全国交通安全運動とは?企業や自治体が自主的におこなう交通安全週間などの具体的な活動内容を紹介

毎年、春と秋の2回実施されるのが「全国交通安全運動」です。

この運動は、日本全国の交通事故防止を目的として実施される啓発活動です。

内閣府・国土交通省・警察庁など官公庁が主体となり、各自治体や企業、学校、地域団体と連携して全国展開されます。

2025年におこなわれる春の全国交通安全運動は、2025年4月6日(日)~15日(火)の10日間が予定されており、例年通り、年度が替わってすぐ開始されます。

さらに、この活動に賛同した企業や自治体などが独自に実施する「交通安全運動」があります。

この記事では、全国交通安全運動に沿っておこなわれる企業や自治体における交通安全運動と具体的な活動内容を紹介していきます。

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全国交通安全運動について

現在、全国交通安全運動は毎年2回、それぞれ10日間に渡っておこなわれています。

実施期間と特徴は以下の通りです。

実施期間特徴
春の全国交通安全運動(4/6~4/15)新学期の季節のため、子どもの事故防止
秋の全国交通安全運動(9/21~9/30)日が短くなるため、薄暮・夜間の事故防止

いずれの交通安全運動も、ドライバーの交通安全に対する意識向上と、交通事故に注意した行動がとれるようになることを実施効果として見込んでおり、期間中の「0」がつく日「4月10日」と「9月30日」は「交通事故死ゼロを目指す日」とされています。

毎年、この日程で原則実施されますが、やむを得ない事情などを考慮した正式な日程が交通対策本部によって決定されます。

たとえば、4年に1度おこなわれる統一地方選挙の開催年は、春季の全国交通安全運動が「5月11日~5月20日」に変更され、「交通事故死ゼロを目指す日」は「5月20日」になります。

この運動は、「全国重点」として項目を大きく3つに分け、それぞれの実施内容に沿って取り組まれるものです。

  1. 子どもを始めとする歩行者が安全に通行できる道路交通環境の確保と正しい横断方法の実践
  2. 歩行者優先意識の徹底と、ながら運転等の根絶やシートベルト・チャイルドシートの適切な使用の促進
  3. 自転車・特定小型原動機付自転車利用時のヘルメット着用と交通ルールの遵守の徹底

出典:全国交通安全運動|国土交通省

交通安全週間と交通安全運動は何が違う?

よく「交通安全週間」という言葉を耳にします。

「全国交通安全運動」とは呼び名は少し異なりますが、現在おこなわれている運動と元々は同じものでした。

そもそも全国交通安全運動は、戦後復興期にある1948年(昭和23年)、自動車交通量に増大の兆しが見え、交通事故も増加傾向にあったことで発足した「全国交通安全週間」に端を発します。

当時は、年に1回、冬季である12月におこなわれていました。

現在に至っては、開催期間が10日間に延びていますが、開始当初は1週間のみの開催期間だったことの名残から「交通安全週間」という呼び名が今もなお残っているようです。

また企業や自治体が自主的におこなう交通安全運動にも、「交通安全週間」の名を冠して取りおこなわれるケースが目立ちます。

出典:全国交通安全運動について|内閣府

春の全国交通安全運動|全国重点の特徴

参考:令和7年春の全国交通安全運動回覧ポスター|警視庁

4月は新学期が始まる季節ということもあり、「春の全国交通安全運動」においては、通学中の子どもをはじめとする歩行者の安全を中心とした取り組みとなっています。

また、ここ数年で急速に普及した「特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)」の交通ルールや、2023年4月から施行された自転車利用者のヘルメットの着用努力義務についての啓発も運動内容に盛り込まれるようになりました。

統計を見ると、交通事故による幼児・児童の死者・重傷者は歩行中・自転車乗車中の割合が高く、新学期のはじまる4月~6月にかけて増加する傾向にあります。

さらに、歩行中児童の死者・重傷者発生時間帯は「登下校中」が全体の約4%を占めています。

次世代を担う子どもたちの大切な命を守ることは、社会に生きる「大人」として、また「企業」としても重要なことです。

参考:令和7年春の全国交通安全運動推進要綱|内閣府

秋の全国交通安全運動|全国重点の特徴

秋季は日が短くなる季節でもあります。日本は夏至(毎年6月21日または22日)を過ぎると日の出から日の入りまでの時間が徐々に短くなり、冬至(毎年12月21日または22日)で日照時間がもっとも短くなります。

日の入り前後1時間を「薄暮時間帯」といい、この時間帯での死亡事故件数は10月から12月にかけて増加する傾向にあります。

このような状況から、「運転中の早めのライト点灯」「歩行者の反射材着用」の実践などが掲げられており、これらの啓発は「秋の全国交通安全運動」がおこなわれる9月から早めに周知徹底していく意義があるといえます。

また、自転車の絡んだ交通人身事故は1年を通して多く発生しており、ヘルメット非着用時の致死率は着用時と比べて約3倍も高くなるといったデータがあります。

そのため、近年は春秋共通で自転車乗用時のヘルメット着用に関する施策を打ち出しています。

参考:令和6年秋の全国交通安全運動推進要綱|内閣府

交通安全週間とは?

