ホワイト物流とは?参加方法や効果的な施策について解説

「ホワイト物流とはどういうものか知りたい」

「ホワイト物流に参加することの意味を知りたい」

このような悩みをお持ちではないでしょうか。

「ホワイト物流」推進運動は、物流業界が抱える問題を解決し、業界全体を長期的に維持・発展させていくための取り組みです。

しかし、業界にとって重要な取り組みと知りつつも、具体的な行動内容やメリットが見えず、ホワイト物流参加に踏み切れない担当者の方もいるのではないでしょうか。

本記事では「ホワイト物流」推進運動の内容やメリット、参加方法などについて解説します。

ホワイト物流とは

「ホワイト物流」推進運動とは、物流業界におけるトラックドライバー不足の深刻化にともない、物流の安定化や経済成長の助けとなることを目的に取り組む運動のことです。

具体的には以下の2つを目的としています。

  • トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化
  • 女性や60代の運転者等も働きやすいより「ホワイト」な労働環境の実現
引用:「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト「「ホワイト物流」推進運動について」

賛同企業も日々数を増しており、令和6年3月15日時点では2,665社となっています。

物流業界が抱える問題を解決するためには、物流業界全体が一丸となって取り組むだけでなく、荷主企業をはじめとした関係者と協力しあうことが不可欠です。

「ホワイト物流」推進運動が求められる背景

「ホワイト物流」推進運動が求められる背景には、トラックドライバーの不足が挙げられます。

不足の度合いは深刻で、トラックドライバーがいないために荷物が運べないといった事態も少なくありません。

以下に、トラックドライバーが不足している現状について、数字で詳しく解説します。

人材不足の深刻化

トラックドライバー不足が深刻化している大きな原因の一つが、新たなドライバーが増えない点です。

実際、トラックドライバーの有効求人倍率は、全職業平均と比較して約2倍となっており、求人数に対して応募が半分程度しかいない状況が続いています。

引用:「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト「ホワイト物流とは?」

新人が入ってこない理由の一つは、長時間労働や肉体的負担の重さなどによる労働環境の悪さです。

求職者が働きたいと思えるためにも「ホワイト物流」推進運動による労働環境の改善は急務であると言えるでしょう。

労働者の高齢化

トラックドライバーの高齢化により、人材不足だけでなく物流業界全体の持続的な発展に問題を抱えている点も「ホワイト物流」推進運動が求められる背景の一つです。

厚生労働省の調査によると、全産業と運送業において「45~49歳」および「29歳以下」の労働者が占める割合は以下となっています。

45~49歳29歳以下
運送業45.3%10.0%
全産業33.8%16.5%
出典:「統計から見る運転者の仕事」(厚生労働省)

トラックドライバーの高齢化が進んでいる背景には、長時間労働や肉体的負担が大きいといった過酷なイメージが強いことに加え、車離れが進んでいるなどの理由から若者がなりたがらない点が考えられます。

長時間労働の常態化

「人材不足の深刻化」や「労働者の高齢化」の大きな要因の一つが長時間労働の常態化です。

物流業の平均労働時間は、全職業平均よりも約2割長いとの調査結果がでています。

出典:「最近のトラック運送事業に関する取組みについて」(国土交通省)

