社用車の車検手続き完全ガイド!車検切れで社用車を運転した場合の罰則とは?

自動車に乗り続ける限り、避けて通れないのは「車検」です。

仕事で使う社用車となれば、車検満期の時期がまちまちとなり、保有台数が多ければそれだけ管理が煩雑になります。

車検が切れた車は公道での使用が認められず、もしその状態で運転をしてしまえば、ドライバーは処罰の対象となります。

そうなれば、会社の信用問題にも繋がりかねないため、会社だけでなく、ドライバーも、車検におけるリスクをしっかりと理解しておく必要があります。

この記事では、社用車の車検手続きの紹介と、車検切れで運転してしまった場合の罰則について解説していきます。

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社用車の車検基本情報|車検受験可能期間の改正情報も

一般的に「車検」と呼ばれていますが、これは略称で、正式には「自動車検査登録制度」といいます。

道路運送車両法により、公道を走行する車には定期的な検査が義務付けられており、これによって、車が安全基準や環境基準を満たしているかを確認します。

車検の基準に満たなかった場合には、不合格箇所の整備・修理をして再検査を受ける必要があります。

そして、社用車の車検は、登録車種によって更新のタイミングが変わってきます。

次からは、登録車種別に詳しく解説していきます。

乗用車の車検期間

乗用車とは、車検証の用途欄に「乗用」と記載されている車です。

そのほか、ナンバープレートの分類番号が「3」か「5」で始まるかどうかでも見分けることができます(ごく稀に「7」もあり)。

自家用乗用車の車検の有効期限は、新車登録から初回の検査が3年間で、以降は車齢にかかわらず2年ごとに車検を受ける必要があります(レンタカーを除く)。

出典:[Q]車検の有効期間は何年ですか?|JAFクルマなんでも質問箱

貨物車の車検期間

貨物車とは、車検証の用途欄に「貨物」と記載されている車です。

そのほか、ナンバープレートの分類番号が「1」か「4」で始まるかどうかでも見分けることができます。

車検の有効期限は、車両総重量8t以上の貨物車の場合、新車登録から1年ごとに検査を受ける必要があります。

車両総重量8t未満の貨物車であれば、新車登録から初回の検査のみ車検有効期限が2年間となり、以降は1年ごとの検査となります。

軽自動車との違い

軽自動車を社用車として利用している会社も多くあります。

軽自動車のなかにも「乗用」と「貨物」の分類があり乗用車は新車登録から初回の車検が3年間、貨物車は2年間と違いがありますが、以降の検査は2年ごとと共通しています。

車検の受検可能期間の変更|1カ月前から2カ月前に拡大

国土交通省は、2025年4月1日から車検の受検可能期間を変更すると発表しています。

この法改正にともない、車検を受けれる期間が、現行制度の「車検証の有効期限1カ月前」から「車検証の有効期限2カ月前」に拡大されます。

メリットとして、車検満期が同時期の社用車を多数保有している会社は、時間に余裕を持って車検整備に出すことが可能となります。

出典:来年4月より、車検を受けられる期間が延びます|国土交通省

車検に必要な法定費用の内訳

車検を受けるにあたっては、いわゆる「法定費用」と呼ばれる税金を納める必要があります。

車検時の法定費用は大きく分けて3つあり、「自賠責保険料」「自動車重量税」「印紙」です。

ここでは、各費用の概要について解説します。

自賠責保険料

ひとつめは、別名「強制保険」とも呼ばれ、所有者に加入が義務付けられている自賠責保険です。

自賠責保険は1カ月単位で加入期間を決めることができますが、次回車検時期に更新できるよう「12カ月」か「24カ月」で更新するのが一般的なやり方です。

24カ月12カ月
乗用車17,650円11,500円
軽自動車17,540円11,440円
貨物車(自家用4ナンバー)20,340円12,850円
※令和6年4月1日以降保険始期の契約に適用

