車両管理責任者とは?選任をおすすめする理由や業務内容を徹底解説

交通事故のリスクを抑えるには、社内全体の交通安全意識の向上と、車両(社用車)の適切な管理が必要です。

とはいえ、通常の業務と並行しながらおこなうと、かえって中途半端になり、交通事故のリスクを低減できません。

そこでおすすめなのが「車両管理責任者」の選任です。

この記事では、交通事故のリスクを減らすために車両管理責任者の選任をおすすめする理由について解説します。

また、車両管理責任者の主な業務も紹介しています。

車両管理責任者について知りたい方はもちろん、「車両管理があいまいになっている」「交通事故のリスクを減らしたい」と考えている方は、ぜひご一読ください。

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車両管理責任者の概要

車両管理責任者の概要

最初に「車両管理責任者とは何か」「安全運転管理者との違いは何か」について解説します。

車両管理責任者とは

車両管理責任者とは、会社が保有する車両(社用車)を管理する責任者のことです。

後述する「安全運転管理者」と異なり、法律で定められた役職ではありません。

そのため、社用車を保有している企業が車両管理責任者を選任しなくても、法律違反にはなりません。

しかし、車両管理責任者を選任した方が、交通事故のリスクを低減できます。

その理由は、社用車を問題なく運転できるように維持・管理することが、車両管理責任者の主な役割だからです。

1つ1つの業務を丁寧に遂行できる人や、まめな性格の人が向いているでしょう。

安全運転管理者とは

車両管理責任者と似た役職で「安全運転管理者」があります。

安全運転管理者とは、道路交通法の遵守や交通事故防止のために定められた制度です。

道路交通法によって、一定台数以上の自動車を保有する事業所には、選任が義務付けられています。

道路交通法第74条 車両等の使用者の義務

車両等の使用者は、その者の業務に関し当該車両等を運転させる場合には、当該車両等の運転者及び安全運転管理者、副安全運転管理者その他当該車両等の運行を直接管理する地位にある者に、この法律又はこの法律に基づく命令に規定する車両等の安全な運転に関する事項を遵守させるように努めなければならない。

引用元:道路交通法(e-GOV 法令検索)

安全運転管理者の選任義務がある事業所は以下のどちらかです。

  • 乗車定員11人以上の自動車を1台以上保有する事業所
  • 乗車定員11人以下の自動車を5台以上保有する事業所

また、保有する自動車が20台以上の場合は、20台ごとに1人の副安全運転管理者を選任しなければなりません。

このように、安全運転管理者は、車両管理責任者と違って法律で決められた制度です。

条件に当てはまる事業所は、必ず選任しましょう。

なお、安全運転管理者については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

車両管理責任者と交通安全管理者の違い

車両管理責任者と交通安全管理者の違いをまとめると以下の通りです。

  • 車両管理責任者:法律で定められた制度ではなく、選任は任意。業務内容も独自で決められる。
  • 安全運転管理者:法律で定められた制度。資格条項や業務内容は決まっている。

企業によっては、車両管理責任者と安全運転管理者を兼任している場合もあります。

また、安全運転管理者の選任義務に該当しない事業所でも、交通事故のリスクを減らすために車両管理責任者を選任していることもあります。

車両管理責任者の選任をおすすめする理由

車両管理責任者の選任をおすすめする理由

「法律で定められてないのに、どうして車両管理責任者の選任がおすすめなの」と、疑問に思いませんか?

ここからは、車両管理責任者の選任をおすすめする理由を解説します。

社用車の私的利用を防ぐため

車両管理責任者を選任することで、社用車の私的利用の防止が可能です。

車両管理があいまいだと、従業員が社用車を私的に利用する恐れがあります。

私的利用中に社用車で交通事故を起こしてしまうと、運転していた従業員だけでなく、会社にも運行供用者責任が発生するリスクがあります。

私的利用を防止するためにも、車両管理責任者による適切な車両管理が重要です。

事故を防止するため

法的に安全運転管理者の選任義務がない場合でも、車両管理責任者が定期的に運転教育を実施することで、社内の交通安全意識の向上が期待できます。

運転教育には、自動車学校などでの企業向け講習の他に、交通安全eラーニングがあります。

  • 場所や時間を問わずに学習できる
  • 講座の質が均一で、講師に左右されない
  • 学習状況を一元管理できる
  • 個々の傾向を把握して、適切なフィードバックができる

