旧暦において12月は「師走(しわす)」とも呼ばれ、「師(僧侶)が走り回るほど忙しい」ことに語源があるとされています。
現代社会においても、12月は正月休み前の物流の増加などで道路が渋滞する傾向にあるなど、慌ただしくなる時期です。
渋滞傾向に加え、日照時間の短さ、路面凍結、飲酒の機会増加、帰省ラッシュなど、事故のリスクを高める要因が12月には多く存在します。
1年の締めくくりである12月に事故を起こしてしまえば、気持ちよく新年を迎えることも難しくなってしまいます。
そこでこの記事では、交通統計などをもとに12月に交通事故が多発する原因を探り、交通事故を起こさないための対策を徹底解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
年齢別に見る事故傾向とその対策を解説します!
目次
統計データに見る12月の交通事故発生状況
日本では秋から冬にかけて交通事故が増加する傾向にあります。
過去3年間、2022年~2024年の月別交通事故発生件数を見ると、共通して10月から事故件数が増加傾向に転じ、単月では12月が最も多く発生しているのがわかります。
| 2022年(令和4年) | 2023年(令和5年) | 2024年(令和6年) | |
|---|---|---|---|
| 1月 | 23,636件 | 24,058件 | 23,458件 |
| 2月 | 21,101件 | 23,060件 | 22,392件 |
| 3月 | 24,095件 | 25,588件 | 24,394件 |
| 4月 | 24,190件 | 24,597件 | 23,321件 |
| 5月 | 24,303件 | 24,635件 | 23,673件 |
| 6月 | 25,488件 | 24,314件 | 23,080件 |
| 7月 | 25,472件 | 25,741件 | 24,347件 |
| 8月 | 23,637件 | 25,343件 | 23,235件 |
| 9月 | 25,033件 | 25,432件 | 23,369件 |
| 10月 | 27,418件 | 27,912件 | 25,909件 |
| 11月 | 27,193件 | 27,834件 | 26,141件 |
| 12月 | 29,273件 | 29,416件 | 27,576件 |
| 合計 | 300,839件 | 307,930件 | 290,895件 |
加えて、12月の交通事故発生件数を1月~11月の月平均と比較しても約1.2倍も増加しており、年の暮れには運転に特に注意が必要といえるでしょう。
なぜ12月に交通事故が多いのか?

交通事故統計の通り、日本では秋から冬にかけて交通事故が増加する傾向にあり、さらに12月は1年の中でも特に事故が多発する月ということがわかりました。
それでは、なぜ12月に交通事故が多発するのか考察してみましょう。
夜の時間が最も長い日が12月にあること
地球上で中緯度に位置する日本には四季があります。
そのため一年の中で、夏至(6月21日前後)から冬至(12月21日前後)にかけて日照時間が短くなっていきます。
冬至とは、1年で最も昼の時間が短く夜の時間が最も長い日のこと。
つまり12月終わりにかけて日が短くなっていき、暗く、視認性が低下する夜の時間帯が伸びていくのです。
1日の中で視認性が低い時間が増えれば事故のリスクも高まり、結果的に交通事故も比例して増加していることが想定されます。
さらに冬が本番を迎えると、気温の低下や降雪などによる路面凍結なども重なり、道路環境が悪化すること、また冬備えへの準備不足なども要因として挙げられます。
日照時間減・薄暮時間帯が早まることによる視界悪化
前述の通り、12月は日照時間が1年の中で最も短くなります。
そのため、薄暮(夕方の明暗が入れ替わる時間帯)が帰社や退勤時間、学生の下校時間といったラッシュアワーとより長く重なることで事故が増えやすくなります。
薄暮とは「魔の時間帯」とも呼ばれ、周囲の照度が下がり、歩行者や自転車の輪郭と背景が同化しやすくなる時間帯を指します。
人間の目の特徴として、明所から暗所へ移行する際の切り替え(暗順応)に時間を要すため、見えているつもりでも見落としが発生しやすくなるのです。
路面凍結など冬特有の道路環境

