2025年8月5日、群馬県伊勢崎市で41.8℃を観測しました。
これは、2025年7月30日に記録された兵庫県丹波市柏原町の41.2℃を更新する、日本歴代最高気温となっています(記事執筆現在)。
気象庁が発表した観測史上最高気温順位によれば、上位20位までにランキングされた同率を含む21地点のうち、1933年の山形県(10位)、1994年の和歌山県(14位)を除く19地点が2000年代以前に記録されたものとなっており、昨今、夏季がいかに猛暑化しているかが窺えます。
さて、そんな猛暑下で特に気をつけなければならないのが、熱中症です。
「暑さで体調が悪くなってしまう」程度と、甘く見られがちな熱中症ですが、場合によっては痙攣(けいれん)・意識障害・多臓器不全などの症状が出る可能性もあり、生活する上で十分気をつけなくてはなりません。
この記事では、車内での熱中症リスクやその原因、JAFのテスト結果をもとにした具体的な対策、万が一の際の応急処置まで、車内熱中症に関する情報を解説します。
仕事で車を運転するドライバーの方は、自動車の運転と熱中症の関係性を理解し、自身と同乗者の身の安全を守るための参考としてください。
\ これを見ればすべて解決!/
目次
JAFテストに見る車内で熱中症が起こる理由

車内での熱中症は、外気温がそれほど高くなくても発生する危険な現象です。
車の窓やボディは太陽光を効率よく吸収するため、密閉された車内空間には熱がこもりやすくなるため、外気温が猛暑というほど高くなくても熱中症のリスクがあります。
特に直射日光が当たる場所に駐車した場合、短時間でも車内温度が急上昇し、体温調節が難しくなることで熱中症を引き起こします。
その際、湿度が高ければ汗が蒸発しにくく、体温が下がりづらいことから、さらにリスクが高まります。
小さな子どもや高齢者は体温調節機能が未発達、もしくは低下しているため、特に注意が必要です。
そもそも熱中症とは?
暑い環境下で過剰に汗をかくことにより体内の水分や塩分が失われます。
さらに体内の血液の流れが悪くなり、身体の表面から空気中に熱を逃がすこともできず、汗をかけなくなります。
このように体温の調節がうまくできなくなり、体温が上昇する状態のことを「熱中症」といいます。
体温調節機能が正常に働かなくなることで体内の熱がうまく放出されずに蓄積されてしまい、体内に熱がこもり続けてしまいます。
その状態で無理が続くと、最悪の場合には死にも至る怖いものです。
参考:熱中症について学ぼう:熱中症のメカニズム|日本気象協会
JAFテストで判明した“エアコン停止後15分”の衝撃事実

2012年8月にJAFがおこなった実験によると、車のエアコンを停止してからわずか15分で、車内の熱中症危険指数(WBGT)が最高レベルに達することが判明しました。
これは、外気温が25℃程度でも起こりうる現象であり、たとえ真夏でなくても油断できません。
エアコンを切った直後はまだ涼しく感じても、密閉された車内は急速に温度と湿度が上昇し、身体への負担が一気に高まります。
エアコン停止後の車内環境変化を過小評価せず、常に注意を払いましょう。
熱中症危険度を示す“暑さ指数(WBGT)”とは?
暑さ指数(WBGT)は、熱中症の危険度を示す指標で、気温だけでなく湿度や輻射熱(太陽光や地面からの熱)も考慮して算出されます。
この指数が高いほど、熱中症のリスクが高まります。
車内は外気よりも湿度や輻射熱の影響を強く受けるため、暑さ指数(WBGT)が急激に上昇しやすい環境です。
JAFのテストでも、エアコン停止後すぐに暑さ指数(WBGT)が危険レベルに達することが確認されています。
このような指標を意識することでより正確に熱中症リスクを把握し、適切な対策を講じるための助けになるので、覚えておきましょう。
WBGT値 | 危険度 |
---|---|
35℃以上 | 危険 |
31~35℃ | 厳重警戒 |
28~31℃ | 警戒 |
28℃未満 | 注意 |
さらにエンジン停止後わずか30分で約45℃

