モペットに運転免許は必要?最新ルールや注意点を徹底解説! 

近年、若年層を中心に人気を博す乗り物「モペット」ですが、街中やメディアでも見かける機会が増えました。 

一見自転車のようにも見えますが、どのような乗り物なのかはっきりと分かっていない方も多いのではないでしょうか。 

移動手段として便利な乗り物である一方で、モペットに関するルールを誤解、軽視したばかりに起きた交通事故や違反がここ数年多発しています。 

この記事では、モペットの免許制度やルールなどの解説と、実際に起きた交通事故や取り締まりの事例を紹介します。 

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モペットとは?電動アシスト自転車との違いを解説 

モペットは、「Motor」と「Pedal」を組み合わせた造語で、エンジンまたは電動モーターなどの原動機を搭載しつつ、ペダルを使って人力で漕ぐこともできる乗り物を指します。 

この項ではモペットと電動アシスト自転車の違いについて解説します。  

モペットの特徴とは

モペットはペダルを漕がずに原動機の力のみで走行できるのが特徴です。 

近年ではモーターを搭載した電動タイプが主流となっており、「フル電動自転車」と 

呼称されることもあります。 

アクセル操作のみで走行できるモードや、ペダルとモーターを併用するモード、さらにペダルのみで走行するモードへの切り替えを手元のスイッチを操作することで簡単におこなうことが可能な機種が流通しています。 

その外観や名称などから、電動アシスト自転車の仲間として認識されることも少なくありませんが、実際には似て非なるもので、道路交通法上ではいわゆる「原付」もしくは「自動車」の仲間となります。 

参考:自転車の安全利用の促進|警察庁 

電動アシスト自転車の定義を再確認

一方で、モペットと混同されがちな電動アシスト自転車とは、ペダルをこぐ力を電動モーターが補助する仕組みを持った自転車のことです。 

ペダルを漕がないとモーターが作動しない構造となっており、モーターによるアシスト比率も、道路交通法によって以下のように定められています。 

  • 時速10キロ未満では最大で1:2(人力の2倍まで) 
  • 時速10キロ以上24キロ未満の速度では、走行速度が上がるほどアシスト比率が徐々に減少 
  • 時速24キロ以上の速度でアシストを停止 

モペットと違い、道路交通法上で電動アシスト自転車は「自転車」の仲間となります。 

参考:道路交通法施行規則第1条の3|e-GOV 

モペットに免許は必要?条件や法律をチェック 

モペットは原付もしくは自動車の仲間であることから、公道での運転には免許の取得・携帯が必要です。 

また、モーターの定格出力などによって必要な免許が異なるため、ドライバーは自身の免許で運転できる車両なのかを事前に確認しておかなければなりません。 

モペットの違反類型別検挙件数は無免許が最も多い 

警察庁の資料によると、モペットに関連する交通違反の検挙件数は平成15年が2件だったものの、令和4年が96件、令和5年には345件と増加の一途を辿っています。 

令和5年の検挙件数の内訳を見ると、無免許が111件で最も多く、次いで整備不良が102件という結果になっています。 

このことから、モペットに免許が必要ないと認識している人が多いことが分かります。 

参考:改正道路交通法の概要等(ペダル付き原動機付自転車に関する規定の整備)について|警察庁

モペットの定格出力ごとに必要な免許区分

モーターの定格出力による必要な免許の区分は以下の通りです。 

定格出力と特記事項 免許(車種)
0.60kW以下かつ最高速度20km/h以下 不要(特定小型原付) 
0.60kW以下 原動機付自転車免許(原付一種) 
0.60kW超~1.0kW以下 小型限定普通自動二輪免許もしくは 
AT小型限定普通自動二輪免許(原付二種) 
1.0kW超~20kW以下 普通自動二輪車免許(軽二輪) 

電動アシスト自転車と違って、運転免許を取得していない人がモペットを運転すると「無免許運転」となってしまいます。 

また、運転免許を取得していても、免許で指定された乗り物以外を運転すると「免許条件違反」となります。 

例えば、原付免許や普通自動車免許しか取得していないにも関わらず、原付二種以上の二輪免許が必要な定格出力0.60kW超えのモペットを運転した場合などがこれに当てはまります。 

なお、免許条件違反はモペットに限らず乗用車やトラックの運転でもなり得ることです。 

JAF交通安全トレーニングでは、免許制度について詳しく解説した教材を用意しています。 

知らずのうちに従業員が違反状態となってしまわぬよう、日ごろからの交通安全教育をおすすめします。 

参考:道路交通法第91条|e-GOV 

特定小型原動機付自転車であれば免許不要だが注意が必要

2023年7月1日から電動モビリティのうち、時速20キロを超える速度を出すことができないなど、一定の基準を満たすものについては「特定小型原動機付自転車」と位置付けられることになりました。 

