社用車の日常点検整備に関する法律とは?罰則・リスクも併せて紹介

社用車を安全に運行するためには、日々の点検が大切です。

万が一点検を怠ってしまうと、交通事故のリスクが高まる上に、行政処分や刑事処分の対象になる可能性があります。

本記事では、日常点検整備に関する法律や、日常点検整備を怠った場合の罰則・リスクについて解説します。

日常点検整備のやり方も紹介するので、ぜひご確認ください。

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日常点検整備とは

日常点検整備とは

日常点検整備とは、ドライバーや自動車の管理者などの自動車ユーザーが、日常的におこなう点検整備のことです。

自動車の点検整備と聞くと「整備工場でおこなう」「専門知識が必要」というイメージを持たれるかもしれません。

しかし、日常点検整備は確認する項目が決まっており、専門的な設備や知識がなくてもできるようになっています。

具体的には、走行距離や稼働状況に応じて、以下の3方向から自動車に異常がないか確認します。

  • エンジンルーム
  • 車両周り
  • 運転席

そもそも日常点検整備をおこなう目的は、自動車の異常や不具合を早期に発見して、事故やトラブルを防ぐことです。

自動車の部品の中には、使用するたびに消耗し、性能が低下するものがあります。

メンテナンスをおこなわないまま整備不良の自動車に乗っていると、交通事故を引き起こすリスクが高まります。

日常的に自動車を使用する企業にとって、交通事故は地域住民や従業員の人命を脅かす上に、自社の信頼喪失にもつながる重大なリスクです。

車検や定期点検整備もありますが、日常点検整備も実施することで、さまざまなリスクの低減につながります。

なお、日常点検整備で少しでも異常や違和感があれば、すぐに整備工場などに相談しましょう。

日常点検整備に関する法律

日常点検整備に関する法律

日常点検整備は「自動車ユーザーの義務である」と、法律で定められています。

また、チェックシートの保存についても決められています。

日常点検整備の実施に関する法律

日常点検整備は、道路運送車両法第四十七条によって、以下のように定められています。

自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。

2.次条第一項第一号及び第二号に掲げる自動車の使用者又はこれらの自動車を運行する者は、前項の規定にかかわらず、一日一回、その運行の開始前において、同項の規定による点検をしなければならない。

3.自動車の使用者は、前二項の規定による点検の結果、当該自動車が保安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合しない状態にあるときは、保安基準に適合しなくなるおそれをなくするため、又は保安基準に適合させるために当該自動車について必要な整備をしなければならない。

引用元:道路運送車両法第四十七条|e-GOV法令検索

まとめると以下のとおりです。

  • 日常点検整備は自動車ユーザーの義務である
  • 日常点検整備の頻度は、バスやトラックなどの事業用自動車は1日1回である
  • 日常点検整備の結果、異常や不具合がある場合はすぐに必要な整備をしなければならない

自家用自動車については、日常点検整備の頻度の決まりはありません。

しかし、使用頻度や走行距離に応じて、定期的におこなうことをおすすめします。

チェックシートの保存に関する法律

日常点検整備のチェックシートの保存期間については、自動車点検基準で以下のように定められています。

点検整備記録簿の保存期間は、その記載の日から、第二条第一号から第四号までに掲げる自動車にあつては一年間、同条第五号及び第六号に掲げる自動車にあつては二年間とする。ない。

引用元:自動車点検基準第四条|e-GOV法令検索

また、チェックシートには、以下の項目を記載しなければなりません。

自動車の使用者は、点検整備記録簿を当該自動車に備え置き、当該自動車について前条の規定により点検又は整備をしたときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 点検の年月日
二 点検の結果
三 整備の概要
四 整備を完了した年月日
五 その他国土交通省令で定める事項