労働時間が長くなる原因の一つは、荷受け・荷待ち時に発生する待機時間の長さです。

荷受けの平均待ち時間は1時間34分となっており、長ければ3時間以上待たされるケースも一定数存在します。

参照:「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト「「ホワイト物流」推進運動について

ホワイト物流参加のメリット

「ホワイト物流」推進運動へ賛同する企業は増えていますが、助成金がでたり法的拘束力がある訳ではないので、物流業界全体から見るとまだまだ多いとは言えません。

ここからは「ホワイト物流」推進運動に参加することで自社にとってどのようなメリットがあるかについて解説します。

生産性を高められる

「ホワイト物流」推進運動に参加し、取り組みを進めていく過程で生産性向上が期待できます。

ホワイト物流の取り組み内容は、荷受け・荷待ち時間の削減や荷役作業の負担削減など、生産性の向上や効率化に直結するものとなっているためです。

また、ホワイト物流のポータルサイトでは、取り組みに関するガイドラインや賛同企業の事例集なども用意されています。

推進運動に積極的に参加することで、物流の安定化がスムーズに進められるでしょう。

ドライバーが働きやすい環境を構築できる

「ホワイト物流」推進運動に参加することで、ドライバーが働きやすい環境を構築できるのもメリットの一つです。

働きやすい環境が構築されると求職者の応募数が増加し、人材不足の解消につながりやすくなります。

また、心身の健康を維持しやすくなるため、既存従業員のモチベーション向上や離職防止も期待できるでしょう。

SDGsに貢献できる

SDGsに貢献できる点も「ホワイト物流」推進運動に参加するメリットの一つです。

ホワイト物流の取り組み内容には、SDGsと直接的な関係はありませんが「ジェンダー平等の推進」や「働きがいも経済成長も」など共通するものも存在します。

そのため、ホワイト物流への参加によって自然とSDGsに貢献することとなり、社会貢献度の高い企業という認識が得られるでしょう。

健康経営・環境保全へ取り組む企業としてアピールできる

「ホワイト物流」推進運動へ賛同すると、外部に対して健康経営・環境保全(荷待ちのアイドリング削減、モーダルシフトや小口配送削減によるCO2排出削減など)へ取り組む企業としてアピールできます。

ホワイト物流に参加するとポータルサイトに「賛同企業」として公表されます。

また、賛同企業であることを示すバナーやイラストを自社のサイトやSNSで利用できるため、うまく活用すれば周囲にCSR(社会的責任)を果たしていることをアピールできるでしょう。

ホワイト物流への参加方法

ホワイト物流へ参加するためには「賛同を表明」「自社で取り組む内容の選定」「行動宣言の作成」をおこなう必要があります。

以下で、それぞれの手順について詳しく解説します。

 1.「自主行動宣言」への賛同を表明する

「ホワイト物流」推進運動に参加する最初の手順は「自主行動宣言」の必須項目への同意です。

同意するべき必須項目は以下の3つです。

項目内容
取組方針事業活動に必要な物流の持続的・安定的な確保を経営課題として認識し、生産性の高い物流と働き方改革の実現に向け、取引先や物流事業者等の関係者との相互理解と協力のもとで、物流の改善に取り組みます。
法令遵守への配慮法令違反が生じる恐れがある場合の契約内容や運送内容の見直しに適切に対応するなど、取引先の物流事業者が労働関係法令・貨物自動車運送事業関係法令を遵守できるよう、必要な配慮を行います。
契約内容の明確化・遵守運送及び荷役、検品等の運送以外の役務に関する契約内容を明確化するとともに、取引先や物流事業者等の関係者の協力を得つつ、その遵守に努めます。
引用:「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト「「ホワイト物流」推進運動への参加手順」

内容をしっかりと確認し把握した上で賛同を表明しましょう。

 2.自社で取り組む内容の選定

次に自社で取り組む内容の選定をおこないます。

必須項目に加えて自社で取り組むことができる項目を、以下の推奨項目を参考に検討します。

A.運送内容の見直し・A① 物流の改善提案と協力・A② 予約受付システムの導入・A③ パレット等の活用・A④ 発荷主からの入出荷情報等の事前提供・A⑤ 幹線輸送部分と集荷配送部分の分離・A⑥ 集荷先や配送先の集約 他・A⑦ 運転以外の作業部分の分離・A⑧ 出荷に合わせた生産・荷造り等・A⑨ 荷主側の施設面の改善・A⑩ リードタイムの延長・A⑪ 高速道路の利用・A⑫ 混雑時を避けた配送・A⑬ 発注量の平準化・A⑭ 船舶や鉄道へのモーダルシフト・A⑮ 納品日の集約・A⑯ 検品水準の適正化・A⑰ 物流システムや資機材の標準化
B.運送契約の方法・B①運送契約の書面化の推進・B②運賃と料金の別建て契約・B③燃油サーチャージの導入・B④下請取引の適正化
C.運送契約の相手方の選定・C①契約の相手方を選定する際の法令遵守状況の考慮・C②働き方改革等に取組む物流事業者の積極的活用
D.安全の確保・D①荷役作業時の安全対策・D②異常気象時等の運行の中止・中断等
E.その他・E①宅配便の再配達の削減への協力・E②協力引越時期の分散への協力他
F.・F①独自の取組
引用:「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト「「ホワイト物流」推進運動への参加手順」

