企業が所有する車両は、大切な資産です。
しかし、日頃から防犯をしっかりしているつもりでも、日々進化する盗難手口に対策が追いつかず、車両盗難被害に遭ってしまうこともあります。
この記事では、企業にとって大きな損失となる車両の盗難問題について、車両盗難の最新手口から効果的な対策方法まで幅広い情報をまとめました。
防犯機器を使った対策を含め、効果的なセキュリティ対策や日々の習慣の見直しなど、多角的な視点から車両盗難を防ぐための対策を解説します。
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目次
車両盗難被害の現状

警察庁が令和7年3月に発表した統計によると、自動車盗難の認知件数は、平成15年(6万4,223件)のピーク時から大幅に減少しており、令和6年は6,080件とピーク時と比べ1割以下にまで減少しています。
検挙件数については、平成17年(1万4,898件)以降、減少傾向にありますが、検挙率を見ると、令和6年が44.1パーセントとなっており、約4割が検挙されています。
車両盗難の発生場所は全体の約4割が一般住宅であるものの、駐車場や道路上などでの盗難数も多く、企業が所有する車両も例外ではありません。
車両盗難の実態
車両盗難の発生件数は、平成15年と比べておよそ9割減少と大幅に少なくなっているものの、盗難1件あたりの保険金支払額は年々上昇している傾向にあります。
盗難件数と支払保険金が反比例している要因として、物価高による車両本体価格の上昇や高級車・高年式車が狙われていると考えられます。
ビジネスユースとして人気が高く社用車の利用率が高いプリウスやアクア、ハイエースやプロボックスなども車両別盗難被害ランキングのトップ10に名を連ねており、企業としても対策が必要です。
盗まれた車は、国内のヤードと呼ばれる一時保管場所で解体後、海外へ不正輸出されたり、盗難車と同一車種の事故・水没車などと盗難車を合体させる手法などで国内市場に流通させたりするので、被害車両を発見するのは非常に難しくなります。
警察の捜査を逃れるためにナンバープレートを盗んでほかの車両に付け替えて犯罪に利用するなど、犯罪組織が関与して不正に海外輸出しているなどのケースもあり、組織の資金源になっている可能性も指摘されています。
出典:第26回 自動車盗難事故実態調査結果|日本損害保険協会
参考:盗難車の行方は?|自動車盗難防止協会
車両盗難の主な手口
近年、車両盗難手口はますます巧妙化しており『ガラスを割って鍵を開ける』『ドアをこじ開ける』など、従来のアナログな手法だけでなく、電子機器を悪用した新たな手口も増えています。
- CANインベーダー
車両の通信網(CAN)へ不正アクセスし、ドアの解錠やエンジン始動をおこなう盗難手口です。電子制御が進んだ車種ほど狙われやすく、短時間での犯行が可能なため、現在主流の手口となっています。 - リレーアタック
スマートキーの微弱電波を特殊機器で拾い、中継して近くにあるように偽装して解錠・始動をおこなう手口です。 - コードグラバー
キーレス操作時にスマートキーが出すIDコードを読み取り、その情報で解錠・始動までできるようにする手口です。
車両盗難を未然に防ぐための対策

大切な車両を盗難から守るには、複数の盗難対策を組み合わせることによって、より高い効果が期待できます。
セキュリティシステムの導入や駐車場のセキュリティ強化といった物理的な対策はもちろんですが、貴重品を車内に置かない、鍵は必ず閉めるなどといった社員の防犯意識への心がけも重要なポイントです。
盗難防止の効果として、物理>検知>追跡の順で重ねがけるのが有効的です。
どのような対策法があるのか、具体的に確認していきましょう。
CANインベーダーへの対策
CANインベーダーとは、車両の制御システムに直接接続して不正にエンジンを始動させる盗難手口です。
特殊な機器を使用し、バンパーなどの外部からCANシステムに不正接続します。
主に以下3つの対策が有効です。
- ハンドルやタイヤのロック:車を物理的に動かせなくする
- 防犯機能の追加:ディーラーに相談してセキュリティを強化する
複数の対策を組み合わせることで、CANインベーダーによる盗難リスクを軽減できます。
リレーアタックへの対策
リレーアタックとは、車両のスマートキーが出す微弱な電波を特殊な機器で受信して、その車両が近くにあると勘違いさせてドアを開けてしまう盗難の手口です。
リレーアタックから車両を守る3つの対策を確認しましょう。
- 専用の防犯ケース:スマートキーの電波を通さないケースに収納して管理する
- 金属製の容器やアルミホイル:スマートキーを金属製の缶やアルミホイルに包んで電波をブロックする
- 節電モード:スマートキーに節電モードがあれば、それをONにして電波を出さないようにする
リレーアタックは、ものの数秒〜数分で車両が盗まれてしまいます。
使用される中継機器は、玄関先に置いてあるスマートキーでも電波を盗めるので、鍵の保管場所にも十分な注意が必要です。
駐車場のセキュリティ強化

