ISO39001とは、企業による交通事故防止の仕組みを評価するための国際認証規格です。
近年は交通安全意識の高まりや、交通事故のリスク回避のためにISO39001の取得企業が増えています。
しかし、「ISO39001の意味がよくわからない」「取得企業になるメリットはあるのか」と感じる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ISO39001の意味や、取得企業になるメリットなどについて解説します。
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目次
ISO39001とは?
ISO39001とは、交通安全マネジメントシステムに与えられる国際認証規格であり、2012年に発行されました。
ISOは「国際標準化機構(International Organization for Standardization)」の略称であり、世界各国で通用する国際規格を意味します。
ISO39001は、数ある国際規格のうち、交通事故を減らし、安全運転意識を高める仕組みを運用・改善するマネジメントシステムを認証する際に用いられます。
以前より、交通事故による死者数の低減は日本のみならず世界全体で取り組むべき課題として認識されていました。
ISO39001はこうした取り組みの一環で設けられたものであり、企業による取り組みが国際的に注目されるものであることを示しています。
日本においてもISO39001への注目度は高く、多くの取得企業が誕生しました。
参考:ISO 39001(道路交通安全) | ISO認証 | 日本品質保証機構(JQA)ttps://www.jqa.jp/service_list/management/service/iso39001
ISO39001を取得できる企業
ISO39001を取得できる企業は以下のとおりです。
①乗客・貨物運送にかかわる組織(バス・タクシー・トラック輸送・レンタカーなど)
引用:概要 | ISO 39001(道路交通安全) | ISO認証 | 日本品質保証機構(JQA)
②物流・営業・通勤で自動車を使用する組織(工場・倉庫・流通サービス・金融サービス業など)
③自動車・自動車部品の設計・製造・保守・検査にかかわる組織(自動車メーカー・部品メーカー・整備工場など)
④輸送ニーズが発生する施設の運営にかかわる組織(駐車場設計・管理会社など)
⑤救急救命医療の準備にかかわる組織(救急医療機関・病院など)
⑥道路の設計・施工・運用・保守にかかわる組織(道路運営・管理会社)
⑦道路交通関連法規の制定・規制にかかわる組織(国・自治体)
ISO39001を取得できる企業は運送業だけではありません。
業務で日常的に自動車を使う機会が多い企業であれば、業種・規模にかかわらず取得できます。
ISO39001の取得企業が増えている背景
ISO39001の取得企業が増えている背景には、交通事故のリスクの高さがあります。
企業にとって交通事故は身近なリスクです。
以下の表を見てましょう。
出典:最近の交通事故発生状況について第1回 「自動車運送事業安全対策検討会」(国土交通省)を加工して使用
交通事故の件数は年々減少しているものの、令和4年時点でもその件数は決して少なくありません。
加えて、事業用自動車が交通事故を起こした件数は全体の件数の1割弱を占めており、令和2年~4年にかけては微増していることがわかります。
極端に高い数字ではないものの、業務で自動車を使う企業にとって、交通事故は無視できないリスクです。
交通事故は従業員や歩行者などの人命を左右する上に、交通安全対策が不徹底な企業は社会的な信頼を得られません。
特に、運送業は交通事故の有無が事業の継続に直結するため、より一層交通安全対策を講じる必要があります。
ISO39001の取得は企業が交通安全意識を持ち、交通事故低減のために積極的に取り組んでいることを示すきっかけとなります。
そのため、近年は交通事故防止の管理体制の構築に積極的に取り組み、ISO39001の取得企業となる企業が増加しました。
ISO39001を取得するメリット
ISO39001の取得には、さまざまなメリットが期待できます。
本章では、ISO39001を取得した際のメリットについて解説します。
交通事故のリスク回避
ISO39001の取得は、交通事故のリスク回避につながる取り組みです。
ISO39001は、要求事項を満たした交通事故防止の管理体制の構築が取得の要件です。
そのため、ISO39001の取得は、自然と交通事故のリスクを回避する組織体制の構築を実現できます。
企業に対する信頼の獲得
ISO39001を取得することで、企業に対する信頼を獲得できます。
ISO39001の取得は、企業の交通安全意識の高さを示すものでもあるため、ブランドやイメージの向上にもつながる取り組みです。
特に、頻繁に車を運転する企業にとって、交通事故防止の取り組みは顧客の信頼を得る上で不可欠です。
ISO39001の取得は、さらなる事業拡大を目指す企業にとっても、重要な足がかりになるでしょう。
組織体制やルールの明確化
ISO39001を取得する過程で、自然と組織体制やルールを明確化できる点もメリットです。
企業によっては、交通事故を防止するための組織体制やルールが完成されていないケースがあります。
ISO39001の取得は、組織体制やルールを整理し、完成させる絶好のチャンスです。
ISO39001のデメリット
ISO39001の取得は有意義ですが、デメリットもあります。
本章ではISO39001のデメリットについて解説します。
費用がかかる
ISO39001の取得には、少なからず費用が発生する点には注意しましょう。
ISO39001を取得・維持するには、指定機関による審査を受ける必要がありますが、その際に審査費用が発生します。
審査費用は企業の規模・従業員数・業務内容によって変動しますが、数十万円~100万円程度になるケースが一般的です。
加えて、ISO39001を取得するためにコンサルティングを受けるなら、コンサル料も発生するため、より費用が増加します。
ISO39001は重要な国際規格ですが、費用が発生する以上、費用対効果を見定めてから取得を検討しましょう。
事務負担が大きい
ISO39001を取得する際は、提出書類やマニュアルなど、さまざまな書類を作成しなければならないため、事務負担が大きくなるリスクがあります。
