社用車を購入する際は、現金購入やカーローンなどの取得方法を事前に決めることが大切です。
社用車の取得方法によって経費の計上方法が大きく異なるためです。
経費計上のポイントをしっかりと理解することで、社用車を経費にできないリスクを回避できるほか、車を取得する適切なタイミングを見極められます。
本記事では、社用車を経費計上する際のポイントや注意点を詳しく解説します。
社用車関連で経費に算入できるものも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
社用車を経費計上する際のポイント
基本的に社用車を取得する際は経費計上が可能です。
ただし、取得手段によって経費の計上方法が異なります。
ここでは、現金購入やカーローンなどの取得方法別に、経費計上のポイントを解説します。
1. 現金で新車を購入する場合
現金で社用車を購入する場合、「車両運搬具」として経費を計上します。
ただし、一括で経費計上はできず、法定耐用年数に応じて費用を配分する減価償却によって処理する必要があります。
その際、新車と中古車で法定耐用年数が異なる点には注意が必要です。
新車の場合、普通自動車は6年、軽自動車は4年の法定耐用年数が定められています。
減価償却の計算方法には、「定率法」と「定額法」の2種類があります。
それぞれの計算式は以下のとおりです。
- 定額法 = 取得価額 × 省令で定められた定額法の償却率
- 定率法 = (取得価額 - 減価償却累計額)× 定率法の償却率
また、仕訳方法は、固定資産の金額から減価償却費を差し引く「直接法」と、減価償却累計額として計上する「間接法」に分かれます。
2. 現金で中古車を購入する場合
現金で中古車を購入した場合も新車と同様、「車両運搬具」として経費を計上します。
ただし、耐用年数を再計算する必要があります。
中古車の耐用年数の計算方法は以下のとおりです。
- 使用年数が法定耐用年数を超過している場合:
法定耐用年数 × 20% - 使用年数が法定耐用年数に満たない場合:
(法定耐用年数 - 経過年数)+ 経過年数 × 20%
なお、計算結果の1年未満の端数は切り捨て、2年未満の場合は2年として扱います。
例えば、使用年数が6年を超える普通自動車を購入した場合、「法定耐用年数6年 × 20%」で耐用年数は1.2年です。
計算結果が2年未満なので、耐用年数は2年になります。
減価償却の計算方法や仕訳方法は新車の場合と同じです。
3. カーローンを利用する場合
カーローンを利用して社用車を購入した場合も現金購入時と同様、「車両運搬具」として経費計上し、法定耐用年数に応じて減価償却をおこないます。
減価償却の計算方法や仕訳方法も変わりません。
現金購入時と異なるのは、頭金は「前払金」として、カーローンの残債は「長期未払金」として処理しなければならない点です。
また、カーローンの返済時に支払う利息は、「支払利息」として経費への算入が可能です。
4. カーリースを利用する場合
カーリースには、車の取得価額を月々の支払いに分散できる特徴があり、リース会社に支払う代金を「リース料」として経費計上します。
月々の代金には車両本体価格や新車登録諸費用、自動車税などが含まれており、リース料として一括で計上できるのが利点です。
ただし、取引形態によって仕訳方法が異なる点に注意が必要です。
カーリースの取引形態には、「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の2種類があります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
- ファイナンス・リース取引:
中途解約ができず利用者自身で車体の修理をおこなう取引形態。車を購入する場合と同様、資産計上と減価償却が必要。 - オペレーティング・リース取引:
リース会社に車両の所有権を残したまま車を利用する取引形態。単に車両を借りるだけなので、会計時はシンプルな賃貸借処理をおこなうだけで済む。
オペレーディング・リース取引は、会計処理の手間を軽減しつつ、リース料の総額を低く抑えられます。
一方、ファイナンスリース取引は使用予定に合わせてリース期間を設定できるため、社用車が陳腐化するリスクを回避できるメリットがあります。
社用車を経費計上する際の注意点
社用車を経費計上するには、いくつか注意すべきポイントが存在します。
ここでは、複数の観点から注意点を解説します。
車種や用途によっては経費として認められない可能性がある
高額な資産を経費として計上するには、事業における必要性を客観的に証明する必要があります。
そのため、車種や用途によっては、経費として認められない場合がある点に注意しましょう。
例えば、スポーツカーのような趣味性の高い車種や、あまりにも高額な高級車などは、税務調査で指摘を受ける可能性があります。
そのほか、社用車を経営者や従業員が個人的に使用する頻度が高い場合も、経費計上できないケースが想定されます。
経費計上の可否に関して不安があれば、社用車の使用実績を記録するのが効果的です。
目的地やそのルート、走行距離、発生した費用の内訳などの情報があると、客観的に見たときに事業性の有無を把握しやすく、経費として認めてもらえる可能性が高まります。
契約するタイミングを見極める必要がある
年度の途中で社用車を取得すると、月割りで減価償却費を計算しなければなりません。
減価償却の開始月は、納車された月を基準として考えるのが一般的です。
仮に3月決算の企業が7月に社用車を取得した場合、9ヶ月分が減価償却費となります。
さらに、月の途中で社用車を取得すると、1ヶ月分の減価償却費として扱われます。
このように、社用車の取得時期によってその年度に計上できる減価償却額に違いがあるため、決算日から見た適切な納車タイミングを見極めることが重要です。
決算の翌月に社用車を取得すれば、その年度のすべての月数分、減価償却費を計上できます。
社用車の維持にも費用がかかる
