寒さの厳しい冬の季節がやってきました。地域によっては雪が降り始めているところもあるようです。
雪道の運転は、普段の運転に比べて神経を使うことも多く、ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤへの履き替えをはじめ、事前の準備は必要不可欠です。
天気予報が外れ、突然の降雪に見舞われることもあります。その際、雪走行に備えていなければ、出先から帰ってこれなくなったり、無理に運転をすれば事故を起こしてしまったりする可能性も考えられます。
この記事では、仕事などで雪道を走行する際、安全を確保するための車の事前準備と、運転のポイントを解説していきます。
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目次
雪道を走るための準備と装備とは?
雪の積もった道路での運転は、乾燥している通常の路面とは異なる危険が存在します。
安全に運転するために、事前の準備や適切な装備が大切です。
タイヤの準備は基本!スタッドレスタイヤの装着やタイヤチェーンの携行
普段積雪のない地域でも突然大雪となったりする近年気候の影響で、冬本番前には、とりあえずノーマルタイヤからスタッドレスタイヤに交換しておく、という人も多いのではないでしょうか?
冬備えの中で、スタッドレスタイヤを選択するメリットとしては、タイヤチェーンのように路面に合わせて脱着する必要がなく、ノーマルタイヤと同じように雪の降っていない乾燥した道路でも問題なく使えることです。
ただし注意しなくてはいけないのが、いつでもどこでもスタッドレスタイヤで通行できるわけではないことです。
大雪などで積雪が極端に多くなった場合に、高速道路をはじめとした道路で実施される「全車両チェーン装着規制」下では、スタッドレスタイヤのみでは通行することができません。
そのため、雪の多い地域を運転する場合には、念のためタイヤチェーンを車内に携行しておくと安心です。
降雪時の視界確保対策も忘れずに
「スタッドレスタイヤに履き替えたし、タイヤチェーンも用意したので大丈夫!」と、安心してはいけません。
もちろん、タイヤの準備も非常に重要ですが、降雪時の視界確保にも目を向けましょう。
冬備えの時に忘れがちなのが、ワイパー使用時に噴射するウォッシャー液です。
ウォッシャー液は、フロントガラスとリヤガラスの汚れを落とすための液剤ですが、水道水と違い0℃では凍らない成分でできています。
しかし、極寒地では凍結してしまう可能性もあるので、「-40℃まで対応」のような寒冷地用と記載のあるウォッシャー液に交換しておくようにしましょう。
あったら便利な雪対策グッズ
冬の朝一番、運転しようと思ったら車に雪が積もっていて、フロントガラスの外面が凍ってしまい、なかなか出発できないことも考えられます。
そんなときに便利なのが、「解氷剤」と「スノーブラシ」です。
使用方法としては、車に積もった雪をスノーブラシで大まかに落とし、フロントガラスに残った霜を解氷剤で溶かして視界を確保します。
冬季は車内に常備しておくと便利なので、事前に準備しておくと良いでしょう。
また「面倒だからお湯をかけて溶かそう」は絶対におこなわないようにしましょう。
お湯をかけることで、フロントガラスが急激に膨張して割れる危険性があります。
雪道運転の基本テクニック
雪道に慣れていない人にとっては、運転に大きな不安が伴うでしょうが、基本的なテクニックを押さえることで、スリップする可能性を限りなく低くし、安全と安心につなげることができます。
「急」のつく操作は厳禁!
雪道は、タイヤと路面間の抵抗が少なくなるので、タイヤのグリップ力が極端に低下します。
そのため、「急発進」「急ブレーキ」「急ハンドル」のような操作は、タイヤがロックしてスリップする危険性が高まるので厳禁です。
発進時はアクセルをゆっくり踏み、ブレーキ時は停まりたい手前から余裕を持って減速するようにしましょう。
参考:雪道の運転|サービスワンポイントアドバイス |東京スバル株式会社
第3のブレーキ!エンジンブレーキ活用術
車には、「フットブレーキ」と「パーキング(サイド)ブレーキ」が装備されていますが、もう1つのブレーキ「エンジンブレーキ」は知っていますか?
エンジンブレーキとは、アクセルペダルを離すことによって、車に燃料が供給されなくなり減速する仕組みです(HV/EVでは回生ブレーキ)。
AT車では、DレンジからL、Bレンジに変速したり、MT車であればシフトダウンすることで、よりエンジンブレーキを効かせることができます。
通常のフットブレーキの場合、雪道のような路面抵抗の少ない場所ではタイヤがロックしてスリップする危険性がありますが、エンジンブレーキであればタイヤをロックさせずに減速できるので比較的安全です。
特に、滑りやすい下り坂では効果を期待できますので積極的に活用しましょう。
雪のタイプによる違いとは?
