社用車を電気自動車に変えるメリットは?費用や導入のポイントを解説

「社用車を電気自動車に変えるメリットを知りたい」

「電気自動車を導入する際のコストやデメリットについて知りたい」

このような悩みをお持ちではないでしょうか。

本記事では、社用車を電気自動車へ変えることで生じるメリットやデメリット、導入時に生じるコストなどについて解説します。

スマホやタブレットでの受講も可能

社用車を電気自動車に変えるメリット

電気自動車には、ガソリン車にはないメリットが存在します。

ここからは、社用車を電気自動車に変えるメリットについて解説するため、電気自動車の導入を検討している方はぜひ参考にしてください。

燃料費を抑えられる

社用車を電気自動車に変えることで燃料費の削減が可能です。

ガソリン車が、1kmを走るのに必要なコストは約9.2円であるのに対し、電気自動車であれば約4.8円で走行が可能です。

そのため、仮に社用車を月に1,500km走らせている企業であれば月に約6,600円、年間約79,200円削減できます。

電気自動車ガソリン車差額
1kmあたりのコスト約4.8円以下の場合・燃費6.5km/kW・電気代31円/kWh約9.2円以下の場合・燃費18.9km/L※1・ガソリン代(レギュラー)174円/L※2約4.4円
1月あたりのコスト※1,500kmで計算約7,200円約13,800円約6,600円
1年あたりのコスト※18,000kmで計算約86,400円約165,600円約79,200円
参考
※1:国土交通省「自動車燃費一覧(2)ガソリン乗用車のWLTCモード燃費平均値の推移
※2:資源エネルギー庁「石油製品価格調査(2024年3月13日(水)結果概要版)

さらに、夜間などの電気料金が安い時間帯に充電するようにすれば、より燃料費の節約ができるでしょう。

購入時に国からの補助金が使える

電気自動車を新規購入する際は、国や地方自治体からの補助金が使える点も大きなメリットです。

経済産業省は、2023年3月よりCEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)の支給を開始しており、申請によって通常のEV車で85万円、軽EVで55万円までの補助金を受けられます。

以下は2023年(令和5年度)に実施された際の金額や条件を示した表です。

補助金の上限額EV:85万円軽EV:55万円PHEV(プラグインハイブリッド車):55万円
支給条件1.一定期間内における該当車種の新規購入2.購入したEV車などを一定期間保有する(原則4年間)
申請書受付期間・4月1日~4月30日までに初度登録された車両については5月31日まで・5月1日以降に初度登録された車両については登録から1カ月以内
参考
次世代自動車振興センター「CEV 補助金(車両)のご案内
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)の概要│経済産業省

国からの補助金以外にも、各地方自治体においてもEVに関連する補助金が実施されています。

補助を受けられる対象や内容は、自治体ごとに異なるため、詳しくは所属する自治体のWebサイトを確認してみてください。

減税制度を利用できる

電気自動車は税金面も優遇されており、以下のような措置を受けることが可能です。

  • 購入時の環境性能割が非課税
  • グリーン化特例による自動車税種別割の約75%軽減
  • エコカー減税により自動車重量税が免税

また、東京都や愛知県など一部の自治体では、新規登録のEVは自動車税種別割が5年間免除されるなどの取り組みもおこなっています。

メンテナンスコストが抑えられる

電気自動車は、エンジン車に比べてパーツ数が少ないことから、メンテナンスコストを抑えて維持・運用が可能です。

エンジン車には、約3万点ものパーツが使われているのに対し、電気自動車は約1万のパーツ数で構成されているため、交換する部品数そのものが少なくなっています。

また、電気自動車はエンジン車と比べて、振動や高温など車体に負担のかかる動作も少なく、劣化が進みにくい点から少ないコストでメンテナンスが可能と言われています。

CSRやSDGsにつながる

電気自動車のメリットの一つがCO2を排出しない点です。

このことから、電気自動車への変更は、CSR(企業の社会的責任)やSDGsへつながると考えられるでしょう。

現在、温室効果ガスを2050年までに実質的に0にする取り組みが世界規模で実施されており、CO2削減への動きに大きな注目が集まっています。

日本においても「温室効果ガス0」の実現を目指すことが宣言されており、施策の一つとして2035年までに販売する新車を、すべて電気自動車にする目標を発表しています。

上記の背景から、CSRやSDGsの活動実績は顧客や株主からの評価や信用にもつながるでしょう。

緊急時に電源として利用できる

電気自動車のバッテリーは、緊急時やアウトドアでの電源としても利用可能な車両も増えています。

電気自動車を電源として使用するためには、外部給電器や充放電設備を接続する必要があります。

種類メリットデメリット
V2L(外部給電器)・緊急時やアウトドア、屋外イベントなどで活用できる・使える電気量が限られている
・車への充電はできない
V2H(充放電設備)・「車から建物への給電」「建物から車への充電」が可能・停電時でも普段に近い生活が可能となる・対応車種が少ない

