高速道路は、長距離移動や効率的な輸送に欠かせない重要な交通インフラです。
しかし便利な高速道路には、落下物によるリスクが潜んでいます。
本記事では高速道路における落下物の危険性や対策、発見時の通報先など詳しく解説します。
安全な高速道路利用のために、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
高速道路の落下物によるリスク

高速で走行する車両にとって、高速道路の落下物は非常に危険です。
以下に主なリスクを解説します。
交通事故のリスク
高速道路の落下物は、重大な交通事故を引き起こす危険があります。
高速走行中の前方に突然落下物が現れると、回避するための時間が非常に限られており、衝突を避けるために急なハンドル操作やブレーキが必要になるからです。
例えば、高速道路上で落下したタイヤに衝突したり、落下物を避けようとして周囲の車線の車両に接触したりする危険があります。
車間距離が不十分な場合は、追突事故につながる可能性も高くなるため注意が必要です。
渋滞の原因
落下物は高速道路の渋滞を引き起こす原因でもあります。
落下物が車両の通行を妨げるからです。
例えば、落下した荷物が車線を塞ぐと、車両が通行できません。
落下物を避けるために、たくさんの車両が車線変更をすることで渋滞が発生します。
さらに、落下物が原因の事故に至る可能性もあります。
高速道路の落下物は、さまざまなリスクがあるため十分な注意が必要です。
高速道路での落下物について

次に、高速道路でよくある落下物や、回収方法について紹介します。
高速道路でよくある落下物
国土交通省が発表した2022年度の、高速道路会社の落下物処理件数は、全部で308,900件です。
平均すると1日に840件もの落下物を処理しています。
落下物の種類とそれぞれの件数は以下です。
落下物の種類 | 処理件数 |
---|---|
プラスチック・布・ビニール類 | 81,800件 |
自動車部品・金属類(タイヤ含む) | 38,200件 |
木材類 | 31,700件 |
ロードキル(動物の死骸) | 51,100件 |
その他 | 106,100件 |
出典:高速道路会社の落下物処理件数(令和4年度)|国土交通省
決して他人事ではなく、荷物を落とさないための対策と、落下物を発見したときの適切な対処が求められます。
高速道路の落下物はどのように回収されているか
高速道路で落下物を回収するのは、交通管理隊の隊員です。
交通管理隊とは、黄色いパトロールカーに乗って、高速道路に異常がないか、24時間・365日巡回している係員のことです。
常に2人1組で巡回しており、落下物を見つけたら、すぐに回収作業をおこないます。
また、ドライバーからの落下物に関する通報を受けて現場に急行することもあります。
落下物があると情報板で情報提供される
高速道路では、落下物に関する通報があり次第、情報板による情報提供がおこなわれます。
例えば「この先落下物注意」のように表示されます。
「落下物」の表示を確認したら、速度を落とし、注意して走行しましょう。
また、「落下物多発注意 PAで積荷確認を」のように、注意喚起がおこなわれる場合もあります。
情報板は高速道路の車線だけでなく、インター入口やジャンクション付近、トンネル入口など、さまざまな場所に設置されています。
事故や故障車の情報なども入手できるので、安全運転のために、見落とさないようにしましょう。
高速道路の落下物による事故の予防と対策