社用車を経費計上すると節税効果が高まるものの、継続的に維持費が発生する点には気を付けましょう。
車の維持費にはガソリン代や駐車場代、メンテナンスコストなどが含まれます。
社用車の維持費も取得費と同様に経費計上が可能です。
しかし、それぞれの料金を支払う際にある程度まとまった資金が必要なので、資金繰りが悪化する可能性も考えられます。
社用車を取得する前に、節税効果だけでなく、取得費や維持費の負担も考慮に入れておきましょう。
社用車関連の費用で経費として処理できるもの
社用車を維持・運用する際に発生する保険料や車検費用、ガソリン代といった費用は、経費として処理できるものが少なくありません。
経費計上できる費用の種類を押さえましょう。
1. 保険料
社用車を購入する際は、強制的な加入が求められる自賠責保険と、自己判断で任意保険に加入します。
いずれの保険でも、「車両費」または「保険料」として経費計上できるのが特徴です。
ただし、1年以上の契約期間の保険料を一括で支払った場合は、自賠責保険と任意保険では経費の計上方法が異なります。
自賠責保険では、会計年度ごとに支払った金額をすべて経費計上します。
一方の任意保険では「長期前払費用」の資産として扱われ、経過期間に応じて按分計上するのが一般的です。
2. 車検費用
社用車も自家用車と同様、定期的な車検が必要です。
自家用車と異なるのは、事業目的で利用する車の車検費用は経費計上が認められている点です。
車検に必要な費用は、整備や点検によって発生したコスト(メンテナンスコスト)と、車検代行手数料に分けられます。
メンテナンスコストを経費計上する際は、「車両費」の勘定科目で処理します。
車検代行手数料の場合は「支払手数料」として経費計上するのが一般的です。
社用車の中でも、旅客用や貨物用の緑ナンバーの車は、自家用車と車検の有効期間が異なります。
例えば、総重量8トン未満の貨物自動車の場合、初回の車検のタイミングは2年で、以降は1年ごとに検査が必要です。
3. 税金
自家用車や社用車に限らず、車を所有していると自動車税や自動車重量税などが課されます。
これらの税金は「租税公課」として経費計上が可能です。
租税公課とは、国税や地方税、地方自治体などに支払う賦課金を、経費として処理するための勘定科目です。
租税公課には、自動車税や自動車重量税のほか、収入印紙代も含まれます。
また、社用車の購入時に支払う自動車税(環境性能割)に関しては、車両運搬具の取得価額に算入するか否かを各企業の裁量で選べます。
4. ガソリン代
社用車の維持に必要なガソリン代は、「車両費」や「燃料費」として経費計上するのが一般的です。
そのほか、企業によっては「旅費交通費」として処理するケースもあります。
税務上、どの勘定科目を使用しても構いませんが、継続的に同一の仕訳方法を選択し、社内で統一するのが理想です。
例えば、車両費は社用車にまつわる幅広い費用を処理できるため、管理しやすいメリットがあります。
一方、車両費の中でも保険料なのか、ガソリン代なのか、一目で把握しづらいのが難点です。
このようなメリット・デメリットを理解しつつ、自社に合う勘定科目を選択しましょう。
また、決算時に未使用分のガソリン代があれば、「貯蔵品」として計上します。
5. 駐車場代
駐車場代もガソリン代と同様、複数の選択肢から勘定科目を選択できます。
仮に月極の駐車場を契約している場合、「地代家賃」として処理するのが一般的です。
そのほか、コインパーキングをはじめとする一時的な駐車場代は、「車両費」や「旅費交通費」、「雑費」などで経費計上すると良いでしょう。
月極と一時的な駐車場代の勘定科目を分けるのは、税務調査対策になるためです。
経費が正しく計上されていない場合は、違反金などの罰則が科される可能性がありますが、上記のようなポイントを意識して仕訳すると、帳簿の明瞭性を担保できます。
加えて、駐車場代をクレジットカードで決済すると、駐車場の利用日とクレジットカードの引き落とし日の2回に分け、仕訳する必要があります。
6. 洗車代
洗車代を経費計上する際は、高額な費用であれば「車両費」としてまとめて処理するのがおすすめです。
車両費の勘定科目で整理すると、経費管理がスムーズになります。
費用が少額、あるいは頻度が少ない場合は「雑費」、社用車を資産として捉えるなら「修繕費」として計上するのも方法の一つです。
7. 備品代
社用車に関連する備品には、以下のような種類があります。
- タイヤのホイール
- エアコン
- カーステレオ
- 消臭剤
- 洗車用品
タイヤのホイールやエアコンなど、社用車と同じタイミングで購入した備品は、車の取得価額にその費用を含めます。
そのため、「車両運搬具」として固定資産を計上し、あわせて減価償却が必要です。
消臭剤や洗車用品などの備品は、「車両費」や「消耗品費」として処理しましょう。
社用車購入時には安全運転教育も見直そう
社用車を購入する際は経費を意識するだけでなく、従業員への安全運転教育を見直すことも大切です。
社用車の種類や数が増えると、事故やトラブルのリスクが高まるためです。
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社用車購入の機会に合わせて、安全運転教育の環境を整えてみてはいかがでしょうか。
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まとめ:社用車の経費に対する理解を深めよう
社用車の購入費用や関連コストの多くは経費として処理できます。
社用車の取得方法によって仕訳方法が異なるといったポイントや注意点を把握した上で、適切に計上しましょう。
事前に経費処理の工数を理解しておくことで、自社に合った手段が見つかりやすくなります。
また、社用車の購入に合わせ、この機会に安全運転教育の環境を見直すことも重要です。
効率良く体系的な知識を習得したい方は、前述した「JAF交通安全トレーニング」をご検討ください。