日々業務で運転をおこなうビジネスパーソンの皆さんが、運転中に一番危険を感じるのはどのような場所でしょうか。
交通事故のリスクと隣り合わせの中、危険が特に高まるのが「交差点」です。
日本損害保険協会では、毎年この時期に全国交通事故多発交差点マップを発表しています。
その中では、人身事故が多発する交差点を都道府県ごとにピックアップし、名称や所在地、特徴とともに、交通事故の防止・軽減を目的としてランキング形式で列挙されています。
この記事では、令和6年(2024年)に事故が多発した全国ワースト交差点について、ランキングをもとに紹介し、その危険個所に共通する要因を独自の見解で解説していきます。
社用車で事故を起こしたら? もしもの時に備えましょう!
全国交通事故多発交差点マップとは?

「全国交通事故多発交差点マップ」は日本損害保険協会と全国の地方新聞社が連携し、47都道府県の人身事故データを調査・集約した資料のことで、2008年から毎年発表されています(※事故データは2007年から)。
この資料では、人身事故の半数以上が交差点・交差点付近で発生することに着目し、交通事故の防止・軽減を目的として、都道府県ごとにワースト5交差点の特徴や件数の多い事故類型の主な要因・予防策等を紹介しています。
Webサイト上から閲覧可能で、地図から都道府県の情報を簡単に検索することができます。
参考:全国交通事故多発交差点マップ(2024年データ準拠)|日本損害保険協会
マップの主な特徴と目的

2024年の全交通事故に占める交差点事故(左グラフ)を見ると、全交通事故件数290,895件のうち、交差点で発生した事故は169,284件となっており、半数以上の58.2%も占めています。
また、全交通事故死傷者数に占める交差点事故の被害状況割合(右グラフ)を見ると、全ての交通事故で発生した死傷者が347,058人、そのうちほとんどが軽傷に収まっていますが、死亡者数だけを見ると、1年間で1,200人もの尊い命が交差点内で失われていることがわかります。
割合にして0.3%と少ない数字に思えますが、毎年1,200人、ひと月に100人が交差点での交通事故で亡くなっていると考えれば、決して他人事ではなくなるはずです。
全国交通事故多発交差点マップでは、全国・各都道府県のそzれぞれで人身事故の多い上位5カ所の交差点をリストアップし、それぞれの事故の傾向、要因、要望策など、過去のデータも含めて詳細に検索が可能です。
これらは、自治体や道路管理者による交差点の安全対策・改良検討や、一部の地図・カーナビで、ドライバーへの注意喚起に役立てられています。
出典:日本損害保険協会「全国交通事故多発交差点マップ」21年データ公表|一般社団法人 日本自動車会議所
マップが利用される場面

全国交通事故多発交差点マップのデータでは、2023年以降、付近の通学路に関する情報も提供されています。
各都道府県ごとのワーストランキングにランクインした交差点から、徒歩時間の最も短い小学校を掲載することで、登下校中の児童が巻き込まれる交通事故の抑止につなげています。
また、各交差点の特徴一方通行・橋脚や信号機などの有無も記載し、詳細に特徴を把握しやすくなっています。
業務中や通勤時に通るルートに人身事故の多い交差点がないかチェックしたり、どのような交差点で人身事故が多発しているのかを理解するため、企業の交通安全教育・研修の教材として活用することもできそうです。
全国の交通事故多発交差点ランキングワースト5

