個人・法人問わず自動車のユーザーにとって、日常点検整備は義務であり、欠かさず実施する必要があります。
しかし、自家用自動車の日常点検整備は、実施頻度に決まりはありません。
そのため、どのくらいの頻度で日常点検整備をおこなえば安全性を確保できるのか、悩む方も多いでしょう。
本記事では、日常点検整備の適切な頻度を解説します。
ほかにも日常点検整備の項目や、注意点についても解説するので、ぜひご確認ください。
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目次
日常点検整備とは?
自動車には3種類の点検整備または、検査を実施する必要があります。
その中の1つが日常点検整備です。
3種類の違いを把握し、日常点検整備の目的と義務について確認しましょう。
車両点検の種類
自動車の車両点検には、以下の3種類が存在します。
- 日常点検整備
- 定期点検整備
- 車検
日常点検整備は、自動車を所持している方が自分自身でおこなう点検整備です。
日頃の安全運転のために、比較的簡単な方法で自動車の不具合の有無を確認します。
日常点検整備に対し、定期点検整備は一定期間ごとの実施が定められています。
専門的な知識と技術が必要なため、国の認証を受けた整備工場に依頼するのが一般的です。
車検は、点検整備と混同されがちですが、正確には点検整備ではなく検査に該当します。
検査時点で安全に走行できるかどうか、国が最小限の確認をおこなうものです。
ただし、検査をしたら、次の検査までの安全を保証するものではありません。
車の安全性だけでなく寿命においても、日常点検整備と定期点検整備が鍵を握ります。
自家用か事業用かによってそれぞれ点検内容や点検期間が異なるので、以下の記事から確認してみてください。
日常点検整備の目的
日常点検整備の目的は、自動車の状態を確認して車両の不具合を早期発見することです。
そして、異常が見つかった場合は整備工場に相談しましょう。
また、点検整備自体の大きな目的は、不要なトラブルを防ぎ、自動車を良好な状態で使用することであり、確実な安全性を証明するものではありません。
日常点検整備は、整備工場に相談するまでの自動車の状態確認・状態維持であることを認識しておきましょう。
日常点検整備の目的について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
日常点検整備は義務
日常点検整備は、法人・個人問わず自動車ユーザーの義務です。
国土交通省では、自動車の点検整備について以下のように定められています。
自動車の使用者は、道路運送車両法第47条の2の日常点検整備及び第48条の定期点検整備とあわせ、自動車製作者等の提供する点検及び整備に関する情報等も参考として、自動車の点検をし、及び必要に応じて整備をおこなうことにより、自動車を保安基準に適合するように維持する義務があります。
引用元:自動車の点検整備(日常点検・定期点検)の内容|国土交通省
日常点検整備が未実施でも罰則はありませんが、罰則がないからといって日常点検整備を怠らないようにしましょう。
万が一事故を起こせば、人命を脅かすだけでなく社会的信用を失い、取り返しのつかない損失につながりかねません。
また、交通違反と見なされるケースもあります。
整備不良として交通違反と見なされる代表的な事例は、ランプの不具合やブレーキの不具合などです。
日常点検整備未実施によるリスクは身近にあることを忘れないようにしましょう。
日常点検整備の義務について以下の記事でも解説しているので、ぜひご覧ください。
日常点検整備の頻度
白ナンバーの社用車も含む自家用自動車の日常点検整備の実施は義務ですが、実施頻度は決められていません。
各自で最適な頻度を判断し、おこなう必要があります。
自家用自動車の適切な頻度と、日常点検整備をするべきタイミングを紹介するので、ぜひ確認してみてください。
日常点検整備の頻度は最低月1回が適切
自家用自動車の日常点検整備は、走行距離や運行時の状態などから判断した適切な時期に実施することが、国土交通省により提示されています。
1つの目安として、最低1カ月に1回は実施することが適切です。
