自動車保険の契約時に「フリート」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。
しかし「フリート契約とノンフリート契約の違い」や、「フリートという言葉の意味」をご存じでしょうか?
この記事では、フリートやフリート契約といった言葉の意味について解説します。
また、「フリートマネジメント」という車両管理の用語についても紹介します。
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目次
Fleet(フリート)の意味とは
「Fleet(フリート)」とは、英語で「乗り物の集まり」を意味する単語です。
ビジネスの場面では、法人が所有する複数台の車両をまとめて「フリート」と呼ぶことがあります。
これに関連して、自動車保険で「フリート契約」「ノンフリート契約」という契約形態があったり、車両管理のことを「フリートマネジメント」といったりします。
なお、フリートという言葉が示す車両は、法人が事業で使用する車両のことです。
一般的に、個人が所有する複数台の自家用自動車に対しては使いません。
フリート契約とは
「フリート契約」とは、自動車保険の契約形態の一種です。
自動車保険の契約者が所有・使用している車両が10台以上ある場合に適用されます。
「所有・使用している車両」とは、以下の条件に該当する車両のことです。
- 車検証の所有者欄と使用者欄がすべて保険契約者名義の車両
- リース期間が1年以上で、保険契約者自らが使用している車両
- 所有権留保条項付売買契約(割賦販売)によって購入し、なおかつ保険契約者自らが使用している車両
- 保険契約者が国または地方公共団体から賃借契約により借り入れ、自らが使用している車両
フリート契約に対し、所有・使用している車両が9台以下の場合の契約形態が「ノンフリート契約」です。
フリート契約かノンフリート契約かは、契約者が任意では選べません。
契約中の自動車保険の対象となる車両が10台以上になった段階でフリート契約となり、ノンフリート契約に戻せなくなります。
また、個人が自家用として9台以上の車両を保有していることは少ないため、フリート契約は一般的に法人向けの自動車保険として利用されています。
フリート契約とノンフリート契約の違い
フリート契約とノンフリート契約の違いは以下の表のとおりです。
フリート契約 | ノンフリート契約 | |
---|---|---|
保険料割増引率の適用範囲 | 契約者単位 | 車両1台単位 |
保険料割増引率の決まり方 | 契約台数と保険料、支払われた保険金、前年のフリート割引率による | 前契約の契約期間、ノンフリート等級、事故有係数適用期間、事故件数などによる |
年齢条件 | なし | 最大35歳まで段階的に年齢条件設定あり |
保険証券 | 契約者単位で1本 | 車両単位(台数分) |
大きく異なるのは、保険料割増引率の決定方法です。
フリート契約の場合、支払われた保険金の額によって保険料率が決まります。
つまり、事故件数ではなく、支払われた保険金が多くなるほど、翌年の保険料率が上がります。
一方のノンフリート契約は、事故件数が多いほど保険料が上がる決まりです。
また、ノンフリート契約には年齢別の割引制度がありますが、フリート契約にはありません。
そのため、10代や20代の従業員が多い場合はフリート契約の保険料にメリットがありますが、30代や40代以上の従業員が多い場合はメリットが薄まります。
フリート契約のメリット
フリート契約のメリットは以下の2点です。
- 契約が1回で済むため、1台ごとの手続きが不要
- 割引率がノンフリート契約より大きい
フリート契約は10台以上の車両をまとめて契約できるため、事務作業の効率化を図れます。
満期日も共通しているため、更新忘れや増車による契約漏れといったリスクを軽減することが可能です。
また、割引率がノンフリート契約より大きい傾向にあります。
ノンフリート契約の最大割引率は63%です。
一方で、フリート契約は保険会社によって異なるものの、70〜80%が適用されます。
参考:一般自動車保険『SGP』フリート契約とは|損保ジャパン
フリート契約のデメリット
フリート契約のデメリットは、事故回数が1回だけでも支払われた保険金が多額であれば、翌年の保険料が大幅に上がる点です。
保険料の上昇は契約している全車両に対して適用されるため、翌年の保険料が大幅に装荷する可能性があります。
しかし、交通事故が発生せず、保険金の支払いがおこなわれなければ割引率は上がります。
自動車保険は交通事故などのリスクに備えるためのものですが、交通事故はないに越したことはありません。
そのため、安全運転の推進は従業員の安全確保だけでなく、保険に関わるコストを抑える意味でも重要だといえます。
なお、社用車の自動車保険については、以下の記事で詳しく解説しています。
補償内容や選び方のポイントなどをまとめているので、ぜひ参考にしてください。
フリート契約・ノンフリート契約が切り替わる際の注意点
所有・使用している車両の増減によって、フリート契約とノンフリート契約を切り替えなければならない場合があります。