事務作業は通常業務に追加される形で発生するため、人員に余裕がない企業だと従業員の業務負担が増加する恐れがあります。
ISO39001の取得に必要な書類は通常業務の関わりがないものもあるため、事務作業を増やす余裕があるか判断が必要です。
また、ISO39001に関連する書類は次年度の審査などに対応するために継続して保管しなければなりません。
電子化している企業であればさほど負担にはなりませんが、紙媒体で書類を運用している企業であれば、保管場所に苦労する場合があります。
ISO39001の要求事項
ISO39001の要求事項は、企画構成に則って設定されています。
それぞれの要求事項は以下のとおりです。
「計画」に該当する要求事項
組織の状況 | 組織の現状把握をおこなった上で道路交通安全マネジメントシステムの適用範囲を決定できる |
リーダーシップ | 安全に対する強い思いを方針として示し、道路交通安全マネジメントシステムを運用していく上で必要な責任者や担当者を指名し、彼らに役割、責任及び権限を与えられる |
計画 | リスクと対策に優先順位をつけて目標、詳細目標を定めた取り組み計画を策定 |
「実行」に該当する要求事項
運用の計画及び管理 | 計画を実施し、適切に管理できる |
緊急事態への準備及び対応 | 緊急連絡網の整備や二次被害の防止に加えて、応急手当などへの準備ができている |
「改善」に該当する要求事項
不適合及び是正処置 | ルール違反などに対する原因の究明や除去・再発防止ができる |
継続的改善 | 道路交通安全マネジメントシステムを繰り返し改善するために活動している |
「チェック」に該当する要求事項
監視・測定・分析及び評価 | 計画の実施状況を把握、効果を評価できる |
交通事故及びヒヤリハット情報の調査 | 交通事故及びヒヤリハット情報を収集・分類・整理し、根本にある原因を把握した上で、対策の実施や交通事故の再発防止や未然防止につなげられる |
内部監査・マネジメントレビュー | 内部監査・マネジメントレビューを通じ、各種対策が計画通りに実施され、効果をあげているか確認し、改善に必要な事項を指示できる |
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ISO39001の審査内容
ISO39001の審査は2段階に分かれている点が特徴です。
それぞれの審査は内容が異なるため、あらかじめ把握しておきましょう。
第1段階審査
第1段階審査は交通安全マネジメントのフレームワークの評価がおこなわれます。
「必要書類のチェック」「内部監査・マネジメントレビューが適切に実施されているかの確認」「経営者へのインタビュー」などが主な実施内容です。
審査機関によって第1段階審査は実施方法が異なるため注意しましょう。
当然、第1段階審査をクリアしなければ第2段階審査に進めません。
第2段階審査
第2段階審査では、審査員が企業の現地を訪問し、交通安全マネジメントの実施状況を直接チェックします。
「記録が適切に保管されているかの確認」「現場の従業員へのインタビュー」などが実施されます。
第2段階審査を無事にクリアすれば、ISO39001の登録証を取得できますが、「不適合」と判断された場合は取得できません。
ISO39001の取得企業を目指す際のポイント
ISO39001の取得企業を目指すには、いくつかのポイントを意識する必要があります。
確実に取得するためにも、事前にポイントをチェックしておきましょう。
取得する目的を明確にする
ISO39001を取得する目的は必ず明確にしておきましょう。
曖昧な目的のまま取得を目指しても、管理体制や組織体制の適切な是正ができません。
何より、経営者に加え、従業員の交通安全意識の向上が不徹底になる恐れがあります。
ISO39001の取得はビジネスに良い影響を与える取り組みですが、交通安全意識を高め、交通事故を防止するマネジメントの実現がもっとも重要な目的です。
企業が一丸となって交通安全に取り組めるよう、明確な目的を設定しましょう。
費用対効果に注意する
ISO39001を取得するなら、費用対効果にも注意しましょう。
ISO39001は企業にさまざまなメリットをもたらしますが、取得には少なからずコストがかかります。
過剰にコストをかけたことで、交通安全マネジメントを適切に実施できない状況にならないよう、費用対効果は正確に確認しましょう。
ISO39001は必ずしも取得しなければならない規格ではありません。
ビジネスや顧客の信頼獲得での効果が薄いと判断された場合は、無理に取得を目指す必要はないでしょう。
外部の専門家の力を借りる
ISO39001は取得に際し、さまざまな要求事項を満たさなければならないため、必要があれば外部の専門家の力を借りましょう。
ISO39001の取得支援をおこなうコンサルティング会社は多く、取得する上で有効的なアドバイスを提供してくれます。
第2段階審査にコンサルタントを派遣してくれるコンサルティング会社もあるので、ISO39001を取得できる可能性が高められます。
また、ISO39001の取得に際し、企業全体の交通安全意識を高めるなら、JAF交通安全トレーニングを活用しましょう。
JAF交通安全トレーニングは、交通安全意識を高める上で必要な知識を学べるeラーニング教材です。
eラーニング方式であるため、業務の合間にも効率的に学習を進められます。
JAF交通安全トレーニングを活用し、従業員の交通安全意識を高めれば、企業全体でISO39001取得を目指しやすくなります。
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まとめ:ポイントを押さえてISO39001の取得企業を目指そう
ISO39001は交通安全マネジメントを評価する国際認証規格です。
取得企業となれば、外部からの信頼を獲得できる上に、交通事故のリスクを防止できる組織体制の構築を実現できます。
一方、ISO39001の要求事項は項目が多く、審査も2段階に分けて実施されるなど、審査を受ける際に注意すべきポイントが多くあります。
ぜひ、本記事を取得企業を目指す際の参考にしてください。
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