自家用自動車の日常点検整備にかかる時間は、全項目確認しても10〜15分程度です。
必要に応じてエンジンルームだけ確認するなど、項目を分けてこまめに実施しても良いでしょう。
定期点検整備が12カ月、あるいは24カ月ごとなので、その間の自己管理と考え、自動車の使用状況に合わせて頻度を決めましょう。
月1回以外で日常点検整備をするべきタイミング
日常点検整備は1カ月に1回と限らず、長距離運転の前や高速道路の走行前なども実施しましょう。
例えば、長距離運転や高速道路を走行する場合は、特にエンジンルームとタイヤの確認が大切です。
点検整備を怠ってオーバーヒートを起こしたり、タイヤが破裂・パンクしたりすれば、大事故になりかねません。
また、暑さや厳しい寒さでも不具合が起きる場合があるため、天候に合わせての実施も検討しましょう。
冷暖房の酷使でバッテリが上がったり、凍結によりゴム製品が破損したりすることもあります。
自然災害や異常気象による故障は、車両保険がおりる場合があります。
外傷はすぐに気づくことができますが、内部破損は見過ごすこともあるでしょう。
適切に日常点検整備を実施することで、早期発見につながります。
自家用自動車の日常点検整備で確認する15項目
自家用自動車の日常点検整備の項目は全部で15項目あります。
それぞれ以下の3つの視点から確認します。
- エンジンルーム
- 車両まわり
- 運転席
15項目は国土交通省により定められています。
それぞれについて確認時のポイントは以下の記事を参考にしてみてください。
エンジンルーム内の日常点検整備
エンジンルーム内の日常点検整備の項目は5項目あります。
- エンジンオイルの量
- ブレーキ液の量
- 冷却水の量
- バッテリ液の量
- ウインド・ウォッシャ液の量
エンジンルーム内の日常点検整備は目視で確認できますが、エンジンをかける前、もしくはエンジンルーム内の温度が下がってから実施してください。
エンジンルーム内の日常点検整備をおこなう際の必要なポイントについて、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
▼[Q] エンジンルームの日常点検で必要なポイントはどこですか?‐JAF
車両まわりの日常点検整備
車両まわりでおこなう日常点検整備は、4項目あります。
- タイヤの亀裂、損傷、摩耗状態
- タイヤの溝の深さ
- タイヤの空気圧
- ランプ類の点灯、点滅
車両まわりの日常点検整備は、4項目中3項目がタイヤの点検です。
タイヤの不具合により燃費の悪化や走行時の安定性が損なわれ、ハンドル操作にも影響します。
車両まわりの日常点検整備の詳しい内容は、以下の記事をご覧ください。
参考:日常点検15項目(私にもできるマイカー点検)STEP2 クルマのまわりを回ってここを点検‐JAF
運転席でおこなう日常点検整備
運転席でおこなう日常点検整備の項目は6項目です。
- エンジンのかかり具合、異音
- ウインド・ウォッシャ液の噴射状態
- ワイパーの拭き取り能力
- ブレーキの踏み残りしろと効き具合
- 駐車ブレーキの引きしろ
- エンジンの低速・加速状態
運転席では、エンジンをかけてすべての項目を確認します。
運転席の日常点検整備についての詳しい内容は、以下の記事を参考にしてみてください。
▼日常点検方法(私にもできるマイカー点検)STEP3:運転席に座ってここを点検 – JAF
日常点検整備を怠った場合の注意点
日常点検整備を怠っても罰則はありませんが、大きなトラブルを引き起こす可能性が高くなります。
よく起こる4つのトラブルを紹介します。
バッテリが上がる
日常点検整備を怠るとバッテリ液量の状態に気づかず、バッテリが上がってエンジンがかからなくなる恐れがあります。
バッテリが上がる前兆や上がっていることに気づくためには、日常点検整備が重要です。
バッテリが上がる原因はさまざまですが、日常点検整備で防げるのはライトのつけっぱなしとバッテリ液量の減少の把握です。
ライトのつけっぱなしは、エンジンを切ったあとに車両まわりを点検することで気づけます。
バッテリ液が少なかったり、なくなった状態で走行を続けると、バッテリが破裂することもあります。
