ブレーキ踏み間違いのリスク|原因や防止装置(AEB装置)の活用方法を解説

駐車場や商業施設などで起こりやすいブレーキの踏み間違い事故は、高齢者に限ったことではなく、誰にでも起こりうる危険なものです。

ブレーキ踏み間違いを防ぐためにも、ドライバーは危険性や原因について知っておきましょう。

この記事では、ブレーキ踏み間違い事故の危険性や原因に加え、その対策として注目されている「ブレーキ踏み間違い防止装置」や「AEB装置」について詳しく解説します。

これらの装置の仕組みや注意点を知り、安全運転に役立てましょう。

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ブレーキ踏み間違いの危険性

ブレーキとアクセルの踏み間違いは、重大な事故につながりかねない非常に危険な行為です。

特に、駐車場や商業施設など、低速での運転時に発生しやすく、歩行者やほかの車両を巻き込む危険性があります。

ブレーキ踏み間違いを防ぐには、一瞬の判断ミスが、取り返しのつかない事態を引き起こすことを認識しなければなりません。

ブレーキ踏み間違いに世代は関係ない

ブレーキの踏み間違い事故と聞くと、高齢ドライバーによる事故をイメージする方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際のブレーキの踏み間違い事故は、若年層から高齢者まで、全世代で起こりうる事故です。

以下のグラフを見てみましょう。

出典:イタルダインフォメーション No.139|交通事故総合分析センター 

死亡重傷事故は高齢ドライバーに多い傾向がありますが、車両相互の事故件数を見ると若年ドライバーにも多く発生しています。

運転歴の浅い24歳以下のドライバーや、運転に慣れたベテランドライバーでも、状況によっては踏み間違いを起こしてしまう可能性があります。

重要なのは、年齢に関わらず、誰もがペダルを踏み間違える可能性があることを認識し、常に注意深く運転することです。

なお、高齢者と若者では、踏み間違いの原因に違いが見られます。

高齢者の場合、加齢による身体機能の低下や認知機能の衰えが原因となることが多い傾向があります。

対して、若者の場合は、運転経験の不足や焦り、注意散漫などが原因となることが多い点が特徴です。

ブレーキ踏み間違いが起こる原因

ブレーキとアクセルの踏み間違いは、一瞬の油断や焦りから誰にでも起こりうるものです。

ここでは、ブレーキ踏み間違いが起こる主な原因を3つご紹介します。

ペダル位置の誤認

ブレーキとアクセルのペダルは、隣り合って配置されているため、咄嗟のときにどちらを踏むべきか迷ってしまうことがあります。

以下のような状況ではペダル位置の誤認が起こりやすくなるため注意しましょう。

  • 運転に不慣れな場合
  • 急いでいる場合
  • 運転姿勢が悪い場合

発進・後退の際には、各ペダルの位置を落ち着いて確認し、十分に注意しながら操作することが重要です。

また、運転時の姿勢も重要で、正しい姿勢を保つことで足の位置のずれを防ぎ、ペダルの踏み間違いを抑制できます。

焦りやパニックによるミス

予期せぬ事態に遭遇した際、焦りやパニックから冷静な判断ができなくなり、ブレーキとアクセルを踏み間違えてしまうことがあります。

特に、以下のような状況には注意しなけれなりません。

  • 歩行者や自転車が急に飛び出してきた
  • 前の車が急ブレーキをかけた
  • 駐車時に障害物にぶつかりそうになった

間違って踏んだアクセルを慌ててさらに踏み込むことで事故につながるケースもあるため、冷静な対応が不可欠です。

咄嗟のときに正しい操作ができるよう、運転中は落ち着いて、周囲の状況をよく確認してからブレーキ操作をおこなうように心がけましょう。

運転環境の影響

運転環境も、ブレーキ踏み間違いに影響を与える要素です。

混雑時や飛び出しがあったタイミングだと、咄嗟にブレーキを踏む過程でペダルを踏み間違える恐れがあります。

また、疲労が蓄積すると、集中力や判断力が低下し、操作ミスにつながる可能性があります。

運転前には十分な休息を取り、無理のない運転計画を立てることが大切です。

ブレーキ踏み間違い防止装置とは

ブレーキ踏み間違い防止装置は、アクセルとブレーキの踏み間違いを検知して、車両の急発進や加速を抑制する安全装置です。

近年、踏み間違いによる事故の増加などを背景に、その重要性が高まっています。

ブレーキ踏み間違い防止装置の仕組み

ブレーキ踏み間違い防止装置は、センサーとエンジン出力の抑制システムが組み合わさっている仕組みです。

ブレーキ踏み間違い防止装置は、前方・後方にある障害物をセンサーで探知し、障害物がある状態でペダルを踏み間違えた際にドライバーに音や画面表示で警告を発します。

そして、これらの警告でも加速が止められなかった際は、エンジンの出力を抑制し、踏み間違いによる急加速・急発進を防止します。

なお、ブレーキ踏み間違い防止装置はAEBと似ているイメージがありますが、それぞれ以下のような違いがある点に注意しましょう。

ブレーキ踏み間違い防止装置ペダルの踏み間違いによる急加速・急発進を防止するシステム
AEB(衝突被害軽減ブレーキ)自動的に障害物を探知し、ブレーキを作動させることで衝突による被害を軽減するシステム

