高速道路上での主な故障原因を解説|重大事故を防止するための点検とは? 

信号もなく、最高速度が高く設定されている高速道路は、短時間で目的地にたどり着けるため、遠方の取引先に向かうときなどに便利なルートです。 

しかし、走行速度が高いため、万が一故障が発生したとき、重大事故に繋がりやすい傾向があります。そんな場所で、もしも故障を起こしてしまったら…と考えると恐ろしいですよね。 

本記事では、高速道路で起きる故障原因、そして防止策について解説します。 

事前チェックを行うことで防げる故障もあります。高速道路を日頃から利用する方は、ぜひご覧ください。 

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高速道路での故障原因

高速道路での故障は、ひとつ間違えれば大事故につながります。 

ネクスコ東日本の統計によると、令和4年の全国の高速道路における車の故障原因の内訳は以下の通りとなっています。

  • 1位 タイヤ(ホイール)破損         39.6% 
  • 2位 始動点火系統不良(バッテリー不良)  14.2% 
  • 3位 オーバーヒート           10.2% 
  • 4位 燃料切れ               8.3% 
  • 5位 動力伝達装置不良           5.7% 
  • 6位 燃料系統不良             2.6% 
  • 7位 その他               19.5% 

参照元:高速道路上での故障は何が原因で起こっているの? | ドラぷら(NEXCO東日本)  

次に、発生率の高い故障原因について解説します。

タイヤのパンクとバースト 

統計を見てわかるように、高速道路上での故障は「タイヤのトラブル」が約40%を占め、ダントツの1位となっています。 

高速道路走行中にタイヤがパンク・バーストすれば、車はコントロールを失い、制御不能になる危険があります。

なぜ、高速道路ではタイヤのトラブルが起きやすいのでしょう。

タイヤ空気圧の過不足

まず、タイヤの空気圧の過不足があります。 

タイヤには空気が充填されていますが、これが少なすぎたり、多すぎたりすると、パンク・バーストのリスクがぐんと高まるので注意が必要です。 

高速走行中に空気圧が低すぎると、タイヤに負荷がかかった際の変形が大きくなり、タイヤ内部に熱がたまることで、最終的にタイヤがバーストします。これをスタンディングウェーブ現象といいます。 

逆に空気圧が高すぎると、タイヤの接地面が小さくなり、中央部分に負荷がかかることで摩耗が早まって、パンクしやすくなります。 

参考:空気圧不足でも起きるタイヤのバースト |JAFユーザーテスト

タイヤの摩耗・劣化 

タイヤは路面との抵抗を利用して、走ったり、止まったりしています。運転すればするほどタイヤの溝はすり減っていくため、限界を超えれば穴が開きパンクします。 

また、タイヤはゴムで出来ているため、時間とともに劣化します。

たとえタイヤの溝が残っていたとしても、長期間使用した古いタイヤは表面にヒビ割れが出てきて、空気が漏れやすくなります。 

参考:摩耗タイヤの検証|JAFユーザーテスト

電気系統の故障 

最近の車は、コンピューターで制御されています。そのため、車には多くの電装品が装着され、それらは無数の配線でつながれています。 

高速道路上での電気系統の故障は、突然スピードが出なくなったり、走行中に停止してしまう可能性があり非常に危険です。 

その原因を見てみましょう。 

発電不良 

車はエンジンの動力で発電しています。この電気でバッテリーを充電し、走行に必要な電気を供給します。 

車の電気を作るのが、オルタネーターと呼ばれる発電機です。 

オルタネーターが故障してしまうと発電不良となり、バッテリーへの電気供給が滞ります。その状態でバッテリー内の電気容量が尽きれば、走行中でも停止してしまいます。 

また、発電機はベルトで駆動している場合が多く、このベルトが切れてしまっても発電不良となります。 

バッテリー劣化 

バッテリーが劣化すると、正常時に比べ、電気を蓄える力が徐々に低下していきます。

そんな状態で高速道路を走り、万が一渋滞に巻き込まれると、発電量が少なくなるため、なおさら充電されにくいです。

蓄電量が少なくなった状態では、たとえばサービスエリアなどに立ち寄った際などに一度でもエンジンを止めてしまうと、エンジンを動かすための電気が供給できなくなり、再度エンジンをかけようとしてもバッテリー上がりの症状で動かなくなることもあります。

