運転中、「ボーッとしていた」「考え事に夢中になっていた」という経験はありませんか?
顔は前を向いているのに注意散漫な状態で運転していることを「漫然運転」といいます。
漫然運転は交通事故の原因の上位に入るほど、危険性が高い行為です。
この記事では、漫然運転の原因や対策について解説します。
危険性を事前に理解して、漫然運転を防止しましょう。
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漫然運転とは?
漫然運転とは、集中力や注意力が低い状態で車を運転することです。
「内在的前方不注意」といわれることもあります。
具体的には、顔は前を向いているのに「頭がボーッとしている」「考え事をしている」など、運転に集中できていない状態が当てはまります。
ほかの車や歩行者、信号などに気づけず、交通事故につながる可能性が高い、非常に危険な行為です。
交通事故の原因といえば「居眠り運転」や「わき見運転」が代表的なものとして知られていますが、漫然運転も交通事故の原因になりやすい行為です。
居眠り運転との違い
居眠り運転とは、運転しながら寝てしまったり、強い眠気によって運転に支障が生じたりする状態を指します。
漫然運転と同様に非常に危険な行為で、「集中力や注意力が低い」という点は、漫然運転と同じです。
しかし、ボーッと運転する漫然運転に対し、居眠り運転は「眠気」を伴う点が異なります。
わき見運転との違い
わき見運転とは、前方への注意が欠けた状態で運転することです。
例えば、周囲の景色やスマートフォン、同乗者との会話に気を取られて、運転に集中できていない状態が該当します。
漫然運転が「前を向いているのに集中力や注意力が低い状態」であるのに対し、わき見運転は「ほかのことに気を取られて前方への注意力が低下している状態」である点に違いがあります。
なお、スマートフォンやカーナビを操作しながら運転する「ながら運転」は、わき見運転の一種です。
「少しだけなら問題ない」と油断して、ながら運転をする人がいるようです。
しかし、近年はながら運転による交通事故が増加しており、問題になっています。
参考:やめよう!運転中の「ながらスマホ」違反すると一発免停も!|政府広報オンライン
動静不注視・安全不確認との違い
動静不注視とは、いわゆる「だろう運転」のことです。
ほかの車や歩行者などを認識しているのに、「自分は大丈夫だろう」と思い込み、注意を払わずに運転することを指します。
例えば「右前を走っている車がまさか車線変更するとは思わなかった」というケースが当てはまります。
一方、安全不確認とは、徐行や一時停止といった動作をしたものの、安全確認が不十分な運転のことです。
例えば「一時停止が必要な交差点で一時停止したものの、左右の確認が不十分で、死角から出てきた自転車と接触事故を起こした」というケースが該当します。
漫然運転と動静不注視・安全不確認の違いは、ドライバー本人が事故の原因になり得る危険を察知できているかという点です。
漫然運転はドライバー自身が危険を察知できていないのに対し、動静不注視・安全不確認は、ドライバーが危険を察知しているものの、安全確認が不十分であるという点が異なります。
漫然運転と事故の関連性
漫然運転は交通事故につながりやすい、非常に危険な行為です。
警察庁の調査によると、令和5年の死亡事故要因において、漫然運転は「75歳未満のドライバー」「75歳以上の高齢ドライバー」の両方で2番目に多い要因となっています。
75歳未満のドライバーの死亡事故要因 | 75歳以上の高齢ドライバーの死亡事故要因 |
---|---|
安全不確認:502件(30.0%) | 操作不適:96件(27.6%) |
内在的前方不注意(漫然運転など):460件(27.5%) | 内在的前方不注意(漫然運転など):81件(23.3%) |
外在的前方不注意(わき見運転など):304件(18.2%) | 安全不確認:75件(21.6%) |
操作不適:165件(9.9%) | 外在的前方不注意(わき見運転など):28件(8.0%) |
判断の誤り:134件(8.0%) | 判断の誤り:20件(5.7%) |
漫然運転による危険な行動
漫然運転をすると、どのような危険があるのでしょうか。
信号の見落とし
集中力や注意力が低下した状態で運転していると、信号を見落とすことがあります。
信号が変わったことに気づかず停止線を越えてしまったり、意図せず信号無視をしたりすれば、事故につながりかねません。
特に、人通りや車通りが多い交差点だと、交通事故につながるリスクが高くなります。
蛇行運転
漫然運転では、ハンドル操作も鈍りがちです。
まっすぐ走れなくなり、センターラインからはみ出したり、カーブを曲がるときに大きく膨らんだりすることがあります。
対向車との交通事故につながるリスクがあり、非常に危険です。
ブレーキが遅れる
漫然運転は運転に集中できていないため、判断力も鈍りがちです。
そのため、ブレーキを踏むのが遅れたり、ブレーキの踏み込みが甘くなったりします。
その結果、「前方の車が減速しているのに気づかず、追突事故を起こしてしまう」などのリスクがあります。
