交通・運輸業などでは、業務に使用する車両の存在が欠かせません。
また、事業内容や規模によっては多くの車両を有する企業もあります。
そこで話題になるのが保有する社用車の管理です。
社用車の数が多ければ多いほど管理は煩雑になります。
一方で、社用車の数が少ないからといって管理が楽であるとは限りません。
そのため、社用車をシステムで一元管理したいと考えている担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、車両管理システムとはどのようなものか、また導入前における社内での検討事項などについて解説していきます。
これから車両管理システムの導入を考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
車両管理システム × 安全運転教育で効果最大化!
目次
車両管理システムとは?

車両管理システムは、企業や組織が保有する車両の運用を効率化するためのシステムです。
このシステムは、車両の運行データや保守履歴、ドライバーの行動などの情報を収集・分析し、組織の運用計画を最適化します。
例えば、車両の利用状況を把握することで、無駄な車両の保有を減らし、コスト削減に貢献できる可能性があります。
また、運転データの分析により、安全運転の促進や事故の防止につながる可能性もあるでしょう。
従業員の働き方改革にも影響を与え、効率的な業務遂行を支援します。
さらに、道路交通法などの法令遵守にも寄与し、社内においては安全運転管理者の業務サポートにもなるでしょう。
総じて、車両管理システムは組織の車両資産を最適化し、安全性や効率性を向上させる重要な役割を果たします。
安全運転管理者については以下の記事にて解説しております。
車両管理システムを導入するメリット

車両管理システムを導入すると、車両を運行するドライバーに加え、社内の車両管理担当にもメリットがあります。
ここでは車両管理システムを導入するメリットを解説しますので、導入を検討している場合はぜひ参考にしてください。
交通事故防止につながる
車両管理システムの導入により、ドライバーの運転行動や車両の状態をリアルタイムでモニタリングすることで、交通事故発生の予防につながります。
運転時の急加速や急ブレーキ、急ハンドルなどの違反行動を検知して警告を発するシステムや、車両の点検やメンテナンス履歴を管理する機能が事故防止に貢献します。
また、事故発生時には交通事故の状況を確認し、事後対応や再発防止策の策定に役立ちます。
もちろん、常に安全運転を心がけ、違反や事故を起こさないことが重要です。
車両管理システムを通じて走行中のドライバーに安全運転の意識づけができるため、交通事故防止につながります。
業務効率の向上が期待できる
車両管理システムは、車両の位置情報や走行履歴、燃料消費量などのデータをリアルタイムで管理・分析が可能です。
これにより、適切な運行ルートの設定や燃費の最適化、ドライバーの効率的なスケジュール管理が可能となり、業務効率の向上が期待できます。
また、データの一元化により無駄や手間を省き、車両管理者の工数削減も見込めるでしょう。
管理や分析などの業務は、社用車の台数が増えるほど、その他の業務を圧迫してしまいます。
車両管理システムの導入により、事故防止だけでなく、業務の効率改善にも期待ができます。
従業員の働き方改革になり得る
車両管理システムを導入することで、ドライバーの労働時間や運行スケジュールを効率的に管理できるため、従業員の働き方改革につながります。
例えば、車両管理システムを通じてドライバー自身が意識的に適切な休息時間を確保し、長時間運転の防止に対する意識づけがされるため、労働環境の改善につながります。
労働環境が改善されれば、就業後の時間を有効活用できるため、従業員の健康やワークライフバランスの向上も期待できるでしょう。
現在、さまざまな業界で働き方改革が求められており、実現に向けた取り組みが進められています。
車両管理システムの導入が働き方改革になり得るのであれば、企業にとっても大きなメリットになるのではないでしょうか。
コストの削減につながる
車両管理システムを導入することで、管理や車両運行にかかわるコストの削減につながります。
具体的には、以下のような効果が見込めます。
- 運行時間の短縮によるガソリン代の削減
- 運行の効率化による人的リソースの削減
- データの取得・管理の簡素化による事務作業の削減
- 運行状況(急動作アラート)の管理が適切に実行できることによる事故の削減
車両管理システムを導入することにより、より必要な場所にコストやリソースを投入できるようになるでしょう。
法令遵守につながる
車両管理システムの活用は、ドライバーの運行記録や点検・メンテナンス履歴の管理が容易になり、交通法規や労働基準法などの法令を遵守しやすくなります。
運行管理をされているドライバー自身も、交通事故防止や業務効率化、働き方改革に加え法令遵守など、車両管理システムの導入目的を理解することで安全運転への意識が高まるでしょう。
また、事故発生時には法的責任を果たすための証拠となるデータを確保できるため、トラブルの回避にも役立ちます。
しかし、忘れてはならないことは、普段から安全運転に努め、法令を遵守して事故を起こさないための取り組みもおこなう必要があります。
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従業員の受講状況を確認できる管理者機能が付いているほか、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットから気軽に受講が可能です。
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車両管理システムに搭載されている主な機能