沖縄県、離島などの一部地域については、上記画像の保険料と異なるので注意してください。

出典: 自賠責保険 保険料例|損保ジャパン

自動車重量税

ふたつめは、自動車重量税です。

主に車両の重量によって課税される税金として徴収され、道路整備予算などに使われます。

納税額は、車の重さはもちろんのこと、種別や経過年数によって細分化され、環境性能に優れているエコカーであれば、大幅に減税される優遇処置が取られています。

国土交通省が提供している照会サービス(下記リンク)を利用すれば、車体番号と任意の車検予定日を入力するだけで、次回車検時の重量税額が確認できます。

出典: 次回自動車重量税額照会サービス|国土交通省

印紙代

印紙代とは、車検に関わる手数料を国に支払うための、印紙と証紙のことです。

印紙代の金額は、自動車の種別や車検依頼方法によって変わりますが、一般的な社用車であれば1,800~2,300円となっています。

出典:登録・検査手数料一覧|国土交通省

車検にともなう点検と整備

車検を更新するには、前述した法定費用にくわえ、整備費用が発生します。

車検では、法律で義務付けられた項目の点検をおこない、必要であれば整備を実施し、車の安全性や環境性能を確保します。

車検の点検項目と整備の必要性

車検の主な点検項目と重要性は以下の通りです。

  1. ブレーキ系統
    ・点検項目:ブレーキパッド・ライニングの厚さ、ディスク・ドラムの摩耗、液漏れ等
    ・重要性:車両の制動力を確保し、緊急時の安全を担保するため
  1. タイヤ・ホイール
    ・点検項目:タイヤ空気圧、残り溝の深さ、偏摩耗、ひび割れ等
    ・重要性:路面とのグリップを確保し、雨天時のスリップを防止するため
  1. ライト類
    ・点検項目:ヘッドライト、ウインカー、ブレーキランプの点灯状態、レンズの損傷等
    ・重要性:夜間や悪天候時の視認性確保と、自車の存在を周知するため
  1. エンジン系統
    ・点検項目:エンジンの異音、排気ガスの濃度、各部オイル漏れ、冷却水の状態
    ・重要性:円滑な走行を実現し、燃費を向上させ環境負荷を減らすため
  1. ステアリング(ハンドル)系統
    ・点検項目:旋回時の異音、ハンドルのガタツキ等
    ・重要性:車両の安定性を保ち、正確な操作をサポートするため

どのような点検項目があるかを把握しておくことで、整備の理解度を深めることができ、不急の整備については見送るなど、車検費用を抑えることにも繋がります。

車検時にタイヤ交換が必要になる場合とは

前述の点検項目はどれも重要ですが、特にタイヤとブレーキは、車の走行安定性に関わる安全の要(かなめ)です。

タイヤは車体と路面をつなぐ唯一の部品であるため、タイヤが摩耗していると、ブレーキ時にスリップしたり、旋回時にハンドルの応答性が低下する可能性が高まります。

タイヤの使用限度は、溝の深さが1.6mm以上と道路交通法で定められており、この溝が1.6mm未満であれば車検に合格することができません。

車のタイヤサイズによっては、在庫の有無で車検整備時すぐに交換ができないこともあり、車検に要する時間が延びてしまうことも。

車検当日に慌てないためには、タイヤ側面にあるスリップサインと呼ばれる三角マークを探して、その沿線上にある突起物が溝から露出していないか事前に確認しておきます。もし露出しているようであれば、タイヤ交換の計算を立てておきましょう。

参考:日常点検方法(私にもできるマイカー点検)|JAF

ブレーキパッドの交換を提案されたら

最近のほとんどの車は、前輪ブレーキに、ディスクブレーキが採用されています。

ブレーキディスクにブレーキパッドを押し付ける仕組みで、ブレーキパッドは主に摩擦材で構成されているため、ブレーキをかけることで少しずつ削られ摩耗します。

摩耗が限界に近づくと効きが悪くなり、重大な事故につながる恐れがあるため、制動力を安全に確保するためには、ブレーキパッドの残量が十分に残っていることが必要です。

実は、残り溝の規定があるタイヤと違い、ブレーキパッドの厚みに関する項目は車検規定にありません。しかし、単純にブレーキの効きが悪ければ不合格となる可能性があります。

もし、整備士からブレーキパッドの交換を提案されたら、その後の安全のことも考え、車検時に交換しておくことを推奨します。

参考:[Q] ブレーキパッドの磨耗状態はどこで分かりますか?|JAFクルマ何でも質問箱

新制度「OBD検査」とは?

2024年10月1日から、車検の検査項目に「OBD検査」が加わりました。

OBDとは、「On Board Diagnostics(車載式故障診断装置)」の略称で、自動車に備え付けられている自己診断機能のことです。

電子制御装置の状態を監視して異常があれば、故障内容を記録するOBDと、専用のスキャンツールを接続して記録されたデータを読み取ることで、合否判定をおこなうのがOBD検査です。

近年の自動車は電子制御が当たり前となり、自動ブレーキや駐車支援といった先進機能も搭載されています。その反面、このような機能に不具合が生じれば、ドライバーが意図しない減速や加速がおこなわれる可能性があり、重大な事故につながる恐れもあります。

OBD検査は、このような電子制御系統の不具合を確認するために設置された背景があります。

この検査は、2021年10月1日以降の新型国産車と2022年10月1日以降の新型輸入車が対象となります。
※ただし、大型特殊自動車、被けん引自動車、二輪自動車は除く