保安基準に適合している車両の場合は、16歳以上であれば免許不要で運転が可能です。 

基準を満たした電動キックボードが主にその対象となりますが、最近ではモペットとよく似た特徴を持つ「電動サイクル」がこの区分で販売されていることもあります。 

電動サイクルはモペットと外見はほぼ一緒ですが、スロットル操作のみで走行し、ペダルが車輪と連動していないなどの特徴があります。 

過去には、原付登録が必要なモペットを、特定小型原動機付自転車と偽って販売していた例もあるため、注意が必要です。 

参考:特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について|警視庁 

モペットに関するルール|走り出す前に必要なこととは? 

モペットの運転には、運転免許の取得・携帯以外にも様々なルールが存在します。 

基本的には原付一種もしくは原付二種のバイクを運転するときのルールと同様です。 

まずは、公道で走行する前の準備段階でのルールを確認しましょう。 

ナンバープレートの交付・表示 

原付一種、二種に該当する車両の場合は、市区町村の役所で登録をおこない、ナンバープレートの交付を受けなければなりません。 

軽二輪以上に該当する場合は、陸運支局での手続きが必要となります。 

また、走行時はナンバープレートを車両の後面に見やすいように表示しなくてはなりません。 

自賠責保険または共済の契約 

自動車損害賠償保障法に基づき、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)または自動車損害賠償責任共済の契約がされていなければなりません。 

自賠責保険・共済に未加入・未更新で運転した場合には、懲役または罰金の対象となります。 

軽自動車税の納付 

モペットはバイクと同様に軽自動車税の課税対象となっています。 

登録先住所へ送られてくる納付書で各自治体へ支払いをおこないましょう。 

なお金額は排気量及び定格出力によって異なります。 

保安基準を満たした部品の装着 

道路運送車両法に定められた保安基準を満たした部品の装着が必要です。 

制動装置(前後輪)、前照灯、制動灯、尾灯、番号灯、後写鏡、方向指示器、警音器等がこれに当てはまります。 

必要な部品が装着されていないまま公道を走行した場合「整備不良」となり罰則が科されます。 

モペットに関するルール 公道を走行するときの注意点 

モペットには公道を走行する際のルールも複数あります。 

自転車と同じ感覚で走行してしまえば、道路交通法の取り締まり対象となり、罰則や行政処分が科される他、重大な交通事故を引き起こす原因にもなりかねません。 

ドライバーはルールを事前に確認し、安全な運転を心がけましょう。 

また、事業所の安全運転推進を担う安全運転管理者は、通勤で使用する従業員がいることを想定し、あらかじめ利用に関するルールの作成や、適切な利用に関する啓発をおこなっておくことをおすすめします。 

ヘルメットの着用 

モペットを公道で運転する際には、ヘルメットの着用が義務付けられています。 

ヘルメットを着用せずに運転した場合は、「乗車用ヘルメット着用義務違反」となります。 

特定小型原動機付自転車の場合は、ヘルメットの着用が努力義務ですが、混同しないよう注意しましょう。 

歩道の走行禁止 

モペットは歩道の走行が禁止されています。 

モーターを使って走行しているときはもちろん、バッテリーが切れたなどの理由でモーターを使わずペダルを漕いで走行している場合でも歩道は走行できません。 

これは2024年11月1日の道路交通法の改正により明文化されています。 

歩道を走行してしまった場合「通行区分違反」となり、罰則や行政処分の対象となります。 

なお、警察庁の認定を受けた、モペットと自転車のモードを切り替えて使用できる車両も一部存在しており、この車両の場合、自転車モードに切り替えの上、普通自転車歩道通行可の標識がある歩道であれば走行は問題ありません。 

参考:道路交通法第2条第1項第17号|e-GOV 

最高速度 

モペットは登録されている区分によって最高速度が異なります。 

車種 最高速度 
原付一種 時速30キロ 
原付二種 時速60キロ 
軽二輪 時速60キロ 

タイヤの径が小さい車種も多く、たとえ最高速度内であっても、車体が不安定になるなどの危険性もあるため、速度の出しすぎには注意しましょう。 

その他の交通ルール 

上記以外にも、飲酒運転や一方通行、二段階右折(原付一種のみ)など、車やバイクを運転するときと同様のルールを守って運転することが求められます。 

自転車ではなくバイクを運転していると認識しなくてはなりません。 

自動車のドライバーがモペットに対して注意すべき点とは? 