車両管理システムには、適切な管理をサポートするさまざまな機能が搭載されています。
ここでは、車両管理システムに搭載されている主な機能を紹介しますので、システムの導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
車両予約管理機能
車両予約管理機能とは、車両の予約管理や空き状況の確認などをおこなえる機能です。
社用車の利用状況や空き状況がリアルタイムで把握できるようになるため、予約の漏れやダブルブッキングなどのミスを抑えることが可能です。
また、誰がいつどの車両を利用しているかもすぐわかるため、問題が生じたときも迅速に対応できるようになります。
有効期限管理機能
有効期限管理機能とは、車検の有効期限やドライバーの運転免許証などの有効期限が近付いていることを知らせてくれる機能です。
多くの社用車やドライバーを管理している企業では、車検や免許証の期限が統一されていないため、更新漏れが発生する可能性も少なくありません。
有効期限管理機能は、期限が近くなると管理者やドライバーにアラームやメールなどで通知してくれるため、更新漏れのリスクを軽減することが可能です。
アルコールチェック機能
アルコールチェック機能とは、アルコールチェックの結果を記録・管理する機能です。
アルコールチェッカーとスマートフォンアプリのBluetooth連携により、遠隔地での測定結果を即時にシステムに反映できます。
また、システムによっては、アルコールが検知された際に、アラームやメールで管理者に通知がいくように設定することも可能です。
危険運転通知機能
危険運転通知機能とは、ドライバーが危険な運転動作をおこなった際にリアルタイムで管理者に知らせてくれる機能です。
具体的には、以下のような動作をドライバーが実施した際に、管理者にメールやアラームで通知をおこないます。
- 急ブレーキ
- 急ハンドル
- 急加速
この機能をうまく活用すれば、危険運転が生じた際にすぐにドライバーに注意喚起や指導を実施できます。
動態管理機能
動態管理機能とは、GPSなどを通して車両の現在位置や稼働状況を、リアルタイムで把握するための機能です。
各車両における現在置や状況、走行ルートなどが一目で把握できるようになります。
システムによっては、特定のエリアへの出入りを検知するジオフェンシング機能や、滞留時間の計測なども可能です。
動態管理機能をうまく活用することで、最適なルート選定や顧客対応の迅速化など、生産性の向上やコスト削減を実現しやすくなります。
日報自動作成機能
日報自動作成機能とは、車両の走行データや稼働状況を基に、日報を自動で作成する機能です。
具体的には、走行距離や走行時間、訪問先などがシステムによって自動で記録・集約され、日報のフォーマットに反映されます。
そのため、ドライバーにとっては日報作成の負担の減少につながり、管理者にとっては運行記録の正確性の向上につながります。
車両管理システムの種類