オーバーヒート 

走行中、高温となるエンジンを冷やすための冷却システムが、常に作動しています。 

この冷却系統の部品に不具合が起きると、エンジンは異常加熱によってオーバーヒートし、最終的にエンジンが破損してしまいます。 

参考:オーバーヒートの症状|JAF マイカー点検ノート トラブル対処法

冷却水不足 

エンジン内部は、冷却水が循環することで冷やされます。この冷却水は、自然蒸発や漏れなどによって減っていく消耗品ですので、不足すればエンジンが冷やされず、やがてオーバーヒートに至ります。 

漏れの原因としては、ラジエター本体の破損や、ホースの亀裂があげられます。 

オーバーヒートを起こすと、「メーターの水温計が上がる」「エンジンルームから蒸気が出たり、異臭が出る」「エンジンチェックランプが点灯する」などの症状が発生します。 

冷却系統の部品故障 

オーバーヒートは、冷却水の量が正常でも起こることがあります。 

たとえば、「ラジエター本体を冷やす電動ファン」「冷却水を循環させるウォーターポンプ」などが故障すれば、オーバーヒートを引き起こします。 

ガス欠(燃料切れ) 

ガス欠は、全体の10%に満たないトラブルですが、「人的ミス」であることが、他のものと性質が異なります。余裕をもって事前に給油することで防げるトラブルです。 

高速道路上でガス欠を起こしてしまうと、道路交通法第75条の10第1項「自動車の運転者の遵守事項」により、「高速自動車国道等運転者遵守事項違反」として、違反点数2点と、反則金9000円(普通車)が科せられる可能性があります。 

故障したときの安全確保 

高速道路での故障は、命の危機に直結する重大事故を引き起こす可能性があります。 

冷静な判断と適切な安全対策をとることが、重大な事故を防ぎ、命を守る鍵となります。 

以下は、万が一高速道路で故障した場合、安全を確保するための具体的な手順を紹介します。

参考:高速道路で事故や故障が発生したらどうすればいいのですか?|JAF クルマ何でも質問箱 

ハザードランプを点灯させる 

車に異常を感じたら、まずハザードランプを点灯させて後続車に危険を知らせましょう。 

高速走行中の車両は、すぐに停まることができません。ハザードランプで故障が発生したことを周囲に知らせるなど、追突事故を防ぐための対処が求められます。 

安全な場所に車を移動させる 

車に異常を感じたら、可能であれば、停車・退避が安全に行えるサービスエリアやパーキングエリアまで移動することが理想です。 

しかし、高速道路走行中に急な故障に見舞われた場合、余裕がないことがほとんどでしょうから、可能な限り走行車線を避け、路肩や非常駐車帯などに停車しましょう。 

発煙筒や三角表示板を設置する 

三角表示板や発煙等を設置して、後続の車に故障者の発生を知らせましょう。 

その際、車の降り方に注意が必要です。必ず周囲の交通状況を確認し、走行車線の反対側(基本は左側)から降車します。 

「三角表示板」は通常トランク内に収納されています。

三角表示板を展開し、故障車の50m以上後方に設置します。後続車に早く気づいてもらう必要があるので、できるだけ遠くに設置することが望ましいです。 

「発煙筒」は車内の助手席足元やトランク内に収納されています。発煙筒のキャップ部分に着火用の摩擦材がついているので、取りはずして発煙筒の先端に擦りつけ着火させます。

発煙筒に火がついたら故障車の約50m後方に設置します。着火後約5分しか燃えないので、できるだけ早く設置することが大切です。 

安全な場所に避難し救援依頼をする 

追突事故の可能性を考えると、故障後、車内に留まることは危険が伴います。 

できれば、ガードレールの外側や非常駐車帯などの安全な場所に避難しましょう。このときも、後続車の動きや周囲に注意しながら行動することが大切です。

参考:高速道路編|もしもの状況を疑似体験360度VR動画(JAF)