交通安全週間という名称は、国が主体としておこなっている現在の全国交通安全運動の期間が7日間であった頃の正式名称として扱われていました。

全国規模で統一しておこなわれる交通安全運動が期間を10日間に移行したことを機に、その名称は廃止されましたが、今でもその名残やわかりやすさから「交通安全週間」として各自治体や企業、学校などが独自に設定し、交通安全啓発活動が実施されています。

交通安全週間全国交通安全運動
実施者自治体・企業・学校など国(内閣府・警察庁など)
実施時期各組織が独自に設定春(4月)・秋(9月)
実施内容地域や企業ごとに異なる全国統一の重点項目を設定

自治体や企業による交通安全啓発活動には「〜週間」と銘打つ企業が目立ちますが、その名の通り休日を除く平日5日を期間として設定するところもあれば、官公庁主体の全国交通安全運動になぞった10日間の期間であったり、「交通安全月間」として月単位で取りおこなわれるところもあり、企業や自治体によって実施期間や時期、内容はさまざまです。

企業や自治体が主導する交通安全週間の目的

交通安全週間では、各企業などが独自に考えた施策を実施します。

時期やスケジュールは自由に設定できますが、活動の方向性としては国が主体としておこなう「全国交通安全運動」の内容を基礎にしている部分が広く共通しています。

  1. 交通事故の防止
  2. 交通ルールやマナーの意識向上
  3. 地域ごとの交通安全課題への対応

このような目的に沿って、企業や自治体ごとに主体性をもった取り組みがおこなわれています。

近年話題になっている「あおり運転」「ながらスマホ」の防止、通年の課題である「子ども・高齢者の安全確保」は、各企業が重点的に取り組んでいる傾向にあります。

企業が交通安全週間に取り組む意義とは?

企業が交通安全週間に取り組むことは、従業員の安全確保、社会的責任の遂行、企業価値の向上につながります。

特に、社用車を日常的に使用する必要のある営業職や運送・物流業などでは、交通事故のリスクを低減するために積極的な取り組みが求められます。

交通事故削減を目指す企業の社会的責任(CSR)

企業が交通事故削減に取り組むことで、社会全体の安全向上に貢献することが求められます。これは、企業の社会的責任(CSR)といえます。

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業が利益の追求だけでなく、その事業が社会に与える影響を考え、ステークホルダー(利害関係者)からの要求に対して、適切な行動と説明を果たしていく考え方です。

業務で社用車を使用する企業は、安全対策が企業の信頼性や社会的評価に大きく影響するため、交通事故削減もCSRの一環にある重要なテーマのひとつとなるのです。

参考:労働政策全般 CSR(企業の社会的責任):厚生労働省

地域社会への交通安全啓発活動の重要性

地域社会における交通安全啓発活動は、交通事故の防止と住民の安全意識向上に貢献する重要な取り組みです。

特に、高齢者や子どもなど交通弱者を守るためには、企業・自治体・地域住民が一体となった交通安全活動が不可欠です。

前段で説明したCSR活動にもつながり、地域との関係性強化は企業イメージ向上、従業員が積極的に参加することにより、安全意識が高まり交通事故リスクの低減が期待できます。

実際に企業や自治体が実践している交通安全週間(運動)の紹介

ここでは、企業や地方自治体が実際に取り組んでいる交通安全活動を紹介していきます。

夏と冬の交通安全運動

春と秋に実施している全国交通安全運動とは別で、夏と冬におこなわれる交通安全運動も存在します。

この運動は各都道府県独自で実施されるもので、期間は全国交通安全運動と同様の10日間に設定されているところが多いですが、各自治体の判断で1カ月間おこなわれたりと自由度は高くなっています。

