気付いたら運転中の記憶がなく、もしかしたら一瞬意識が飛んでいたのかも、と焦った経験はありませんか?
それは、無自覚のうちにほんの数秒間眠りに落ちてしまう怖い現象「マイクロスリープ」かもしれません。
わずかな時間でも、車はその間に大きく進みます。スピードを出している高速走行中であればなおのこと、一瞬の居眠りが重大事故に直結する恐れがあります。
この記事では、マイクロスリープの危険性をはじめ、主な原因、予防方法などについて、詳しく解説していきます。
安全運転意識を高める教育手法・教材がわかる!
目次
マイクロスリープとは?

マイクロスリープ(別名:瞬眠)とは、眠気が強いときに数秒から数十秒だけ眠ってしまう現象のことです。
目が開いていて意識があるように見える場合もありますが、脳波を測定すると覚醒時のパターンとは異なり、睡眠状態に入っていることが確認されます。
眠気を感じ、視界がぼんやりしたり意識が途切れかけたりしますが、瞬間的な睡眠状態のため、「寝た」と自覚していないことがほとんどです。
仕事中や授業中に、眠気で頭が一瞬ガクッとなる経験をしたことがある方もいるかもしれませんが、マイクロスリープはそれよりもさらに短時間で起こることがあります。
マイクロスリープに似ている症状で、「ナルコレプシー」という病気があります。
ナルコレプシーは慢性的な神経系の睡眠障害で、代表的な症状として「日中の強い眠気」「突然の睡眠発作」、人によっては睡眠麻痺や幻覚を伴う病気です。
ナルコレプシーは「病気」である一方で、マイクロスリープは「現象」であることに注意が必要です。
なぜなら睡眠不足、睡眠時無呼吸症候群、睡眠薬投与などの原因により、誰にでもある日突然起こり得るものだからです。
実際の交通事故直前に起きたマイクロスリープの兆候とは

運転中にマイクロスリープが発生し、交通事故を起こしたケースで、その直前に共通した兆候が見られることがわかりました。
広島大学の塩見利明寄附講座教授らのグループは、実際に交通事故を起こしたトラックドライバー52件について、ドライブレコーダーに記録された衝突事故直前1分間の映像を調査したところ、追突事故直前1分の間に、ドライバーがマイクロスリープに関連した行動を起こしていたのです。
調査によって明らかになった具体的な行動は以下のとおりです。
| 分類 | 行動 | 具体的な行動(頻度%) |
|---|---|---|
| 抗眠気行動 | 触る ストレッチ 貧乏ゆすり 大声を出す 欠伸(あくび) 素早い瞬き 叩く | 無意識に顔、頭、身体を触る(46.2) 上半身や腕を伸ばす(40.4) 脚をイライラと動かす(15.4) 大きな独り言を言う、叫ぶ(13.5) 意図しない深呼吸(7.7) 意図的な速い瞬き(5.8) 意図的に顔や身体を叩く(5.8) |
| マイクロスリープ 行動兆候 | 体動の停止 半眼 閉眼 | 抗重力筋の弛緩(例:頭部が前に落ちる)(75.0) ゆっくりとした瞬きや半分以上の不完全な閉眼(19.2) 1秒以上の完全な閉眼(15.4) |
| 車両挙動異常 | 不自然な車線逸脱 不自然な減速 | 蛇行(78.8) 先行者のいない直線道路での10%以上の不自然な減速(59.6) |
上記のような行動が見受けられる場合、マイクロスリープが発生している、あるいは直後に発生する恐れがあります。
マイクロスリープによる重大事故を防ぐためにも、運転中に眠気を感じたら無理をせず、速やかに休憩を取るようにしましょう。
運転中にマイクロスリープを引き起こす原因

ここでは、マイクロスリープを引き起こす原因を紹介します。
睡眠不足
マイクロスリープの原因で最も一般的と考えられるものは、睡眠不足です。
とくに、短い睡眠を日常的に繰り返して生じる「慢性の睡眠不足」状態では、突発的に強い眠気が起こりやすくなり、マイクロスリープのリスクも高くなります。
慢性的な睡眠不足は、睡眠時間が少し足りない生活が続くだけでも蓄積していくといいます。しかも、この状態では眠気や疲労を自覚しにくくなる一方で、認知機能が低下し、ヒューマンエラーの危険性が高まると考えられています。
さらに、慢性の睡眠不足が長引くと、寝ても疲れが取れないことがあるので、睡眠不足を軽く考えず、日ごろから十分な睡眠を確保することが大切です。
睡眠の質の低下
睡眠時間だけでなく、睡眠の質の低下も、マイクロスリープの原因の1つです。
睡眠の質が低下すると考えられる要因の例は以下のとおりです。
- 不規則な生活リズム
- 睡眠環境の悪化
- 就寝前のパソコンやスマートフォンの使用
- カフェインやアルコールの過剰摂取
- 就寝前の喫煙
疲労
「疲労が溜まって眠い」という経験をしたことはありませんか。
長時間休憩をとらずに仕事や勉強を続けていると、肉体だけでなく脳にも疲労が溜まっていきます。
疲労度が高まると脳が少しでも休息しようとすることで眠気が増し、マイクロスリープが発生しやすくなります。
睡眠関連の疾患
疾患によって十分な睡眠が確保できない場合も、マイクロスリープが起こりやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群をはじめとする睡眠障害を持つ人は、日中でも強い眠気に襲われる可能性があるため注意が必要です。
マイクロスリープを防ぐためには、睡眠不足や疲労を軽視せず、少しでも強い眠気を感じたときは運転を控える、または休憩・仮眠を取るようにしましょう。
出典:居眠り運転を防ぐにはどうすればいいのでしょうか? | JAF クルマ何でも質問箱
薬の副作用
薬の副作用によって眠気が増すことも、マイクロスリープの原因の1つです。
風邪薬や花粉症薬などを服用すると、集中力や判断力が低下して、100%のパフォーマンスを発揮できなくなることがあります。
また、インフルエンザなどのワクチン接種を受けた後も、眠気や体調悪化が生じる場合があります。
血糖値の上下(血糖値スパイク)
昼食後の眠気には、食事の内容も影響します。
急激な血糖値の上下は眠気の原因になるとされ、糖質中心の食事(おにぎり・パン・うどんなど)を単品で食べると、食後に血糖値が急上昇・急降下する「血糖値スパイク」が起こりやすくなります。
これもまた、マイクロスリープのリスクを高める可能性があるので、運転前や休憩中の食事では、糖質に偏りすぎないように注意が必要です。
出典:血糖値スパイクを予防しよう─糖尿病になる前に対策を! | 済生会
運転中のマイクロスリープを防ぐ方法