さらに、JAFは真夏の炎天下で車内温度がどのように変化するのか、8月の晴天かつ外気温35℃の状況下において、昼12時から16時の4時間、車内温度を測定しました。
すると、窓を閉め切った車両(黒色のボディ)では、エンジンを停止させてわずか30分後の12時30分頃に車内温度が約45℃を記録。
その後も上昇を続け、さらに2時間半が経った15時頃には55℃を超えてしまいます。
なお、車両の窓をそれぞれ3㎝程度開けた条件下の車両では、30分後の車内温度は約40℃、15時の時点では約45℃と若干の低下がみられましたが、それでも車内に留まるには厳しい車内温度になることが分かりました。
引用:晴天下(炎天下)のクルマの室内はどのくらい温度が高くなりますか? 夏編|JAF クルマ何でも質問箱
車内温度や湿度が上昇するメカニズムと原因

車内の温度や湿度が急激に上昇するのは、車の構造と太陽光の影響が大きく関係しています。
車の窓ガラスは太陽光を通しやすく、車内に入った熱は外に逃げにくい構造です。
また、密閉された空間のため、車内の空気が循環せず、熱がこもりやすくなります。
湿度も人の呼気や汗、外気の影響で上昇しやすく、体温調節をさらに困難にします。
このような環境下では、わずかな時間でも熱中症のリスクが高まるため、車内の温度・湿度管理は非常に重要です。
ダッシュボード・フロントガラス・シートの表面温度変化に要注意
車内で特に温度が上がりやすいのが、ダッシュボードやハンドル、シートの表面です。
これらの部分はフロントガラスから直射日光を受けやすく、短時間で50℃〜70℃に達することもあります。
特に黒や濃色の内装は熱を吸収しやすく、触れるとやけどを引き起こす危険も。
また、シートに座った際には、熱いままのシートに体温が移らず、身体に熱がこもりやすくなるため、熱中症リスクがさらに高まります。
サンシェードやタオルなどの布を活用し、内装表面温度の上昇を抑える工夫が必要です。
噂を調査①|大きい車は車内温度が上がりにくい?
車体が大きいと、車内の空間が広くなるため、温度上昇が緩やかになる傾向があります。
しかし、完全に安全というわけではありません。
小型車に比べて温度上昇のスピードは遅いものの、最終的には同じように高温に達します。
また、大きい車は、窓の面積も大きい傾向にあり、より多くの太陽光が入りやすく熱がこもりやすい場合もあります。
車体の大きさに関わらず、熱中症対策は必須です。
噂を調査②|湿度が高いほど熱中症になりやすい?
湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなり、体温が下がりにくくなります。
そのため、同じ気温でも湿度が高いほど熱中症のリスクは大幅に上昇します。
車内は密閉空間のため、湿度がこもりやすく、特に複数人が乗車している場合や雨天時は注意が必要です。
エアコンの除湿機能や換気を活用し、湿度管理を徹底しましょう。
車内で熱中症にならないための予防策

車内での熱中症を防ぐためには、事前の対策が不可欠です。
駐車場所の工夫やサンシェードの活用、エアコンの適切な使用、こまめな水分補給など、複数の対策を組み合わせることが重要です。
また、短時間の駐車でも子どもや動物を車内に残さないことが鉄則です。
日常的に意識して行動することで、車内熱中症のリスクを大幅に減らすことができます。
駐車場所選び|日陰・サンシェードでできる温度対策
駐車する際に、できるだけ日陰を選ぶことが基本です。
駐車している間に日が当たる場所へどうしても駐車しなければならない場合には、サンシェードをフロントガラス内側に設置することで、直射日光を遮り、車内温度の上昇を抑えることができます。
駐車中、窓を少し開けて換気することでも一定の効果を得られますが、車を離れる際には防犯面に十分注意しましょう。
これらの対策を組み合わせることで、車内の温度上昇を大幅に抑えることが可能です。
夏の駐車時に車内温度を最も早く下げる方法