また、使用状況により大きく変化しますがバッテリの寿命は2〜5年なので、エンジンルーム内の日常点検整備で状態を確認するとともに、年数にも気をつけてトラブルが発生する前に交換しましょう。
タイヤがパンクする
道路を走っているとタイヤに釘が刺さるなどして、タイヤがパンクすることもあり得ます。
車両まわりの日常点検整備で、タイヤの亀裂・損傷・摩耗状態と空気圧を確認しましょう。
外傷は見てわかるものもありますが、目視では気づけないものもあるため、タイヤの空気圧のチェックも必須です。
空気を入れてもすぐに空気圧が低下する場合は、目に見えない亀裂や損傷がある可能性があります。
また、縁石に乗り上げることもパンクの原因です。
タイヤの側面は薄いため、擦ったりぶつけたりするだけで傷つきます。
縁石に乗り上げた場合は、タイヤの状態を点検しましょう。
オーバーヒートを起こす
オーバーヒートとは、エンジンが異常に熱くなり、冷却機能を上回ってしまうエンジントラブルです。
オーバーヒートが起こると、走行時にいつもよりスピードが出なかったり、甘い匂いや焦げた臭いがしたり、ボンネットから煙が出たりします。
オーバーヒートの原因の一つは、冷却水やエンジンオイルの不足です。
日常点検整備で、エンジンルーム内の各液量の確認や、運転席に座ってエンジンのかかり具合やエンジン音を確認することで、異常の有無をチェックしましょう。
オーバーヒートすると最悪の場合はエンジンが破損し、エンジンごと取り替えが必要になることもあります。
もし走行中に違和感を覚えたら、すぐに安全な場所に停車し、必要であればロードサービスや整備工場に連絡して対処してください。
オーバーヒートについての詳しい症状や対処法は以下の記事をご覧ください。
▼オーバーヒートの症状(マイカー点検ノート トラブル対処法)‐JAF
整備不良の罰則に該当する
日常点検整備の未実施による罰則はありませんが、事故やトラブルの原因が整備不良と判断された場合は、罰則対象です。
日常点検整備を怠った場合に起こり得る整備不良の例として、ランプの不具合とブレーキの不具合を紹介します。
不具合の内容 | 違反 | 違反点数 | 罰金 |
ランプの不具合 | 整備不良尾灯等違反 | 1点 | 5,000〜9,000円 |
ブレーキの不具合 | 整備不良制動装置等違反 | 2点 | 6,000〜12,000円 |
ランプの不具合は、車両まわりの日常点検整備をしないと自分で気づくことが難しいため、見落とすことが多くなります。
ブレーキの不具合は、運転席で確認するブレーキの踏み残りしろと効き具合の日常点検整備を怠ることで招く恐れがあります。
日常点検で異常が見つかったらどうする?
日常点検整備を適切に実施して安全運転を心がけていても、自動車の部品は摩耗・劣化していくため、異常や不具合が見つかることがあります。
異常が見つかった場合は、状況に合わせて速やかに整備工場や販売店に連絡してください。
日常点検整備で見つかった異常や不具合には、基本的に車両保険の対象にはなりません。
修理費用や消耗品の交換費用がかかります。
ただし、新車の場合は、不具合の原因によってメーカー保証が受けられる可能性があります。
日常点検を管理しよう
定期的な日常点検整備の実施には、点検項目や頻度をわかりやすく管理することが有効です。
JAFや国土交通省のチェックシートを活用し、見落としや長期にわたる未実施を防ぎましょう。
また、点検項目と頻度をデジタルで管理できるツールもあります。
点検内容の分析ができたり、入力の手間を省けたりするため、必要に応じて検討しましょう。
まとめ:日常点検整備の目的と必要性を理解して最低月1回は実施しよう
日常点検整備とは、車両を良好な状態で保ち、日頃の運転を安全におこなうための点検整備です。
全15項目をドライバー自身で点検します。
自家用自動車の日常点検整備の頻度は定められていませんが、最低でも1カ月に1回、状況に応じて適切なタイミングで実施しましょう。
日常点検整備を怠ると、未然に防げた事故やトラブルが発生し、人命を脅かすだけでなく、経済的損失や社会的信用の喪失につながりかねません。
日常点検整備は、車両の所有者またはドライバーの義務であることを忘れないようにしましょう。
スマホやタブレットでの受講も可能