設定した推奨項目を公表するかは任意で、一度決めた後でも随時変更が可能です。

3.自主行動宣言の作成

最後は自主行動宣言の作成および提出です。

自主行動宣言のフォーマットは「ホワイト物流」推進運動のポータルサイトからダウンロードできます。

ダウンロードしたフォーマットに必要事項を記入し、ポータルサイトの提出フォームより事務局へ提出します。

提出はいつでも可能ですが、ポータルサイトでは、まずは取り組みやすいものから早期に宣言をおこない、段階的に内容を充実させていくことを推奨しています。

ホワイト物流の実現に効果のある施策

ホワイト物流の実現にはさまざまなアプローチ方法があるため、具体的にどのような方法をとれば良いか迷っている企業の方もいるのではないでしょうか。

以下に、ホワイト物流実現に効果のある施策を紹介するので、取り組み内容を検討する際の参考にしてください。

業務のデジタル化推進

業務の効率化にはデジタル化の推進、特に業務をサポートするシステムの導入が効果的です。

近年では、物流業界に対応したシステムが多く提供されており、主に以下のような種類があります。

システムの種類概要
輸配送管理システム荷物が出荷されてから届くまでの計画立案やマネジメント、問い合わせ対応をサポートするシステム
トラック予約受付システム物流拠点や港湾などで生じる荷物の受け渡し業務の予約・受付をおこない、荷受け・荷待ちを効率化するシステム
勤怠管理システム・従業員の残業時間や遅刻・早退・欠勤、休暇の取得状況を含め、勤務状況を正確に管理するシステム・デジタルタコグラフとの連携など物流業に特化したシステムも多く提供されている

同じシステムでも、提供する会社によって特徴や利用料金などは異なるため、自社の課題や予算を考慮した上で、適したシステムを選ぶと良いでしょう。

労働条件の改善

労働条件の改善もホワイト物流の推進に効果的です。

トラックドライバー不足の主な要因が、長時間労働や肉体的負担などの労働環境にあるため、現状のまま募集をかけても人が集まらず、仮に集まってもすぐに離職する可能性があります。

新しい人材を集めるだけでなく、既存の従業員の離職を防ぐためにも、交代制の導入や給与を上げるなど、従業員が働きやすい環境を整えることが重要です。

業務効率化をはかり、労働環境改善に還元していきましょう。

配送方式の変更

長時間労働に課題を抱えている企業は、配送方式の変更も効果的です。

配送方式の変更によって、従業員一人当たりの移動距離や拘束時間などの負担を減らす効果があります。

ホワイト物流の推進におすすめの配送方式は以下の3つです。

配送方式概要
中継輸送・一つの行程を一人のドライバーではなく、複数人のドライバーで分担する輸送方式・ドライバーの輸送距離削減やドライバーの拘束時間低減などのメリットがある
ミルクラン方式・物流事業者が発注側に荷物を輸送するのではなく、荷主側が車両を手配し、巡回して荷物を集める方式・企業側は輸送コストを削減できる・荷主側は検品コストを削減できる
ハブアンドスポーク・空港や港などの拠点(ハブ)に荷物を集め各地の倉庫など(スポーク)へ輸送する方式・配送距離の短縮、長時間労働の削減、積載効率の向上などのメリットがある

また、配送方式の変更は、2024年4月からはじまった時間外労働の規制や勤務間インターバル制度の対策としても効果的といわれています。

まとめ:「ホワイト物流」推進運動に参加して働きやすい環境を作ろう

「ホワイト物流」推進運動とは、物流業界におけるトラックドライバー不足の深刻化にともない、生産性の向上や働きやすい環境の実現を目的に取り組む運動のことです。

ホワイト物流に積極的に参加することで、自社における物流の安定化が計れるようになるだけでなく、社会に貢献している企業として世間にアピールできます。

トラックドライバーの不足を解消するためには、物流業界で取り組むだけではなく、荷主企業の協力も不可欠です。

積極的に「ホワイト物流」推進運動に参加して、物流業界の改善に貢献しましょう。

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