無意識なスピード違反
自分がどのくらいのスピードで走っているか認識できなくなり、無意識にスピードを出していることもあります。
車間距離が縮まっていることに気づいて急ブレーキを踏み、ヒヤリとすることもあるでしょう。
また、速度超過によってハンドル操作が思うようにできなくなり、大事故につながるリスクもあります。
漫然運転の原因
漫然運転を防ぐためには、原因を把握しておくことが重要です。
集中力や注意力が低下してしまう原因を確認しましょう。
日頃のストレスや悩み
日頃のストレスや悩みによって運転中に考え事をしてしまうと、運転に集中できず、漫然運転につながります。
仕事や私生活に関する深刻な悩みだけでなく、休日の予定や夕食のメニューといった軽い考え事も集中力の低下を招きます。
運転中は安全運転を意識して、運転だけに集中しましょう。
疲労の蓄積や睡眠不足
疲労の蓄積や睡眠不足は、集中力や注意力の低下を招きます。
前を向いているのに運転に集中できず、漫然運転になりやすくなります。
居眠り運転の危険性もあるので、疲労が蓄積した状態や睡眠不足での運転は控えるようにしましょう。
スマートフォンの利用
運転中にスマートフォンを操作していなくても、着信音や通知音に気を取られることも、漫然運転の原因です。
「誰からの連絡だろうか」「私のSNSにコメントがあったのかな」などと考えること自体が、運転への集中力が欠けている状態だといえます。
同乗者との会話
同乗者との会話は、居眠り運転防止に効果的です。
しかし、会話に夢中になりすぎると、運転への集中力が低下し、漫然運転になります。
会話を楽しむこと自体は問題ありませんが、夢中になりすぎないようにしましょう。
単調な道路での長時間運転
高速道路のような単調な道では、ハンドル操作や確認事項が少なくなります。
その結果、緊張感が薄れて運転以外のことが頭に浮かびがちになり、漫然運転につながります。
運転への慣れや自信
運転歴が長くなって運転に慣れてくると、緊張感がなくなってきます。
その結果「自分は大丈夫だろう」と油断してしまい、漫然運転につながりやすくなります。
漫然運転への対策
漫然運転は、誰にでも起こり得ることです。
そのため、事前に対策をとっておきましょう。
適度な休憩を取る
運転には集中力が必要で、想像以上に疲労が溜まります。
しかし、漫然運転の状態は、どれだけ疲労が溜まっているか気が付きにくい状態です。
そのため、疲れたと感じていなくても、適度な休憩を挟みましょう。
よくいわれるのが「2時間運転するごとに10分以上の休憩を取る」です。
ただし、これは運転に慣れている人の目安です。
「1時間運転するごとに10分以上の休憩」「2〜3時間ごとに30分以上の休憩」など、普段の運転頻度に合わせて自身の目安を決めると良いでしょう。
また、スケジュールに余裕を持つことも重要です。
余裕があれば、疲れたときに休憩を取りやすいからです。
「早めに出発する」「前もってルートを調べておく」など、運転前の準備をしっかりして、運転に集中できるようにしておきましょう。
スマートフォンの通知を切る
近年、運転中のスマートフォン操作が原因で事故につながるケースが増加しています。
参考:やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用|警察庁
また、スマートフォンを操作していなくても、通知音によって集中力が切れることも問題視されています。
そのため、運転中はスマートフォンの通知を切ったり、機内モードやおやすみモードにしたりして、運転の邪魔にならないようにしておきましょう。
どうしても気になる場合は、電源を切ってカバンにしまっておくのがおすすめです。
漫然運転の危険性を理解する
あらかじめ漫然運転の危険性を理解することも、漫然運転防止に効果的です。
いくら「漫然運転は危険です」と伝えても、従業員一人ひとりが漫然運転の危険性を理解していなければ、「自分は大丈夫だろう」と考えてしまうかもしれません。
そのため、日頃から従業員に対して交通安全教育をおこなって、その中で漫然運転の危険性を理解してもらうことが必要です。
事前に漫然運転の危険性を把握しておけば、「自分も漫然運転をしてしまうかもしれない」という危機感が芽生え、交通安全の推進につながることが期待されます。
まとめ:漫然運転をしない・させないための対策をしよう
漫然運転とは、集中力や注意力が欠けた状態で運転することです。
非常に危険な行為であり、実際に漫然運転が原因の死亡事故も発生しています。
漫然運転は、運転の歴を問わず誰にでも起こり得ることです。
「自分は大丈夫」と思わず、危険性を十分に把握した上で、漫然運転をしない・させないための対策に取り組みましょう。
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漫然運転の防止にも効果的なので、社内の交通安全意識の向上を図りたい場合は、ぜひご活用ください。
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