近年、大雨による道路の冠水が頻繁に発生しています。
業務中、業務外を問わず、運転中に道路の冠水に遭遇する可能性は、決して少ないものではありません。
冠水した道路は非常に危険であり、適切な対策と注意が必要です。
本記事では道路が冠水する原因や冠水した道路を運転することの危険性、大雨時の対策や万が一の対処法まで詳しく解説します。
緊急時の人命と安全を守るためにも、ぜひ参考にしてください。
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目次
大雨による冠水が発生した際の運転に注意すべき理由

大雨によって冠水が発生している状況での運転は、ドライバーにとっても、周囲の道路利用者にとっても非常に危険です。
冠水している道路を自動車で走行すると、車内に浸水が発生したり、車体が浮き上がったりするリスクが高まります。
最悪の場合、自動車のエンジンに水が入り込んで停止し、冠水した路上で立ち往生する事態になりかねません。
また、車内からは水深がわかりにくいため、無理に運転すると、いつの間にか車体が浮き上がっている事態に陥る可能性もあります。
交通事故を防ぎ、ドライバーの身の安全を守るためにも、ドライバーは大雨や冠水が発生している状況での運転は控えるようにしましょう。
参照:[Q]自動車が冠水路や高潮で浸水してしまったら?|JAF
大雨で道路が冠水する原因

大雨が降った際に道路が冠水するのには原因があります。
まずは道路が冠水する原因をご紹介します。
集中豪雨の増加
近年、気候変動の影響により、短時間で大量の雨が降る集中豪雨が増加しています。
集中豪雨の増加で排水設備の処理能力を超える雨水が流れ込み、冠水が発生しています。
気象庁のデータによると、強い雨の年間発生回数は1976年〜1985年の平均に比べて、2014年〜2023年の平均では約1.8倍の増加です。
局所的な大雨が増えたことが、道路が冠水する原因の一つになっています。
都市化による影響
都市化が進んだことも道路が冠水する原因になっています。
都市開発により地表面がコンクリートやアスファルトで覆われたことで、雨水が地面に浸透しにくくなっているためです。
短時間で大量の雨水が排水設備に流れ込むことで、処理能力を超えてしまいます。
都市化による不浸透面積の増加は、雨水の流出量を増加させ、排水システムへの負荷を高めることで冠水のリスクを増大させています。
低地での建設
低地での建設も冠水リスクを高めます。
低地は自然と水が集まりやすい地形のため、大雨時に冠水しやすくなっています。
実際に埼玉県の荒川低地では2019年の台風19号により、広範囲にわたる冠水が発生しました。
低地での建設は大雨時に水が集中しやすく、排水が困難になるため冠水のリスクが高くなります。
出典:台風19号による荒川に出水状況|国土交通省関東地方整備局
大雨で冠水した道路の危険性

大雨で冠水した道路は非常に危険です。
つづいては、冠水した道路を走行すると起こりうる危険を具体的に解説します。
車両の制御不能
冠水した道路では、車両の制御が難しくなります。
タイヤのグリップ力が低下したり、ハンドルやブレーキがコントロールできなくなったりします。
一般的に安全に走行できる水深は、10cm程度までです。
ただし、10cmに満たなくてもブレーキが利きづらくなるなど、制御が難しくなることもあります。
冠水した道路の走行は非常に危険なので注意しましょう。
車両の損傷
冠水した道路を走行すると、車両の損傷につながります。
エンジンルームに水が入り、エンジンが故障する原因になるからです。
JAFの冠水路走行テストでは、水深30cmでも速度や車両タイプによってはエンジンルームに水が入ることがわかっています。
また、冠水した道路では、障害物や道路の損傷などが水面下に隠れているため見えません。
気付かずに侵入すると、車両が損傷する可能性があります。
さらに、倒れた電線が隠れていることも考えられ、車両の損傷だけでなく感電の危険もあります。
事故の危険
冠水した道路では、事故のリスクが非常に高まります。
車両制御の難しさに加え、大雨による視界不良で歩行者やほかの車両が見えにくくなるためです。
2024年6月には沖縄県の那覇うみそらトンネル内で、冠水により車両が壁に衝突する事故が起こりました。
さらに、衝突事故後もトンネル内で少なくとも4台の車両が冠水した所に突っ込んだり、物損事故を起こしたりしました。
冠水した道路での運転は、深刻な被害を引き起こす可能性があります。
出典:那覇空港つなぐ「うみそらトンネル」で冠水、事故も大雨で各地の交通規制続く|琉球新報
大雨で道路が冠水したときの対策

