法人向け通信型ドライブレコーダーを徹底解説!安全運転をサポートする仕組みと活用法

今や、車にドライブレコーダーが装着されているのが当たり前の時代になりました。

2016年頃から市場に出始めたドライブレコーダーでしたが、あおり運転被害の報道をきっかけに急速に普及が進んだと言われています。

普及に伴うデジタル機器としての進化もすさまじく、廉価モデルでも高画質に撮影できるものが揃い、ハイエンドモデルともなると駐車監視や安全運転支援などの高機能が搭載されている機種も多く出回っています。

さまざまな状況に対応すべくマルチな機能搭載機種が増えてきていますが、なかでも、法人向けに「車両管理」と「事故防止」を目的とした「通信型ドライブレコーダー」が注目されています。

この記事では、注目の法人向け通信型ドライブレコーダーによる、従業員の安全運転をサポートしてくれる仕組みと活用法について解説していきます。

社用車で事故を起こしたら? もしもの時に備えましょう!

法人向け通信型ドライブレコーダーとは?

ドライブレコーダーを取り付けることで、事故時の映像や音声の証拠記録はもちろん、危険運転や車上荒らしといった犯罪を事前に抑止する役割が期待されます。

通信型ドライブレコーダーとは、それらの機能に加え、主に走行中の運転データをインターネット上のクラウドサーバーにアップロードするタイプのことを指します。

ここでは、通信型ドライブレコーダーの主な機能を説明していきます。

インターネット上のクラウドサーバーに保存・閲覧が可能

一般的なドライブレコーダーは、事故などが発生した際の映像や音声を物理的な記録媒体(主にSDカード)に記録するタイプが主流です。

一方で、通信型ドライブレコーダーの場合は、衝撃感知時や任意録画時のイベント記録されたデータが自動的にインターネット上のクラウドサーバーに保存される仕様となっています。

従来では、車載器からSDカードを取り出し、カードリーダーを介してパソコンなどの別機器で映像を確認しなければなりませんでしたが、通信型ドライブレコーダーであれば、インターネット上のサーバーにアクセスするだけで済むので、管理したい社用車が多い場合でも効率的に運用することができます。

遠隔でドライブレコーダー映像や動態確認ができる

走行データがクラウド上に保存されるほか、「車両の現在位置」や「走行速度」といった運転状況を車載器のGPS機能によってリアルタイムで確認することもできます。

例えば、管理者が外出してしまっているときにも、インターネットに接続できる端末と環境さえあれば、どこからでもドライブレコーダー映像や動態確認の運行管理がおこなえるため、トラブルが発生しても迅速かつ適切な対応が可能となります。

AIによる解析

クラウド上にデータが自動で蓄積されるのは非常に有用ですが、運用車両が増えればそれだけ保存されるデータは莫大となります。

その中から必要な情報だけをピックアップして解析するのには労力がかかり、あまり現実的ではありません。

そこで、さらにAI機能が搭載されているタイプを導入することで、各ドライバーの運転状況からAIが自動で診断書を作成してくれるので、特に装着したい車両が複数以上ある会社ではAI機能付きのドライブレコーダーを選択すると良いでしょう。

AI解析では、急ブレーキや急アクセル、急ハンドルといった急制動のアラート回数をカウントすることもできるので、その回数が多いドライバーには客観的なデータを基に安全運転の指導をおこない、事故防止につなげることも可能です。