車両管理システムは車両への設置方法の違いにより、さまざまなタイプが存在します。
ここからは、設置方法別の車両管理システムの種類について解説します。
OBD-Ⅱポート型
OBD-Ⅱポート型は、運転席の足元あたりにあるOBD-Ⅱのポートに差し込んで設置するタイプの車両管理システムです。
専門的な工事や複雑な配線も必要なく簡単に接続できる点、車両からデータを抽出できる点が特徴です。
OBD-Ⅱポートはすべての車両に搭載されている訳ではありませんが、直近20年ほどに生産された国産車には備えられています。
足元に設置する関係上、ドライバーの目に触れることも少ないことから、心理的な負担が少ない点でも安心して利用できるでしょう。
シガーソケット型
シガーソケット型は、車両に備えられているシガーソケットに挿すタイプの車両管理システムです。
シガーソケット型は、本体を直接シガーソケットに差し込むタイプと、アダプタのように電源をシガーソケットに差し込み、そこからコードで本体につなげるタイプがあります。
どちらのタイプも車両から電源を取っているだけのため簡単に利用が可能です。
ただし、シガーソケットの位置によっては、GPSの精度が落ちる場合があるため、可能であれば購入前に一度確認すると良いでしょう。
アプリ型
アプリ型は、スマートフォンやタブレットに車両管理システムのアプリをダウンロードして使用するタイプです。
特別な機器が必要なく、手軽に利用できる点が大きなメリットです。
ただし、充電切れや従業員による誤操作などのリスクがあるため、充電器を用意したり操作方法をしっかり周知したりするなどの対策が必要になります。
また、従業員のスマートフォンを利用する場合、自身のアプリに仕事用のアプリを入れることに抵抗を感じる方もいるため、必ず事前に従業員に了解をとった上でシステムを導入しましょう。
ドライブレコーダー型
ドライブレコーダーと車両管理システムの機能が備わっているタイプです。
通常のドライブレコーダーよりもコストは必要ですが、録画映像がクラウドを通してほかの人とも共有可能となるため、以下のようなことができるようになります。
- 事故発生時に第三者の目線で迅速かつ適切に対応できる
- 事故発生時の映像を安全運転教育に利用できる
- 管理者にリアルタイムでアラート通知がくるため、ドライバーの記憶が新しいうちに指導がおこなえる
- あおり運転や危険運転にドライバーが遭遇した際に的確な指示を出せる
車両管理システムだけでなく、ドライブレコーダーの導入も検討している場合におすすめです。
デジタルタコグラフ搭載型
運行車両の走行速度や距離、時間を計測するために搭載されているデジタルタコグラフには、車両管理システムの機能を併せ持つタイプも少なくありません。
デジタコは本体のコストも高く、設置にも工事が必要なため導入するまでのハードルは高めです。
OBD-Ⅱポート型と同様に、アイドリングの時間やエンジンの稼働状況などのデータを取得できます。
車両管理システムを導入する注意点

車両管理システムの導入にはメリットが多くありますが、注意点もいくつか存在します。
たしかに、業務の効率化や働き方改革につながる点は大きなメリットと言えるでしょう。
しかし、注意点についてもしっかり検討を重ねた上で、導入の計画を立てるようにしてください。
以下にて車両管理システム導入のデメリットを解説します。
導入に一定の費用が発生する
車両管理システムを導入するには、システムの購入費用や導入に伴う設定やカスタマイズにより一定の費用がかかる場合があります。
また、導入後も毎月のシステム利用料や定期的なシステムメンテナンス、アップデートに費用がかかる場合があります。
これらの費用は企業にとって負担となるため、適切なシステム選定と効果的な活用により、費用対効果を高めることが重要です。
車両管理システムの導入に際しては、従業員にシステムの存在や目的を十分に周知徹底する必要があります。
従業員が新しいシステムへの切り替えに抵抗感を持つほか、操作が苦手な従業員から不安の声が聞こえてくる場合があります。
そのため、システムのメリットや安全性を明確に伝えつつ、導入の際はシステムの利用方法に関するマニュアルや説明会を設けるなどし、従業員の理解と協力を得なければなりません。
車両管理システムを導入する場合は、しっかり時間をかけて導入を検討し、どのように社内で理解を得るのか決めておくと良いでしょう。
システムを定着させるための取り組みをする必要がある
新しいシステムやルールなどを導入する際は、その必要性や使い方などを丁寧に説明し、従業員の理解を得ることが重要です。
そして、操作説明会の実施やマニュアルの整備、定期的なフィードバックの機会を設けるなどの取り組みをおこなう必要があります。
こうした働きかけをせずに導入すると、従業員がシステムを使いこなせない、やりにくいと感じ、元のやり方に戻ってしまう可能性があります。
従業員が抵抗感を覚える可能性がある
車両管理システムの導入により、従業員は自身の行動や運転が監視されていると感じる場合があります。
これによって、従業員のモチベーションやワークスタイルに影響が出る可能性があります。
従業員のストレスや不満が生じないよう、導入前に適切なコミュニケーションや導入目的の説明などをおこなうことが重要です。
車両管理システムの選び方

