反となるか、具体的なルールはありません。
走行車線が混雑していて安全に戻れない場合もあるため、交通状況に応じて判断されることが一般的です。
ルール2:左から追い越してはいけない
走行車線を走る車両を追い越そうとして追越車線に移動したときに、追越車線にスピードの遅い車両がいた場合、走行車線に戻って左側から追い抜くケースが考えられるでしょう。
この場合、スピードの遅い車両を追い抜いた後、すぐに追越車線に戻ると「追越違反」になります。
道路交通法では、以下のように定められています。
車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
引用元:道路交通法第二十八条一号|e-Gov法令検索
ただし、遅い車両を左側から追い抜くこと自体が違反になるわけではありません。
左側から追い抜いた後に、そのまま走行車線を走ることは問題ありません。
車線変更をしないで前方を走る車両の前に出ることは「追い越し」ではなく「追い抜き」に該当するからです。
追越車線から走行車線に移って前方を走る車両の前に出て、再び追越車線に戻る「追い越し」が違反となります。
ただし、追い抜きの際は、「車の左側は死角が多い」という点に注意しなければなりません。
追い抜かれる車両が左側から来る車両に気づかず、急に車線変更する恐れがあります。
ルール3:追越車線でも最高速度は同じ
追越車線でも、最高速度は走行車線と同じです。
最高速度を超過しての追い越しは「最高速度違反」になります。
追い越しの際はスピードが出てしまいがちなので、十分に注意してください。
高速道路の追越車線における違反取り締まり状況

内閣府が公開している「令和6年版交通安全白書」によると、2023年に高速道路で車両通行帯違反で検挙された数は、最高速度違反(スピード違反)に次ぐ第2位です。
具体的には以下の表のとおりです。
主法令違反別 | 件数(件) | 構成比(%) |
---|---|---|
最高速度違反 | 261,523 | 71.8 |
車両通行帯違反 | 47,149 | 13.0 |
車間距離不保持 | 5,527 | 1.5 |
高速道路の追越車線に関する違反と反則金

「車両通行帯違反」と「追越違反」による反則金は以下のとおりです。
違反の種類 | 違反点数 | 反則金 |
---|---|---|
通行帯違反 | 1点 | 普通車:6,000円 二輪車:6,000円 大型車:7,000円 |
追越違反 | 2点 | 普通車:9,000円 二輪車:7,000円 大型車:12,000円 |
出典:交通違反の点数一覧表|警視庁・反則行為の種別及び反則金一覧表|警視庁
高速道路の追越車線での事故を防ぐ安全運転のポイント

高速道路の追越車線は、正しく利用すれば交通の流れをスムーズにし、安全な走行をサポートする役割を果たします。
しかし、使い方を間違えると事故の原因にもなりかねません。
以下では、高速道路の追越車線で事故を防ぐための、安全運転のポイントについて解説します。
追い越し時の注意点:安全確認・合図・加速
追い越しをおこなう際は、以下の点に注意しましょう。
- 安全確認:追い越しを開始する前に、必ず周囲の状況を確認する
- 前方:追い越す車両の速度や動きを確認する
- 後方:後続車が追い越しをしようとしていないか、十分な車間距離があるか確認する
- 側方:追越車線に進入する際に、ほかの車両がいないか確認する
- 合図:追い越しを開始する際は、必ず右方向指示器(ウインカー)を点灯させ、周囲の車両に追い越しの意思を伝える。合図は、追い越しを開始する3秒前には出す。
- 加速:追い越す車両との速度差を十分に確保し、安全に追い越しができるように加速する。ただし、速度超過には十分注意する。
追い越し後の走行:速やかに走行車線に戻る
追い越しが完了したら、速やかに走行車線に戻ることが重要です。
追越車線を走り続けることは、道路交通法違反となるだけでなく、交通の流れを妨げ、事故の原因にもなります。
追い越しを終えたら、左方向指示器(ウインカー)を点灯させ、安全を確認してから走行車線に戻りましょう。
なお、走行車線に戻る際は、以下の点に注意してください。
- 走行車線を走行している車両との間に十分な車間距離を確保する
- 走行車線の速度に合わせて、スムーズに合流できるように速度を調整する
悪天候時や夜間の運転:視界不良時の注意点
悪天候時(雨、雪、霧など)や夜間は視界が悪くなるため、追い越しは極力避けるべきです。
やむを得ず追い越しをおこなう場合は、以下の点に特に注意してください。
- 通常時よりも速度を落とし、慎重に運転する
- 十分な車間距離を確保し、急なブレーキやハンドル操作に対応できるようにする
そのほかの高速道路の違反と反則金

「車両通行帯違反」や「追い越し違反」以外に、高速道路では以下のような違反があります。
- 速度違反:法定速度や最高速度を超えて走行した場合の違反。高速道路は最低速度違反もある。
- 車間距離不保持違反:安全な車間距離を保たずに走る交通違反。
- 駐停車違反:駐車や停車が禁止されている場所で駐停車した場合の違反。
- 路肩走行:路肩を走行した場合の違反。救命活動の妨げになる恐れがある。
- 積載違反:過積載による違反。ブレーキ性能を著しく低下させ、追突事故のリスクが上がる。
それぞれの違反点数と反則金は以下のとおりです。
違反の種類 | 違反点数 | 反則金 |
---|---|---|
速度超過 | 1〜12点 ※超過速度によって異なる | 普通車:9,000円〜35,000円 二輪車:7,000円〜30,000円 大型車:12,000円〜40,000円 ※超過速度によって異なる |
最低速度違反(50km/h以下) | 1点 | 普通車:6,000円 二輪車:6,000円 大型車:7,000円 |
高速自動車国道等車間距離不保持違反 | 2点 | 普通車:9,000円 二輪車:7,000円 大型車:12,000円 |
駐停車違反 | 2点 (駐停車禁止場所等) | 普通車:12,000円 二輪車:7,000円 大型車:15,000円 (駐停車禁止場所等) |
放置駐車違反 | 3点 (駐停車禁止場所等) | 普通車:18,000円 二輪車:10,000円 大型車:25,000円 |
故障車両表示義務違反 | 1点 | 普通車:6,000円 二輪車:6,000円 大型車:7,000円 |
通行区分違反 | 2点 | 普通車:9,000円 二輪車:7,000円 大型車:12,000円 |
積載物 重量制限超過 | 1〜6点 ※超過重量や積載物の大きさなどによって異なる | 普通車:25,000円〜35,000円 二輪車:20,000円〜30,000円 大型車:30,000円〜40,000円 ※超過重量や積載物の大きさなどによって異なる |
妨害運転(あおり運転) | 交通の危険のおそれ:25点(免許取消し・欠格期間2年) 著しい交通の危険:35点(免許取消し・欠落期間3年) | 交通の危険のおそれ:3年以下の懲役または50万円以下の罰金 著しい交通の危険:5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
出典:
「あおり運転」は犯罪です!一発で免許取消し! | 政府広報オンライン
まとめ:高速道路の追越車線走行はルールを守って安全に

高速道路の追越車線は、円滑な交通を促し、安全な走行をサポートするための重要な役割を担っています。
本記事では、追越車線の走行ルールや違反となるケース、違反した場合の罰則について解説しました。
キープレフトの原則を遵守し、追越車線を走行する際は安全確認を徹底し、追い越し後は速やかに走行車線に戻ることが重要です。
ルールをしっかりと理解し、安全運転を心がけることで、快適な高速道路の利用につなげましょう。
なお、交通ルールへの意識を全社的に高めるには、日頃からのトレーニングが重要です。
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