つぎに、安全な場所が確保できたら道路緊急ダイヤル(#9910)に連絡します(事故をともなった場合は警察、けが人にいる場合は救急)。 

このとき、「高速道路名」「進行方向(上り・下り)」「キロポスト(何キロ地点か)」「周辺の建物」などを伝えられると、道路管理者も迅速な対応が可能となります。 

安全確保や事故防止に必要な連絡が完了したら、JAFなどのロードサービスを要請します。JAFなら全国24時間、高速道路での故障対応も行っています。電話の場合は(#8139)へ。ウェブサイトやアプリからでも救援要請をおこなうことができます。

故障を防ぐための事前チェック 

高速道路での故障は突発的に起こることもありますが、事前に点検を行っていれば防げる場合も多々あります。 

ここでは、高速道路上での代表的な故障原因を防ぐためのチェックポイントを解説します。参考にしてみてください。 

タイヤのチェック 

タイヤは、車種ごとに空気圧の規定量が設定されています。運転席のドア付近、または給油口付近に「車両指定空気圧」が表示されていますので、規定空気圧を確認して、タイヤの空気圧を調整しましょう。 

その際、タイヤの溝が十分に残っているかも点検します。 

タイヤには「スリップサイン」と呼ばれる、残りの溝の深さが「1.6mm」を示す目印があります。タイヤの使用限度は残り溝の深さが1.6mm以上と定められていて、溝の深さが少なくなると、制動距離が長くなったり、雨の日にスリップしやすくなります。スリップサインに近い、もしくは到達しているようなら、すぐにタイヤを交換しましょう。 

参考:タイヤの空気圧点検と充填方法|JAF クルマなんでも質問箱

エンジンルームのチェック 

オーバーヒートを防ぐため、冷却水量を点検しましょう。 

エンジンが冷えている状態で、冷却水タンクの液量を確認し、内容液が「MAX」と「MIN」ラインの間にあるかを点検します。

冷却水は少しずつ自然蒸発するので、「MIN」を下回っていたら、適切な量を補充しましょう。 

冷却水が極端に減っているなら冷却装置の異常を疑います。オーバーヒートする前に点検・修理が必要です。 

そのほか、エンジンオイルの量・汚れ具合、バッテリーの端子に緩み・腐食、バッテリー液量の点検と、ファンベルトに亀裂やほつれ、張り具合も確認しましょう。 

燃料の確認 

高速道路のパーキングエリアは約15km間隔、サービスエリアは約50km間隔で設置されていますが、必ずしもガソリンスタンドが備わっているわけではありません。走行区間によっては、100km以上ガソリンスタンドがない区間も存在します。 

高速道路に乗る前には燃料が十分に残っているかを確認し、少なければ事前に給油しましょう。 

まとめ 

本記事では、高速道路での故障原因と予防策について解説しました。 

社用車は自家用車と比べて、乗る頻度が多く、走行距離も延びる傾向にあります。 

それだけ、車には負担がかかるので、日常点検が重要になります。 

高速道路上での故障は、一般道路に比べて重大な事故に発展する可能性が高いです。 

日常点検で車の状態を把握し、異常があれば故障する前に整備修理をしましょう。 

JAF交通安全トレーニングでは、日常点検の方法も詳しく学べます。 

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毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。
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イイダユウジ
高校在学時、アルバイトでこつこつ貯めた資金で「S13シルビア」を愛車に迎えたのを機に、車に目覚める。進学先で自動車整備を学び「国家1級整備士」資格を取得。卒業後はカーディーラーに就職し、車の基礎と社会の厳しさを叩き込まれる。現在は、個人で中古車販売・整備を主に手掛ける一方で、その経験・知識を最大限活かし、交通安全普及のための広報活動に勤しむ。整備士の目線で独自の切り口を模索するなど、幅広く活動している。