その際の注意点を紹介します。
フリート契約からノンフリート契約
所有・使用している車両が10台から9台に減った場合、フリート契約からノンフリート契約に切り替わります。
ただし、1台減ってすぐにノンフリート契約になるわけではありません。
次回の満期日まで猶予期間がある上に、満期日までに10台に戻っていればフリート契約が継続されます。
一方で、9台のままだとノンフリート契約で新たに自動車保険を契約しなければなりません。
その場合は、加入している保険会社に早めに相談しましょう。
ノンフリート契約からフリート契約
所有・使用している車両が9台から10台に増えた場合、ノンフリート契約からフリート契約に切り替わります。
一般的な保険代理店を通して自動車保険に加入している場合は、フリート契約への切り替え手続きもお願いできるでしょう。
しかし、保険料削減のために通販型自動車保険に加入している場合、フリート契約ができる保険会社が少ないため、場合によっては保険会社の見直しが必要です。
ミニフリート(セミフリート)契約とは
近年では、「ミニフリート(セミフリート)契約」という契約形態もあります。
ミニフリート契約とは、所有・使用している車両が2〜9台の際に利用できる自動車保険の契約のことです。
保険会社によって名称が異なり、「セミフリート契約」「複数台割引」「ノンフリート多数割引」と呼ばれることもあります。
ミニフリート契約は、車両台数が9台以下でもノンフリート契約と同様の内容で契約できるため、保険料を抑えやすい点がメリットです。
また、保険証券1枚で契約できるため、車両ごとの管理や手続きの手間が軽減できます。
なお、ミニフリート契約は個人だけでなく、社用車が9台以下の法人も契約できます。
フリートマネジメント(車両管理)とは
フリートを使う用語には、「フリートマネジメント」というものもあります。
フリートマネジメントとは、法人や個人事業主などが所有する車両を適切に管理し、効率的に運行管理することです。
主に以下の項目について管理をおこないます。
- 保険情報
- 燃料コスト
- 走行履歴
- 車両の現在地
フリートマネジメントは、安定した経営を続けるには欠かせません。
同時に、車両を安全に運行させることは、事業主の義務です。
車両の使用には交通事故というリスクがある上に、台数や使用時間が増加すると、適切な車両管理が難しくなっていきます。
そのため、交通安全教育などを実施することで従業員一人ひとりの交通安全意識を養い、フリートマネジメントにつなげる企業が増加しています。
フリートマネジメントに取り組むべき理由
社用車で交通事故を起こした場合、以下の損害が発生します。
- 人的損失
- 物的損失
- 時間的損失
- 社会的信用の失墜
交通事故を起こした場合、人や物に被害が生じます。
事故対応に時間を割く必要があるため、通常業務をストップさせなければなりません。
また、事故によっては社会的な信頼を失ってしまい、事業そのものに影響が出るリスクもあります。
そのため、フリートマネジメントによって社用車を適切に管理し、交通安全を推進することが重要です。
安全運転を促進できるから
フリートマネジメントを実施することで、安全運転を促進できます。
車両の定期点検整備やメンテナンスを確実におこなうことで、不要な車両トラブルを未然に防げるからです。
また、従業員に対する交通安全教育を実施することで、交通安全意識の向上も期待できます。
法令順守につながるから
道路交通法改正により、検知器を用いたアルコールチェックが義務化されました。
該当する企業は対応しなければなりませんが、ここでもフリートマネジメントが有効です。
アルコールチェックの運用体制を構築したり、継続的な交通安全教育を実施したりすることで、マナーや交通ルールを守る環境を整えられます。
コスト削減を図れるから
フリートマネジメントは、コスト削減にも有効です。
例えば、各車両の稼働率を把握して余分な車両を洗い出すことで、車両台数の適正化を図れます。
稼働率の低い車両を手放すことができれば、車両維持費を削減できる上に、ほかの車両のメンテナンスにより注力できるようになり、車両を長く使用することも期待できます。
また、走行ルートの適正化を図って燃料コストを削減することも可能です。
まとめ:「フリート」とは、事業で使用する複数台の車両のこと
ビジネスシーンで使われる「フリート」とは、法人が所有する複数台の車両を示す言葉です。
フリートを用いる用語には、「フリート契約」「ノンフリート契約」といった自動車保険の契約形態や、「フリートマネジメント」という車両管理を意味する用語があります。
自社で社用車を所有・使用している場合は、自動車保険のフリート契約・ノンフリート契約の違いを理解しておきましょう。
また、フリートマネジメントでは、法令遵守やコスト管理ができます。
中でも安全運転の推進ができることも重要です。
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フリートマネジメントの施策として、ぜひご活用ください。
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