つぎに、道路が冠水したときの具体的な対策をご紹介します。
実際に道路が冠水したときに、適切な対策が命を守るので、ぜひご覧ください。
無理に運転しない
最もシンプルかつ、簡単にできる確実な対策は「無理に運転しないこと」です。
先述したように、大雨や冠水が発生している状況での運転は大変危険です。
特に運転技術に自信がないドライバーの場合、大雨による冠水時の運転は交通事故を引き起こすリスクを高めます。
不要不急の用件がないのであれば、無理に運転をしないようにしましょう。
大雨や冠水時に運転を避けるだけで、交通事故のリスクを避けられます。
追い越しや車線変更は極力控える
やむを得ず大雨が降っている状況で運転をする際は、追い越しや車線変更は極力控えましょう。
追い越しや車線変更は加速やハンドル操作を伴いますが、大雨で路面が滑りやすくなっている状況では大変危険性が高い行為です。
うかつに追い越しや車線変更をおこなうと、スリップして交通事故を引き起こす恐れがあります。
また、大雨が降っている状況は視界が悪く、ルームミラーやドアミラーの視認性も低下している状態です。
そのため、後継車を見落としやすく、追い越しや車線変更をおこなった際に衝突するリスクが高くなります。
急いでいる状況でも、大雨が降っている際は冷静な運転を心がけましょう。
冠水した道路を避ける
冠水した道路は避けるようにしましょう。
冠水した道路を避けることで、車両の制御不能や損傷、事故のリスクを減らすことができます。
気象庁が提供している『浸水キキクル』を利用すれば、浸水害発生の危険度を常時確認可能です。
大雨時には冠水した道路を避け、安全な経路を最優先に選択しましょう。
アンダーパスに入らない
アンダーパスとは、道路や鉄道の下を通過するためにあるトンネル状の道路のことです。
特に、アンダーパスには入らないようにしてください。
アンダーパスは地形的に水が集まりやすく、短時間で水位が上昇する可能性が高いからです。
アンダーパスでは、直前に走行していた道路よりも水深が深くなり車両が立ち往生する危険性があります。
アンダーパスは特に危険なので、進入しないようにしましょう。
ハザードマップをチェックする
冠水が発生するリスクが高い状況でやむを得ず外出する際は、あらかじめ自治体が発行したハザードマップを確認しておくことがおすすめです。
川沿いや崖など、冠水しやすい場所などを確認しておけば、リスクを回避しやすくなります。
また、ハザードマップに記載されていなくても、身近なところで冠水時のリスクが高い場所があります。
例えば、地下駐車場や川より低い位置にある場所は、冠水しやすく、車内へ浸水しやすくなるものです。
そのような場所に自動車を駐車したままにしておくと、大雨が降った際に浸水によって自動車が故障する可能性があります。
あらかじめ大雨が降るとわかっている場合は、自動車を安全な場所に移しておきましょう。
エンジンを停止する
冠水した道路に進入してしまった場合は、エンジンを停止しましょう。
エンジンをかけたまま走行すると、エンジンルームに水が入り致命的な損傷を引き起こす可能性があるからです。
また、ドアが開かなくなったり、車が浮いて流されたりするのを避けるため、すぐに安全な車外へ避難してください。
さらに、車両が浸水した場合は水が引いたからといってすぐにエンジンをかけると、感電などの危険があります。
国土交通省でも以下のように注意喚起されています。
1.自分でエンジンをかけない。
引用元:浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ|国土交通省
2.使用したい場合には、お買い求めの販売店もしくは、最寄りの整備工場にご相談下さい。特に、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)は、高電圧のバッテリーを搭載していますので、むやみに触らないで下さい。
3.なお、使用するまでの間、発火するおそれがありますので、バッテリーのマイナス側のターミナルを外して下さい。
一度でも浸水したら、JAFのロードサービスや販売店などに連絡しましょう。
正確な情報を収集する
大雨や冠水のリスクを回避する上でも、正確な情報の収集は不可欠です。
ラジオやテレビなどで正確な情報を集めておけば、事前に対策を立てられます。
近年はインターネットで不正確な情報が出回ることが多く、なかには悪質なデマが混じっているケースも少なくありません。
誤った情報やデマを鵜呑みにすると、かえってトラブルや事故に巻き込まれるリスクが高まります。
信憑性が低い匿名の情報には惑わされず、信頼できる報道機関から情報を集めるようにしましょう。
備えと事前準備をしておく
大雨や冠水に備えた準備をしておくことも大切です。
以下のようなものを車内に備えておきましょう。
- 緊急脱出用ハンマー
- 懐中電灯
- 非常食と飲料水
- 救急キット
また、普段から雨天時の運転方法について学んでおくことも重要です。
『JAF交通安全トレーニング』では雨天時の運転方法だけでなく、交通安全のさまざまなノウハウをeラーニング形式で学ぶことができます。
従業員の交通安全教育にぜひご活用ください。
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なぜ大雨で冠水した道路を走行してはいけないのか

