前方不注意が原因の事故を防ぐ!すぐに取り入れたい5つの対策とは 

メッセージを確認するためにスマートフォンに手を伸ばす、道に迷って急きょカーナビを設定する、ペットボトルのキャップをひねって水を飲む。 

これらは運転中ついついやってしまいがちな行動ですが、その瞬間、視線はどこにあるでしょうか? 

どのような理由があっても、運転中に視線や意識を前方から逸らすことは、「前方不注意」となり、事故を誘発する非常に危険な状態を作り出してしまいます。 

この記事では、前方不注意によって引き起こされる事故や危険なシチュエーション、またその原因と対策について解説します。 

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前方不注意とはどんな状態か? 

前方不注意とは、運転中にドライバーの注意が前方の状況から逸れている状態を指します。 

前方不注意には、視覚的に前方の状況が把握できていない「わき見運転」と、意識が前方の状況に集中できていない「漫然運転」の2種類が存在します。 

このような状態で運転をすることは、いずれも道路交通法第70条で定められた、安全運転義務違反となります。 

参考:道路交通法第70条|e-GOV 

わき見運転(外在的前方不注意) 

わき見運転は、外在的前方不注意とも呼ばれます。 

スマートフォンやカーナビの操作、周囲の景色に見とれていたなどの理由によって、前方の状況を確認できていない状態を指します。 

近年、交通事故の大きな原因となっている「ながら運転」もわき見運転の一種です。 

漫然運転(内在的前方不注意) 

漫然運転は、内在的前方不注意とも呼ばれ、視線は前方に向いているものの、注意散漫な状態で運転している状態を指します。 

具体的には、ボーっとしている、考え事をしているなどの状態が当てはまり、「意識のわき見」といった呼び方をすることもあります。 

前方不注意が引き起こす危険とは 

75歳未満のドライバーの死亡事故要因75歳以上の高齢ドライバーの死亡事故要因
安全不確認:502件(30.0%)操作不適:96件(27.6%)
内在的前方不注意(漫然運転など):460件(27.5%)内在的前方不注意(漫然運転など):81件(23.3%)
外在的前方不注意(わき見運転など):304件(18.2%)安全不確認:75件(21.6%)
操作不適:165件(9.9%)外在的前方不注意(わき見運転など):28件(8.0%)
判断の誤り:134件(8.0%)判断の誤り:20件(5.7%)
出典:令和5年における交通事故の発生状況について|警察庁交通局

運転中の前方不注意は、例年、交通事故原因の上位に入っています。 

警察庁による令和5年の交通事故統計では、第一当事者が自動車による死亡事故2,177件のうち、873件が前方不注意によって引き起こされたものでした(わき見運転と漫然運転の合計)。 

この統計からも分かる通り、運転中の前方不注意は、重大な事故を引き起こす危険な行為なのです。 

では具体的に、どのような危険が考えられるでしょうか。 

出典:令和5年における交通事故の発生状況について|警察庁 

追突事故 

追突事故の原因は主に、前方不注意と動静不注視(運転中に相手の自動車や歩行者の動きに気づいていながら、危険がないと判断して注視を怠ること)であるとされています。 

令和5年に発生した交通事故307,930件のうち、追突事故は91,849件と約3割を占めており、非常に発生率の高い事故形態です。 

出典:令和6年版交通安全白書 第1章 道路交通事故の動向|内閣府|内閣府 

歩行者・自転車との接触 

前方不注意は、車同士の事故だけでなく、歩行者や自転車といった交通弱者との接触事故を引き起こす可能性も高まります。 

前方の状況に注意が向いていないばかりに、急な飛び出しに対応できなかったり、横断歩道上の横断者に気が付かずに接触してしまったりといった状況を引き起こします。 

信号無視 

前方の状況を把握できていないことにより、赤信号に気が付かずそのまま進行してしまう可能性も高まります。 

違反行為であることはもとより、交差する道路を直進してきた車や、横断中の歩行者と接触する危険性があります。 

車線逸脱 

前方の道路状況を把握できなかった結果、車線を逸脱し歩道への乗り上げや、ガードレールへ接触する危険もあります。 

対向車線へ逸脱した場合には、対向車との正面衝突も考えられます。 

令和5年の交通事故統計において、事故類型別交通死亡事故の発生件数は、正面衝突等が最も多く、全体の約3割を占めています。 

出典:令和6年版交通安全白書 第1章 道路交通事故の動向|内閣府|内閣府 

なぜ前方の状況に注意が向かなくなってしまうのか 

前方不注意の状態であるわき見運転や漫然運転はなぜ起きてしまうのでしょうか。 

原因はさまざまですが、代表的なものとして以下のような理由が考えられます。 

スマートフォンの操作や通話

走行中にスマートフォンを操作することによって、文字や画面を見ることに集中してしまうと、前方の状況が確認できなくなります。 

また、ハンズフリー機能などを使用して通話をおこなっていた場合も、視線は前方を向いているものの会話に意識を取られやすく、漫然運転となってしまいます。 

実際にJAF(日本自動車連盟)がおこなったテストでは、スマートフォンの操作やハンズフリーでの通話をおこなった結果、多くのモニターが赤信号に気が付かず交差点に進入してしまったり、急な飛び出しに反応できなかったりする結果となりました。 