車両管理システムといっても、種類がいくつか存在します。
そのため、自社に適したシステムを選択しなければなりません。
ここでは車両管理システムの選び方について解説します。
システムの機能面を比較する
車両管理システムの選択では、各システムの機能面を比較することが重要です。
機能面で比較する際には、主に以下の点に注目します。
- 車両の位置追跡機能
- ドライバーの運行記録管理機能
- メンテナンス管理機能
- 勤怠管理機能
- アラート機能の種類と設定の柔軟性
- レポート機能の充実度
これらの機能を比較し、自社のニーズに最も適した機能を持つシステムを選択します。
導入にかかる費用で比較する
車両管理システムを導入するには、初期費用や月額費用を考慮しなければなりません。
初期費用にはシステムの導入費用やデバイスの購入費用が含まれます。
一方で、月額費用にはシステムの利用料やサポート料が含まれます。
また、費用面を比較する際は、短期的なコストだけでなく、長期的なコストも考慮して総合的な費用対効果を検討してください。
操作性で比較する
車両管理システムを導入する際は、利用者が適切に操作できなければなりません。
いくら高機能な車両管理システムであったとしても、操作が複雑なものであれば、なれるまでに多くの時間がかかります。
最悪の場合は、システムを誰も使わない、もしくは形だけで適当に利用する、といった状況になる可能性があります。
そのため、車両管理システムを導入する際は、管理者が操作しやすいシステムを導入するようにしましょう。
システムによってはトライアルとして、台数や期間、機能などに制限がかかった状態で利用できるものもあります。
導入候補のシステムにトライアルがある場合は、まずはトライアルで試してから本格導入するのがおすすめです。
車両管理システム導入前の検討事項

車両管理システムは、導入前に社内でしっかり検討を重ねることが導入による効果を呼びます。
裏を返せば、勢いのままに導入を進めてしまうと期待していた効果が得られない可能性もあるということです。
ここでは、導入前に社内で検討すべき事項を解説します。
導入から運用までのサポート体制があるか
車両管理システムの導入後も、運用やトラブル時のサポートが必要です。
運用に関するサポート体制の充実度や問題発生時の対応は、システムの運用を社内で定着させ、長期的に使いこなしていくために重要です。
導入時だけでなく継続的なサポート体制があるかどうかもチェックしましょう。
安全運転に対する社内教育の体制が整っているか
車両管理システムは安全運転の推進に役立ちますが、社内教育の体制が整っているかも重要です。
従業員への運転マナーや安全意識の啓発、システムの正しい利用方法のトレーニングなど、適切な教育プログラムがあることで、システムの効果を最大限に引き出すことができます。
まとめ:車両管理システムを導入するなら安全運転への意識づけも考慮しよう

業務の効率化を図るためには、車両管理システムの導入は非常に頼もしい選択肢の一つになります。
一方で、ただシステムを導入すれば良い訳ではありません。
車両管理システムを導入するにあたって、社内で検討を重ねるようにしてください。
また、大前提として社用車を運転する従業員は安全運転に努めなければなりません。
企業の担当者としては安全運転への意識づけも大きな役割の一つです。
車両管理システムの導入も重要ですが、同時に社内での安全運転に関する教育制度の確立にも目を向けてみてください。
もし、社内での安全運転に関する教育制度にお困りの場合は「JAF交通安全トレーニング」までお問い合わせください。
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