駐車場内の接触事故を防ぐ!駐車場タイプ別の事故防止術と有効な自動車技術を一挙紹介!

車を運転している限り、避けて通れないのは「駐車」です。

仕事で車を利用している場合には、自社の駐車場はもちろんのこと、取引先を訪問するたびに車を停める必要があり、その機会がもっと増えるのではないでしょうか。

ときには、コインパーキングを利用したり、休憩でコンビニや飲食店の駐車場に入ることもあるでしょう。

車を利用する上で無いと困る「駐車場」ですが、駐車場の形状にも様々あり、混雑状況によって危険なポイントが変化します。

この記事では、駐車場内の接触事故を防ぐため、駐車場タイプ別の事故防止術と有効な自動車技術を紹介していきます。

駐車に自信がある方もない方も、ぜひ参考にしてみてください。

駐車場での接触事故の特徴と発生状況を知る

駐車場内での接触事故は、道路とは異なる特有の環境や状況によって、多様な形態で発生しています。

駐車場ではどのような事故が発生しているのか?

警察庁の統計によると、2023年度中に駐車場等で発生した事故は、合計14,865件もありました。

内訳は、車両相互事故が9,081件、人対車両事故が4,685件、車両単独事故が1,099件となっています。

出典:道路の交通に関する統計 交通事故の発生状況 年次 2023年  | 政府統計の総合窓口

駐車場でよくある事故事例と原因

2023年、駐車場等で発生した事故の6割以上を占める「車両相互事故」の事故類型を見ると、「出会い頭」と「追突」が多い傾向にありました。

駐車場内では、普段、道路を走っているときと比べて緊張感が薄れやすく、駐車スペースを探すなど、周囲の安全確認から注意が逸れた結果、このような事故が起こりやすくなっていると推測されます。

人対車両の事故は、人が「背面通行中」の接触、すなわち車両側が「後退(バック)中」の事故が一番多く発生しています。

後退中は、前進中と比べて死角も多く、安全確認が不十分である可能性が高いです。

また、車両単独事故では、「駐車車両」や、ポールや縁石といった「工作物」への衝突が多く、単純な操作ミスや、車両周辺の安全確認が不足していることが理由として考えられます。

出典:道路の交通に関する統計 交通事故の発生状況 年次 2023年  | 政府統計の総合窓口

駐車場の構造による違い|それぞれの注意点

「駐車場」と一言で言っても、様々な構造があります。

駐車場の構造別に注意点を確認していきましょう。

平面駐車場での注意点

取引先に訪問したときなどに利用するコインパーキングは、この平面構造の駐車場が一番多いのではないでしょうか?

敷地が広い会社や、コンビニの駐車場、高速のSA/PAの駐車場も平面駐車場が一般的です。

「平面駐車場で注意することはないのでは?」と思うかもしれませんが、落とし穴はそこにあります。

平面駐車場では、出入口付近に駐車車両が集中する傾向にあります。

他の駐車枠が空いているのにもかかわらず、あえて混んでいる出入口付近に停めようとすることで、切り返しや後退の操作が多くなり、駐車車両などに接触するリスクが高くなるのです。

また土地のデッドスペースを活用して作られることも多い平面駐車場では、駐車難易度の高いコインパーキングも存在します。

たとえば「間口が狭い」「傾斜がある」「前から入ったら袋小路」「一部が軽自動車専用」など、立地によってパターンが無数にあるので、安全に駐車する自信が持てなければ別の駐車場を探すのも選択のひとつです。

