「社用車を運用するにあたって知っておくべき法律が知りたい」
「社用車管理における法律を守るために、具体的に何をすれば良いか知りたい」
このような悩みをお持ちではないでしょうか。
社用車管理にかかわる法律は多岐に渡り、把握するのは簡単ではありませんが、適切に社用車を管理するためには知っておく必要があります。
本記事では、社用車管理において生じる法律上の責任や義務、法律を遵守するために企業が実施すべき内容について解説します。
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目次
社用車管理で生じる法律上の責任
社用車を運用する際、事業主には「使用者責任」「運行供用者責任」の二つの責任が生じます。
企業として車両を運用するにあたって知っておかなければならない内容ですので、社用車を所有している、これから導入する場合は必ず把握しておきましょう。
使用者責任
使用者責任とは、従業員が業務・通勤中に不法行為によって第三者に損害を与えた場合、企業や直属の上司などが責任を負うという法律です。
使用者責任は、民法で定められている法律であり、以下のように定義されています。
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
社用車管理の視点でいうと、従業員が業務中に社用車で事故を起こしてしまった場合、被害者や被害者の家族からの損害賠償請求に対して責任を負わなければならない、という法律です。
運行供用者責任
運行供用者責任とは、交通事故が発生した際はドライバーだけではなく、車両を管理している人や運行によって利益を得ている人も賠償責任を負わなければならないという法律です。
自動車損害賠償保障法で定められている法律であり、以下のように定義されています。
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
具体的には、以下のような方が運行供用者責任を負います。
- 車両の管理者
- 車両の所有者(リース車両の場合は使用者が対象となる)
- ドライバーに対して指示や監督をしている者
車両の運行を調整できる立場であり、かつ利益を得ている人は運行供用者にあたり、使用している車両で損害賠償が発生した場合は、責任を負わなければなりません。
社用車を管理する上で生じる法律上の義務
社用車管理における法律上の義務にはさまざまなものがあります。
ここからは、社用車管理において実施するべき義務について詳しく解説します。
安全運転管理者の選任
社用車を管理するにあたって実施するべき義務の一つが、安全運転管理者の選任です。
安全運転管理者とは、事業主に代わりアルコールチェックや安全運転指導などを実施して、安全運転の確保に取り組む人のことです。
道路交通法七十四条の3の定めにより、以下に挙げる条件のいずれかを満たす事業所は安全運転管理者を選任しなければなりません。
- 乗車定員が11名以上の車両を1台以上使用
- その他の自家用自動車を5台以上使用
また、適切な車両管理のため、使用する車両が20台を超えるごとに1名の副安全運転管理者の選任も義務付けられています。
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安全運転管理者についての詳しい内容は、こちらの記事もご覧ください。
運転日報の記録・保管
運転日報の記録・保管も社用車利用するにあたって実施するべき義務の一つです。
以下に該当する事業所は、書面または電磁的記録による運転日報の記録・保管が義務付けられています。
該当する事業所 | 根拠となる法律 |
---|---|
一定以上の自家用自動車を利用する事業所 (乗車定員が11名以上の車両を1台以上または自家用自動車を5台以上使用する事業所) | 道路交通法施行規則 |
運転日報に記載する内容は、以下の通りです。
根拠となる法律 | 運転日報に記載する内容 |
---|---|
道路交通法施行規則 | ・ドライバーの氏名 ・運転の開始・終了日時 ・運転した距離 ・検知器を使用したアルコールチェックの記録 ・そのほか、運転状況を把握するために必要な事項 |
日報の保管期間は1年間とされています。
運転日報の管理については、こちらの記事もご覧ください。
点検の実施
社用車を点検することも、法律上における義務の一つです。
道路運送車両法では、車両の点検について以下のように定められています。
自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない。
この内容からもわかるとおり、車両の使用者は適切に車両を運用するため、必要に応じて点検を実施しなければなりません。
点検は大きく分けて「日常点検整備」「定期点検整備」「車検」の3種類があり、それぞれの内容をまとめると以下のようになります。
