「今のETCが使えなくなるかもしれない」という話を聞いたことはありますか?
この話には、ETCの2022年問題と2030年問題が深く関係しています。
本記事では、ETCの2022年問題と2030年問題について解説し、使えなくなるETCや新規格に移行する方法などを紹介します。
現在使っているETCが今後も使えるか気になる方や、車やETCの買い替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
そもそもETCとは
ETCの問題について解説する前に、まずはETCと次世代のシステムであるETC2.0について解説します。
ETCとは
ETC(Electronic Toll Collection System)とは、高速道路や有料道路の料金所ゲートを通過する際に、車両に取り付けられた車載器と無線通信をおこない、車両の種類や通行した区間を特定して、認証や支払い処理をおこなうシステムのことです。
ETCを利用することで、実際に現金等のやり取りをすることなく通行料金を支払えます。
便利である上に渋滞緩和につながるとして、2024年7月現在の利用率は94.9%に上ります。
ETC2.0とは
ETC2.0とは、従来のETCをバージョンアップさせたシステムのことです。
従来のETCと比べ、以下のような違いがあります。
- 高速道路の出入り情報だけでなく、経路情報も把握できる
- 規制情報や災害情報など、さまざまな情報を送受信できる
認証や決済の自動化だけでなく、リアルタイムの渋滞情報を活用して迂回ルートを提示したり、進路上の落下物や事故情報を提供したりすることが可能です。
また、ETC2.0の利用者を対象とした割引が実施されているところもあります。
利用率も徐々に増加しており、2024年7月現在のETC2.0の利用率は34.5%です。
なお、ETC2.0については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
ETCを利用するために必要なもの
ETCを利用するために必要なものは以下のとおりです。
- 車載器:料金所のアンテナと無線通信するための装置
- ETCカード:ETC決済専用のICカード
ETCカードを車載器に挿入して料金所を通過することで、通行料金の電子決済をおこない、利用料を支払います。
なお、車載器は支払い・精算機能を備えていません。
そのため、ETCカードを挿入しなければETCを利用できない点に注意してください。
ETCは廃止されるのか?
結論を申し上げると、ETCというシステム自体が廃止されることはありません。
しかし、ETCの2022年問題と2030年問題によって、現在使用しているETCが使えなくなる可能性があります。
2022年問題は電波法関連法案の改正、2030年問題はセキュリティ機能向上のための規格変更によるものです。
また、2022年問題の対象機種はごくわずかですが、2030年問題ではやや多くの機種が使えなくなります。
この機会に、現在使用しているETC車載器が問題の対象であるかどうか、1度確認してみましょう。
ETCの2022年問題とは
ETCの2022年問題とは、2005年の電波法関連法案改正によって発生した問題です。
2022年12月1日以降に、2007年以前の旧スプリアス規格に基づいて製造されたETC車載器を使用すると、電波法違反にあたるようになりました。
スプリアスとは、無線設備が発する電波のうち、決められた周波数から外れた不要な電波のことです。
スプリアスはほかの機器に電波障害を引き起こす恐れがあるため、電波法によってその強度が規制されています。
この規制基準が改正前のものを、旧スプリアス規格と呼びます。
電波環境に影響を与える旧スプリアス規格を減らし、電波利用環境の維持・向上のために、旧規格のETC車載器は、移行期間終了後には使用が禁止されることになりました。
使えなくなったETCはわずか
2005年の電波法関連法案の改正後に発売されたETC車載器の多くは、改正後の電波法に対応しています。
そのため、現在使用されているETC車載器のうち、2022年12月1日から使用不可となっているものはわずかです。
詳細は、ETC総合情報ポータルサイトからからご確認ください。
https://www.go-etc.jp/faq/newsecurity.html
ETC車載器の取扱説明書や保証書、車載器セットアップ証明書や機器本体のラベルに記載されている「型式登録番号」で対象製品かどうかわかるため、ぜひチェックしてみてください。
※参考:道路:ETC利用案内:旧スプリアス規格に基づいて製造されたETC車載器について – 国土交通省