また、車種によっては車内に電源コンセントが備わっており、直接コンセントを挿すだけで使用できるものもあります。

BCP対策の一つとして利用できる

電気自動車の導入により、BCP対策におけるリスクマネジメントの一つとして利用可能です。

地震や台風、大雪などの自然災害が発生した場合、道路の損傷や渋滞により身動きが取れなくなるケースが考えられます。

電気自動車を導入し、BCP対策の一つとして利用方法を周知しておけば、上記のような状態でも電源が確保できるため、ある程度の安全を担保できるでしょう。

また、スマートフォンの充電に使うなど連絡手段の確保にもつながるため、早急な安否確認や事業の早期復旧にも役立ちます。

社用車を電気自動車に変えるデメリット

電気自動車は、ガソリン車とは異なるメリットがある一方でデメリットも存在します。

導入後に後悔しないためにも、メリットとデメリット両方をしっかりと把握してから導入するようにしましょう。

航続距離が短い

一つ目のデメリットは、電気自動車はガソリン車と比較して航続距離が短い点です。

ハイブリッド車の場合、ガソリンを満タンにすれば600km以上走行できるケースがほとんどで、車種によっては1,000km以上の航続距離を持つものもあります。

一方、電気自動車(国産車)の場合、フル充電されている状態であっても航続距離は200〜600kmとなっています。

たとえば、日産の電気自動車の航続距離は以下の通りです。

車種航続距離
日産サクラ約180km
日産リーフ約322km
日産リーフ(e+)約450km
日産アリア(B6)約470km
日産アリア(B9)約640km
参考:日産自動車

ただし、技術の進歩によって電気自動車の航続距離が伸び続けているため、将来的にはガソリン車に匹敵する航続距離を持つ電気自動車が出てくる可能性もあるでしょう。

車両価格が高い

二つ目のデメリットは、ガソリン車と比較して車両価格が高い点です。

以下は、各自動車メーカーで掲載されている軽自動車の価格です(2024年3月時点)。

車種電気自動車/ガソリン車車両価格
日産サクラ(日産)電気自動車2,548,700円~
eKクロス EV(三菱)電気自動車2,546,500円~
日産ルークス(日産)ガソリン車1,637,900円~
ピクシス バン(トヨタ)ガソリン車1,122,000円~
参考
日産自動車
三菱自動車
TOYOTA

同メーカー・同タイプの車であっても100万円前後の価格差があり、普通車などのタイプであればガソリン車より200万円以上の価格差があるケースがほとんどです。

ガソリン車と比較して車種が少ない

三つ目のデメリットは、ガソリン車と比較して車種が少なく、自社の用途にあった電気自動車が選びにくい点です。

近年、各自動車メーカーから、さまざまなタイプの電気自動車が登場していますが、ガソリン車と比べると選択肢が少ないのが現状です。

特に、トラックなど特定の用途を持ついくつかの電気自動車は普及が進んでいないため、業種によっては現時点での導入は難しいといえるでしょう。

全国的に給電設備が少ない

電気自動車が実用的に充電できる設備が、ガソリンスタンドと比較して全国的に少ない点もデメリットの一つです。

電気自動車の充電方法には「普通充電」と「急速充電」の2種類がありますが、充電時間の関係上ガソリンスタンドと同じように使用できるのは「急速充電」です。

2023年時点で全国にあるガソリンスタンドおよび急速充電器の数は以下の通りです。

ガソリンスタンド27,963(※)
EV充電スタンド(急速充電)10,128
※参考
令和4年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました|資源エネルギー庁