通信型ドライブレコーダーのシステム

通信型のドライブレコーダーを使って、撮影データをリアルタイムにクラウド上へと送信・蓄積しておくことで、そのデータを容易に分析・管理することができます。

これにより、事故などのトラブルが発生した際の早期対応や、以降の事故防止に役立てることが可能となります。

ここでは、通信型ドライブレコーダーのシステムとクラウド連携について詳しく説明します。

通信型ドライブレコーダーの基本構成パーツ

通信型ドライブレコーダーを構成する基本的なパーツについて概要を説明していきます。

  1. カメラユニット
    ・前方・後方カメラ、車内カメラを搭載し、それぞれカメラが独立したタイプや一体型などがある。
    ・広範囲撮影、高解像度、夜間時の高感度撮影など、採用されているレンズやイメージセンサーサイズによって撮影できる映像の品質に差が出やすい。
  1. 通信モジュール
    ・車載機にSIMカードを内蔵することで、4G/5Gなどのインターネット通信が利用でき、リアルタイム映像をクラウドへ送信する。
    ・一部の製品では、Wi-Fi接続によりスマートフォンとの連携も可能。
  1. GPSモジュール
    ・位置情報を記録し、走行速度や走行ルートを管理する。
  1. センサー類
    ・加速度センサー、ジャイロセンサーにより、急ブレーキ、急加速、急ハンドルといった、「急」の付く動作を検知する。
    ・Gセンサーにより衝撃を感知し、事故や危険運転を自動的に保存する。
  1. ストレージ
    SDカードに映像を一時保存し、クラウドへと送信後に古いデータを自動削除するタイプや、常時映像はSDカードに保存、イベント映像はクラウドに自動送信といったタイプがある。

撮影したデータの流れ

録画してからその映像を証拠などとして利用する場合の流れを説明します。

  1. 常時録画・イベント映像
    ・エンジン始動から停止までの映像を常時録画する。
    ・衝撃や急操作を検知した場合、イベント録画として自動的に保存する。
  1. リアルタイム通信
    ・通信モジュールがクラウドサーバーへデータを送信する。
    ・衝撃検知時には、映像を記録して管理者へ通知する。
  1. データのクラウド保存
    ・映像・音声・位置情報・センサー情報をクラウドに保存する。
    ・事故時の映像を抽出すれば提出証拠として利用が可能となる。

通信型ドライブレコーダーの活用例

前述の通り、通信機能のついたドライブレコーダーは、一般的なドライブレコーダーと比較して、業務効率化や事故防止、車両管理といった様々なメリットがあることが特徴です。

ここでは、いくつか活用例を挙げてみましょう。

企業の社用車管理に役立てる

  1. 配送車・営業車両の効率化
    一般的なドライブレコーダーと違い、リアルタイムの位置情報を取得できるので、この情報を活用した配車コントロールが可能となります。
    運用の仕方で、移動時間の短縮や渋滞回避など、業務の効率化を図ることができます。
  1. 安全運転指導
    走行履歴として蓄積したデータを活用し、そのデータを基にドライバーごとの運転スコアを作成することで個別指導ができます。
    また、クラウドに保存されたデータを安全運転講習などにも役立てることで、社内の事故防止につなげることができます。

自動車保険の保険料減額に活用

最近では、「テレマティクス保険」という通信型ドライブレコーダーを活用した自動車保険が普及しています。

テレマティクス保険とは、テレマティクス(移動体に移動体通信システムを利用してサービスを提供すること)を利用して、ドライバーごとの運転情報を取得し、事故リスクの分析を行います。そして、その情報を基に保険料を算出する自動車保険のことです。

保険内容は、「PAYD(走行距離連動型)」と「PHYD(運動行動連動型)」に分かれます。

走行距離連動型では、走行距離が短ければ保険料が下がり、長ければ上がる算定がなされます。

運動行動連動型では、運転速度や急ブレーキ・急アクセル・急ハンドルの回数を分析し、安全運転と判定されれば保険料ダウン、危険運転と判定されれば保険料アップといった算定がなされます。

出典:テレマティクス等を活用した安全運転促進保険等による道路交通の安全|国土交通省

セキュリティー強化とレスキュー要請

  1. 駐車監視機能

自家用車のドライブレコーダーでも一般的な機能となった駐車監視機能ですが、法人向けの通信型ドライブレコーダーにも搭載されるようになりました。
駐車中に衝撃を検知した場合、ドライブレコーダーが起動してその前後の録画を開始してくれるので、車上荒らしや当て逃げの証拠として映像を残すことができます。

  1. 緊急救助要請

緊急救助要請機能が付いている通信型ドライブレコーダーでは、通信圏内において事故やトラブルが起きた際には車載器が電話となり、ボタンひとつでオペレーターとの通話が可能となります。
オペレーターは状況に応じて、警察や消防、ロードサービスの手配をしてくれる機能です。
また、強い衝撃を検知したときには自動でオペレーターにつながり、負傷などによってオペレーターの問いかけに応じなかった場合には、緊急事態と判断され速やかに救助要請がおこなわれます。