2024年1月1日~12月31日に発生した人身事故件数を基準とした全国ワースト5の交差点を抽出しました。
順位 | 交差点名称 | 都道府県 | 人身事故件数 |
---|---|---|---|
ワースト1 | 池袋六ツ又交差点 | 東京都 | 17件 |
ワースト2 (同率2カ所) | 谷町9丁目交差点 | 大阪府 | 15件 |
鵯越交差点 | 兵庫県 | ||
ワースト4 (同率4カ所) | 四谷四丁目交差点 | 東京都 | 14件 |
瀬田交差点 | 東京都 | ||
安井町交差点 | 大阪府 | ||
打出交差点 | 兵庫県 |
ここでは、全国ワースト5に列挙された交差点の事故発生内訳に着目し、その特徴をもとに運転時の対策方法を解説していきます。
ワースト1:東京都|池袋六ツ又交差点
池袋六ツ又交差点は、2023年から2年連続でワースト1となった全国でも有数の人身事故多発交差点です。
特徴としては、名称の通り「六差路」という複雑かつ広い形状の道路となっており、17件中14件が車両相互の事故で、そのうち出会い頭衝突が8件を占めています。
対策としては、対向車の動きを注視し、必要に応じて安全な速度で進入することが必要です。
ワースト2:大阪府|谷町9丁目交差点
谷町9丁目交差点も15件と人身事故の発生件数が多く、2023年もワースト3にランクインしていました。
地下鉄に通じる階段が多く点在するなど、歩行者も多い上、交差点付近には外壁などの構造物や植栽、路上駐車車両などが存在することで見通しが悪くなりがちです。特に夜間には細心の注意を払って通行する必要があります。
さらに観光エリアでもある難波駅からほど近く、日常的に歩行者・自転車の通行が多いので、交差点右左折前の安全確認は確実におこない、進入する前に減速して対向車の有無と動きに注意しましょう。
ワースト2(同率):兵庫県|鵯越交差点
谷町9丁目交差点と同じく15件の事故が発生している鵯越交差点ですが、そのうち9件は右折直進時の衝突といわゆる右直事故が多く発生している特徴があります。
この交差点では、西側からの右折需要が多いことから、右折レーンが2車線設置されています。
右折車が並走しながら交差点に進入したとき、左側の車が死角となることで、右側の車からは対向直進車の有無、動向を視認しにくくなることが交通事故の一因となっているようです。
右折車は対向直進車との距離や速度に注意を払い、強引な右折などをおこなわないようにするのがまず第一です。
次に、右折レーンが2車線以上ある場所では、並走右折車につられて安全確認が済んでいないのにも関わらず「きっと大丈夫だろう」と無意識に右折を開始しがちなので、自分の目でしっかりと安全確認を完了してから右折をおこなうことが大切です。
一方、自身が直進車の場合には、過度な優先意識を持たず、右折車の動きを予測しながら安全な速度で進行することが大切です。
ワースト4:東京都|四谷四丁目交差点
この交差点の特徴として注目したいのは、人対車両・車両相互・車両単独いずれの事故も発生している点です。
道路形状が複雑で広いことから、信号や歩行者などの見落としが多くなると考えられます。
進行方向への安全確認を確実におこない、横断歩道を通過する際は周囲の歩行者・自転車の動きに注意しましょう。
ワースト4(同率):東京都|瀬田交差点
国道と国道が交差していることもあり、終日渋滞している上、五差路と複雑な構造をしている交差点です。
渋滞によってわき見運転や漫然運転となるケースも多く、それによって追突事故が多く発生しています。
前の車との車間距離を十分に取り、前方の安全確認を怠らないよう運転に集中して通行しましょう。
ワースト4(同率):大阪府|安井町交差点
この交差点も同率順位の瀬田交差点と同様、追突事故が多い交差点となっています。
この交差点では、交差点内を走行時に隣車線の車両と接触するといった特殊な事故が発生していますが、恒常的に終日渋滞していることがその一因として挙げられます。
また、北側に高速道路の入り口、南側にはオーバーパスがあるため周辺はスピードが出やすい傾向にあり、追突のリスクが高くなることが想定されます。
発進時は前方の安全確認をしっかりおこなうことをまず第一に、交差点進入時には周囲の車の状況も確認し、通過後の走行レーンを間違えないよう走行することが大切です。
ワースト4(同率):兵庫県|打出交差点
兵庫県にある打出交差点では、年間14件の人身事故が発生しており、そのうち5件はすべて交差点東側、主道路(国道43号)の西行き車線で発生した追突事故です。
追突は、信号待ちや渋滞停車中に起きており、前走車を存在を認めつつも車間距離があることに気を許しながら進行したことや、停車中にブレーキペダルが緩みクリープ現象で自車を発進させてしまったことなど、いずれも漫然運転によるものということが調査結果で明らかになりました。
このように、渋滞時に漫然とした気持ちで運転をおこなえば、前走車がいるのを認識していたにも場合にも追突事故を引き起こす要因になり得ます。
渋滞でなかなか前に進まない状況においても、前方の状況を常に把握し、適度な車間距離を保つこと。さらに、停車中はしっかりとブレーキペダルを踏みつづけることを意識しましょう。
ランキングから見える事故危険箇所の共通点