駐車場のセキュリティ強化は、車両盗難防止対策として非常に有効な手段です。
今すぐ導入できる強化ポイントとして、次のようなものがあります。
- 監視カメラの設置
高画質・広角カメラを複数設置し、死角をなくすことで、駐車場全体を監視する。 - 照明設備の充実
駐車場内を明るくし、犯罪に利用されやすい暗い場所をなくす。センサーライトは、人や車両の接近を感知して自動点灯するので、犯罪抑止効果も期待できる。
社員の意識改革
減少傾向にある車両盗難とはいえ、依然として盗難の被害は続いています。
警察庁によると、自動車盗の発生場所は『一般住宅』がもっとも多く全体の42.9パーセント、ついで『駐車場』が多く全体の27.0パーセントとなっています。
また、被害にあった自動車のうち、4台に3台が「キーなし」の状態で盗難被害に遭っており、カーナビやナンバープレートが盗まれる被害も発生しています。
車両盗難による被害は、「車が盗まれること」だけではありません。
顧客の個人情報が含まれる書類やパソコンごと盗まれてしまった場合、企業の信用問題にもかかわるため、車両を利用する社員一人ひとりの心がけが欠かせません。
- 盗まれた車両が戻ってくる見込みはほとんどない
- 駐車場での盗難が多発している
- キーなしの状態でも盗難に遭う
- 車両盗難は乗用車だけではない
などを踏まえた意識改革をおこなうことで、より高い防犯意識の向上を目指しましょう。
車両駐車場の選び方
外出先では、死角がなく、見通しの良い場所に車両を停めるようにしましょう。
夜間には、照明が設置された明るい駐車場を選ぶことも大切です。
大型駐車場では車両盗難だけでなく、車上荒らしが多発しているため、車を停める際は、見通しの良い、明るい場所を選んで停めるようにしましょう。
その他の車両盗難対策
車両を使用する場合に意識しておくべきポイントには、次のようなものがあります。
- 路上駐車をしない
路上駐車は盗難犯にとって格好のターゲットです。特に人通りの少ない場所や死角になりやすい場所は危険です。 - 窓・ドアの施錠をする
たとえ短い時間でも、車両から離れる際には必ず窓を閉め、ドアロックを忘れないことが大切です。 - 貴重品は車内に置かない
貴重品を車内に置いたままにしておくと、ガラスを割って車上荒らしに遭ってしまう可能性が高まります。 - 取り外しができるカーナビやETCカードなどは持ち帰る
簡単に取り外しができる機器の設置やETCカードの挿しっぱなしは車上荒らしに目をつけられる恐れがあるため、可能な限り持ち帰るなどして対策しましょう。 - 駐車場が離れた場所にある場合は、こまめに車両状況を確認する
車両から長く離れる場合は、こまめに駐車場の状況を確認することで、異常を発見し、早めの対処ができます。
もし車両盗難に遭ってしまったら

どのような対策をしていても、車両盗難の被害に遭う可能性はゼロではありません。
大切な車両や荷物を盗まれたときは、慌てずに行動することが大切です。
ここでは、車両盗難にあった場合にどのような手順で対応すれば良いかを紹介します。
警察へ通報する
車両が盗難に遭ったら、まずは警察に連絡しましょう。
車両盗難の届け先は、盗難現場を管轄する警察署か最寄りの交番です。
警察の指示に従って必要な情報を伝え、手続きを進めましょう。
| 車の情報 | ナンバー、車体番号、色、年式、特徴 |
| 所有者・使用者情報 | 氏名、会社名 |
| 盗難日時・場所 | いつ、どこで盗まれたか |
| 盗難状況 | 走行距離など |
| 車内にあったもの | 貴重品、クレジットカードなど |
| その他 | 車検証のコピー、自動車保険証のコピー |
盗難届が受理されると、受理番号が発行されます。
ここで発行された番号は、保険金請求や運輸支局で一時抹消登録をおこなう際に必要になるので、大切に保管しておきましょう。
一時抹消登録をおこなう
車両盗難被害を受けた場合、不要な自動車税の課税を防ぐため速やかに運輸支局で一時抹消登録の手続きが必要です。
| 一時抹消時に必要なもの | 印鑑登録証明書 |
| 実印 | |
| 自動車検査証 | |
| ナンバープレート |
通常は自動車検査証とナンバープレートが必要ですが、盗難の場合は手元にないことがほとんどです。
手元にない場合は、運輸局で理由書を記入します。
警察での被害届の受理番号も必要となるため、忘れないようにしましょう。
自動車税は手続き完了後、都道府県税事務所から還付されます。
なお、軽自動車の場合は現住所管轄の軽自動車検査協会で、一時使用中止の手続きをおこないます。
都道府県税務署に申し立てをする
一時抹消登録をおこなわなくても、警察への被害届から1カ月以上車両が発見されない場合には、税務署へ申し立てをすれば自動車税が減額されます。
ただし、軽自動車は還付制度の対象外となり、手続き窓口も市町村の役場になるため注意が必要です。
提出先の窓口や必要書類を事前に確認しておくと、スムーズに申請できます。
保険会社に連絡する
警察への連絡が済んだら、加入している保険会社にも連絡を入れましょう。
| 連絡する内容 | 盗難日時・場所 |
| 警察に届け出た旨 | |
| 車両の詳細(車種、ナンバーなど) | |
| 車内にあった貴重品など | |
| 準備しておくと良いもの | 警察から受け取った受理番号 |
| 車検証のコピー | |
| 自動車損害保険証書のコピー |
車検証のコピーや自動車損害保険証書などは、車両を利用する前にコピーを取って保管しておくようにすると、万が一の場合でもスムーズに対応できます。
まとめ:車両盗難の対策は日頃からの備えが重要

車両盗難は一瞬の隙を突かれてしまえば、いつ何時、誰にでも起こりうる可能性のある犯罪です。
自社の大切な車両を守るためにも、最新の盗難手口を常に把握しつつ、盗難対策を複数組み合わせてそれらを更新していくこと、そして、防犯対策を盛り込んだ車両管理の社内ルールを周知していくことが必要です。
さらに、社員一人ひとりが防犯行動をとれるよう教育を施していくことも大切です。
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安全意識を醸成することで、企業の不利益に繋がらない行動選択ができるようになれば、車両盗難のリスクも少なくなることでしょう。
事故だけではなく、車両管理の不備により盗難が発生すれば、企業の生産性低下にも繋がりかねません。
盗難被害のリスクを減らすためにも、継続的な教育により車両の安全を守ってみてはいかがでしょうか。
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