社用車へ導入する際注意するポイント

業務上のメリットが非常に多い、法人向けの通人型ドライブレコーダーですが、導入時にいくつか注意しなくてはいけないポイントがあります。

通信料や保存容量確保のコストが発生

通信型ドライブレコーダーは、走行データをクラウド上に保存するためのサーバーの契約が別途必要になります。アップロードのための通信料やサーバー容量の確保、サービス使用料などがかかる場合があります。

導入台数に比例して高くなる傾向にありますので、導入後の運用効果が費用に見合うかを検討する必要があります。

ドライバーのストレス上昇

映像や位置情報がリアルタイムで確認できるということは、ドライバーにとっては常に監視されていると受け止められることがあります。

特に、車内映像をモニタリングされることに抵抗を覚える人は一定数いるので、導入にあたってはドライバーの理解が得られるよう、管理者が経緯や理由を丁寧に説明することが求められます。

ドラレコの取り付け位置に注意

ドライブレコーダーの取り付け位置は、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第3節 第195条 窓ガラス」により定められています。

この告示を要約すると、取り付け位置のポイントは2点です。

  1. フロントガラス開口部の実長20%以内の範囲
  2. フロントガラス下部より車体と並行な部分から実長150mm以内の範囲

この範囲からはずれた位置に車載器を取り付けると、法令違反となり車検を通すことができません。

この法令を前提に、カメラの種類によって取り付ける位置の注意点を紹介します。

出典:道路運送車両法の保安基準の細目を定める告示 第3節 第195条  窓ガラス

フロントカメラの取り付け位置

まずフロントカメラの基本として、ワイパーがガラス面を払拭する範囲内に取り付けましょう。

そうでないと、走行中にガラスに付着した雨や汚れにより鮮明な映像が記録できなくなってしまう可能性があります。

また、機種によっては取り付け位置を運転席側か助手席側どちらに寄せるかの指定があったり、通信障害を防ぐためにADAS(先進運転支援システム)に用いられる車載カメラから一定の距離をとらなければならない場合もあります。

もし取り付けに不安がある場合には、専門業者へ依頼することをおすすめします。

リアカメラの取り付け位置

フロントガラスと同様、車両にリヤワイパーの設定があれば、その払拭範囲内に取り付けることが望ましいです。

リアガラスに関しては、取り付け位置を法令によって定められてはいませんが、後方視界の妨げにならない中央上部に取り付けるのがよいでしょう。

リヤガラスには曇りを解消する「リアデフォッガー」という機能があり、そのために熱線がガラスに張り巡らされています。

この上からリアカメラを貼り付けると熱で粘着力が弱まり、脱落する恐れがあるので、熱線の上は避けるように貼り付けましょう。

まとめ:通信型ドライブレコーダーの導入は事故防止の手段のひとつ

本記事では、法人向け通信型ドライブレコーダーによる安全運転サポートの仕組みと活用法について解説していきました。

通信技術の大幅な進歩により、通信型ドライブレコーダーによるリアルタイム映像や位置情報の確認が可能となりました。

これらの機能を活用すれば、安全性の向上や業務の効率化につなげることもできるでしょう。

しかし、通信型ドライブレコーダーを導入することで安全運転管理が万事解決するわけではありません。

事故防止や業務効率化といった本来の目的を果たすには、管理者がその機能やメリット・デメリットをしっかりと理解し、データを分析して得られた情報を基に指導をおこなう必要があります。

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イイダユウジ
高校在学時、アルバイトでこつこつ貯めた資金で「S13シルビア」を愛車に迎えたのを機に、車に目覚める。進学先で自動車整備を学び「国家1級整備士」資格を取得。卒業後はカーディーラーに就職し、車の基礎と社会の厳しさを叩き込まれる。現在は、個人で中古車販売・整備を主に手掛ける一方で、その経験・知識を最大限活かし、交通安全普及のための広報活動に勤しむ。整備士の目線で独自の切り口を模索するなど、幅広く活動している。