引用元:道路運送車両法第四十九条|e-GOV法令検索

つまり、3カ月・6カ月点検対象車(事業用自動車)は1年間、1年点検対象車(自家用自動車)は2年間、チェックシートを保存しなければなりません。

適切に保存しておけば、万が一の交通事故やトラブル発生時に証拠として活用できます。

日常点検を怠った場合のリスク

日常点検を怠った場合のリスク

日常点検を怠ると思わぬ車両トラブルを引き起こし、交通事故につながるリスクが高まります。

ここからは、日常点検整備を怠ることで発生しやすい車両トラブルを紹介します。

いずれも日常的なメンテナンスをおこなっていれば防げるものなので、日常点検整備を確実におこない、車両トラブルを防ぐようにしましょう。

バッテリ上がり

バッテリが上がる主な原因は「ライトの点けっぱなしによる過放電」と「バッテリーの劣化」です。

中でも室内灯などの消し忘れによる過放電や、バッテリー液の減少によるバッテリーの劣化は日常点検整備で防止できます。

ライトの点けっぱなしは、エンジンを切った後、自動車の周りを確認することで気づけます。

バッテリー液の減少は、日常点検整備でエンジンルームを見るときに確認可能です。

タイヤのパンク

タイヤは時間とともに徐々に空気が抜ける、釘などの異物が刺さる、または縁石などにぶつける・擦るといったことで傷が付いて、パンクすることがあります。

そのため、日常点検整備で、タイヤの状態と空気圧を確認しましょう。

目視だけでなく、しっかりと空気圧も確認することが重要です。

空気を入れてもすぐに空気圧が下がる場合、目に見えない亀裂や損傷がある可能性があるからです。

運転中にタイヤがパンクしてしまうと大事故につながりかねないので、慎重におこないましょう。

オーバーヒート

オーバーヒートとは、エンジンが異常に熱くなり、冷却機能を上回ってしまうエンジントラブルのことです。

オーバーヒートを起こすと以下の現象が発生し、最悪の場合はエンジンが破損し、エンジンごと取り換えが必要になることもあります。

  • いつもよりスピードが出ない
  • 異音や異臭がする
  • ボンネットから煙や水蒸気が出る

オーバーヒートの主な原因は、冷却水やエンジンオイルの不足です。

日常点検整備で冷却水やエンジンオイルの残量を確認し、エンジンのかかり具合やエンジン音を確認することで、異常がないか確認しましょう。

日常点検整備を怠った場合の罰則

日常点検整備を怠った場合の罰則

日常点検を怠ったことによる直接的な罰則はありません。

しかし、整備不良による罰則に該当する場合があります。

行政処分場合

ランプとブレーキに不具合があった場合、違反点数による減点と罰金の両方が課せられます。

罰金は車種によって異なります。

不具合の内容違反違反点数罰金
ランプの不具合整備不良尾灯等違反1点5,000〜9,000円
ブレーキの不具合整備不良制動装置等違反2点6,000〜12,000円
参考:交通違反の点数一覧表|警視庁反則行為の種別及び反則金一覧表|警視庁

ランプの不具合は、日常点検整備で車両周りを確認していないと、見落としやすい項目です。

ブレーキの不具合は、運転席に座って踏み残りしろや効き具合の確認などを怠ることで招く恐れがあります。

刑事処分の場合

道路交通法第六十二条には、整備不良車両の運転禁止について定められています。

これに抵触すると、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。

車両等の使用者その他車両等の装置の整備について責任を有する者又は運転者は、その装置が道路運送車両法第三章若しくはこれに基づく命令の規定又は軌道法第十四条若しくはこれに基づく命令の規定に定めるところに適合しないため交通の危険を生じさせ、又は他人に迷惑を及ぼすおそれがある車両等を運転させ、又は運転してはならない。

引用元:道路交通法第六十二条|e-GOV法令検索

なお、ここでの「整備不良車両」とは、道路運送車両法第四十条から四十六条を満たしていない自動車のことです。

参考:道路交通車両法|e-GOV法令検索

日常点検整備のやり方

日常点検整備のやり方

最後に、日常点検整備のやり方を紹介します。

適切な頻度

白ナンバーの社用車を含む自家用自動車の日常点検整備は、実施することは義務であるものの、その頻度については明確な決まりはありません。

「走行距離や運行時の状態などから判断した適切な時期」と、国土交通省によって提示されています。

参考:自動車の点検整備|国土交通省

目安としては、最低1カ月に1回以上と考えるのが良いでしょう。

もちろん、乗車前に毎回実施できることがベストです。

なお、日常点検整備の適切な頻度については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

チェック項目

白ナンバーの社用車を含む自家用自動車の日常点検整備におけるチェック項目は、国土交通省によって決められています。

具体的には、以下の15項目です。

エンジンルーム・ブレーキ液の量
・冷却水の量
・エンジンオイルの量
・バッテリ液の量
・ウインド・ウォッシャ液の量
車両周り・ランプ類の点灯・点滅
・タイヤの亀裂や損傷の有無
・タイヤの空気圧
・タイヤの溝の深さ
運転席・エンジンのかかり具合・異音
・ウインド・ウォッシャ液の噴射状態
・ワイパーの拭き取り能力
・ブレーキの踏み残りしろと効き具合
・駐車ブレーキの引きしろ(踏みしろ)
・エンジンの低速・加速状態
出典:日常点検整備チェックリスト|国土交通省

各項目の詳細については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

まとめ:法律にしたがって社用車の日常点検整備を実施しよう

まとめ:法律に従って社用車の日常点検整備を実施しよう

日常点検整備は自動車ユーザーの義務であると、法律で定められています。

怠ったことによる直接的な罰則はありませんが、整備不良による罰則に該当する恐れがあります。

何より、自動車の異常や不具合に気づけず、交通事故のリスクが高まることが、日常点検整備を怠る一番のリスクです。

社用車の運転前には日常点検整備を実施し、車両トラブルによる交通事故を防げるようにしましょう。

なお、JAFメディアワークスでは、日常点検整備をする際に役立つExcelテンプレートファイルを無料で配布しています。

以下のボタンからダウンロードして、ぜひ日々の点検にご活用ください。

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