などのメリットがあるので、ぜひ検討してみてください。

コストを削減するため

車両管理責任者が走行ルートや給油状況、自動車保険などを管理すれば、無駄なコストを削減できます。

例えば、「保険の内容に無駄があれば、内容の見直しや保険会社の切り替えを検討する」といった感じです。

車両関係のコストを削減したいなら、車両管理責任者の選任は必須といえるでしょう。

ただし、「近い」「混まない」といった理由で、住宅街などの危険なルートを選択しないようにしましょう。

コスト削減を重視しすぎて、逆に交通事故のリスクが高まってしまいます。

それでは本末転倒なので、安全を最優先に考えたうえで、コストの低いルートを提案しましょう。

車両管理責任者の主な業務

車両管理責任者の主な業務

車両管理責任者には法の規定がないため、業務内容は各事業所で独自に決められます。

ここからは、一般的な車両管理責任者がおこなう業務を紹介します。

車両管理台帳や規定の管理・確認

1つ目は「車両管理台帳の管理・確認」です。

  • 運転日報(月報)
  • 車両管理台帳
  • アルコールチェック表

などの台帳管理を徹底すると同時に、運転者に記録を徹底させます。

台帳管理が疎かになっていると、従業員が社用車で事故を起こしたときに「適切な管理がされていない」という理由で、会社の責任が大きくなる恐れがあります。

リスクを減らすためにも、適切な台帳管理をおこないましょう。

車両の使用許可を出す

2つ目は「車両の使用許可を出すこと」です。

従業員による社用車の私的利用を防ぐことが目的です。

従業員が社用車を使用する際に、行き先や目的を確認し、妥当であると判断した場合に使用許可を出します。

鍵の管理も行い、使用許可を出した際に手渡します。

コスト管理

3つ目は「社用車に関わるコストを管理すること」です。

車両管理台帳を元に、

  • ガソリン代
  • 保険代
  • 車検代

といったコストを把握し、可能であればコスト削減をおこないます

また、不要な社用車が明確になれば、売却やリースへの切り替えを会社に提案します。

車両の整備・点検

4つ目は「車両の整備・点検」です。

問題なく走行できるように、車検・法定点検・日常点検などをおこないます。

車検と法定点検は実施項目と実施する間隔が法律で決まっています。

特に車検切れの車で公道を走ると道路交通法違反になり、免許停止処分が下されるので注意が必要です。

法定点検と日常点検は、車両の不具合を早期に発見できるため、故障や事故防止に効果的です。

車両を長持ちさせられるので、コスト削減にもつながるでしょう。

安全運転管理者の業務の確認

5つ目は「安全運転管理者の業務の確認」です。

安全運転管理者を選任している事業所の場合、車両管理責任者が安全運転管理者の業務に漏れがないか確認することで、事故のリスクを大きく減らせます。

双方で二重チェックするといいでしょう。

車両管理責任者特有の業務

車両管理責任者特有の業務

車両管理責任者には、車両管理を通じて「収益の向上」と「CSR推進」に貢献するという、特有の業務もあります。

ここからは、車両管理責任者に特有の業務について解説します。

収益の向上

1つ目は「収益の向上を目指すこと」です。

車両管理システムを使って、安全を最優先したうえで売上増加・コスト削減を目指します。

具体例は以下の通りです。

  • ルート最適化を図って営業に充てる時間を増やし、生産性の向上を狙う
  • 稼働状況を可視化して適正な車両台数を割り出し、コスト削減を狙う
  • 従業員1人ひとりに安全運転の意識を植え付けることでエコドライブや燃費改善を推進し、運用コストの削減を狙う

CSR推進

2つ目は「CSRの推進」です。

CSR(Corporate Social Tesponsibility:企業の社会的責任)とは、企業が自社の利益のためだけではなく、環境や地域社会など社会全体に対して責任ある行動をとり、説明責任を果たしていくことを求める考え方です。

車両管理を通して貢献できるCSRには、主に安全運転の推進と法令遵守があります。

安全運転の推進では、車両管理システムを用いるのがおすすめです。

継続的なモニタリングによって従業員1人ひとりの運転特性を把握することで、それぞれに合った適切なフィードバックが可能になり、安全運転の定着につながります。

法令遵守に関しては、eラーニングなどの教材を用いて学習する方法がおすすめです。

繰り返し実施することで、交通安全への意識がより高まるでしょう。

車両管理責任者の役割は社内全体に交通安全の意識を浸透させること

車両管理責任者の役割は社内全体に交通安全の意識を浸透させること

車を運転する限り、交通事故のリスクは付きまといます。

一般的に、交通事故が起こる要因は次の3つといわれています。

  • ドライバーによる要因:脇見運転、危険運転、居眠り運転、睡眠不足
  • 車両による要因:整備不良
  • 事業者内の要因:運転者や車両を管理する体制が整っていない

事故を防止するには、車両管理責任者が先頭に立って労務・車両・運行状況を適切に管理し、社内全体で交通安全意識を高めることが重要です。

安全に直結するポジションなので、社内全体の状況を把握しながら、1つひとつの業務を丁寧におこなう姿勢が求められます。

まとめ:車両管理責任者を選任して適切な車両管理をしよう

車両管理責任者を選任して適切な車両管理をしよう

交通事故のリスクを減らすには、車両管理責任者を選任して、社用車を適切に管理するのがおすすめです。

特に、法的に安全運転管理者の選任義務がない場合、車両管理責任者を選任した方がいいでしょう。

社内に交通安全推進の中心的人物がいるだけで、交通安全への機運は大きく変わります。

「交通事故が減らない」「車両管理があいまいになっている」とお悩みの場合は、車両管理責任者を選任して、社用車の管理に取り組んでみてはいかがでしょうか?

とはいえ、車両の管理業務はわかりやすいものの、従業員の管理業務、とりわけ交通安全教育に関してはさまざまなコンテンツがあるため、何を選ぶべきか迷ってしまうでしょう。

そこでおすすめなのが、eラーニングです。

弊社では、JAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。

短時間で学べるコンテンツが多く、毎日の学習によって交通安全意識を高められるように設計しています。

「社内の交通安全意識を高めたい」という方は、ぜひご活用ください。

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