高齢者だけじゃない?若者にも多いブレーキとアクセル踏み間違い事故の要因と対策  

近年、痛ましい事故が取り沙汰されたことで、「ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故」と聞くと、「また高齢者か…」と連想する方は多いのではないでしょうか。 

確かに、死亡重症事故の発生件数は、高齢ドライバー(65歳以上)が圧倒的に多いものの、車両相互事故の発生件数に着目すると、若年ドライバー(24歳以下)の発生件数が高齢ドライバーを上回っているデータがあります。

この記事では、高齢者に加え、たとえ若い人であってもペダルの踏み間違いが起きてしまう原因と、その対策について詳しく解説していきます。

ペダル踏み間違いによる交通事故を防ぐため、ぜひ参考にしてください。

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年齢別に見たペダル踏み間違い事故の統計

交通事故総合分析センター(イタルダ)が発表した統計によると、2018~2020年の3年間のペダル踏み間違いによる死亡重症事故件数は、圧倒的に高齢ドライバー(65歳以上)が多いです。 

出典:イタルダインフォメーション No.139|交通事故総合分析センター 

一方、ペダル踏み間違いによる車両相互事故の発生件数を見ると、24歳以下の若年ドライバーに多く発生しています。 

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか? 

高齢者と若者の踏み間違い事故率を分析

統計から、ペダル踏み間違いによる事故は、24歳以下が最も多く、そこから年齢を重ねるごとに減少し、65歳以上でまた大幅に増加していることがわかります。 

なぜ、高齢ドライバーと若年ドライバーの両極端で、ペダルの踏み間違い事故が多いのか分析していきましょう。 

高齢ドライバーの事故件数と原因

2018年から2020年までの3年間で、ペダル踏み間違い事故は全体で9,736件発生しています。 

内3,950件が65歳以上の高齢ドライバーで全体の約40%を占めており、原因としては加齢による身体機能の低下、認知能力の衰えが少なからず影響していると思われます。 

機敏なペダル操作が難しくなることや、判断ミスや注意力散漫による誤操作。また、長年の運転習慣によって、誤った操作が癖となってしまっていることも、ひとつの理由ではないでしょうか。

浦和で起きたペダル踏み間違い事故

2015年12月、埼玉県さいたま市浦和区内の市道で、高校1年生の女性が急加速した車にはねられ死亡する事故が起きました。

このとき、車を運転していたのは80歳の高齢男性です。ブレーキとアクセルの踏み間違えが事故原因であるとして、過失致死による実刑判決が下っています。 

この事件を機に、新たな改正道路交通法が施行され、2022年5月13日以降、75歳以上の免許更新手続き内容が変わりました。 認知症の疑いがなくても、一定の違反歴がある高齢者に運転技能検査を実施。もし不合格であれば免許証を更新できなくなりました。 

若年ドライバーに目立つ事故の特徴

一方、高齢ドライバーと違い身体機能が充実しているはずの24歳以下の若年ドライバーにもペダル踏み間違いによる事故が多発しています。 

この年齢は運転免許を取得してから日が浅く、判断力が未熟だったり、操作が不慣れなことがあります。例えば、交差点の右折待ちや駐車場の出入りの際、他の車のプレッシャーで焦ってしまい、ブレーキとアクセルを踏み間違えてしまうことが考えられます。 

なぜミスは起こる?車の運転行動3要素

出典:危険予知の重要性(危険予知・事故回避トレーニング) | JAF 

運転行動は、「認知」→「判断」→「操作」の順番の3要素で成り立っています。

交通事故は、この3要素のどこかにミスが発生することで起きるため、認知してから判断するまでの間に「予測」することで事故を未然に防ごうとするのが、危険予知の考え方です。 

「予測」をしっかりとおこなうためには、ドライバーの危険感受性を高める必要があり、その知識はJAF交通安全トレーニングで学ぶことができます。

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認知|運転行動の3要素

「認知」とは、視覚、聴覚などによって、周囲の交通状況を正しく認識することをいいます。 

標識や信号を視認することや、緊急車両のサイレンの音を聞くことなどが認知にあたります。 

わき見による信号や前方車両の見落としなどは、認知ミスといえます。

判断|運転行動の3要素

「判断」とは、認知した情報をもとに、どのように行動するか決定することです。 

例えば、黄色信号のタイミングで、停止するか通過するか判断することをいいます。 

直進車両がいるのにもかかわらず、右折して接触してしまえば、それは判断ミスとなります。 

操作|運転行動の3要素

「操作」とは、判断にもとづいて実際に車を操作することを指します。 

アクセルを踏んで加速する、ブレーキを踏んで停止するなど、車をコントロールする具体的な行動です。 

ブレーキとアクセルを踏み間違えるなど、ドライバーの意図しない行動は、操作ミスに該当します。 

ペダル踏み間違い事故の背後要因とは

ペダル踏み間違い事故は、主にドライバーがブレーキとアクセルの操作を誤ること。つまり、操作ミスによって引き起こされます。 

その背景には、操作ミスを誘発した原因があります。ここでは、背後要因について考えてみましょう。 

フィジカル的な要因

人間の集中力は、約90分が限界といわれています。長時間の運転により疲労が溜まれば、集中力が低下し、ペダル操作を誤ってしまうことに繋がりかねません。 

また、運転経験の浅いドライバーは、ペダル操作に対する感覚が未熟です。 

ベテランドライバーのように、経験を基にした予測行動は取れず、急な飛び出しのような緊急時には誤った操作をしてしまう可能性があります。 

メンタル的な要因

「取引先との約束に間に合わない!」など、焦ったり急いだりすると、冷静な判断ができずにペダル操作を誤ってしまうことがあります。 

人の急な飛び出しなど、ドライバーが予期しない状況に遭遇した場合には、パニック状態に陥りやすく、反射的に踏んだペダルを間違えてしまう危険性もあります。

また、「ながら運転(スマートフォン操作など)」をおこなえば、注意力が散漫になります。とっさの操作が遅れたり間違ったりする原因となるので、絶対に避けなければいけません。