また、各都道府県における設置数にも大きな差があり、電気自動車を運用する場合は、事前に給電できる場所を調べておく必要があります。

自社に給電設備を設置する必要がある

社用車として電気自動車を運用する場合は、自社への給電設備の設置が不可欠です。

給電設備の設置には工事が必要で、高額な費用が発生するケースもあります。

また、工事が必須であることから、駐車場を借りている場合は給電設備の設置のハードルは高くなると言えるでしょう。

電気自動車を導入する際のポイント

電気自動車を導入する際は、しっかりとポイントを抑えて選ばないと操作面やメンテナンス面において不都合が生じる可能性があります。

導入後に「別の車種にしておけばよかった」とならないよう、以下に紹介するポイントを参考にしてください。

用途にあった車種を選ぶ

電気自動車と一口にいってもさまざまなタイプがあるため、自社の活用シーンをしっかりと把握せずに購入すると、後悔することにもなりかねません。

たとえば、長距離移動が多いのであれば航行距離が長い車種、狭い道などを走る機会が多い場合は航行距離が短くともコンパクトな車種を選ぶ、などです。

コストを無駄にしないためにも、自社の利用用途や周辺の充電設備の数なども考慮した上で導入を検討しましょう。

ディーラーが近くにある車種を選ぶ

電気自動車は、ガソリン車に比べて普及しているとはいえず、不具合が生じた際にメンテナンスをしてもらえる整備工場があまり多くありません。

そのため、自社から行きやすい場所にディーラーがある車種を選び、問題が発生した場合もすぐに対処できるようにしておくのがおすすめです。

保証内容を確認する

電気自動車を導入する際は、保証内容をしっかりと確認しておくことも重要です。

多くの国内メーカーではバッテリーの保証期間を「8年・16万km」としていますが、メーカーによっては年数ではなくバッテリー容量を基準としているケースがあります。

また、海外メーカーの場合は、保証する年数や距離が異なるケースも少なくありません。

電気自動車の導入に必要な設備・費用

電気自動車を運用するためには、車両本体のほかにも充電器本体の購入・設置が必要です。

費用金額
車両購入代約250~600万円
充電器本体代・普通充電器:約20万円・急速充電器:約200万円
充電設備設置代・普通充電器:20万円~・急速充電器:300万円~

上表の金額は、車種や配線状況などによっても大きく異なるため、実際に導入する際は専門の業者に見積もりをしてもらうのがおすすめです。

電気自動車用充電器の種類

EV用充電器は大きく分けて「普通充電器」「急速充電器」の2種類があります。

同じ充電器ですが活用シーンは異なるため、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。

普通充電器

普通充電器とは、充電出力が約3kW~6kWのEV用充電器のことです。

フル充電に数時間を要する、運用にかかるコストパフォーマンスが良い、などの点から長時間駐車する場所に適しており、社用車を運用する場合は普通充電器を設置するのが一般的です。

普通充電器には「据え置き型」と「持ち運び型」の2種類があります。

据え置き型は、電源と充電器が一つになっているタイプで、付属の充電ケーブルを電気自動車に接続することで充電が可能です。

持ち運び型は、スマートフォンにおける充電ケーブルのようなもので、持ち運びは可能ですが単体で充電できるものではなく、別途EV用のコンセントを設置する必要があります。

急速充電器

急速充電器は、充電出力が約20kW~150kWのEV用充電器のことで、商業施設やサービスエリアなど、一時利用が多い駐車場に設置されるケースが一般的です。

急速充電器は、名前の通り素早く充電できる点が特徴で、一般的なバッテリー容量の電気自動車であれば、30分で80%~90%ほどの充電が可能です。

一方で、充電器本体の価格が高い、設備の増強が必要であるなどの点から、普通充電器よりも導入コストが高くなりやすいといった課題も抱えています。

自社で急速充電器を導入する場合は、車の使用頻度やEV導入台数を考慮のうえ、普通充電器だけでは業務が回らない場合に検討すると良いでしょう。

EV用充電器を導入する際のポイント

EV用充電器を導入する際は、導入後に後悔しないためにも、しっかりとポイントおさえて自社に適した設備を選びましょう。

用途に応じた充電器を選ぶ

自社が保有する車両の台数や使用頻度、充電器を設置する環境などに応じて、適切な充電器を選びましょう。

自社で電気自動車を導入する場合、普通充電器を導入するのが一般的です。

しかし、自社における車の使用頻度が高く、普通充電器のみでは業務が回らないケースであれば、急速充電器を導入するのも一つの方法です。

また、設置方法に関しても「1台の駐車場につき1つの充電器」や「複数の駐車場につき1つの充電器」などの選択肢があります。

設置する環境によって取れる選択肢が変わるため、まずは専門業者に確認してもらった上で検討すると良いでしょう。

充電以外の機能も確認する

充電器には充電以外の機能を持つものもあるため、すべての機能をしっかりと確認して充電器を選ぶのがおすすめです。

例えば、普通充電器には「充電制御」と呼ばれる充電の出力や時間をコントロールする機能がついているものや、スマートフォンのアプリを通して充電器の操作ができるものがあります。

