会社の駐車場や訪問先で車のエンジンがかからない…その原因の多くは「バッテリーあがり」です。
日々の業務で車両を利用する企業ドライバーにとって、このようなトラブルが起これば、予定の遅延やキャンセルが発生し、顧客や取引先からの信用を損なう重大なリスクとなります。
バッテリーがあがる原因はさまざまで、使用状況や保守管理が大きく関係しています。
この記事では、バッテリーあがりの主な原因、現場で取れる適切な対処法・予防法を解説し、バッテリーを長持ちさせるコツについても紹介していきます。
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目次
バッテリーがあがる主な原因と発生状況

「バッテリーあがり」とは、バッテリーの電圧が低下することで、各電装品への十分な電力供給ができなくなってしまった状態をいいます。
この状態に陥ると、セルモーター(スターターモーター)を駆動する電気が足りず、エンジンはかからなくなってしまいます。
バッテリーあがりは、さまざまな原因により発生しますが、主に「単なる放電」と「バッテリーの寿命・故障」の2つに分けられます。
ライト類・室内灯などの消し忘れ

JAFの統計によると、バッテリーあがりの原因で多いのは、ライト類や室内灯の消し忘れです。
エンジンがかかっていればバッテリーは充電されますが、エンジンが停止した状態で電装品を使用し続けるとバッテリーに蓄えられた電気を消費し続けるのみとなり、いつかその電力は尽きてしまいます。
最近では、「オートライト機能」が搭載されている車両も多く、周囲の明るさに応じてヘッドライトのON/OFFをを自動的に切り替えてくれます。
このオートライト機能は、駐車時、エンジンを止めた際にもヘッドライトが自動で消灯する仕様になっているので、スイッチがオートに設定されていれば、人的要因によりライト類を消し忘れるということはなくなるので活用しましょう。
しかし、室内を照らすルームランプは、停車後、車内確認などに使うことが多く、スイッチを切り忘れてそのまま車を離れてしまうことも少なくありません。
バッテリーあがりを防ぐには、降車する際に電装品がOFF状態になっているか、必ず確認する必要があります。
出典:バッテリー上がりの原因と症状、点検方法とは? | JAF クルマ何でも質問箱
バッテリーの寿命や劣化、車両の長期間放置

バッテリーは消耗品なので、使用年数や走行距離に応じて徐々に劣化します。
車両の使い方によって大きく異なるものの、一般的な寿命は2~3年とされています。
バッテリーに負担をかける使い方として、エンジンの始動回数が多い(短距離走行の繰り返し)、夜間走行やエアコン使用による電気負荷増大などが考えられます。
社用車の中でも、特に営業用に使われる車両は、使用頻度が高く、長距離運転が少ない傾向にあり、バッテリーの放電に対して充電が足りず、劣化が早まる可能性があるため注意しましょう。
バッテリーの劣化は見た目からは判断しにくいため、突然エンジンがかからなくなるケースもあり、定期的な点検・交換が重要になります。
また、車両を使用していなくてもバックアップ(時計・カーナビなどのメモリー機能)作動のために微弱な電気を常に消費しており、放置期間が長くなるほどバッテリーは自然放電し続け、あがりやすくなります。
年末年始やお盆といった長期連休明け、その前後も合わせて稼働が少ない車両には特に注意が必要です。
社用車のバッテリーがあがったときの対処法・手順

それでは、万が一バッテリーがあがってしまい、エンジンがかからなくなった場合、ドライバーはどうしたらよいのでしょう。
社用車のバッテリーがあがってしまった場合、状況に応じた適切な対応が求められます。
応急処置としては、ジャンピングスタートやロードサービスの依頼などがあります。
ドライバー自身で判断せず、まずは会社の社用車故障時に関する規定や加入している保険内容を確認するなど、慎重に対処しましょう。
ジャンピングスタート(ブースターケーブル)の正しいつなぎ方・手順

ジャンピングスタートとは、別の車両のバッテリーから給電することでエンジンを始動させる方法です。
手順を間違えると、電気系統がショートしてさらに症状を悪化させてしまう危険性があるので、必ず正しい順序で作業する必要があります。
順序としては以下の通りです。
- まずは赤いケーブルの片方を故障車側バッテリーのプラスに接続
- 故障車につないだ赤いケーブルの反対側を救援車側バッテリーのプラスに接続
- 次に黒いケーブルの片方を救援車側バッテリーのマイナスに接続
- 救援車につないだ黒いケーブルの反対側を故障車側のボディーアースに接続
- 接続が確認できたら、救援車側のエンジンをかけて電気を供給する
- 次に故障車側のエンジン始動を試み、エンジンがかかったらケーブルを取り付けと逆の順番で取り外す
・バッテリー容量の小さい車両(救援車)から大きい車両(故障車)へのジャンピングは、救援車の電気回路にダメージを与えてしまう可能性があるので避けましょう。
・最新車種はコンピュータ制御が進み、デリケートになっているので、思わぬ故障につながることも。細心の注意を払って作業をおこなってください。
・少しでも作業に不安がある場合は、JAFや車両保険のロードサービスを利用してプロに任せた方が安心です。
出典:自動車のバッテリー上がりと応急処置 | JAF クルマ何でも質問箱
JAFなどのロードサービスへの依頼