環境的な要因

レンタカーなどを利用したり、普段とは異なる車種を運転する際は、ペダルの配置や形、操作感の違いから誤操作を引き起こす可能性があります。 

また、狭い駐車場に車を停めなくてはいけない状況などでは、難しい運転操作を要求されるため、緊張や混乱から誤った操作をしやすくなります。 

アクセルとブレーキを踏み間違えないためには

アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いは、様々な原因によって引き起こされます。 

では、具体的にどういった行動を取れば防げるのかを考えてみましょう。 

運転姿勢の見直し 

万が一にも、ペダル操作を間違えないためには、正しい運転姿勢での運転が必要です。 

ペダルまで遠すぎると、ブレーキの踏み込みが弱くなり力が伝わりにくくなります。 

一方で、近すぎるとブレーキとアクセルの踏みかえ時に足が引っ掛かりやすくなるため、ペダルの踏み間違いを誘発する危険性があります。 

ブレーキペダルを力いっぱい踏み込んだ時に、膝に少し余裕があると良いでしょう。

先進技術の活用

最近の車には、「ADAS(先進運転支援システム)」と呼ばれる、ドライバーに代わって運転を制御・支援する機能が備わっています。 

その中のひとつに「衝突被害軽減ブレーキ」があります。 

これは、センサーやカメラによって車の周囲の障害物を検知し、衝突の恐れがあるときには自動でブレーキ制御をおこなう機能です。 

ただし、状況によって作動しない場合もあるので、自動ブレーキ機能の過信は危険です。選択肢のひとつとして、このような先進技術を搭載した車種を選ぶのも良いでしょう。

踏み間違い防止装置の取り付け

最近の車は、アクセルペダルの踏み込み量をセンサーで検知して、エンジンの出力を制御しています(電子スロットル)。 

この仕組みを応用した、「踏み間違い防止装置」を取り付けることができる車両もあります。

これは、低速時のアクセルペダルの急激な踏み込みを検知すると、アクセルのセンサーを制御して急発進を抑止してくれる装置です。 

カーディーラーやカー用品店で取り付けることができますので、導入を検討してみるのも良いでしょう。 

気持ちの入れ替え

メンタル要因でも説明したように、「焦り」は事故を誘発します。 

仮に約束の時間に遅れそうだとしても、先方に謝罪の連絡をするだけで気持ちが楽になります。 

運転前には深呼吸をして、落ち着いた気持ちで運転に臨むことも重要です。 

もしもの事故発生時にとるべき行動

万が一、ブレーキとアクセルを踏み間違えて事故を起こしてしまったら…。 

あまり考えたくはないですが、事故発生時には、被害を拡大させないために適切な行動が求められます。

人命救護

事故発生時は、まず負傷者の救護が最優先です。

負傷者の状況によっては、速やかに救急車を手配しましょう。救急車到着までの応急処置は、救急隊員の指示に従います。 

路上の安全確保

事故後、走行が可能であれば、車を安全な場所まで移動させましょう。 

その後、ハザードランプ点灯、発煙筒や三角表示板の設置など、できる限りの安全対策を講じます。

警察への連絡

負傷者の救護や道路の安全確保が完了したら、事故の大小にかかわらず必ず警察に通報します。その際、事故の状況、場所、負傷者の有無などを警察官に報告しましょう。 

事故発生時に警察へ通報することは、道路交通法第72条で義務付けられているため、これを怠ると処罰の対象となります。 

参考:交通事故を起こしたら、加害者はどうするべきですか? | JAF クルマ何でも質問箱

まとめ:ペダルの踏み間違いは誰にでも起こりうる

本記事では、高齢者だけでなく、若者にも意外と多いブレーキとアクセルの踏み間違い事故の要因と対策について解説しました。 

高齢ドライバーは、加齢による運転技能の低下。若年ドライバーは、運転に対する技術や知識が不足している部分があります。 

自分自身で意識したり訓練して事故を防ぐ方法もありますが、経験豊富なベテランドライバーからのアドバイスに耳を傾けることも重要です。 もし、他人から助言や忠告を受けた時は、しっかりと受け入れ、その後の安全運転に活かしましょう。 

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そんなお悩みをお持ちの管理者の方は、ぜひ、JAF交通安全トレーニングの導入をご検討ください。 

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JAF交通安全トレーニング

毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。
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イイダユウジ
高校在学時、アルバイトでこつこつ貯めた資金で「S13シルビア」を愛車に迎えたのを機に、車に目覚める。進学先で自動車整備を学び「国家1級整備士」資格を取得。卒業後はカーディーラーに就職し、車の基礎と社会の厳しさを叩き込まれる。現在は、個人で中古車販売・整備を主に手掛ける一方で、その経験・知識を最大限活かし、交通安全普及のための広報活動に勤しむ。整備士の目線で独自の切り口を模索するなど、幅広く活動している。