2023年と比較すると、全交通事故件数は、307,903件だった数が290,895件と5.5%減少し、交差点事故件数も176,562件から169,284件と4.1%減少しており、2024年の全交通事故件数・交差点事故件数は、直近5年間で最小値となりました。
交差点内の事故が減少している要因として、まずは信号機のない横断歩道における歩行者優先意識がが改めて認知されてきたことがひとつ。
さらに、この記事で紹介した事故多発交差点マップによって、危険な交差点が“見える化”したことも理由として挙げられます。
それでも、依然として毎年発生している交通事故の半数以上が交差点内での出来事です。
ここでは、ワーストランキングに挙がった事故の多い交差点から共通点を探ってみましょう。
参考:信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2024年調査結果) | JAF
大規模で交通量の多い交差点
ワースト5すべてに共通するのは「三差路以上」の交差点であることです。
事故が多発する交差点は、商業施設やビジネス街に隣接した場所であることが多く、交通量の多い都心や都市部に集中しているといえます。
車や歩行者などの母数が多いほど、交通事故を引き起こす機会が増えるのは明白なので、通行する際には細心の注意を払わなければなりません。
複雑で認知性の悪い構造
事故の多い交差点ではカーブや勾配がともなったり、斜めに交差するなど、変則的な条件が多い傾向にあります。
特に都市部では、高速道路や鉄道、歩道橋などの橋脚が交差点付近に現れることで視界が遮られたり、構造物が視界中で混み合うことで信号や標識の見落としなども起こり得ます。
人口が多く交差点密度が高い
今回のワースト5ランキングに入った7カ所の交差点の所在地を紐解くと、東京都・大阪府・兵庫県に集約される結果となっており、それぞれは関東・関西を代表する都市部に該当します。
政府の統計によると、東京都の人口は1,400万2,534人で第1位、大阪府の人口は877万1,961人で第3位、兵庫県の人口は539万3,607人で第7位となっています(※2025年1月1日時点)。
そのため、交通量が集中するエリアが多数存在し、混雑や渋滞が常態化して事故のリスクを高めてしまうことも挙げられます。
さらに最近では、自転車の交通ルール改正によって車道の景色が変わったり、都市部でよく見られる電動キックボードなどの登場によって、都市部の交差点はさまざまな道路利用者が多様に交錯する場所になりました。
それによりドライバーが認知(安全確認)しなければならないポイントが増えているともいえるでしょう。
出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査|政府統計の総合窓口
まとめ:「見えるリスク」を「防ぐ行動」に橋渡し
この記事では、日本損害保険協会が発表した全国交通事故多発交差点マップをもとに、2024年(令和6年)に事故が多発した交差点をランキングで紹介し、その危険個所に共通する要因を解説しました。
全国交通事故多発交差点マップは、企業ドライバーに対しても、ごく身近にリスクがあることを実感させてくれる有用な資料です。
マップで顕在化した危険に対して、「具体的な対策」をもって事故防止につなげていくことに意味があります。
具体的な対策として「交通安全教育の習慣化」が挙げられます。
JAF交通安全トレーニング(通称JAFトレ)では、e-ラーニング方式で交通安全を学べるコンテンツを配信する交通安全教材です。
すき間時間を利用してスマホやタブレットはもちろん、パソコンを使ったインターネット上での受講がいつでもどこでも可能となっていて、数多くの企業で採用されています。
右折・左折時のリスクをはじめ、危険な交差点とはどのようなものかを実践的な映像から学習することで、従業員は安全運転のイメージを描けるようになります。
従業員の安全行動を身につけるために、JAFトレを活用してドライバーと企業の安心と信頼を高めていきましょう。まずはお問い合わせからご検討ください。
\ 企業の交通安全トレーニングを応援! /