従業員の安全運転を支えるスマホのドライビングアプリ活用術を紹介

2024年現在、運転者の安全・快適・効率的な運転を支援する、さまざまな機能を搭載した「ドライビングアプリ」がモバイル向けアプリ市場に登場しています。 

いまやスマホは、カーナビの代わりになるだけでなく、燃費管理や運転操作の評価までおこなえるようになり、プライベートでの使用はもちろんのこと、近年では従業員の管理・教育に活用している企業も珍しくありません。 

この記事では、ドライビングアプリの機能や選び方、具体的な活用方法について解説します。

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ドライビングアプリを導入するメリットは? 

「ドライビングアプリ」とは、スマートフォンやタブレット向けに提供されているアプリで、運転者をサポートするためのツールです。 

これらのアプリは、安全運転や運転の効率化、ドライブの快適さ向上などを目的としており、ひとつの機能に特化したものから、複数の機能を併せ持つものまで様々となり、目的によってアプリを使い分けることが重要となります。 

アプリを導入することで、位置情報の共有や運転記録の自動保存によるコミュニケーションコストの削減が期待できるほか、ルートの最適化や危険個所の洗い出しを通じて、交通事故のリスクを軽減するなどのメリットがあります。 

業務に使えるアプリ機能は主に6種類 

ドライビングアプリの機能は主に6つに分けることができます。 

カーナビゲーション 

カーナビゲーションは、ドライビングアプリの中でも特に利用頻度の高い機能で、GPS(全地球測位システム)を活用して現在地を把握し、目的地までの最適なルートを案内します。 

これにより、目的地まで最短距離で到着できるほか、地図を見たり道に迷ったりするストレスを軽減します。 

運転診断・支援 

GPSや加速度センサーを利用して、急ブレーキや急加速、速度超過などの行動を記録・分析し、運転の傾向や改善点を示すレポートが作成されます。 

アプリによっては、速度警告や事故多発エリアの通知、休憩リマインダーなどの機能も搭載されています。 

レポートをもとに自身の運転を客観的に見つめなおせるほか、複数のドライバーの管理者は、各ドライバーの運転傾向を把握することができます。 

動態管理 

GPSを利用して、車両の位置を外部からリアルタイムで把握することができます。 

走行ルートや運転時間などの走行記録を自動的に記録し、日報を自動生成する機能などが搭載されているものも存在します。 

業務としての使用が主で、営業効率の改善や従業員の負担軽減などの目的で使用されることが多いアプリです。 

ドライブレコーダー 

スマホのカメラを使って、運転中の映像を記録することができます。 

手持ちのスマートフォンを利用することから、コストを抑えて利用できるのが特徴です。 

事故発生時の証拠として利用することはもちろん、記録された映像をもとに社内での安全運転教育などにも活用することができます。 

燃費管理 

燃料の使用量や給油履歴を記録することができます。 

アプリによっては、さらに燃費を向上させるためのアドバイスが提供されるものも存在します。 

自身の車の燃費を確認することはもちろん、企業においては不正な給油を防止する目的でも使用することができます。 

駐車支援 

近隣のコインパーキングを検索したり、駐車枠の事前予約をおこなったりすることができます。 

アプリやサービスによっては、事前に駐車料金をシミュレート、事前決済ができるものも存在します。 

目的地周辺に到着したものの、駐車場が見つからない、空いていないという事態を防ぎます。 

雇用者の悩みに沿ったアプリを選択するには 

ドライビングアプリを導入する際には、目的に合わせて適切なアプリを選ぶことが重要です。 

どのような用途で使用するかを明確にすることで、効果的に活用することができます。 

従業員が安全に運転できているかを確認したい 

管理者の立場として、従業員が業務中に安全な運転がおこなえているかを確認したいという目的がある場合には、運転診断・支援の機能が充実しているアプリを選択しましょう。 

急発進・急加速といった、事故を誘発する恐れのある行動を可視化できるほか、近年では、速度超過や一時不停止といった法令違反をチェックすることができるアプリまで登場しています。 