12月に入ると冬型の気圧配置が強まり、積雪などによって朝晩を中心に路面凍結が発生しやすくなります。
さらに、たとえ積雪がなくとも、「晴れ」「風が弱い」「乾燥している」といった条件が揃った日の夜は、地表の熱が大気中に逃げる「放射冷却」という現象が発生するおそれがあります。
放射冷却は、昼夜問わず、条件を満たせば常に起こり得る現象ですが、特に地表を温める太陽光がない夜間に気温低下が顕著に表われるため、翌朝にかけては路面凍結への注意が必要です。
さらに路面が乾きづらい日陰や上下から冷気の通る橋の上といった場所では、放射冷却の影響を受けるとなお凍結しやすくなります。
前夜や運転時の天候が、風も穏やかで雲ひとつない晴天だったとしても油断は禁物です。
放射冷却という現象の存在を覚えておくことで、12月、冬本番を迎えてから運転をする際、積雪などのわかりやすく危険な状況以外でも路面が凍結している可能性を予測することができます。
秋から冬へ気象条件が大きく変化するのが12月です。少しでも不安を覚えたら凍結が起こりやすい場所を回避するルートを取るようにしてください。
また、あらかじめスタッドレスタイヤを装着しておくなど、凍結路面への対策をおこなっておくことが大切です。
出典:今さら聞けない? 放射冷却のメカニズムとは|ウェザーニュース
帰省・物流増によって年末に増える事故のリスク

帰省ラッシュや物流増などによる年末の交通量増加は、高速道路や幹線道路にも大きな影響を及ぼします。
小型の自家用車から大型トラックまで多種多様な車両が普段より多く行き交い、渋滞や事故が発生しやすくなります。
またこの時期は、サンデードライバーとも呼ばれる普段から運転していない人が車を利用する機会も多く、不慣れな運転によるミスや注意力・集中力の低下が事故の要因ともなり得ます。
年末の慌ただしさがドライバーの焦りを招き、事故につながることがあるので、運転に慣れている人も平常心を保って、無理な長時間の運転などは控えるようにしましょう。
時期を踏まえた事故要因の具体例

年間を通して一番事故が多い傾向にあるのが12月です。
その要因を「環境」「人」「社会」の3視点から考察し、具体例としてまとめてみました。
環境的要因
・昼の時間が短い:歩行者・自転車の発見が遅れる
・悪天候・路面凍結:降雪や放射冷却による視界不良やコントロール不能に陥る
人的要因
・疲労の蓄積:繁忙による長時間運転による注意力低下
・時間のプレッシャー:渋滞や特殊な年末納期によって無理な運転を強いられる
社会的要因
・交通量の増加:帰省や旅行ラッシュ・買い溜め外出・物流繁忙期による混雑
・忘年会シーズン:歩行者や自転車の飛び出し・飲酒運転リスク
企業ができる具体的な交通事故防止策とは?

12月の交通事故を防ぐためには、企業それぞれが具体的な安全対策を実践することが大切です。
ドライバー個人を指導・教育することはもちろんのこと、組織全体が同じ方向を向いて事故防止に取り組む姿勢が重要となります。
ここでは、12月の交通安全リスクと直面するドライバーの心得、さらに職場の安全管理者が実際どのように対策をおこなえばよいかを解説していきます。
秋から冬にかけてドライバーが注意すべきポイント

ドライバーは、12月特有の事故リスクを把握したうえで安全運転に徹することが必要です。
12月は日の入りが早いことを意識し、早めのライト点灯で視認性を確保しましょう。これは、歩行者・自転車にこちらの存在を知らせる効果もあります。
また、冬対策としてスタッドレスタイヤの装着やタイヤチェーンの携行、ワイパーやブレーキの点検を怠らないことも大切です。
安心安全な冬の運転を実現するために、下記の記事を参考にしてみてください。
12月に向けて管理者として求められる対応
12月は、薄暮時間帯・路面凍結・繁忙期、といった交通事故のリスクが重なる月です。
管理者に求められるのは、12月の事故防止に向けて方針や目標を掲げ、ドライバーがそれらを無理なく実行できる体制を構築するなど、一連の枠組みを整えることです。
例えば、朝礼の時間を利用して組織全体の安全意識を高めることも有効でしょうし、インターネット上で学べる交通安全教材を受講させることなども手段の一つです
明日から職場で使える朝礼ネタをお探しの方は、下記記事を参考にして安全運転の啓蒙をおこなってみてください。
まとめ:12月特有のリスクを意識した運転を
この記事では、12月に事故が多発する原因と対策を解説しました。
事故統計の数字にも表れているように、12月は冬特有の気象や道路状況、年末の忙しさに起因する注意力低下など多くのリスクが存在し、比例して交通事故が多発する時期です。
交通事故防止のためには、日頃からの安全意識と具体的な行動が不可欠となります。
しかし職場内での交通安全は、ハンドルを握るドライバーの力量だけに委ねていても、成果が安定しないものです。
ドライバーの立場で設計した交通安全教育を受講させることで、事故の再現性を断ち、継続した交通安全への意識づけが可能となります。
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