夏の交通安全運動の特徴としては、お盆休みの帰省中に多く開かれる飲み会や宴会時の注意喚起です。

飲酒運転防止のためのハンドルキーパー運動の実施などがあります。

一方、冬の交通安全運動では、積雪の多い日本海側の県などを筆頭に、雪道の事故防止として冬用タイヤの早期着用、タイヤチェーン等の携行を推奨しています。

参考:令和6年「夏の交通事故防止運動」を実施します|大阪市
参考:北陸三県統一 年末の交通安全県民運動 | 石川県

継続した取り組みで培われる安全意識と安全行動

毎年7月1日~7日は、厚生労働省と中央労働災害防止協会主催による「全国安全週間」が実施されています。

この活動は労働災害防止を主目的とし、昭和3年(1928年)にはじめて実施されて以来、およそ100年に渡って一度も休止することなく続けられています。

毎年施策を打ち出しており、期間中はスローガンの入った看板・ポスター等として各事業所に掲示され、労災防止を呼びかけます。

安全行動は一朝一夕で身に付くわけではなく、継続した取り組みによって安全意識が定着していきます。

なお、交通事故防止の取り組みとしては、災害事例、交通安全情報マップ等を活用した交通安全意識の啓発等をおこなっています。

参考:令和6年度「全国安全週間」を7月に実施|厚生労働省

信号機のない横断歩道の交通整理

交通安全の啓発には多面的なアプローチが必要になることもありますが、かといって、掲げる施策が多ければ多いほど良いということでもありません。

取り組みやすくシンプルな活動を規範意識を持って継続することが大切です。

自動車部品を製造する企業のひとつでは、「交通安全週間」として、従業員の安全と安全意識の向上と交差点事故防止のため、労働組合主催で信号機のない横断歩道の交通整理を実施しています。

交通事故防止の狙いが主目的ではあるものの、企業と地域間の友好的な関係性構築にも一役買っているようです。

参考:交通安全週間|黒田化学株式会社

従業員の安全を守る具体的な運転教育

企業が安全運転週間を設置し、交通安全の啓発をおこなうことは、企業の信頼獲得、コスト削減など生産性向上につながるメリットが見込めますが、なによりも重要なのは従業員の安全を守ることです。

交通安全運動に参加したのを機に、交通安全の重要性がさらに身につけば、結果として従業員自身の安全を守ることにもつながります。

ここでは、効果的な運転教育の方法について解説していきます。

  1. 基礎的な交通安全に関する知識の習得
    教習所で習った道路交通法規は、現在に至るまでの間に改正されていることがあります。常に情報収集して知識をアップデートできれば良いのですが、日々の業務と並行して独自におこなうことは困難を極めます。そこで、交通安全に特化した「JAF交通安全トレーニング」などのe-ラーニング教材受講や、外部講師によるセミナーなどを活用してみるのも効果的です。
  1. 実践的なトレーニングによる運転技術の向上
    日々の運転の中で、自分自身の癖などに気づき、改善していくことは難しいことです。運転実技講習などの社内研修や、ドライブレコーダー映像を活用したKYT(危険予知トレーニング)などを設け、改めて自分の運転を振り返り、気づきを与えられるような環境を作ってみましょう。
  1. 定期的な安全運転チェック
    交通安全知識を習得し、運転技術が向上したら終わりというわけではありません。一時的に安全行動が改善したとしても、時間とともに風化・形骸化していく可能性があります。

人は自分にとって簡単で楽な方向へ流されがちな生き物ですから、それを防ぐには、第三者による確認作業が必要です。

例えば、ドライブレコーダー映像のチェック、OJTによる指導などによる、定期的な運転状況の確認とフィードバックが重要になります。

まとめ:交通安全週間は運転教育のひとつ

本記事では、企業や自治体おける交通安全週間とその具体的な活動方法を紹介していきました。

全国統一でおこなわれる春・秋の全国交通安全運動とは違い、企業風土に沿った啓発内容や運動を独自で考え実行できることが、企業や自治体ごとの交通安全週間(運動)の魅力ともいえます。

「継続は力なり」という言葉もあるように、交通安全週間による運転教育は、一度きりではなく、継続的に実施することが重要です。

そうすることで、従業員一人ひとり意識が変わり、やがて周りにも広がり、企業全体で安全運転文化を根付かせ事故削減につながっていきます。

従業員の安全を守るためにも、「知識」+「実技」+「データ分析」 を組み合わせた教育を進めていく必要があります。

これらを網羅しているのが「JAF交通安全トレーニング」です。

JAF交通安全トレーニングは、法改正を題材にした講座やドライバー視点で学べるKYT講座などさまざまな教材を用意し、従業員の学習業況を確認できる管理者機能も付いています。これらはすべてe-ラーニングコンテンツなので、すき間時間を利用してパソコンはもちろん、スマホやタブレットでの受講が可能です。

この機会にぜひ、交通安全啓発の一環として「JAF交通安全トレーニング」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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JAF交通安全トレーニング

毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。

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イイダユウジ
高校在学時、アルバイトでこつこつ貯めた資金で「S13シルビア」を愛車に迎えたのを機に、車に目覚める。進学先で自動車整備を学び「国家1級整備士」資格を取得。卒業後はカーディーラーに就職し、車の基礎と社会の厳しさを叩き込まれる。現在は、個人で中古車販売・整備を主に手掛ける一方で、その経験・知識を最大限活かし、交通安全普及のための広報活動に勤しむ。整備士の目線で独自の切り口を模索するなど、幅広く活動している。