冠水した道路の走行はなぜ避けるべきなのでしょうか。
ここでは、冠水路走行が危険な理由や冠水路走行をしないために気をつけるべき点を紹介します。
速度により危険度が変わる
冠水路は普段よりも速度の影響を受けやすくなります。
なぜなら速度が速い方が巻き上げる水の量が多くなり、エンジンルームに水が入りやすくなるからです。
JAFがおこなった水深30cmでのテストでも、時速10kmではエンジンルームに水が入らなかったのに対し、時速30kmでは水が入ることがわかっています。
また、冠水路は水深の変化を見つけづらい傾向にあります。
速度を落とすことで故障を防ぐ可能性が高まるだけでなく、事故を防ぐことにもつながります。
歩行者や自転車と衝突するリスクが高まる
大雨が降っている状況は、歩行者や自動車と衝突するリスクが高まる点にも注意しなければなりません。
大雨が降っている状況は視認性が低下し、歩行者やほかの自動車を見落としやすくなります。
そのため、判断が遅れてしまい、歩行者や自動車と衝突する事態になりかねません。
加えて、大雨で路面が濡れていると、ハイドロプレーニング現象が発生しやすくなります。
ハイドロプレーニング現象とは、タイヤと路面の間に発生した水膜によってブレーキが利かなくなる現象です。
この現象が起きると、運転中に歩行者やほかの自動車に気付いても、ブレーキが利かずに交通事故に発展する恐れがあります。
通常の雨天時よりも制動距離が必要になる
水深の浅い冠水路でも車両の制動距離が伸び、ブレーキが利きにくくなります。
一般的に雨天時の制動距離は晴天時の約1.5倍必要です。
冠水時はさらに余裕を持った車間距離が必要になります。
走行中に水深の変化を見極めづらい
冠水した道路の水深を過小評価すると非常に危険です。
水面下の路面状況は見えないため、見た目より深い可能性があります。
危険を察知したときには、車両が浮いて動かない状態になりかねません。
また、下水の影響でマンホールが開いていたり、側溝などが見えなくなっていたりすることもあるため、リスクは増します。
水深を過小評価せず、安全側に判断すれば車両の水没や事故のリスクを減らすことができます。
冠水で車両が水没したときの対処法

最後に車両が水没したときの脱出方法を解説します。
万が一車両が水没して身動きが取れなくなった場合は、迅速かつ冷静な判断が生死を分けるので、学んで実践しておきましょう。
シートベルトを外し窓を開ける
まずシートベルトを外し、窓を開けて脱出経路を確保します。
エンジン停止直後であれば、パワーウインドウも作動する可能性は高いです。
水がドアよりも高くなると水圧でドアが開かないことが多いため、窓からの脱出を試みます。
水面よりも窓が高い位置にあれば、窓を開けて脱出できるので、慌てずに行動しましょう。
窓が開かなければ脱出用ハンマーを使う
水没すると、電気系統の故障などでパワーウィンドウが開かないこともあります。
そのようなときは、脱出用ハンマーを使って窓ガラスを割ってください。
緊急時のために、脱出用ハンマーは手の届く位置に固定しておくことが重要です。
窓が水面より上にあるうちに割りましょう。
また、フロントガラスは合わせガラスのため割れない場合があります。
側面か後面のガラスを割ってください。
ガラスの中心ではなく、枠付近を狙うと、力が伝わりやすいため割れやすくなります。
窓が割れなければ水位が高くなるのを待つ
窓が開かず、さらに割れない状況の場合は、車内と車外の水位差が小さくなるのを待ってください。
ドア内外の水圧差が少なくなることで、ドアを開けやすくなります。
ドアが開きそうな状態になったら、大きく息を吸い一気に脱出しましょう。
焦らず落ち着いて脱出の機会をうかがうことが大切です。
水没時の適切な対処法を事前に学び、実践すれば命を守ることにつながります。
まとめ:大雨で道路が冠水したときのための対策をしておこう

大雨による道路冠水は、予期せぬ危険をもたらす可能性があります。
冠水した道路の走行はできるだけ避け、どうしても運転しなければならない状況でも決して無理はせず、特に注意して避難するようにしましょう。
また、このような緊急時に安全に行動するためには、事前の準備や日頃の対策が重要です。
日頃の対策にはぜひ『JAF交通安全トレーニング』をご活用ください。
日々の交通安全教育が、従業員の命を守ることにつながります。
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