移行期間終了後に旧規格のETCを使うと違法になる
2021年、総務省は旧スプリアス規格の無線設備の使用期限について「当分の間延期する」と発表しました。
2024年10月現在でも、移行期間の具体的な期日は決まっていません。
しかし、移行期間が終了に近づくと、ETC車載器が品薄になることが予想されます。
また、移行期間終了後でも旧規格のETC車載器で料金所ゲートを通過することは可能ですが、電波法違反となり、以下のような処罰を受ける可能性があります。
- 不法設置・運用のみ:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 公共性の高い無線局への妨害:5年以下の懲役または250万円以下の罰金
慌てて準備することがないよう、早めに新規格のETC車載器に交換しておきましょう。
ETCの2030年問題とは
ETCの2030年問題は、ETCシステムのセキュリティ機能向上のための規格変更に伴って発生する問題です。
サイバー攻撃などの脅威に備えるために、2030年までには現行のセキュリティ規格のETC車載器が使えなくなる予定です。
2022年問題と比べて多くの機種が対象となるため、早めに確認し、必要があれば購入等の対応をとりましょう。
対象となるETCの見分け方
使用中のETCが2030年問題の対象であるかどうかは、19桁の車載器管理番号で確認できます。
具体的には以下のとおりです。
- 1桁目が1=新セキュリティ規格対応モデル
- 1桁目が0=旧セキュリティ規格モデル
車載器管理番号は、取扱説明書や保証書、車載器セットアップ申込書、車載器セットアップ証明書で確認できます。
車載器管理番号がわからない場合は、ETC車載器に記されたセキュリティ情報を表す「識別マーク」を見ることでも判別できます。
- カード挿入口付近に◼︎マークがある=旧セキュリティ規格
- カード挿入口付近に●●●マークがある=新セキュリティ規格
これらに該当しない場合や、「DSRC」の文字が記された機種は旧セキュリティ規格です。
規格変更は「最長で2030年頃まで」
今回の規格変更は、将来的な脅威に備えることが目的です。
現行のセキュリティ規格でこのまま大きな問題が起こらなければ、規格変更は2030年頃です。
しかし、何かしらの脅威が発生した場合は、2030年より早い段階でセキュリティ規格が変更される可能性があります。
変更時期が近づくと品薄になる可能性があるため、社用車などを多く所有している場合は、早めに対応しておきましょう。
ETCを新規格へ移行する方法
現在使用しているETC車載器が2022年問題・2030年問題の対象機種である場合、早めに新規格のETC車載器に買い替えましょう。
最後に、ETCを新規格へと移行する方法を紹介します。
車の買い替えに合わせて移行する
車の買い替えは、ETC車載器を移行する絶好のチャンスです。
最近では、車を購入する際にETC車載器があらかじめ搭載されていたり、オプションとしてETCの取り付けを依頼できたりすることが多くなっています。
ただし、購入時に対応できない・しない場合は、後付け作業が必要です。
既存の車に後付けする
既存の車にETC車載器を後付けすることも可能です。
ETC車載器を搭載する際は、「取り付け」「セットアップ」という2つの作業が必要となります。
セットアップとは、有料道路を利用する際の決済が正確にできるようにしたり、ETC2.0の利用に必要な車両情報を車載器に登録したりする作業のことです。
取り付けは個人でも可能ですが、セットアップは技術や信頼性に関する審査を通過した登録店でしか実施できません。
個人や未登録の店では実施できないため、以下のような登録店に依頼してください。
- ETC車載器を購入した店舗
- ディーラー
- カー用品店
- 中古車専門店
ETC車載器を購入したお店で取り付け・セットアップをおこなうとスムーズでしょう。
まとめ:2030年に向けて、早めに新規格のETCに移行しよう
ETCには、以下のような2022年問題と2030年問題があります。
- 2022年問題:電波法関連法案改正によって生じた問題。対象機種は少ない。
- 2030年問題:セキュリティ規格の向上によって生じた問題。対象機種は多い。
対象機種は、移行期間終了後、使用不可となります。
多くの方が該当すると考えられるのが、ETCの2030年問題です。
社用車など、多くの車を所有・管理している場合は、自社のETCが対象となっているか早めに確認し、必要であれば対応しておきましょう。
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