点検の種類 | 概要 |
---|---|
日常点検整備 | ・車両の所有者やドライバー自身が日常的におこなう点検 ・エンジンルーム・車周り・運転席を中心に自動車が安全に利用できるか確認する ・実施する期間に法的な定めはない(トラックやタクシーなど事業用自動車は除く) |
定期点検整備 | ・車両が故障なく快適かつ安全に走行できるかを確認するための点検 ・ハンドルの操作性やブレーキの効き具合など、あらゆる視点で車の状態を確認する ・点検を要する項目は多岐に渡るだけでなく実施には専門知識が必要 ・車種や使用用途によって点検期間が定められている |
車検 | ・国が定めている保安基準を満たしているかを確認するための点検 ・基準を満たさない車両は公道を走行できない ・車種や使用用途によって1~3年の点検実施期間が定められている |
トラックやタクシーなどの事業用自動車を利用する企業が点検義務を怠った場合、30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
アルコールチェックの実施
アルコールチェックの実施も、社用車を利用するにあたって必要な義務です。
道路交通法では、アルコールチェックの実施について以下のように定義されています。
運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であつて、国家公安委員会が定めるものをいう。次号において同じ。)を用いて確認を行うこと。
アルコールチェック実施の対象となるのは、以下の条件を満たす事業所です。
- 事業用自動車(緑ナンバー)の車両を使用する事業所
- 乗車定員が11名以上の車両を1台以上利用する事業所
- その他の自家用自動車を5台以上使用する事業所
アルコールチェックをする際は「アルコール検知器による数値確認」「目視によるドライバーの確認」の両方を実施しなければなりません。
目視確認については、直接対面することが原則とされていますが、直行直帰など直接的な対面が難しい場合は、カメラやモニターなどを通して実施することも認められています。
アルコールチェックについては、以下の記事もご覧ください。
法律遵守のため社用車管理でするべきこと
法律に則った社用車管理をする上で、企業がするべきことを3つ紹介します。
安全運転管理者の選定
一つ目に実施すべきことは安全運転管理者の選定です。
社用車が安全かつ適切に運用するため、一定数以上の社用車を利用する企業は安全運転管理者を選定しなければなりません。
安全運転管理者には資格要件があり、以下を満たす人を選任しなければなりません。
- 年齢が20歳以上(副安全運転管理者を選任しなければならない場合は30歳以上)
- 運転管理における2年以上の実務経験がある
- 過去2年以内に飲酒運転やスピード違反、駐車違反などの違反行為をしていない
また、安全運転管理者の選任後は15日以内に管轄する警察署に届出を提出する必要があります。
現在では、インターネットからも提出できるので、選任後は速やかに申請をおこなうようにしましょう。
安全運転管理者の選任についての詳しい内容は、こちらの記事をご連絡ください。
社用車管理規定の作成・運用
二つ目のすべきことは、社用車管理規定の作成および運用です。
社用車管理規定を作成・運用は、従業員の安全確保や法令遵守につながるだけでなく、使用者責任を果たしている証明にもなるため非常に重要です。
社用車管理規定を作成する際は、以下のような内容を記載すると良いでしょう。
- 安全運転管理者の選任について
- 車両管理台帳の作成について
- 運転者台帳の作成について
- 禁止・違反事項について
- 点検・整備の期間・方法について
- 保険について
- マイカーの利用について
- 事故やトラブル発生時の対応について
責任者・担当部署の明確化
三つ目にするべきことは、責任者や担当部署の明確化です。
社用車管理にかかわる業務は多岐に渡り、一つの部署ですべてを担当することは現実的ではありません。
そのため、保険の更新やアルコールチェック、安全運転教育の実施などの業務を、それぞれどの部署が担当するのかを明確にしておきましょう。
また、事故などが発生した際にスムーズに対応できるよう、窓口や責任者を明確にしておくことも重要です。
まとめ:法律を遵守して安心安全に社用車を運用しよう
社用車を利用する企業には「使用者責任」「運行供用者責任」という2つの法律上の責任が発生します。
ほかにも、社用車管理にかかわる法律にはさまざまなものがあり、社用車を適切に運用するためにはすべてをしっかりと遵守する必要があります。
すべてを把握するのは簡単ではありませんが、従業員の安全や生活に直結する内容ばかりですので、法律を遵守して適切な社用車管理をおこないましょう。
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