どうしても利用せざるを得ないときは、降車したりしながら確認したり、同乗者がいれば誘導をしてもらいましょう。

立体駐車場での注意点

立体駐車場は、「自走式」と「機械式」に分かれます。

「自走式」は自走ができる階層によって構成されており、駐車スペースまで自ら運転して昇り降りする駐車場で、大型商業施設や駅前にある公営駐車場などにも多いタイプです。

自走式の注意点としては、通路の左右に駐車スペースがあることで、左右のスペースに停められた駐車車両の死角から歩行者が飛び出してくる危険性があります。

混雑していると発見が遅れることもあり、注意が必要です。

駐車場が地下にある場合には、場内が薄暗いこともあるため、必ずライトを点灯して周囲へ自身の存在を知らせながら、スピードを控えて走行しましょう。

対して、「機械式」は、入庫スペース前で車から降りたドライバー自身が機械を操作し、所定の駐車枠に停める仕組みですが、駐車場係員が機械操作をしてくれる場合もあります。

繁華街など、スペースが限られている場所に建設され、マンションやビルの駐車場に多いタイプです。

駐車するための運転技術を求められることは少ないですが、自走式と比べ高さ制限や車幅制限を設けていることが多いため、自車の大きさを把握しておく必要があります。

取引先の駐車場を借りることが事前に決まっている場合には、駐車場がどのようなタイプか聞いておくと良いでしょう。

実際にあった駐車場内事故事例と考察

ここでは、実際にあった駐車場内での接触事故の事例をもとに、原因と対策を考えていきましょう。

ケース①|バック中に柱に接触

場所:自社駐車場(2階層自走式立体)

状況:業務が終わり帰社し、いつものようにバックで駐車したところ、駐車場の柱に接触した

原因:1階のため薄暗かった
   柱がバックモニターに映らない死角にあった
   自社での駐車だったため、慣れからくる油断があった

対策:バックモニターに映らない範囲があることを理解し、必ず目視確認をする
   後退動作の前に「降車して安全確認をする」「ハザードランプを点灯させて停止し、一呼吸置く」などのルールを策定する

ケース②|出庫する際、隣の車に接触

場所:商業施設駐車場(平面)

状況:商談が終わり、自車に乗り込みハンドルを左に切って前進したところ、左隣に停まっていた駐車車両に接触した

原因:左側の駐車車両を意識していなかった
   内輪差を考えていなかった
   商談が終わったことによる気の緩み

対策:出発前に助手席側の状況確認をする
   できるだけ左右に駐車車両がない場所を選んで駐車する
   指差呼称で安全確認をする

ケース③|機械式の入庫口が低くルーフが接触

場所:マンション駐車場(立体機械式)

状況:顧客の自宅に訪問するため、マンション駐車場に入ろうとしたところ、入口天井の高さが低く、自車のルーフが引っ掛かった

原因:自車の全高値を知らなかった
   入口が低かったが気にしなかった
   顧客を待たせてはいけないという焦り

対策:運転席から見える位置に「高さ○○mまで」などの注意喚起を標示しておく
   車高より建物の入り口が低いと思ったら降車確認する

後退時車両直後確認装置の義務化

2022年5月以降の新型車には「後退時車両直後確認装置」の搭載が義務化となりました。

いわゆる「バックカメラ」や「バックセンサー」のことです。

新型車ではない継続生産車についても、2024年11月から義務化が始まっています(一部車両は除く)。

義務化の背景としては、国際的に後退時車両直後確認装置の取り付けが進められていることと、後退時の事故が後を絶たないことがあります。

人対車両の事故が「後退時」に一番多く発生しているデータがありますが、これらの機能を活用することで、駐車場内での事故を減らすことができるはずです。

出典:2024年バックカメラ義務化で知るべきポイント徹底解説|既存社用車への対応は?

バックカメラ(バックモニター)

バックカメラは、シフトレバーをバックギアに入れた際、後方に取り付けたカメラの映像が車内のモニターに映し出されるシステムを指します。

近年、カーナビゲーションの機能の1つとして、装着が当たり前になってきました。

後退時は前進時と比べ、どうしても死角が多くなり接触事故のリスクが高くなります。

その死角を補う意味でも、バックカメラでの安全確認は有効です。

ただし、バックカメラの映像を注視しすぎたり、信頼しすぎると、周囲の安全確認が不十分になる危険性があります。あくまでも、安全確認の主体は目視でおこない、バックカメラは補助的に使う意識が大切です。