出典:運転中の「ながらスマホ」(JAFユーザーテスト)|JAF(日本自動車連盟) 

カーナビやオーディオ、空調の操作によるわき見

カーナビやオーディオ、空調の操作もわき見運転の原因となります。 

特に運転中、カーナビへ目的地を入力するような場面では、複数回の操作をおこなわなくてはならないため、前方への注意が逸れる時間も長くなります。 

オーディオや空調など一瞬の操作であったとしても、40キロで走る車が1秒間に進む距離は約11メートルなので、大型バス1台分の長さと同等と考えると、決して安全とは言えないでしょう。 

車内で飲食をおこなう 

運転中に飲食をおこなうことで、一時的に前方不注意となることがあります。 

ペットボトルの蓋を開けたり、おにぎりやサンドイッチの封を開けるなど、飲食をおこなうために一瞬視線を手元に落とすだけでも、わき見運転の状態となります。 

また、運転中に飲食をした結果、車内にものを落としたり、こぼすといったアクシデントが発生した場合は、それを拾うためにさらにわき見運転の状態が長くなります。 

目的地までの道に迷う 

初めて通行する道や、入り組んだ道などで道に迷ってしまった場合、目的地にたどり着くために周囲の風景や案内標識に意識が向き、前方不注意となる場合があります。 

打ち合わせや商談の予定があるなど、時間の制限がある場合には、焦りも加わりより危険な状態となります。 

ストレス・疲労による漫然運転

長時間の運転などによってストレスや疲労が溜まると、集中力が途切れ漫然運転となる傾向があります。 

運転による疲れだけでなく、日々の生活でのストレスや疲れも漫然運転を引き起こす原因になります。

前方不注意を起こさないための基本的な対策 

前方不注意を起こさないためには、ドライバー自身が運転に集中することが最も大切ですが、それ以外にも、基本的な対策を日々の運転や生活に落とし込んでいくことで、より前方不注意を防ぐことができます。 

ここからは具体的な対策について確認していきましょう。 

スマートフォンを操作できない環境を作る 

「運転中はスマートフォンを操作しない」と決めていても、スマートフォンが生活の一部となっている現代において、自分の意志だけでそれを実行し続けることは非常に困難なことです。 

運転席からはすぐに手が届かないかつ、視界に入らない位置へあらかじめスマートフォンをしまっておくことで、運転中の操作を抑制しましょう。 

取引先等からの連絡がプレッシャーとなる場合には、運転中はすぐに対応できない旨をあらかじめ伝えておいたり、名刺に記載しておいたりしておくことで負担が軽減されるのでオススメです。 

事前に目的地を確認しておく 

車に乗り込む前に、目的地までのルートや周辺の情報を地図アプリなどで確認しておくことで、運転に集中することができます。 

目的地のおおまかな位置だけでなく、駐車場の入り口の位置など詳細な情報まで確認しておけば、目的地に到着する直前で周辺の状況確認に気を取られすぎることもありません。 

運転以外の操作は事前もしくは休憩中に 

カーナビやオーディオ、空調の設定などの運転以外の操作は、出発前もしく駐車場などの安全に停車できる場所でおこないましょう。 

特にレンタカーの利用時など普段乗りなれない車では、それらの操作方法に迷いが生じ、たびたびわき見運転となってしまう可能性も考えられます。 

車内で飲食をする場合も同様です。 

体調管理と適度な休憩 

漫然運転を防ぐためには、体調管理と適度な休憩が欠かせません。 

長時間運転をする場合は、2時間に1回を目安に休憩をとりましょう。 

適宜窓を少し開けて、外の空気を取り込むことも、集中力の維持に効果的です。 

また、寝不足や過度な疲労を感じている場合には、運転を控える決断も必要です。 

強いストレスを感じている場合も、運転に集中することができず、漫然運転となりやすくなります。 

自身が安全に運転できるメンタルと体調なのかを客観的に判断してから、ハンドルを握りましょう。 

事業所の安全運転推進を担う安全運転管理者が、朝の点呼時に従業員一人ひとりの体調をしっかりと確認することも重要です。

運転前に健康チェックをおこなう事で、寝不足や疲労症状による交通事故を防ぎましょう。

同乗者に協力してもらう

同乗者がいる場合には、前方不注意とならないよう協力してもらうことも大切です。 

社用車を使用している際に事故が発生すると、企業のイメージや信頼が損なわれかねないため、カーナビの操作や、ルートの案内など運転操作以外の部分は同乗者にお願いし、運転に集中できるよう協力してもらう環境づくりが大切です。

