2025年運転免許制度改正|企業が押さえるべきポイントと対応策

2025年4月、運転免許制度において重要な改正が実施されました。

この改正は、ドライバー採用基準や社員が受講すべき運転教育に直結し、物流業界に限らず社用車を使用する企業全体に影響を与えるものです。

少子高齢化や交通事故抑制、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)推進など、社会課題の変化を受けて実施された制度改正は、企業活動の現場でも対応が求められています。

この記事では、改正された内容をわかりやすく解説し、企業にどのような影響があるか、今から取り組める具体的な対応策についてご紹介します。

今後の事業活動に大きく関わるこの制度改正について、一緒に理解を深めていきましょう。

もし、社用車で事故を起こしたら?

免許制度改正の背景と企業への影響

2025年4月1日より、運転免許制度に複数の重要な改正が実施されました。

企業の車両運用やドライバー教育に直接影響するため、しっかりと把握しておく必要があります。

2025年4月からの運転免許制度改正の概要

2025年4月から施行された、主な変更点は次の通りです。

<大型自動車免許にAT限定制度を導入>

教習所でAT車で基本的な運転技術を学び、卒業後に『AT限定解除教習』を受けると、MT車の運転資格が取得できるようになりました。

このステップ制導入で初心者が段階的に運転技術を習得できるようになり、安全性の向上が期待されています。

これを受けて企業は、AT車を中心とした車両管理や研修体制の見直しが求められます。

参考:JAF MATE|運転免許制度改正の詳細

<原付免許で運転可能な車両の拡大>

従来、原付免許では排気量50cc以下のバイクしか運転できませんでしたが、改正により排気量125cc以下かつ出力4kW以下の二輪車が運転可能となりました。

2025年11月に予定されている新たな排ガス規制対応を背景に、利用者の利便性やコスト面、環境面の配慮から実現されました。

企業の配送業務などにおいて選択肢が広がることになり、燃費や保守費用の最適化にもつながる可能性があります。

参考:100~125cc以下の「新基準原付」が原付免許で運転可能に。法改正に伴うパブリックコメントを募集中|自動車交通トピックス|JAF Mate Online

<マイナンバーカードと運転免許証の一体化>

2025年3月24日から、マイナンバーカードに運転免許証の情報を統合する取り組みが始まりました。

今後は、マイナンバーカード1枚で本人確認や免許証提示が可能です。

企業側では、従業員の免許管理がデジタル化され、業務効率の向上やコンプライアンス強化などが期待されます。

参考:デジタル庁 運転免許証の一体化

企業、特に物流や運送業界における影響の重要性

2025年の免許制度改正により、新入社員への教習や採用基準、運転研修制度の見直しが求められる企業も少なくありません。

特に物流・運送業界では大型免許の限定制度によって人員確保に有利な側面がある一方で、社用車がマニュアル車である場合には、ポジティブな影響はほとんどないでしょう。

また、バイク配達などをおこなう事業者にとっては、新しい免許区分に対応した車両の選定や、それに応じた安全講習の実施が不可欠です。

制度への理解が不足していると事故リスクにつながるため、社内教育と運用体制のスピーディな整備が求められます。

免許制度改正の主なポイントと企業への影響

免許制度改正で企業にとって影響が大きいのは『大型免許AT限定教習の導入』『原付免許で運転可能な二輪車の拡大』『マイナンバーカードとの一体化(通称「マイナ免許証」)』『安全運転管理者に関する義務の強化』です。

具体的にどのような対応が必要なのか、それぞれを詳しく紹介します。

普通免許のAT限定解除教習の導入

現在、日本国内で新車として販売される乗用車の約98%以上がオートマチック(AT)車であり、マニュアル(MT)車を運転する機会は著しく減少しています。

MT車の操作に不慣れなドライバーが事故を引き起こすリスクが懸念されるようになり、AT車による教習が基本とされ、MT車の運転には『AT限定解除教習』を別途受講する方式が採用されました。

教習所としても、MT教習にかかる設備や指導コストが削減でき、教習の効率化が期待されています。

トラックやバンもAT車が主流となっている中、現在もマニュアル車を主に使用している企業では、AT限定免許のドライバーを受け入れる方針の見直しが欠かせません。

社用車のAT化を進める、もしくはマニュアル車の運転に対応できるよう社内で解除研修を行うなど、体制の整備が求められます。

特に配送業や建設業などでは、MT車両の保有比率が高い傾向にあるため、AT車への代替計画や予算立案が急務です。

参考:JAF MATE

原付免許で運転可能な車両の範囲拡大

2025年4月の制度改正により、原付免許で運転可能な車両の範囲が広がりました。

50cc以下に限定されていた運転対象が、排気量50cc超125cc以下かつ最高出力4.0kW以下の車両まで含まれます。

従来の原付1種と同じで最高速度は時速30キロに制限されますが、車両の選択肢が増えた一方で、速度制限など基本ルールの誤認による違反や事故を防ぐために正しい制度理解が重要です。

出典:国土交通省

マイナンバーカードとの一体化(通称「マイナ免許証」)

2025年3月24日から導入されたマイナンバーカードと運転免許証の一体化により、免許証を携帯していなくても、マイナンバーカード1枚で本人確認や免許資格の証明ができるようになりました。