原因を把握したところで、次にマイクロスリープを防ぐ方法を紹介します。
十分な睡眠をとる
マイクロスリープを防ぐには、まず十分な睡眠時間を確保することが第一です。
個人差はありますが、睡眠時間は7〜8時間が適切といわれています。
忙しくて十分な睡眠を確保することが難しい人もいるかもしれませんが、5分でも10分でも、可能な限り睡眠時間を伸ばすようにしましょう。
ただし、休日に寝だめすることは避けてください。
生活リズムが乱れて、体内時計が社会のリズムとズレることにより時差ボケのような状態になる「社会的時差ボケ」に陥るためです。
週末にまとめて寝るのではなく、毎日十分な睡眠を確保するよう心がけましょう。
参考:マイクロスリープの特徴が分かります | 阪野クリニック
睡眠の質を上げる
睡眠の質を上げるには、規則正しい生活習慣を身につけることが重要です。
具体的には以下のとおりです。
- 朝起きたら朝日を浴びる
- 朝食をとる
- 適度な運動をする
- 就寝2〜3時間前に入浴する
- 就寝1〜2時間前からパソコンやスマートフォン操作を控える
- 就寝前の喫煙・アルコール・カフェインを控える
- 15〜30分程度の昼寝を取り入れる
- 寝室の環境を整える
- 自分に合ったストレス解消法を取り入れる
取り組みやすいものから実践し、生活習慣を整えて、睡眠の質を改善してみましょう。
それでも睡眠不足を感じるときは運転を避ける
十分に睡眠を取ったつもりでも、本人が睡眠不足を感じたら無理に運転してはいけません。
国土交通省は、バス・タクシー・トラック事業において、睡眠不足により安全な運転に支障をきたす恐れがある場合、運転前の申告や乗務の見合わせが必要であるとしています。
こうした考えは、企業で社用車を使う場面でも参考にすべきです。
少しでも眠気やだるさ、不安があるときは「大丈夫だろう」と過信せず、運転を避ける判断が求められます。
出典:睡眠不足に起因する事故の防止対策を強化します!! |国土交通省
運転中にマイクロスリープの兆候が見られた場合の対処法

一度路上に出てしまえば、運転を続けるかどうかの判断はドライバー本人に委ねられます。
強い眠気など、マイクロスリープの兆候が見られた場合にどのように行動すればよいのか、ここではその対処法について解説していきます。
運転を中断して安全な場所で仮眠を
もし運転中に眠気が生じた場合は、車を安全な場所に停めて仮眠をとるようにしましょう。
椅子などに腰掛けて浅い睡眠をとることで、一時的に眠気が解消されることがあります。
ただし、仮眠は15~30分程度を目安にして、起きたらすぐに発進せず、軽いストレッチなどで十分に覚醒してから運転を再開しましょう。
30分以上寝てしまうと、脳が熟睡モードに入ってしまうため、目覚めたあとに眠気や疲労が残り、逆効果になってしまうことがあるので注意してください。
運転時に毎回眠くなる場合は早めに睡眠外来へ

運転のたびに眠くなる、十分に寝たはずなのに日中に強い眠気に襲われる、といった状況が続くなら、単に睡眠不足などによる原因だけでなく、睡眠障害が隠れている可能性を疑うべきです。
睡眠時無呼吸症候群、不眠症、過眠症などの慢性的な睡眠障害は、居眠り運転やマイクロスリープを招き、放置すると重大事故につながる恐れがあります。
まずは自身の身体的状況の自覚に努め、少しでも不安があれば、早めに睡眠外来など専門の医療機関に相談しましょう。
病気の早期発見・早期治療が、安全運転の継続には欠かせません。
参考:昼間の眠気 – 睡眠不足だけではなく睡眠・覚醒障害にも注意が必要 | 厚生労働省
まとめ:十分な睡眠を確保して、運転中のマイクロスリープを予防しよう

マイクロスリープは、瞬間的に睡眠状態に陥ってしまう誰にでも起こり得る現象です。
運転中に発生すると、命に関わる交通事故につながるリスクが跳ね上がります。
眠気を感じないクリアな状態で運転に臨めるよう、十分な睡眠をとるなどの規則正しい生活習慣を身につけましょう。
とはいえ、少々眠気を感じても、ほとんどの人は無理して運転しがちです。
運転者本人が「危険」と感じて運転を控える判断を下すには、安全を最優先にできる組織風土の醸成が欠かせません。
JAFメディアワークスが提供するeラーニング教材「JAF交通安全トレーニング」では、安全を最優先にした行動について学べるため、運転者個々の適切な判断の助けとなります。
生活リズムを整えるのと同時に、JAFトレ導入もご検討ください。
\ 企業の交通安全トレーニングを応援! /
















