台数が5台未満なら安全運転管理者は必要ない?台数別の対応を解説

企業の交通安全意識を醸成する上で、安全運転管理者は重要な役割です。

道路交通法第七十四条の三では、企業は使用している自動車の台数に応じて安全運転管理者を選任するように定められています。

しかし、安全運転管理者の選任基準となる自動車の台数の数え方はやや特殊です。

そのため、「5台未満の場合は安全運転管理者は設置するのか」「本社には10台あるけど支店に5台未満しかないならどうすれば良いか」と悩む方もいるのではないでしょうか。

本記事では、安全運転管理者の設置基準や注意点などについて解説します。

台数が5台未満の場合も含めた、台数別の対応方法についてもお伝えするので、ぜひ参考にしてください。

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【基礎知識】安全運転管理者とは

最初に安全運転管理者に関する基礎知識を確認しましょう。

安全運転管理者は、一定数以上の自動車を使用する企業で選任が義務化されています。

もし義務を怠った際は罰則が発生するため、注意しなければなりません。

あらためて、安全運転管理者の選任基準や、違反した際の罰則に加え、自動車の台数の数え方を解説します。

安全運転管理者の役割

安全運転管理者とは、危険運転の防止や交通安全意識の醸成のために、さまざまな業務をおこなう役割を担います。

安全運転管理者の主な業務は、以下のとおりです。

業務業務内容
運転者の状況把握運転者の適性・技能・知識などを把握する
安全運転確保のための運行計画の作成安全運転の確保に留意して運行計画を作成する
長距離、夜間運転時の交代要員の配置長距離運転・夜間運転などに備え、必要な交代要員を配置する
異常気象時等の安全確保の措置異常気象や天災などが発生した際、運転者に必要な指示を出し、安全運転を確保するための措置を実施する
点呼等による過労、病気その他正常な運転をすることができないおそれの有無の確認と必要な指示点呼や日常点検を通じ、安全運転に必要な指示出しや、正常な運転を阻害する要素の有無を確認する
アルコール検知器を使った酒気帯び確認運転前後の運転者に、目視等で確認するほか、アルコール検知器を使って酒気帯びを確認する
酒気帯び確認後の記録と保存、アルコール検知器の常時有効保持アルコール検知器の常時有効状態を保持し、酒気帯びの有無を確認した際の記録を1年間保存する
運転日誌の備え付けと記録運転者名や運転開始・終了日時などを記録した運転日誌を導入し、運転者に記録させる
運転者に対する安全運転指導安全運転に必要な知識や技術の指導をおこなう
参照元:道路交通法施行規則第九条の十安全運転管理者の業務の拡充等 警察庁