バックセンサー(クリアランスソナー)

バックセンサーは、リヤバンパーに取り付けられた超音波センサーにより、車体と障害物との距離を検知し、接近すると警告音や表示等でドライバーに知らせてくれる装置のことです。

車両感覚に自信はないけど、狭い場所で駐車しなくてはいけないときなどには、この機能があると安心感が増します。

注意点としては、構造上センサーが露出しているので、水滴や泥などで汚れてしまうと正常にシステムが機能しない場合があります。

日常点検をおこなう際に、センサー部に汚れや傷がついていないか確認しておくとよいでしょう。

自動車の先進運転支援システムを活用する

最近では、「ADAS(エーダス)」と呼ばれるドライバーの運転操作を支援するシステムが搭載されてる車種があります。

運転行動は、「認知」「判断」「操作」の3要素で成り立っていますが、ADASはそのいずれかをサポートしてくれる機能です。

ここでは、駐車場での事故防止に有効なADASについて紹介します。

出典:ADAS(エーダス・先進運転支援システム)とは?自動運転との違いは?| NEC

AEBS|衝突被害軽減ブレーキ

AEBS(Advanced Emergency Braking System)とは、衝突の危険を感知したときに自動ブレーキが作動する機能のことです。

近年、高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いによる交通事故が増加し、自動ブレーキは社会的にも注目されています。

法律も改正され、2021年11月以降に国内で販売される新型車には衝突被害軽減ブレーキの搭載が義務付けられました。

この機能はあくまで運転の補助であり、完全な自動ブレーキではありません。

環境によっては作動しない場合があるので過信は禁物です。

機能を理解した上で有効活用しましょう。

参考:乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する国際基準を導入し、新車を対象とした義務付けを行います|国土交通省

APA|高度駐車アシスト

APA(Advanced Parking Assist)とは、駐車枠をカメラで認識し、駐車するために必要なハンドル操作等を支援する機能です。

車が自動で、ハンドル、アクセル、ブレーキ操作を支援し、駐車を完了させてくれるため、苦手な人も多い縦列駐車では特に効果を発揮できます。

JAFがおこなった実地テストでも、インストラクターと同程度の速さと正確性で駐車を完了できたという結果が出ており、非常に有用な機能であることがわかっています。

ただし、衝突被害軽減ブレーキ同様、条件によっては高度駐車アシストが機能しない場合があるので、機能を過信せず、ドライバーの管理下で使用する必要があります。

出典:駐車支援機能はどこまで使えるのか?| JAF

まとめ:自分自身で運転している責任を忘れずに

本記事では、駐車場内の接触事故を防ぐため、駐車場タイプ別の事故防止術と有効な自動車技術を紹介しました。

駐車場内での事故は、油断による安全確認不足や、運転技術不足など原因は様々です。

これらを補うために、バックカメラなどの自動車技術を活用することは間違いではありません。

ただし、運転する責任はドライバーにあることを忘れず、慎重な運転操作を心掛けてください。

JAF交通安全トレーニングでは、「駐車場の死角」「バック出庫の危険性」「駐車枠の見分け方」など、駐車場の事故防止に細かく特化した交通安全教材を多数用意しています。

毎月、e-ラーニング形式でコンテンツを配信しているので、JAFならではの実践的な教材を活用して、駐車場内の接触事故を防止してみてはいかがでしょうか。

スマホやタブレットでの受講も可能

JAF交通安全トレーニング

毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。
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イイダユウジ
高校在学時、アルバイトでこつこつ貯めた資金で「S13シルビア」を愛車に迎えたのを機に、車に目覚める。進学先で自動車整備を学び「国家1級整備士」資格を取得。卒業後はカーディーラーに就職し、車の基礎と社会の厳しさを叩き込まれる。現在は、個人で中古車販売・整備を主に手掛ける一方で、その経験・知識を最大限活かし、交通安全普及のための広報活動に勤しむ。整備士の目線で独自の切り口を模索するなど、幅広く活動している。