ブレーキ踏み間違い防止装置は急加速・急発進を抑制するためのシステムに対し、AEBは衝突による被害を軽減するために自動でブレーキを作動させるシステムです。

ブレーキ踏み間違い防止装置は停車させられませんが、AEBはブレーキを自動で作動させることで減速だけでなく、停車も可能です。

ブレーキ踏み間違い防止装置設置の義務化

国土交通省は、2028年9月から新型車を対象に、ブレーキ踏み間違い防止装置の搭載を義務化する方針を決定しました。

近年多発しているブレーキとアクセルの踏み間違い事故を減らすための対策の一環です。

義務化の対象となるのは、28年9月1日以降の新型オートマチック車で、既存の車種についても、順次義務化される予定です。

これにより、2028年9月以降にオートマチック車の新車を購入する際には、踏み間違い防止装置が搭載されることになります。

防止装置設置の義務化により、ブレーキ踏み間違い事故の減少が期待されていますが、装置に頼りすぎるのではなく、ドライバー自身が安全運転を心がけることも欠かせません。

なお、自動車メーカー各社も踏み間違い加速抑制システムを開発し、事故防止に努めています。

参照:交通事故ゼロを目指して。ドライバーの安全運転を支援する先進安全自動車|政府広報オンライン

AEB装置とは

AEBとは、Autonomous Emergency Brakingの略で、衝突被害軽減ブレーキとも呼ばれます

ここでは、AEBについて解説するので、ぜひ参考にしてください。

AEB装置の仕組み

カメラやレーダーなどの機器を用いて前方の車両や障害物を検知し、衝突の危険性があると判断した場合に、ドライバーに警告を発します。

さらに、ドライバーが回避操作をおこなわない場合や、操作が遅れた場合には、システムが自動でブレーキをかけて衝突を回避、または被害を軽減する装置です。

AEB装置は、主に以下の要素で構成されています。

センサーカメラやレーダー、またはその両方を組み合わせたものが使用され、前方の車両や障害物との距離、速度、位置などを測定します。
ECU(電子制御ユニット)センサーからの情報を基に、衝突の危険性を判断します。
ブレーキ制御装置ECUからの信号を受け、必要に応じて自動的にブレーキを作動させます。

システムはこれらの要素が連携して動作することで、衝突の回避または被害軽減を支援します。

AEB装置が装着されているか確認する方法

自分の車にAEB装置が装着されているかは、以下の方法で確認しましょう。

  • ディーラーや販売店に確認する
  • メーカーのWebサイトで確認する
  • 取扱説明書を確認する

ブレーキ踏み間違い防止装置・AEB装置の注意点

ブレーキ踏み間違い防止装置やAEB装置は、安全運転をサポートする非常に有効なシステムですが、過信は禁物です。

これらの装置に頼りすぎるのではなく、ドライバー自身が常に安全運転を心がけることが最も重要です。

ドライバー自身のブレーキ操作が重要

ブレーキ踏み間違い防止装置やAEB装置は、あくまでも運転を支援するシステムであり、完全に事故を防げるわけではありません。

装置が作動する状況は限定的であり、例えば、急な飛び出しや予測不能な状況では、作動が間に合わないこともあります。

そのため、ドライバー自身が周囲の状況を常に把握し、危険を予測しながら運転することが不可欠です。

なお、ブレーキの操作を含め、安全運転に必要な知識を身に付けるなら、ぜひJAF交通安全トレーニングをご活用ください。

JAF交通安全トレーニングでは、交通事故を防ぐ上で役立つさまざまな知識を学べます。

適切に活用すれば、ブレーキの踏み間違いを始めとする運転ミスの防止にも効果的です。

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性能を過信しない

ブレーキ踏み間違い防止装置やAEB装置は、それぞれ作動条件や性能に限界があります。

例えば、AEB装置は、対象物との速度差や距離によっては作動しない場合があります。

また、夜間や悪天候時には、性能が低下するリスクにも注意しなければなりません。

装置の性能を過信せず、取扱説明書をよく読んで、作動条件や限界を理解しておくことも大切です。

後付けできない場合がある

ブレーキ踏み間違い防止装置には後付けできる製品も存在しますが、車種や年式によっては取り付けられない場合があります。

そのため、後付けを検討する際は、事前にメーカーや販売店に適合を確認することが重要です。

後付けの装置は、純正品と比較して性能が劣る場合や、車両の保証対象外となる場合もあります。

なお、AEB装置は後付けができません。

正常に作動しない場合がある

ブレーキ踏み間違い防止装置やAEB装置は、センサーやシステムに異常が発生した場合、正常に作動しないことがあります。

例えば、センサーの汚れや故障は、誤作動を起こしたり、作動しなかったりする原因になります。

定期的な点検やメンテナンスをおこない、装置が正常に作動することを確認しましょう。

まとめ:安全運転のためにブレーキ踏み間違いを防ごう

ブレーキとアクセルの踏み間違いは、年齢に関わらず誰にでも起こりうる危険な事態です。

ペダルの誤認・焦りやパニック・運転環境など、さまざまな要因が重なって発生する可能性があります。

近年ではブレーキ踏み間違い防止装置やAEB装置といった安全技術が開発され、普及が進みました。

これらの装置は、ブレーキ踏み間違いによる事故を未然に防ぐための有効な手段です。

しかし、装置に頼り切るのではなく、ドライバー自身が安全運転を心がけることが欠かせません。

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