近年は、さまざまな最新技術が開発され、自動車に搭載されるようになりました。
いずれの最新技術も自動車の利便性や安全性を高める画期的なものばかりです。
昨今、自動車に搭載されるようになったOTAも最新技術の一種であり、多方面から注目を集めています。
しかし、OTAがどのようなものかわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では自動車に活用されるOTAについて解説します。
OTAの仕組みや、今後運用される上で解決しなければならない課題などについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
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目次
OTAとは?
OTAは「Over The Air」の頭文字を取った略称であり、無線ネットワークでソフトウェアの更新や制御などをおこなう機能を指します。
なお、ファームウェアの更新に用いられる場合は「FOTA」、ソフトウェアに用いられる場合は「SOTA」とも呼ばれます。
昨今は高精度なコンピューターが搭載された自動車が増えており、制御のためにさまざまなソフトウェアが組み込まれるようになりました。
一方で、ソフトウェアに不具合があった場合、自動車のトラブルにつながるリスクがあります。
そのため、OTAのようにスピーディかつスムーズにソフトウェアの更新や制御ができる技術が注目されています。
OTAの仕組み
OTAは一見難しそうなイメージがありますが、その仕組みは身近で使われている技術と同じです。
私達は無線ネットワークを介し、日常的にスマートフォンやパソコンのアプリケーションやOSをアップデートしています。
この技術がOTAであり、自動車においても、CD-ROMや有線ケーブルを使わずとも、ソフトウェアの更新や制御が可能です。
OTAが実用化された背景には、インターネットや通信技術の発展が影響しています。
昨今はインターネットや通信技術が発展し、5G回線が開通するなど、安定的で高速な通信が可能になりました。
導入しやすい環境が整ったことにより、多くの企業でOTA技術が活用されています。
自動車のOTA技術でできること
ここでは自動車のOTA技術でできることを解説します。
OTA技術の原理は、さまざまな場面で応用できるものです。
それぞれの活用方法について、順番に解説します。
無線によるカーナビの更新
昨今は、OTAによるカーナビのデータ更新が可能になりました。
従来のカーナビは、データを更新する際にCD-ROM・DVD-ROMなどのソフトを購入し、古いものと入れ替える作業が一般的でした。
カーナビのデータ容量が増えてからは、フラッシュメモリによる更新がおこなわれるようになりましたが、大まかな手順はROMを利用していた時代とほとんど変わりません。
しかし、OTAを導入すればカーナビの更新を無線でおこなえるため、わざわざ販売店で更新用のROMやフラッシュメモリを購入する必要がありません。
またデータの更新はもちろん、軽微の動作不良であれば無線で修正できます。
リアルタイムな車両管理
OTA技術を活用すれば、リアルタイムな車両管理も実現できます。
以前までは、コンピューターを診断したり、不具合を修正したりする際は販売店に自動車を持っていく必要がありました。
しかし、OTA技術を活用すれば、販売店に足を運ばなくても、コンピューターの状況把握や操作が可能です。
リアルタイムでコンピューターの異常検知もできるため、不具合が発生した際の対応もスピーディになりました。
またOTA技術による車両管理は、不具合の対応だけでなく、快適な運転や車内環境の実現にも役立ちます。
昨今では、運転支援システムやエアコンをリモート操作するアプリケーションなどの開発にも、OTA技術が用いられています。
車両データの収集
車両データをスムーズに収集ができる点も、OTA技術の特徴です。
OTA技術は車載コンピューターだけでなく、自動車の運転に関わるさまざまなデータを計測できます。
車内の気温・走行中の速度・GPS座標・走行距離・燃費・時間・気圧など、自動車だけでなく、車内・車外の情報も収集できます。
さらにカメラやセンサーを設置すれば、より高度な情報収集も可能です。
収集された車両データは自動車の故障の有無を把握したり、メンテナンスをおこなうタイミングをチェックしたりする際に役立ちます。
ほかにも、危険運転があった際や事故に遭った際のデータをクラウドで保存し、証拠として使用するケースもあります。
また、車両データを自動運転システムの開発・運用に応用する企業もあるなど、多方面で役立てられている点も特徴です。
リモートによる車両アクチュエータへの指示
OTA技術は車両に搭載されたアクチュエータの操作にも役立ちます。
アクチュエータとは、自動車の部品やシステムを動かすための機械です。
OTAを活用すれば、ブレーキ・ステアリング・自動車のドアなど、自動車のさまざまな動作をリモートで制御できます。
さらにエンジンのバルブ開閉をリモートで制御することにより、自動車の安全な停止も可能です。