指定のルートで社用車を運行させたい 

管理者が指定したルートで社用車を運行させたいという目的がある場合は、動態管理の機能が充実したアプリを選択しましょう。 

動態管理とは、車両や人、物の位置情報や状態をリアルタイムに記録・管理することを指し、業務効率の向上や安全管理に役立つ仕組みです。 

アプリを使えば、1日の車の動きを可視化して、指定のルートから外れていないか、遠回りをしていないかなどを確認することができます。 

また、万が一事故などのトラブルがあった際にも、迅速な対応をおこなうことが可能になります。 

社用車の燃料費を削減したい 

社用車の燃料費を削減したいという目的がある場合には、燃費管理の機能が充実したアプリを選択しましょう。 

車両ごとに燃費を把握し、原因を調査していくことで継続的な燃料費の削減が可能になります。 

運転操作やルートによっても燃費は変わるため、運転診断や動態管理のアプリと併せて使用するのも効果的です。 

交通事故防止のためのアプリ活用例 

ドライビングアプリを導入する目的は人それぞれですが、企業が従業員の交通事故を防止したい目的で検討している場合も多いのではないでしょうか。 

ドライビングアプリを上手に活用することで、交通事故防止のアプローチを多方面からおこなうことができます。 

この章では、具体的な活用例をいくつかご紹介します。 

運転診断アプリのスコアに応じて必要な教育をおこなう 

交通安全の教育は、多くの企業で従業員に対しておこなわれていますが、様々な特性を持つドライバーに画一的な教育をおこなっても、思ったような効果が得られないことがあります。 

そこで、運転診断アプリを利用し、スコアや警告内容が近いドライバーでグルーピングをおこなうことで、それぞれのグループに対して適切な教育を可能にする方法があります。 

たとえば、急発進や急加速が多いグループには、運転操作に関する教育を中心に、速度超過など法令違反が多く見られるグループは規範意識を高める教育を中心に、という形で進めることで、より効果的に教育をおこなうことができます。 

社内で安全運転教育を実施するなら、「JAF交通安全トレーニング」がおすすめです。 

JAF交通安全トレーニングは、企業・団体向けにJAFが長年培った交通安全ノウハウを配信しています。 

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短時間で学べるコンテンツが豊富で、従業員の交通安全の意識を高めるのに効果的です。 

動態管理アプリで抜け道などの使用を抑制する 

住宅街など、事故のリスクが高いエリアを抜け道として使用していたばかりに、事故を起こしてしまったという例は比較的よくあるパターンです。 

そこで、動態管理アプリで1日の車の動きを確認し、頻繁に抜け道を使用しているドライバーへは、別のルートの通行を指示するといった方法があります。 

抜け道に限らず、事故多発エリアを避けたルートの検討などにも使用することができます。 

駐車支援アプリで事前に停めやすい駐車場を予約 

社用車で起きる事故として、比較的多いのが駐車場内での物損事故です。 

これを防ぐための施策として有効なのが、敷地や駐車枠の広い駐車場を選択して車を停めることです。 

そのため、駐車場の検索や予約ができる駐車支援アプリで、出発前にあらかじめ停めやすそうな駐車場をピックアップして予約しておけば、余裕を持った駐車が可能になります。 

さらに空いている駐車場を探す手間も無くなるため、心理的な焦りや、不要な回り道や急な車線変更をする必要も無くなります。 

ドライビングアプリを導入する際の注意点 

導入することで様々なメリットがあるドライビングアプリですが、使用する際にはいくつかの注意点があります。 

使用方法によっては逆に事故やトラブルを誘発してしまうこともあるため、導入する際には、あらかじめルールの周知と徹底をおこなうようにしましょう。 

運転中のスマートフォン操作は厳禁 

各種アプリは、基本的にスマートフォンを使用して操作するものがほとんどですが、運転中の操作は厳禁です。 

運転中にスマホ等を使用して画像を注視する行為は「携帯電話使用等(保持)違反」となり、以下のような処分が下されます。 

携帯電話使用等(保持)の行政処分と刑事処分

行政処分違反点数3点
反則金原付車12,000円
二輪車15,000円
普通車18,000円
大型車25,000円
刑事処分罰則6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金