JAFがおこなったテストに、同じ車を5台用意し、車内温度が55℃になったタイミングで5名のモニターがそれぞれ違う方法を用いて、温度低下の数値を実測したものがあります。
上のグラフは車内温度の低下が経過時間によってどのように推移するかを表したものです。
計測器の温度センサーは運転席と助手席の中央、乗員の顔の高さに設置し、経過時間ごとの温度変化を測定したところ、5パターンのうち「エアコン+走行」をおこなった際に最も車内温度が低下したことがわかりました。
引用:夏の駐車時、車内温度を最も早く下げる方法は?|JAF ユーザーテスト
エアコンを活用した熱中症を予防する安全な過ごし方
エアコンの活用は車内温度・湿度を下げる最も効果的な方法です。
エンジン停止時はエアコンが使えなくなるため、外気温が高い中で長時間の停車をする場合や、仮眠時にエンジンを停止(エアコン停止)するのは避けるべきでしょう。
たとえば、東京都の「環境確保条例」 では、全ての自動車等がアイドリング・ストップの義務の対象となっているため、夏場でも停車するたびにエンジンを切らないといけないと勘違いしがちですが、実は「やむを得ないと認められる場合」についての記述があり、該当した場合にはアイドリングストップ義務の対象から除外されます。
この「やむを得ない場合」の一部には、
熱中症による生命の危険が生じるおそれがある中で、運転手が自動車から離れることができないなどやむを得ない事情がある場合。ただし、必要な時間に限るとともに、近隣住民等に十分配慮した場所とする必要があり、義務の対象から除外される
といった例が示されており、ドライバーの判断で安全と快適さを両立させる工夫が大切なことがわかります。
参考:アイドリング・ストップに例外はありますか?|東京都環境局
短時間でも油断禁物!子どもの放置はもっと危険
「少しの間だから大丈夫」と思って子どもやペットを車内に残すのは、非常に危険です。
JAFのテストでも、わずか5分で熱中症警戒レベルに達することが確認されています。
子どもは体温調節機能が未発達なため、短時間でも命に関わる事態になることがあります。
どんなに短い時間でも、絶対に車内に残さないよう徹底しましょう。
参考:車内熱中症に注意!子どもやペットを取り残したままのキー閉じこみ 昨年の8月は1ヶ月で99件!|JAF
万が一、症状が出たときの対処法|緊急時の適切対応とは

もし車内で熱中症の症状が現れた場合、迅速かつ適切な対応が命を守るカギとなります。
まずは安全な場所に移動し、涼しい環境で安静にすることが最優先です。
症状が軽度であれば応急処置で回復することもありますが、重症化が懸念される場合はすぐに医療機関へ連絡するか、救急要請しましょう。
特に子どもや高齢者は症状が急激に進行するため、少しでも異変を感じたら迷わず対応することが重要です。
初期症状を見逃さない!すぐにできる応急処置と安全確保の方法
熱中症の初期症状には、めまい・立ちくらみ・頭痛・吐き気・大量の発汗などがあります。
これらの症状が表れたら、すぐに車外へ出て日陰や涼しい場所に移動し、衣服を緩めて身体を冷やすなど、まずは安静にすることが大切です。
また、意識がはっきりしていれば水分補給もおこなうのも効果的です。
症状が改善しない場合や意識障害がある場合は、すぐに救急車を呼んでください。
事故予防のためにも水分補給を|その他冷却方法のコツ
熱中症対策には、こまめな水分補給が欠かせません。
一度に大量の水を飲むのではなく、少量ずつ頻繁に摂取するのが効果的です。
また、スポーツドリンクなどの塩分が入った飲み物を補給すると、より安全です。
身体を冷やす際は、首・脇の下・足の付け根など太い血管が通る部分を冷却すると効率的に体温を下げられます。
冷却グッズや濡れタオル、保冷剤などを活用しましょう。
まとめ:日常からできる熱中症対策と継続的な交通安全意識の持ち方
車内熱中症は、誰にでも起こりうる身近な危険です。
日頃から駐車場所やエアコンの使い方、水分補給などの基本的な対策を徹底し、車内で仮眠などをする際には熱中症に特に注意してください。
また、自身だけでなく、同乗者が発症する場合もありますから、万が一の際の応急処置や救急要請の方法も覚えておきましょう。
日常的に熱中症対策を意識し、交通安全への意識も高めることで、安心・安全な運転を実現できます。
「JAF交通安全トレーニング」では、ドライバーの安全運転意識を向上させるための交通安全教材を、インターネット上で学べるe-ラーニング形式で随時配信しています。
ドライバーの交通安全への意識が低いままだと、熱中症の初期症状が出た場合にも対処を後回しにしてしまうなど、体調不良による事故を引き起こす要因ともなり得ます。
従業員の交通安全意識向上のためにも、導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
社用車で事故を起こしたら? もしもの時に備えましょう!