仮に自分が同乗者の立場であれば、率先してドライバーをサポートし、混雑した道路など運転が難しい状況下では会話を控える、休憩を促すなど、ドライバーの集中力が高まるようサポートすることを心がけましょう。

交通事故や交通ルールに違反するリスクを避けるためには、企業としての交通安全教育が必要です。

免許を持たない同乗者としての役回りが多い社員にも、普段から交通安全教育をおこなっておけば、社内で交通安全の意識が醸成され、交通事故のリスクは大幅に減ります。

JAF交通安全トレーニングのようなe-ラーニング教材を利用し、社内の交通安全意識向上を図る方法を模索してみることをおすすめいたします。

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先進安全自動車(ASV)の導入も効果的 

ドライバー自身が運転に集中すること。さらに基本的な対策を併せておこなうことで、前方不注意となる機会を減らすことが可能です。 

しかし、人間が運転している以上、なんらかのミスをしてしまうことは十分にあり得ます。 

そこで、ドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載した、先進安全自動車(ASV)を導入することで万が一に備えれば、限りなく前方不注意の事故を防止することに効果が期待できます。 

ただし、あくまでも運転の主体はドライバーにあり、先進安全自動車はそれを支援するものであることに留意が必要です。 

ここでは、万が一、前方不注意の状態となってしまった場合に、安全運転の支援をしてくれる先進システムを紹介します。 

衝突被害軽減ブレーキ 

衝突被害軽減ブレーキは、追突事故の被害を軽減または回避することを目的とした先進安全装備です。 

車の前部に取り付けられたセンサーが、前方の車や障害物を検知し、速度差や距離から衝突の危険があると判断した場合に警告を発します。 

このとき、ドライバーが回避行動をおこなわなかった場合、システムが自動でブレーキを作動させて速度を落とし、衝突回避や衝突被害の軽減を図ります。 

出典:ドライバーを支援する最新システム「先進安全自動車(ASV)の紹介」|JAF(日本自動車連盟) 

車線逸脱警報装置 

車線逸脱警報装置は、車が走行中に車線を外れそうになった際、警告を発してドライバーに注意を促すシステムです。 

車に取り付けられたカメラが道路上の車線を認識し、ドライバーが意図せずに車線を外れると判断された場合に警告を発します。 

一部のシステムでは、車線を保持するためにステアリング操作を支援するものも存在します。 

出典:ドライバーを支援する最新システム「先進安全自動車(ASV)の紹介」|JAF(日本自動車連盟) 

運転者監視システム 

運転者監視システムは、運転者の顔等を認識し、わき見や居眠り等、危険運転を防止するシステムです。 

過労運転または前方不注意に対して注意喚起をおこなうために、走行中、一定時間以上目を閉じていたり、顔の向きを前方から大きく外したりするなど、ドライバーに眠気や不注意があるとシステムが判断した場合に警告を発します。 

出典:主要なASV技術の概要|国土交通省 

まとめ|前方不注意のリスクを知り運転への集中と対策を 

前方不注意は交通事故の大きな原因であり、死亡事故にまで発展するような危険な状態です。 

運転中は運転操作に集中し、ながら運転をおこなわないことや、事前の準備、体調管理を徹底しましょう。 

万が一に備えて先進安全自動車を導入することも、前方不注意による事故を防ぐのに効果が期待できます。 

JAF交通安全トレーニングでは、前方不注意によって起きた事故を題材に、原因や対策を動画や画像で分かりやすく解説した教材や、実際のドライブレコーダー映像をもとに前方不注意の危険性を解説した交通安全教材を用意しています。 

「従業員のわき見運転や漫然運転による事故が無くならない」とお悩みの方は、JAF交通安全トレーニングの利用を検討してみてください。 

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JAF交通安全トレーニング

毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。

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園部拓海
1994年生まれの生粋のハマッコ。日本自動車連盟(JAF)に入社後、交通安全インストラクターとして企業や学校、一般ドライバー向けの講習会などを担当。インストラクターの育成や、新たなカリキュラムの考案などにも携わる。独立後はその時の経験を活かし、交通安全 の啓蒙教材や映像制作を手掛け、交通事故をひとつでも減らすために日夜奔走している。