安全運転管理者の選任基準

安全運転管理者はすべての企業に選任義務が課せられているわけではありません。

道路交通法において、安全運転管理者の選任基準は以下のように定められています。

・乗車定員数が11人以上の自動車を1台以上使用している場合

・その他の自動車を5台以上使用している場合

参照元:道路交通法施行規則第九条の八

なお、台数によっては安全運転管理者だけでなく、副安全運転管理者の選任も必要です。

副安全運転管理者の選任基準は以下のとおりです。

・自動車の使用数が20台以上40台未満…副安全運転管理者を1人選任

・自動車の使用数が40台以上…20台ごとに1人の副安全運転管理者を1人選任

参照元:道路交通法施行規則第九条の十一

安全運転管理者・副安全運転管理者の選任は、企業が使用する台数によって決定されます。

業務で自動車を使用する際は、必ず確認しましょう。

選任義務に違反した際の罰則

もし安全運転管理者の選任義務に違反した場合、罰則が科せられます。

選任義務違反の罰則は、道路交通法において以下のように定められています。

・安全運転管理者および副安全運転管理者の選任義務違反…50万円以下の罰金

・安全運転管理者の解任命令・是正措置命令違反…50万円以下の罰金

・選任や解任の届出を15日以内に実施していなかった選任解任届出義務違反…5万円以下の罰金

参照元:道路交通法第百十九条の二

企業が交通事故や交通違反を防ぎ、社会的信頼を維持する上でも、選任義務は遵守しなければなりません。

2022年以降は法改正によって違反時の罰則が強化されるなど、選任義務の遵守はますます重要になっています。

義務を怠ることがないよう、安全運転管理者の選任は必ずおこないましょう。

台数の数え方

安全運転管理者の選任基準には、企業が使用する自動車の台数が関係していますが、選任基準における台数の数え方は通常と異なります。

車種に関わらず、自動車は1台ずつ数えますが、大型二輪車・普通二輪車は1台につき0.5台で数えます。

リース・レンタル・カーシェアも企業が使用する自動車としてカウントされるため、注意しましょう。

ただし、通勤等で使用するマイカーはカウントされません。

台数別の安全運転管理者の考え方

安全運転管理者の選任基準には自動車の台数が関係していますが、複数の事業所がある企業の場合、各事業所の台数によって対応が変わります。

そのため、自社の台数を確認し、適切な対応を取らなければなりません。

なお、乗車定員数が11人以上の自動車の場合、1台以上使用している時点で、安全運転管理者を選任する必要があります。

ここでは、その他の自動車の台数ごとに対応方法を解説します。

本社が5台以上・支店が5台未満の場合

まずは、本社が使用する自動車が5台以上・支店が5台未満だった場合です。

この場合、本社のみが選任基準に達しているため、安全運転管理者を選任しなければなりません。

一方の支店は5台未満であるため、安全運転管理者の選任は不要です。

安全運転管理者は選任基準に達した各事業所で選任するものであるため、台数が5台未満の支店では選任する必要はありません。

本社が20台以上・支店が5台以上の場合

本社が自動車を20台以上・支店が5台以上だった場合、企業の対応はやや複雑になります。

まず、支店は選任基準に達しているため、安全運転管理者を1名選任しなければなりません。

対して、本社は台数が20台以上あるため、安全運転管理者1名に加え、副安全運転管理者を1名選任しましょう。

本社が40台以上・支店が20台以上の場合

本社が40台以上・支店が20台以上の自動車を使用している場合、本社・支店でそれぞれ安全運転管理者・副安全運転管理者を選任しなければなりません。

このケースなら、本社は、安全運転管理者を1名、副安全運転管理者を2名選任します。

自動車の台数が40台以上になる場合、20台ごとに副安全運転管理者を追加で1名選任しなければなりません。

一方の支店では、安全運転管理者、副安全運転管理者それぞれ1名を選任します。

副安全運転管理者の人数は支店も同様であり、台数が40台以上になると、追加で1名選任する必要があります。

本社と支店の台数がそれぞれ5台未満だった場合

本社と支店が使用する自動車の台数が、本店4台、支店3台のように合計が5台以上であっても、本店・支店それぞれで5台未満だった場合、安全運転管理者の選任義務は発生しません。

安全運転管理者を選任する際は、企業が使用する自動車の総台数ではなく、各事業所の台数を基準に考えます。

つまり、本社と支店が使用する台数がそれぞれ5台未満だった場合は、安全運転管理者の選任は不要です。

使用する台数が5台未満になった場合

もし、使用する自動車の台数が減り、5台未満になった場合は安全運転管理者を解任する必要があります。

安全運転管理者を解任する際は、指定の届出用紙に必要事項を記入した上で、所管の警察署の窓口に提出しましょう。

なお、使用する自動車の台数が20台未満になった場合は、副安全運転管理者の解任手続きを実施しましょう。

ただし、乗員定員数が11人以上の自動車を使用している場合は、台数が5台未満になっても安全運転管理者を選任しなければなりません。

台数が5台未満だった場合の注意点

自動車の台数が5台未満であり、なおかつ乗員定員数が11人以上の自動車を使用していない場合、安全運転管理者の選任義務は発生しません。

しかし、5台未満だった場合でも、企業には対応すべき取り組みがある点には注意しましょう。

ここでは、台数が5台未満だった場合の注意点について解説します。

安全運転への取り組みは必要

たとえ安全運転管理者の選任が不要でも、安全運転への取り組みは欠かせません。

業務で自動車を使う以上、ドライバーと歩行者の安全を守るためにも、危険運転の防止や交通ルールの遵守は不可欠です。

そのため、安全運転管理者の有無に関わらず、企業は交通安全意識の醸成に努める必要があります。

安全運転への取り組みを実施するなら、「JAF交通安全トレーニング」を活用しましょう。

JAF交通安全トレーニングには、交通安全に必要な知識やノウハウを学べる教材が揃っています。

教材はeラーニング形式で配信されるため、場所を問わずに知識やノウハウを学習できる点も魅力です。

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アルコールチェックは積極的に実施

アルコールチェックは安全運転管理者が実施する業務ですが、たとえ安全運転管理者を選任していない場合でも積極的に実施しましょう。

酒気帯び運転・飲酒運転は甚大な被害を招きかねない危険運転です。

人命を守るためにも、業務で自動車を利用する企業は、必ず対策を講じておきましょう。

運転前後に目視に加え、アルコール検知器を用いたアルコールチェックを実施し、酒気帯び運転・飲酒運転を未然に防ぎましょう。

まとめ:台数が5台未満なら安全運転管理者は必要ないが安全運転への取り組みは重要

安全運転管理者は、危険運転の防止や交通安全意識の醸成を実現する上で、欠かせない役割です。

安全運転管理者の選任基準は道路交通法で定められており、選任は義務化されています。

選任基準を満たした企業は必ず安全運転管理者を選任しなければなりません。

もし違反した際は罰則が発生します。

安全運転管理者の選任基準には、企業が使用する台数が関係しており、台数が5台未満だった場合、安全運転管理者の選任義務は発生しません。

しかし、乗車定員数が11人以上の自動車を使用している際は、5台未満でも安全運転管理者を選任しなければなりません。

また、安全運転管理者の選任義務の有無に関わらず、交通安全に係る取り組みは不可欠です。

自動車を業務に使用する以上、交通安全に係る取り組みは必ず実践しましょう。

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