さらに、通話、画像注視した結果、交通事故等を起こして交通の危険を生じさせた場合は、「携帯電話使用等(交通の危険)違反」となり、以下の処分が下されます。 

携帯電話使用等(交通の危険)の行政処分と刑事処分

行政処分違反点数6点(免許停止)
反則金原付車非反則行為となり、全て罰則を適用する
二輪車
普通車
大型車
刑事処分罰則1年以下の懲役または30万円以下の罰金

必要な設定などはあらかじめ出発前に設定しておき、運転中は操作しないことを周知、徹底させましょう。 

参考:厳罰化されたスマホ運転の罰則とは?即免停、懲役刑もありえる運転中のながらスマホを徹底解説|JAFトレコラム

データの収集と利用に関する規約を確認 

運転診断アプリなどでは、走行データ、位置情報、車速、運転挙動(急加速・急ブレーキなど)を収集しています。 

これらのデータが適切に扱われるか、利用規約やプライバシーポリシーを確認することが重要です。 

アプリによっては、個人データが第三者に共有されるリスクがあるため、信頼できる企業やアプリを選びましょう。 

従業員のプライバシーに関する問題 

ドライビングアプリを業務で活用する際、従業員のプライバシーに関する問題は慎重に扱う必要があります。 

特に、アプリが運転データや位置情報を記録・分析する場合、従業員が「監視されている」と感じる可能性があるため、適切な管理が求められます。 

従業員が「常に見られている」と感じると、仕事へのストレスやモチベーションの低下につながる恐れもあるため、アプリを導入する目的や、データの利用範囲を明確にし、従業員の同意を得てから導入を決定しましょう。 

また、社用車をプライベートでも使用する場合には、業務外のデータを記録しないフィルタリング機能を活用することも大切です。 

サービスによっては利用契約が必要なことも 

アプリやサービスによっては、利用契約と費用が発生する点にも注意が必要です。 

初期費用や月額料金はもちろん、通信費や契約解除料などの隠れたコストが存在する場合もあるため、契約前に料金内訳をしっかり確認し、隠れたコストや長期的な費用を見落とさないよう注意しましょう。 

また、複数の料金プランがある場合には、必要な機能と不要な機能を明確にして、比較検討することが大切です。 

まとめ:最新のスマホアプリを上手に活用して事故防止を目指そう 

本記事では、ドライビングアプリの機能や選び方、具体的な活用方法について解説しました。 

ドライビングアプリは目的に合わせて上手に活用することで、従業員の安全運転や事故防止に大きく役立つアイテムです。 

一方で、スマートフォンを利用することから、運用方法などについては慎重に検討を重ねたうえで導入を決定しましょう。 

アプリの利用にくわえ、実際の運転講習や、eラーニングを併用することで、安全に対する効果はより一層深まります。 

今回紹介したドライビングアプリの利用や、一般的な車両管理システムの導入だけでは、事故防止策として完璧ではありません。システム導入によってハード的な課題を整えるのと同時に、実際に運転操作をおこなうソフト面、つまりドライバー自身の安全運転教育が必要不可欠です。

そこで、「JAF交通安全トレーニング」では、JAFの交通安全活動のノウハウを活かした教材を多数用意しています。 

毎月、ウェブ上で学べるe-ラーニングコンテンツを配信する「JAF交通安全トレーニング」では、JAFならではの実践的な教材から状況に応じた安全運転について学べます。社内の交通事故ゼロを目指して、導入を検討してみてはいかがでしょうか。 

スマホやタブレットでの受講も可能

JAF交通安全トレーニング

毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。
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園部拓海
1994年生まれの生粋のハマッコ。日本自動車連盟(JAF)に入社後、交通安全インストラクターとして企業や学校、一般ドライバー向けの講習会などを担当。インストラクターの育成や、新たなカリキュラムの考案などにも携わる。独立後はその時の経験を活かし、交通安全 の啓蒙教材や映像制作を手掛け、交通事故をひとつでも減らすために日夜奔走している。