街中でEV車(電気自動車)を見かけることが増えてきました。
近年、商業施設や高速道路のSA・PAなどに多くの充電スポットが設置され、EV車を利用する際のインフラが整ってきたことなどがEV車増加の要因といえそうです。
一方、海外ではアジア圏を中心に「EV車の火災事故」のニュースがたびたび報道されています。
日本国内におけるEV火災の件数は現状ごくわずかであるものの、今後さらに国内EV市場が賑わっていくことが想定されており、海の向こうのニュースだからといって対岸の火事として捉えていると、いざという時に対応が後手に回る可能性があります。
特にEV車の火災は、一般的に消火しにくいとされています。
そこでこの記事では、EV車の火災が消えにくいとされる理由と、もしも火災に遭遇した際の正しい対処方法について解説していきます。
目次
EV火災が起きる背景を調査

EV火災を語る上で最も重要なポイントとなるのは、EV車を動かす基幹部品である「リチウムイオン電池」の存在です。
リチウムイオン電池は、スマートフォン・タブレット端末・ノートパソコンといった電子機器にも数多く使われており、現代を生きる私たちにとって身近な存在といえます。
EV車は、従来のガソリンの代わりとなる動力として、身近な電子機器よりもはるかに大容量のリチウムイオン電池を積んでいます。
ガソリン車を含む車両火災の原因は燃料漏れや電装品のショートなどさまざまですが、EV車の火災では、主に搭載されているリチウムイオン電池が何らかの原因でショートを引き起こし、発火することが原因として挙げられます。
EV車(電気自動車)とリチウムイオン電池の特徴
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、高出力を出しやすいといった特徴を持っています。
車を運転する上で、急加速といった操作時にも瞬時に大きな電力を出すことができたり、エネルギー効率が良く長距離走行も可能となるといった理由などから、世界的にEV車の主流を占めている電池です。
さらに軽量で自己放電が少ないという特性もあり、車両を長時間放置したとしても、ある程度電力消耗を抑えられるといったメリットも兼ね備えています。
しかし、このような車に最適な高いポテンシャルを持つ一方で、熱に弱く、熱暴走のリスクを持ち合わせていることが昨今話題になっています。
強い衝撃、内部ショート、過充電などが起こると、急激に発熱・発火する性質があるのです。
この性質は昨今、スマホやモバイルバッテリー発火の原因として全国ニュースなどで取り上げられており、自動車ユーザーだけでなく電子機器を持つ多くの人にとっても身近な話題となっています。
世界的に見たEV火災の発生件数
前述のように、リチウムイオン電池の関わる火災はスマホなど一般的な電子機器にも関係することから、身近に起こり得る事象として注目が集まっています。
しかし、実際にEV車による火災発生件数をガソリン車と比較してみたとき、その数は微々たるものです。
アメリカ国家運輸安全委員会(NTSB)が発表した統計データによると、販売10万台あたりの火災件数は、
・EV車(電気自動車):約25台/10万台
・ガソリン車:約1,530台/10万台
・ハイブリッド車:約3,475台/10万台
と、EV車の火災はガソリン車・ハイブリッド車と比較して非常に低い件数となっており、世界的に見てもむしろ火災のリスク自体が低いと言えるのではないでしょうか。
とはいえ、EV車の普及台数が増加するにつれ火災事故件数が増えていく可能性はあるため、今後の動きに注目しておく必要があります。
出典:データは、EVは従来の車よりも火災リスクが低いことを示しています。|環境・エネルギー調整局
EV火災は消えにくい?その理由を解説

EV火災が消えにくいとされる理由は電池の構造と化学反応にあります。
ガソリン車の火災は、燃料が燃え尽きれば鎮火へ向かいますが、EVの場合、電池内部で熱暴走が起こると自己発熱が連鎖的に続き、消火活動が難航します。
また、電池は密閉構造でパッキングされているため、消化活動の際、水や消火剤が車内部の火元に直接届きにくいことも、火が消えにくいとされる要因といえるでしょう。
リチウムイオン電池の構造が関係する火災発生のメカニズム
リチウムイオン電池は、正極・負極・電解液・セパレーターから構成されており、エネルギー密度が高いのが特徴です。そのため、より軽量で高出力が求められるEV車には適している電池といえます。
しかし、内部短絡や外部からの衝撃、過充電などが発生すると、電池内部で急激な発熱が起こり、電解液が気化・発火します。このとき、電池セルが連鎖的に熱暴走を起こすことで、火災が一気に拡大してしまいます。
密閉された電池パック内での発火は、外部からの消火活動を困難にし、長時間燃え続ける原因となります。
参考:リチウムイオン電池の構造・仕組み・種類|古河電池株式会社
消火・鎮火を困難にするEV特有の要因
リチウムイオン電池の火災のメカニズムとして、電池パックの密閉構造や高エネルギー密度であること。そして、一度電池が発火すると連鎖的に広がり、さらには火元まで消火剤が届きにくいことについて説明しました。
鎮火を困難にするその他の要因としては、消火活動中に有毒ガスの発生や感電するリスクも挙げられます。
これらは火災と異なり、人間の目によってその発生有無を瞬時に識別することができない現象で、従来の消火方法をおこなえば二次的な危険を招く可能性もあることから、EV車の火災には専門知識や専用装備による対応が必要となるのです。
EV火災の現場に遭遇した場合