「雪」と言っても、降り方や気温など環境によって状態が変わります。
ここでは、大きく3つのタイプに分けて紹介します。
- 新雪
新雪とは、積もった雪が車などによって踏みしめられていないフカフカの状態を指します。
雪が積もったばかりの道路では、縁石や側溝との境界線や走行車線が見えなくなるため、左側に寄りすぎないように注意しましょう。
- 圧雪
圧雪とは、降雪した後に車が通行されることで踏み固められた状態です。
この状態は、車の走行跡(わだち)があり、新雪と比べて走りやすい路面ですが、交差点などの車の往来が多い場所では圧雪が磨かれてアイスバーンになりやすいので、急のつく操作は避けましょう。
- シャーベット状
気温の上昇などで、雪が溶けてシャーベット状になることがあります。
新雪や圧雪と違い、雪ならではのリスクは低くなりますが、場所によってはシャーベットの下が凍結している可能性があるので、油断は禁物です。
なお、アイスバーンを始めとした凍結路面については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:安心安全な冬の運転を実現するために|積雪・凍結路面対策を徹底解説! – JAF交通安全トレーニングコラム
スタックしてしまった!トラブル時の緊急対応方法
雪に備えてしっかり対策したとしても、万が一ということがあります。
タイヤが雪の中にスタックして身動きが取れなくなるなど、トラブルに遭遇した際の緊急対応方法について、具体的な手順をまとめました。
安全確保が最優先!
タイヤが雪にはまるスタックなどの急なトラブルに見舞われると、焦りから冷静な行動が取れなくなることがあります。
すぐに脱出ができない場合、周囲の安全を確実に確保してから次の策を練りましょう。
まずは、自車が立ち往生していることを周囲の車に知らせるため、ハザードランプを点灯させます。
高速道路など車のスピードが速く往来が激しい場所では、発煙筒や三角表示板を自車の後方に設置して追突による二次事故を防止します。
スタックからの脱出方法
新雪にはまってしまい、タイヤがスリップする状況では、ゆっくりと車を前後させてタイヤ周辺の雪を踏み固めます。スコップなどがあれば、周辺の雪を取り除くことも効果的です。
その他、駆動輪側の荷重を増やしたり、タイヤと雪の間にフロアマットを滑り込ませるなど、タイヤのグリップ力を増加させる方法もありますが、無理は禁物です。
抜け出せる見込みがない場合は潔く脱出を諦め、JAFなどのロードサービスに依頼する方が安全です。
出典:雪道でスタックした場合、自力で動かす方法とは? | JAF
大雪で立ち往生!?|その危険性と対策
2020年12月、大雪のため関越自動車道で大規模な車の立ち往生が発生しました。
大型車などが相次いで雪にはまった影響で、2,100台の車が最大3日間も立ち往生したことが報道され、注目を集めました。
大雪の車内で長時間過ごすというリスクを理解し、事前に対策を講じる必要があります。
出典:3年前に関越道で発生した車の大規模立往生| 新潟ニュース
車が雪で埋まってしまったら|一酸化炭素中毒
車の排気ガス中には有毒な「一酸化炭素」が含まれており、人間が吸い込めば短時間で死に至ることがあります。
大雪と関係ないように思えますが、車の周囲が雪で埋もれてしまうと床下に排気ガスが溜まり、車体の隙間などから車内に入り込むことで、乗員が一酸化炭素中毒を引き起こす危険性があります。
JAFでは、車の周囲を雪で覆い、エンジンをかけた状態で車内のCO濃度を計測するテストをおこなった実験をおこなっています。
その結果、16分後に400ppm(1時間ほどで軽度の頭痛)に上昇し、その6分後には1,000ppm(3時間ほどで致死)に達する結果となりました。
大雪によって立ち往生した場合には、特にマフラー(排気管)周辺を定期的に除雪することが必要です。
またこのテストでは、マフラー周辺を除雪しておいた状態で、車内のCO濃度はほとんど上がらないという結果が出ています。
降雪時に車内にとどまらざるを得ないときは、できるだけエンジンは切るようにしましょう。
出典:クルマが雪で埋まった場合、CO中毒に注意(JAFユーザーテスト) | JAF
燃料が尽きたら危険!|防寒対策
一酸化炭素中毒を防ぐためとはいえ、極寒の中でエンジンを切って耐え凌ぐのは酷な話です。
しかし、車の周囲を除雪して一酸化炭素の充満を防いだとしても、燃料が尽きればエンジンは止まり暖房も使えなくなります。
こんなときのために、車内に寝袋や毛布などを用意しておくとよいでしょう。
これらは災害時にも活用できるので、非常用食料や飲料といった防災用品と一緒に常備すると安心です。
まとめ:備えあれば憂いなし|雪を甘く見ないこと
本記事では、雪道の安全を確保するため、車の事前準備と運転のポイントを解説していきました。
急な大雪に見舞われることが多くなった近年の気候から、車が立ち往生するニュースは毎年のように流れてきます。
あまり雪の降らない地域のドライバーは、雪道での知識や経験が不足していることが原因で、雪のトラブルに巻き込まれることもあります。
自車が先頭車両で立ち往生を引き起こしてしまえば、後続の車に迷惑をかけることになりますが、もし立ち往生が雪道走行の準備不足が原因で引き起こされたものと知れたら、企業の信頼に傷がつく可能性なども考えられます。
トラブルを未然に防ぐためにも、冬本番前にスタッドレスタイヤに履き替えるなどの事前準備を怠らないようにしましょう。
また、積雪した路面は乾燥した路面より滑りやすくなるので、いつも以上に「急」のつく運転動作を控えるように心がけましょう。
万が一、スタックなどのトラブルが発生したとしても、焦らず冷静に状況を判断し、必要に応じてプロに依頼することが重要です。
JAF交通安全トレーニングでは、冬の時期は「車の冬季準備」や「豪雪時の安全確保」など、季節に応じた交通安全教材を多数用意しています。
毎月e-ラーニング形式でコンテンツを配信しているので、JAFならではの実践的な教材を活用して冬はもちろん、1年を通して交通事故を防止しましょう。
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