落下物による事故を防ぐには、ドライバー一人ひとりの意識と行動が重要です。
以下では荷物を落とさないための対策と、落下物に遭遇したときのための対策を解説します。
積荷の固定と確認
車両に積載する荷物は確実に固定し、走行中にも定期的な確認が重要です。
荷物がきちんと固定されていない場合、高速走行時の振動や風圧、急ブレーキなどの影響で落下する危険性があります。
また、走行中に荷物が緩む可能性もあるため、休憩時などに確認しましょう。
ビニールなどの飛びやすい荷物は、シートで覆い風に当たらないような工夫も必要です。
出発前の点検だけでなく、休憩時にも状態を確認する習慣をつければ、落下のリスクを減らせます。
車間距離の確保
適切な車間距離を保つことは、落下物事故の回避に有効です。
十分な車間距離があれば、前方の落下物を安全に回避する時間的余裕が生まれます。
一般的な車間距離の目安は2秒とされており、前方の車両が特定の地点を通過してから、自車が同じ地点に到達するまでに2秒かかる車間距離を保ちましょう。
わき見運転をしない
運転の基本ですが、わき見運転をしないようにしましょう。
特に高速道路の場合、一般道より速度を出しているため、一瞬の油断が重大事故になりかねません。
また、わき見運転により情報板での注意喚起を見落とすリスクもあります。
わき見運転をせず、常に前方や道路状況を確認するようにしましょう。
速度を出し過ぎない
速度の出し過ぎにも注意しましょう。
高速道路は一般道よりも速度を出しているため、落下物を発見してからハンドルやブレーキで回避できる時間が短くなります。
たとえ落下物を避けられたとしても、急なハンドル・ブレーキ操作は、事故の原因になりかねません。
速度を出し過ぎず、落ち着いて運転するようにしましょう。
ドライブレコーダーの設置
ドライブレコーダーの設置は、落下物事故の証拠収集と事後対応に有効です。
事故発生時の状況を客観的に記録し、事後の対応や保険請求に活用できます。
高速道路での落下物事故は瞬時に発生し、状況の説明が難しい場合も少なくありません。
しかし、ドライブレコーダーの映像があれば事故の経緯を明確にでき、責任の所在や補償問題の円滑な解決に役立ちます。
ドライブレコーダーは落下物事故に直接的な効果はありませんが、事故発生時の重要な証拠となりドライバーを保護する役割を果たします。
車両保険に入っておく
車両保険には「車対車限定」と「一般条件」がありますが、どちらのタイプでも「飛来物による車両損傷」は補償の対象となり、保険を使って修理できます。
ただし、車両保険に未加入の場合は、たとえ落下物で自車に損傷があっても、修理費用は自己負担となってしまいます。
高速道路などでの落下物による被害を防ぐためにも、現在契約している自動車保険に車両保険が付帯されているかどうか、今一度確認しておきましょう。
注意点として、飛来物による事故で車両保険を使用すると、保険の等級が1つ下がります。
等級が下がることで、次年度の保険料が割増しになってしまいます。
高速道路で落下物を発見した際の通報先

高速道路で落下物を発見した場合、迅速な通報が重要です。
適切な通報により道路管理者が速やかに対応し、事故を未然に防げます。
以下に主な通報先と方法をご紹介します。
道路緊急ダイヤル
道路緊急ダイヤルは、高速道路や一般道で異常を発見した際に利用できる全国共通の短縮ダイヤルです。
#9910をダイヤルすると、最寄りの道路管理者に直接連絡できます。
通報の際は落下物の位置や種類など、可能な限り詳しく伝えることが重要です。
また、運転中の通報は危険なため、安全な場所に停車してからおこないましょう。
LINEアプリによる道路緊急ダイヤルの通報も可能です。
非常電話
非常電話は本線上は1kmおき、トンネル内では200mおきに設置されており、落下物を発見した際、落下物にぶつかった際の通報に利用できます。
非常電話は直接道路管理者につながるため、迅速な対応が期待できます。
非常電話の設置場所は以下のとおりです。
- 高速道路本線上(1kmおき)
- トンネル内(200mおき)
- インターチェンジ
- サービスエリア(SA)
- パーキングエリア(PA)
- バスストップ
- 非常駐車帯
ただし非常電話を使用する際は、車両から降りる必要があるため、周囲の安全には十分気をつけてください。
SA・PAの係員
サービスエリアやパーキングエリアの係員に伝えることも可能です。
係員から道路管理者に連絡してもらえます。
状況に応じて適切な方法で速やかに連絡すれば、落下物による事故のリスクを減らせます。
道路緊急ダイヤルの使い方

普段かけることのない道路緊急ダイヤルですが、いざというときのために、使い方をチェックしておきましょう。
道路緊急ダイヤルを使う手順
道路緊急ダイヤルを使用する手順は以下のとおりです。
- 高速道路で落下物を発見する
- 道路緊急ダイヤル「#9910」に電話する
- 自動音声ガイダンスにしたがって落下物を発見した高速道路を選択する
- 係員に電話がつながったら状況を伝える
道路緊急ダイヤルは、固定電話や携帯電話、公衆電話から連絡できます。
ただし、運転中の電話は道路交通法で禁止されているため、必ず安全な場所に駐車してから電話するようにしましょう。
落下物がある場所を特定する方法
係員に落下物の場所を詳細に伝えられれば、その後の回収がスムーズにおこなわれます。
高速道路で落下物のある場所を特定する方法は以下のとおりです。
- キロポストを確認する
- SAやPA、JCTからの距離を伝える
- カーナビの現在地情報を伝える
- 河川や山の名前など、近くの目印を伝える
落下物を見つけても慌てず、冷静に周囲の情報を集めるようにしましょう。
高速道路で落下物にぶつかった際の対処法