自力での復旧が難しい場合や作業に不安がある場合は、JAFなどのロードサービスを利用すると安心です。
多くのロードサービスは、バッテリーあがりの応急始動やバッテリー交換に対応しています。
また、現場で復旧ができない場合でも、整備工場までの搬送体制を整えてくれます。
バッテリーあがり後の回復方法と注意すべきポイント

バッテリーあがりから無事にエンジンを始動できたからと、安心するのは時期尚早です。
エンジンがかかっていても、バッテリーが回復しているとは限りません。
安全運転や再発防止のためにも、エンジン始動後の正しい対応や点検が重要です。
エンジン始動後に取るべき行動
エンジンが始動した直後は、バッテリーが十分に充電されていない状態といえます。
そのため、始動後はエンジンを切らずにしばらくアイドリングまたは走行し、バッテリーを充電する必要があります。
この際、すぐにエンジンを止めてしまうと、セルモーターを回すための電力が足りず、再始動ができない場合があるので注意しましょう。
また、ジャンピングスタートによって応急的に再始動・走行できても、オルタネータからの走行充電だけではバッテリーは満充電まで充電されることはありません。
販売店舗や整備工場での点検・満充電を依頼しましょう。
再発防止のために点検・充電・交換を検討すべきケース
もし、満充電したにも関わらず、再びエンジンがかからなくなるようなら、バッテリーの寿命や発電系統の故障が考えられます。
2年以上バッテリーを使用していたのであれば交換を検討し、電装品の作動が不安定であれば発電機(オルタネーター)の故障が考えられるので、プロの整備士による点検を実施しましょう。
また、正常な状態でも、短距離走行が多い車両、長期間放置した車両はバッテリーがあがりやすい傾向にあります。
定期的な充電といったメンテナンスが必要です。
会社でできるバッテリーあがり対策
バッテリーあがりを防ぐためには、プロの整備士による点検整備がもちろん安心ですが、日ごろのちょっとした工夫でも対策することができます。
一例として、エンジン停止中にライトやカーナビなどの電装品を過度に使用しないことや、バッテリーの液量、端子の緩みや腐食の有無をチェックする、などがあります。
日常的にこれらを実施し、異常があれば早めに処置することでバッテリーの寿命を延ばすことができます。
また、車は使用していない時も、コンピュータ(ECU)やカーナビなどの電装品バックアップ電源として、電気を常時5~10mA程度消費しています。
エンジンが停止している間はバッテリーからの電気供給となるため、3週間以上乗らないだけで、バッテリー上がりを起こすことがあります(バッテリーサイズやバッテリーの充電状態、車載の電装品により異なる)。
長期間車両を使う予定のない場合でも、1〜2週間に1回、1時間程度走行をすることで、バッテリーあがりのリスクを大幅に減らすことができます。
参考:冬に車のバッテリー上がりが増える理由と予防策|GSユアサ
まとめ:バッテリーあがり対策で職場の安全を守る
この記事では、バッテリーあがりの原因とその対処法・予防法について解説していきました。
自動車が故障する原因の代表ともいえる「バッテリーあがり」は、企業ドライバーにとっても日常業務に大きな支障をきたす一大事です。
しかし、原因の多くは複雑なものではなく、バッテリーの寿命や劣化、ライトの消し忘れといったヒューマンエラーなど、日々の車両管理やドライバーの注意で防げるものがほとんどです。
バッテリーあがりを防ぐことは、企業の信頼と安全を守るドライバーの責任といえるでしょう。
日常の小さな確認と予防を意識して、バッテリートラブルを未然に防止しましょう。
こうしたトラブル対応力や予防意識を高めるには、習慣的かつ実践的な教育が必要ですが、そこでJAF交通安全トレーニング(JAFトレ)が役立ちます。
e-ラーニングコンテンツとして配信する教材のため、すき間時間を利用し、パソコンはもちろん、スマホやタブレットを使い、いつでも受講が可能です。
この記事でも紹介したバッテリーあがり時を含む、社用車にありがちなトラブル発生時の適切な対処方法やトラブルを未然に防ぐための日常点検のポイントなども学習できます。
現場で役立つ知識とスキルを身につけて、業務の安全と信頼を高めていきましょう。
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