出典:OBD検査|一般社団法人日本自動車整備振興会連合会

うっかりじゃ済まされない!車検切れで運転した場合のリスクと罰則

もし、車検の更新を忘れていて、気づかず運転してしまったら…。

車検切れの自動車で公道を走行することは、道路運送車両法違反となります。

ドライバーには罰金や罰則が科せられ、車検時に更新されることの多い自賠責保険の契約も合わせて切れていれば、さらに重い処罰の対象となります。

さらに、それが社用車となれば、ニュース等で報道され、会社の信用失墜にもつながる可能性もあります。

出典:無車検、無保険でトレーラー運行 2社など書類送検へ|神奈川新聞

車検切れや保険切れがもたらす法的リスク

車検切れの車で公道を走行した場合、道路運送車両法第58条の違反となり、最大6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金、運転者には違反点数6点が加算され、即座に免許停止処分となります。

また、自賠責保険だけが切れた車を公道で走らせることは、自動車損害賠償保障法第5条違反となり、最大1年以下の懲役または50万円以下の罰金、運転者には違反点数6点が加算されます。

さらに、車検・自賠責保険の両方が切れたまま公道を走行すると、最大1年6カ月以下の懲役または80万円以下の罰金、運転者には違反点数6点が加算されます(2つ以上の違反による違反点数は、道路交通法施行令別表第2の3備考1の1によりどちらか高い方の点数とするため)。

車検切れ車両の安全面のリスク

車検には、車の各部品が正常に作動しているかを確認するという目的があります。

車検切れで運行しているということは、車の重要な部品の正常作動が確認できていないことになります。

重要部品には消耗品も多く使われていることから、「タイヤが滑る」「ブレーキが効かない」「ライトが点かない」などの症状が出た場合、重大な交通事故に直結するおそれがあり、それを未然に防ぐためにも車検は必ず受ける必要があります。

会社の社会的信用の失墜

車検切れで社用車を運転していたことが発覚し、最悪、事故を起こしてしまったとして、それが公になった場合、世間からは「個人」ではなく「会社」が起こしたものと認知されます。

結果、エンドユーザー、ビジネスパートナーからの信用を失い、会社の大幅なイメージダウンや売上減少といった影響が発生しかねません。

車検切れを防ぐためには?

社用車の車検切れは、うっかり忘れていたでは済まされない重大な違反行為です。

まずは、車両管理の体制を整備することで対策しましょう。

社内で、社用車の車検時期を管理する部署の新設や、専門スタッフの配置にくわえ、車検時期のリマインド機能のある管理システムを導入するなどして、ヒューマンエラーを回避する施策が有効です。

ドライバーも、運転する車が車検切れを起こしていないか、もしくは車検日が近づいていないか、社用車を運転するたびに気にしておくとよいでしょう。

通常、フロントガラス上部に張り付けてある車検ステッカー裏側には、「自動車検査証の有効期間の満了する日」が記載されているので、今日の日付がその年月日を超過していないか確認しましょう。

そのほか、社用車に保管してある自動車検査証や自動車検査証記録事項などの書類で「有効期間の満了する日」を確認することができます。

この日付までに余裕を持って車検の準備を進めておきましょう。

まとめ:社用車のメンテナンスはこまめに!

本記事では、社用車の車検手続きの紹介と、車検切れで運転してしまった場合の罰則について解説しました。

「車検は1年か2年ごとだし、そこまで気にしなくても大丈夫」と思うかもしれませんが、会社の保有台数が多くなればなるほど、その管理責任は重くなります。

万が一、車検が切れたまま社用車を運行させてしまえば重大な違反となり、ドライバーが処罰されたり、会社の信用を落とす事態を招きます。日々の業務のなかで社用車の車検時期確認を怠らないようにしましょう。

また、車検は、車が保安基準を満たしているかを検査する制度のため、その機会に点検・整備をすることが多いと思います。しかし、普段から使う頻度の多い社用車は、各部品も酷使される傾向にあるため、日々のメンテナンスも非常に大切です。

JAF交通安全トレーニング」では、社用車の日常点検方法についても詳しく学ぶことができます。

毎月、e-ラーニング形式でコンテンツを配信しているので、JAFならではの実践的かつ具体的な教材を活用して、社用車管理や交通事故防止に役立ててください。

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毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。
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イイダユウジ
高校在学時、アルバイトでこつこつ貯めた資金で「S13シルビア」を愛車に迎えたのを機に、車に目覚める。進学先で自動車整備を学び「国家1級整備士」資格を取得。卒業後はカーディーラーに就職し、車の基礎と社会の厳しさを叩き込まれる。現在は、個人で中古車販売・整備を主に手掛ける一方で、その経験・知識を最大限活かし、交通安全普及のための広報活動に勤しむ。整備士の目線で独自の切り口を模索するなど、幅広く活動している。