現在、公道上では、モペットや電動キックボードをはじめとした新しいモビリティと、従来からの自動車やバイクが混在している状況です。 

自動車を運転するドライバーは、これら新しいモビリティーの特性を知っておかないと、思わぬ事故を引き起こしてしまう可能性があります。 

この項ではモペットに対して、自動車のドライバーとして注意したいポイントをいくつか確認しましょう。 

運転者が交通ルールを理解していない場合がある 

新モビリティが急速に普及したこと、さらに手軽に乗れてしまうことなどを要因として、交通ルールの習熟に乏しい運転者が一定数存在します。 

そもそも運転免許を取得していない運転者もおり、自動車のドライバーの予測から大きく外れた動きをすることがあります。 

歩道と車道を行き来していたり、無謀なすり抜けを繰り返しているような車両を見つけた場合には、距離を取って安易に近づかないようにしましょう。

速度感が自転車とは異なる 

モペットは、最高速度は時速30~60キロとバイクに近い速度を出すことが可能です。

追い越し時や交差点での右左折時など、相手の速度感を見誤ると事故の原因となります。

自動車のドライバーはモペットを、自転車とは特性のまったく異なる、バイクに似た乗り物だという認識を持っておくことが大切です。 

モペットを取り巻く状況|実際にあった事故事例 

モペットはファッション性の高さや、インターネットで気軽に購入できる点などから、若年層を中心に近年人気を博しています。 

一方で、交通ルールやマナーを軽視した危険な運転をおこなうドライバーも数多く見られ、モペットに関する交通事故は平成15年の時点では4件だったものが、令和4年には27件、令和5年には57件と大幅に増加しています。 

警察や関連団体を中心に、取り締まりや啓発活動がおこなわれているものの、未だに自転車と混同して運転しているドライバーが多く、現時点では課題が多く残る乗り物だと言えるでしょう。 

ここからは、実際に起きたモペットによる交通事故や取り締まり事例を紹介します。 

参考:改正道路交通法の施行後における特定小型原動機付自転車等の状況等について|警察庁

無免許でモペットを運転して事故 

2024年10月4日夜、20代の大学生が一方通行の道路を電動モードのモペットで逆走。 

男性(57)の運転する自転車に衝突して重傷を負わせた上、友人に出頭の身代わりを依頼した。 

運転していた男性は当時無免許で、飲酒をおこなった上、2人乗りだった。 

自賠責保険にも加入しておらず、ヘルメットも未着用であったことが確認されている。 

参考:無免許でモペット運転中に事故、友人に身代わりさせる 大学生2人を逮捕|産経新聞 

モペットの飲酒運転で検挙 

2024年11月1日午前5時ごろ、34歳の男性が、酒を飲んでモペットを運転したなどとして、道路交通法違反の疑いで検挙。 

無免許の状態で、ヘルメットも未着用だった。 

調べに対し、「モペットは自転車だと思っていた」と話している。 

1時間半の取り締まりで5人が違反 

2024年4月10日午後3時~4時半ごろ、東京都渋谷区で警視庁によるモペットを重点対象とした交通違反取り締まりを実施。 

5人に対し、無免許運転やナンバープレートを付けていないなど6件の道路交通法違反で取り締まりをおこなった。 

参考:渋谷で「モペット」取り締まり 無免許運転など5人が違反|共同通信 

まとめモペットはバイクであるという認識を持っておく 

モペットは便利でファッショナブルな乗り物である一方、運転免許をはじめとした各種交通法規をしっかりと守って運転しなければいけない乗り物です。 

自転車と同じ感覚で運転をしていると、交通違反の取り締まり対象になったり、交通事故の原因となったりする可能性があります。 

重大な交通事故も多発している今、モペットはバイクや自動車の仲間であることを改めて認識し、正しい利用を心がけることが大切です。

安全運転管理者は、通勤で使用する従業員がいることも想定して、利用に関するルールの策定や、正しい利用の啓発をおこなっておくことをおすすめします。 

社内で交通安全の意識を醸成していくためには、一回きりの教育ではなく、継続した教育が効果的です。  

JAF交通安全トレーニングでは、交通ルールや運転に関する知識などを、eラーニング形式で毎月学習することができます。   

従業員の運転行動や安全に対する意識を向上させたいとお考えの方は、JAF交通安全トレーニングの利用を検討してみてください。 

社用車で事故を起こしたら? もしもの時に備えましょう!

JAF交通安全トレーニング

毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。

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園部拓海
1994年生まれの生粋のハマッコ。日本自動車連盟(JAF)に入社後、交通安全インストラクターとして企業や学校、一般ドライバー向けの講習会などを担当。インストラクターの育成や、新たなカリキュラムの考案などにも携わる。独立後はその時の経験を活かし、交通安全 の啓蒙教材や映像制作を手掛け、交通事故をひとつでも減らすために日夜奔走している。