では、万が一目の前で自分が運転していたEV車から煙が出始めたらどのように対処すればよいのでしょうか?
結論からいえば、ドライバー自身が消火活動にあたる必要はありません。むしろ非常に危険を伴いますから、消火をおこなうのは控えましょう。
もし、EV車を運転中、異常な熱・煙・異臭の発生に気づいたら、ハザードランプを点滅させつつ後方の車に緊急事態を知らせながら、なるべく路肩側に停止しましょう。
その後、速やかに119番への通報をおこないます。その際、可能であれば「EV車、または電気自動車が燃えている」ことを伝えておくことで、消防隊による消火活動がより安全に、そして迅速におこなわれるための助けとなります。
通常の車両火災であれば飲料水をかけたり、上着などで炎を覆って鎮火を試みることも有効な場合がありますが、EV車の車両火災について消火が困難であることはここまでお伝えしてきた通りです。
もどかしくなる気持ちはわかりますが、消火活動は控え、車内に忘れ物があることに気づいたとしても車に近づかないようにしましょう。
むやみな行動により避難が遅れれば、火事に巻き込まれたり、感電するリスクや有毒ガスを吸い込む可能性もあります。
二次的被害を生むような行動は避け、安全な場所に避難した上で消防隊の到着を待ちましょう。
2026年以降のEV安全基準がさらに引き上げ

国土交通省は、電気自動車等のさらなる安全を確保しつつ普及を促進するため、2025年9月26日に道路運送車両の保安基準を改正しました。
その中で「電気自動車などのバッテリー火災発生時の乗員保護性能確認試験」を新たに義務付けています。
新保安基準の適用は2027年と2030年に
この新保安基準については、新型車の適用が2027年9月から、継続生産車への適用が2030年9月からとなる見通しです。
今回の法改正の趣旨として、「バッテリーが絶対に燃えない」ことを求めるのでなく、「バッテリーが燃え始めても乗っている人が確実に避難できるか」に重点を置いています。
今後、電気自動車に施される試験内容として、バッテリーにレーザーを照射して意図的に過熱し、バッテリー全体が連鎖的に暴走しないことと、車両が異常を検知してドライバーに警告し、警告開始から5分間は火災・爆発・車内への煙の進入が起きないかが確認されます。
この5分という時間設定は、突然のトラブルに見舞われたとしても、ドライバーや同乗者が車を止め、シートベルトを外し、同乗する子どもを連れて車外に避難するために必要な最低猶予時間として想定されています。
出典:電気自動車等のバッテリー火災に対する安全性を確保します~道路運送車両の保安基準等の改正について~| 国土交通省
まとめ: EV火災への正しい理解と心構えが大切
この記事では、EV車の火災が消えにくいとされる理由と、正しい対処方法について解説しました。
リチウムイオンバッテリーのショートによるEV車の火災は、ガソリン車に比べ発生頻度こそ著しく少ないものの、一度発生すれば消火が困難となります。
自動車技術や安全制度がどれだけ進化したとしても、最後にリスクをコントロールするのはハンドルを握るドライバーです。
EV特有の火災リスクを正しく理解し、異常のサインにいち早く気づくこと。そして、冷静に行動ができるかは、技術の発達や法律の整備だけでは埋めきれない「人の部分」にかかっています。
その「人の部分」を補う教育、それがJAF交通安全トレーニング(通称JAFトレ)です。
JAFトレは、パソコンやスマホ・タブレット端末で受講できる交通安全教材です。
JAFが蓄積してきた交通安全のノウハウを毎月コンテンツとして配信し、危険予知や事故回避のポイントを継続的に学べる仕組みになっています。
安全を最優先に行動できるよう、常に知識を最新情報にアップデートしながらドライバーとしての安全意識を高めることができます。
また、管理者機能によりドライバーの受講履歴や進捗を可視化できるため、形骸化しない安全教育が可能となります。
ぜひJAF交通安全トレーニングの受講を検討してみてください。
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