リモートによる制御は、交通事故の回避やドライバーの安全確保などで活用されています。
セキュリティの向上
近年の自動車はコンピューターの導入が進んでいるため、アプリケーションやシステムのセキュリティ対策も重要視されています。
もちろん、セキュリティ対策においても、OTAは活用が可能です。
OTAはスマートフォンやパソコンのように、自動でセキュリティの機能を向上させるパッチの配布や、システムのアップデートを可能にします。
車載システム全体をリアルタイムで監視し、各機能を最新の状態に保てるため、ドライバーは常に万全のセキュリティで自動車を利用できます。
さらに、自動で侵入テストをおこない、システムの脆弱性やセキュリティホールの有無を調べられる点もOTAの強みです。
自動車のOTA技術における課題
OTAは自動車の運転や車両の管理において、さまざまなメリットをもたらします。
しかし最先端の技術であるため、まだ解決すべき課題が残っている点には注意しなければなりません。
ここでは、自動車のOTA技術における課題について解説します。
法規制の整備
OTAは最新の技術であり、昨今ではテスラやトヨタなどの自動車メーカーがこぞって導入を試みています。
一方で、最先端の技術であるため、OTA技術は法規制の整備が急務です。
日本では、2021年から自動車のサイバー攻撃対策を義務付ける「UN-R155」が施行されています。
UN-R155により、OTA対応・非対応に関わらず、サイバーセキュリティ対策の実装を求められるようになりました。
しかし、UN-R155は混乱を避けるために、段階的に導入されており、すべての自動車に適用されるのは2026年5月です。
そのため、各自動車メーカーは2026年以降を見据えてOTA技術の導入や整備を進めなければなりません。
また、業界で導入する際にはOTAに関連する規格の整備も必要です。
自動車のサイバーセキュリティ対策に係る国際標準規格はすでに設定されていますが、ソフトウェアのバージョンやアップデートに関する規格は現在進行形で進められています。
IT人材の確保
OTAは最先端のIT技術を応用した技術であるため、適切に運用するには自動車メーカーによるIT人材の確保が不可欠です。
特にセキュリティやネットワークインフラなどに携わった経験のある人材は、OTAの運用に欠かせないため、多くの自動車メーカーが積極的に採用しています。
しかし、昨今はITスキルを持つ人材不足が深刻化しており、IT人材の確保はより激化すると見られています。
また、IT技術の発展に伴い、今後はAIやビッグデータなど、さらなる先端技術の導入も課題です。
そのため、同じIT人材でも、さまざまなジャンルのノウハウを持つ人材の確保に取り組む企業も増えています。
セキュリティの強化
OTAは車載コンピューターのセキュリティを守る上でも活用されますが、OTA自体のセキュリティ強化も、重要な課題です。
OTAは無線ネットワークによるシステムやソフトウェアの更新を可能とする一方、自動車が常時ネットワークに接続されている状況を作ります。
そのため、データの送受信時にサイバー攻撃を受けるリスクが高く、セキュリティ対策を講じなければシステムに侵入される事態を招きかねません。
また、自動車に搭載されるOTAは、セキュリティを管理するスパンが長い点にも注意が必要です。
一般的に自動車は購入されてから数年以上使用されることが一般的であり、ユーザーによっては20年近く使用するケースもあります。
ユーザーの安全や利益を守るためにも、メーカー側も10年・20年単位でセキュリティを管理できるノウハウが求められます。
さらに開発・リリース・運用・廃棄と、製品のライフサイクルを見据えたセキュリティ対策も欠かせません。
最善の状態でOTAを提供するためには、生産時点からメーカーが統括的にセキュリティモニタリングができるだけの体制を構築する必要があります。
OTAは便利な技術ですが、常時ネットワークに接続することで自動車がハッキングされるような、新たなリスクを招く可能性もあります。
今後OTAの普及を進める上でも、ドライバーが安心して利用できるセキュリティ対策は自動車業界全体で取り組むべき課題です。
まとめ:自動車のOTA技術は課題をクリアすればさらに発展する
OTA技術とはスマートフォンやパソコンのように、無線ネットワークを活用することで、ソフトウェアやシステムの更新・制御などをおこなう技術です。
特に、自動車に搭載されたソフトウェアやシステムの更新・制御、車両データの収集などは、OTAを導入すれば、よりスムーズな実践が可能です。
ユーザー側にとっても、車載コンピューターの整備のために販売店やディーラーに足を運ぶ必要がなくなります。
一方、法規制の整備やセキュリティの強化など、OTAにはさまざまな課題があり、多くのメーカーが日々研究開発に取り組んでいます。
課題をクリアしていけば、OTAはさらなる発展を実現できるでしょう。
とはいえ、普及するには時間がかかります。
さまざまな技術の発展で、自動車事故が無くなるまでは、企業として交通安全に対する取り組み必要です。
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