今後は、交通違反履歴や講習受講状況などの情報もマイナンバーに紐づけられることで、安全運転に対する管理の『見える化』が期待されています。

従業員の運転資格がオンラインで確認できるようになると、車両を扱う企業にとっては日常業務の効率化に大きく貢献します。

これまでは免許証の有効期限や区分を個別に確認し、管理台帳などで記録する必要がありましたが、デジタル化によって一括管理が可能です。

物流業や訪問営業などで複数の従業員が社用車を使用する場合でも、免許の有効期限切れや区分の誤認を未然に防ぐことができるため、安全管理の質も向上します。

一方で、個人情報保護の観点から、マイナンバーを含む個人データの取り扱いに対するセキュリティ対策や社内教育強化なども求められます。

参考:デジタル庁 運転免許証の一体化

安全運転管理者に関する義務の強化

2025年の制度見直しにより、安全運転管理者に求められる業務内容がより厳格に整理されました。

企業が一定台数以上の車両を保有している場合、安全運転管理者の選任が義務付けられていますが、その役割には法令順守を確実に実行させるための具体的な取り組みが含まれます。

主な業務としては、安全運転指導や出発前の健康状態の把握、アルコールチェックの実施と結果の記録管理などです。

特に、アルコール検知の記録は1年間の保存が義務づけられており、手書きや口頭での対応では不十分とされています。

正確な管理体制の構築が求められる中で、検知器と連動する運行管理システムやクラウド型の記録保存、アプリを活用した健康報告の仕組みが注目されています。

安全運転指導者としての自覚と、日常的な運転状況の確認、定期的な研修の実施も欠かせません。

これらの対応を怠ると企業責任が問われる可能性があるため、組織としての安全意識の向上が重要です。

企業が取るべき対応策

2025年の運転免許制度改正は、企業の業務運用や人材管理にも直接的な影響を及ぼすため、社用車を運転する社員が多い企業では制度改正に即した対応が急務です。

まず、社用車の運転に必要な免許区分が変わるため、車両の使用条件や運転業務の割り当て基準を見直す必要があります。

AT限定免許のみを保有する社員が増加することを想定し、MT免許を必須とする職務要件の見直しや、社用車をAT車へ切り替える対応が求められます。

また、今回の改正により原付免許で運転可能となる125cc以下かつ最高出力4.0kW以下の小型二輪車を業務に導入する場合は、社内での安全管理体制や利用ルールの整備が欠かせません。

社内規定の見直しと社員への周知

免許制度改正に伴い、社内の運転関連規定についても現行制度に即したアップデートが求められます。

  1. 免許区分の再整理:普通・中型・大型の各免許にAT限定が導入されるため、業務内容に応じた必要免許の明確化が求められる。排気量125cc以下の小型二輪車の導入に際しては、対象者と利用条件の明文化が必要。
  2. 採用基準の柔軟化:これまでMT免許保持者のみを対象にしていた職種でも、今後はAT限定免許保有者も対象に含めることが現実的。人材確保の視点で採用条件の見直しや緩和が必要。
  3. 安全運転教育の強化:MT車未経験の社員や小型バイクの運転に不慣れな社員に対し、実践的な運転指導や定期的な研修をおこなう体制の整備が必要。

社内規定の改定後は、全社員への丁寧な情報共有も欠かせません。

社内説明会の開催、イントラネットや社内報での告知など、複数手段を組み合わせた周知徹底が重要です。

外部研修やeラーニングの導入による教育強化

改正後も運転免許制度に対応するには、社員一人ひとりへの教育が欠かせません。

特にAT限定免許保持者や、排気量125cc以下の小型二輪車を使用する社員への運転知識・技能の習得支援が重要です。

効果的な教育手法には、次のようなものがあります。

教育手法メリットデメリット
外部研修実践的な運転技能を習得できる
専門講師の指導を受けられる
コストがかかる
受講時間の確保が必要
eラーニングいつでもどこでも学べる
全社で一律に教育を実施しやすい
実技指導ができない
学習効果にばらつきがある

新入社員や運転経験が浅い社員には、実技の習得を目的とした外部研修が効果的です。

一方、法改正に限らず交通法規の概要や基本的な安全知識の共有には、eラーニングが手軽かつ効率的な手段となります。

JAFトレは、社員の交通安全教育をサポートするeラーニングシステムです。

学習の進捗や受講状況を一括で管理できるため、全員が確実に学べる体制が整えられます。

毎月配信される教材にはスライド講座やドライブレコーダー映像などが含まれており、安全運転の意識向上にもつながるため、社内の教育に効果的です。

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まとめ|免許制度改正をチャンスに変えるために

免許制度改正では普通免許AT限定教習の標準化や大型・中型免許AT限定導入、そして特定小型原付免許の新設など、多岐にわたります。

企業は変更点を正確に理解し、社内規定見直しや社員への周知・教育といった対策を講じなければならず、物流や運送業界においては採用基準や研修内容見直し、安全教育の再構築が急務です。

しかし、AT限定免許の導入はこれまでMT免許取得をためらっていた若年層や女性など、より多様な人材の採用機会を増やします。

今回の制度改正を単なる負担と捉えるのではなく、積極的に対応策を講じることで、企業成長戦略につなげられます。

変化をチャンスと捉え、未来を見据えた取り組みを進めていきましょう。

もし、社用車で事故を起こしたら?

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