万が一落下物にぶつかってしまった場合、冷静かつ迅速な対応が求められます。
適切な対処法を詳しく解説します。
安全な位置に停車
落下物にぶつかったら、まず自身と他の道路利用者の安全確保が最優先です。
可能な限り路肩や路側帯など、安全な場所に車を移動させましょう。
ハザードランプや三角表示板、発煙筒などで後続車両に注意を促すことも重要です。
車内に留まるのは危険なため、ガードレールの外側など安全な場所に避難してください。
警察・保険会社へ連絡
安全を確保したらまず警察に連絡し、事故の状況を報告します。
高速道路上の事故は二次事故の危険性が高いため、警察の指示にしたがって行動しましょう。
その後、加入している自動車保険会社にも連絡して事故の状況を報告し、今後の対応や必要な手続きのアドバイスを受けましょう。
JAFなどのロードサービスの手配
最後にJAFなどのロードサービスへ連絡をします。
事故による損傷か、事故後の移動による損傷かがわからなくなるため、走行できる状態でもロードサービスの利用がおすすめです。
整備工場などへ運んでもらい記録してもらうことで、客観的な証拠として残せます。
ロードサービスの到着を待つ間は、ガードレールの外側など安全な場所で待機しておきましょう。
高速道路で物を落としてしまった場合の対処法

自分の車から荷物が落ちたことに気づいても、自分で回収するのは非常に危険であるため、絶対にやめましょう。
万が一、荷物を落としてしまった場合には、速やかに以下のいずれかの行動をとってください。
- 「道路緊急ダイヤル #9910」へ連絡する
- 高速道路本線上やサービスエリア・パーキングエリアに設置されている非常電話で通報する
- 料金所やサービスエリア・パーキングエリアの係員に通報する
その際、落下地点の車線情報やキロポスト番号などを伝えておくと、迅速な対応につながります。
通報を受けると、情報板やVICSなどを通じて注意喚起がおこなわれるため、さらなる事故の防止に役立ちます。
高速道路の落下物に関する罰金や罰則

道路交通法第七十五条の十にもとづき、落下物は落とした人の責任です。
自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量の不足のため当該自動車を運転することができなくなること又は積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない。
違反した場合、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金、過失の場合は10万円以下の罰金が科せられます。
出典:道路交通法第百十九条第一項第十九号、同条第三項|e-GOV法令検索
過失とは故意に物を捨てるだけでなく、落下防止の措置をしていなかった場合も含まれるため、荷物が落下しないような対策が重要です。
さらに落下物が原因で死傷者がでた場合は、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金が科せられる可能性もあるので十分注意しましょう。
出典:自動車の運転によりひとを死傷させる行為等の処罰に関する法律第五条|e-GOV法令検索
また、高速道路で荷物を落とすことは高速自動車国道等運転者遵守事項違反にあたり、違反点数2点と大型車で12,000円、普通車で9,000円の反則金額が課せられます。
落下物が原因で事故が発生すれば、その原因を作った落下物の落とし主にも事故の過失割合が発生します。
安全と法的責任のためにも、積荷の適切な固定や定期的な確認を怠らないようにしましょう。
まとめ:高速道路での落下物による事故を防ごう

高速道路における落下物は、重大な事故につながります。
本記事でご紹介した予防策や対策を実践し、事故のリスクを減らしましょう。
交通安全は一人ひとりの意識と行動にかかっています。
落下物による事故を防ぐために、常に注意を怠らず安全運転を心がけましょう。
高速道路でのトラブル対処法など、交通安全のノウハウを学ぶにはJAF交通安全トレーニングがおすすめです。
従業員の交通安全教育にぜひご活用ください。
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