機能をうまく活用すれば使用電力の軽減や運用効率の向上につながるため、どのような機能があるのか事前に確認しましょう。

EV充電器の導入時には補助金が使える

電気自動車の購入時と同様に、EV用充電器の導入時にも補助金の利用が可能です。

EV用充電器における補助金の正式名称は「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」といい、一般社団法人次世代自動車振興センターが給付事業をおこなっています。

なお、令和6年度第1期の補助金申請は、予算が上限に達したため終了しています。

第2期の補助金申請については、8月ごろより受付が開始されますので、詳細については一般社団法人次世代自動車振興センターのサイトを確認してください。

EV用充電器における補助金の対象者

EV用充電器補助金の対象となるのは、指定のEV用充電器を購入予定かつ設置予定場所の使用権限を持つ方のうち、以下に該当する方です。

  • 地方公共団体
  • 法人(マンション管理組合法人を含む)
  • 法人格を持たないマンション管理組合
  • 個人(共同住宅のオーナー・共同住宅の居住者など)

なお、個人宅での設置は補助金の対象外となっているので注意が必要です。

参考
一般社団法人次世代自動車振興センター「申請の手引き 充電設備

EV用充電器における補助金の支給金額

EV用充電器における補助金の支給金額は「普通充電器」「急速充電器」それぞれに異なります。

はじめに普通充電器における支給金額の上限は以下の通りです。

支給上限
本体費用35万円
工事費用135万円
合計170万円
参考
一般社団法人次世代自動車振興センター「申請の手引き 充電設備

申請者の属性や設置する充電器のkWによっても支給金額の上限は変わるため、詳細については一般社団法人次世代自動車振興センターへ確認してください。

次は、急速充電器における支給金額の上限は以下の通りです。

支給上限(50kW以上)
本体費用2口まで:300万円
3口以上:150万円×口数
工事費用140万円
参考
申請の手引き 充電設備EV・PHV用充電設備と補助金│一般社団法人次世代自動車振興センター

設置にかかるコストが普通充電と比較して高額であるため、支給金額も高額となっています。

EV用充電器を導入するまでの流れ

EV用充電器を導入するための主なステップは「見積もり依頼」「補助金の申請」「設置工事の設置」の3つです。

EV用充電器の導入には、設置工事や書類の作成・提出など時間がかかる作業も多くあります。

問題が発生してもあわてずに対応できるよう、以下を参考に余裕を持っておこないましょう。

業者へ調査と見積もりを依頼する

はじめのステップは、専門の業者へ調査と見積もりを依頼することです。

EV用充電器の設置にかかる費用は、充電器の種類だけでなく設置する環境によって大きく左右されます。

そのため、実際にかかる費用を知るためには、施工業者などに依頼して現地調査をしてもらう必要があります。

実際に調査をしてもらう際は、事前に以下の内容を明確にしておくと、より正確な見積もり額を知ることが可能です。

  • 導入する電気自動車の台数
  • 電気自動車の使用頻度
  • 導入する充電器の種類・数量
  • 充電器を設置する場所

補助金の申請をする

次のステップは、使える補助金の申請です。

提出書類には、必ず提出が必要なものと設置場所や内容によって必要なものの2種類があります。

内容によっては、書類作成や提出に手間や時間がかかるケースもあるため、余裕を持って作成をする、専門業者にサポートを依頼するなどの対策をおこないましょう。

また、国からの補助金に加えて、各自治体で用意されている補助金も併用できるケースがあります。

例えば、東京都では「充電設備普及促進事業」としてEV用充電器の設置を助成する制度が用意されており、国からの補助金と併用して利用可能です。

自社が所属する自治体にも、EV充電器導入時に使える補助金がないか調べてみると良いでしょう。

設置工事の実施

最後は設置工事の実施です。

EV用充電器の設置する際は、業者をはじめ多くの方が関わるため、早めにスケジューリングをおこない、スムーズに設置できるように調整することが重要です。

また、運用開始時は従業員が慣れていないこともあり、さまざまな問い合わせやトラブルの発生が考えられます。

運用にあたってのルール作りはもちろん、トラブルがあった際の対応方法や、実際に対応にあたるスタッフの確保などをしておくと良いでしょう。

まとめ:電気自動車を導入する際はメリットやコストを考慮しよう

社用車を電気自動車に変えることにより、ランニングコストが抑えられる、車両維持にかかる税金を抑えられる、などのメリットが得られます。

一方で、導入コストが高い、ガソリン車よりも航続距離が短いなどのデメリットも存在します。

2024年現在の状況では、電気自動車・ガソリン車どちらにもメリット・デメリットが存在するため、コストや周辺の給電器設置状況などを考慮した上で、導入を進めると良いでしょう。

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