数値表で見るアルコールチェッカーの基準値とは?違反時の罰則も解説

一定台数以上の社用車を保有する事業所に、アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックが義務化されました。

しかし、以下のような課題を抱えている事業所は少なくありません。

  • アルコールチェッカーの数値の見方がわかならい
  • アルコールチェッカーの数値が運転にどのような影響を与えるかを知りたい

本記事では、アルコールチェッカーの数値の見方や罰則対象となる基準値、アルコールチェッカーの正しい使い方を紹介します。

これから本格的にアルコールチェッカーを導入する事業者は、ぜひ参考にしてください。

アルコールチェック義務化に備える!

アルコールチェッカーの義務化開始

2022年4月から、緑ナンバーだけでなく、白ナンバーの自動車を保有する事業者にもアルコールチェックが義務化されました。

以下の事業者がアルコールチェックの対象となります。

  • 乗車定員が11人以上の自動車を1台以上を保有している事業所
  • 乗車定員10人以下の自動車を5台以上を保有している事業所 ※50cc以上の自動二輪車を所持している場合、1台を0.5台として計算

アルコールチェック義務化直後は目視等による酒気帯び有無の確認のみでしたが、2023年12月からはアルコールチェッカーの使用が義務化されました。

運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であつて、国家公安委員会が定めるものをいう。次号において同じ。)を用いて確認を行うこと。

引用:道路交通法施行規則第九条の十

国家公安委員会が定めるアルコールチェッカーを使用して、ドライバーの酒気帯びの有無を確認する必要があります。

国家公安委員会が定めるアルコール検知器とは「呼気中のアルコールを検知し、その有無またはその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器」です。

この条件を満たせば、どのようなアルコールチェッカーでも使用できます。

数値表で見るアルコールチェッカー検出値の基準値とは?

市販のアルコールチェッカーで測定される数値は、呼気1リットル中のアルコール濃度(mg/L)です。

数値が法令で定められた基準値を超えているかどうかで、酒気帯び運転・飲酒運転に該当するかを判定します。

酒気帯び運転と酒酔い運転のアルコールチェッカー検出値の基準値を確認しましょう。

アルコールチェックにおける数値表

種別アルコール量(呼気1l中違反点数処分罰則
違反ではない0.15mg未満
酒気帯び運転0.15㎎以上0.25㎎未満13点最低90日間の免許停止処分(※1)3年以下の懲役または50万円以下の罰金
酒気帯び運転0.25㎎以上25点免許取り消し処分
最低2年間の欠格期間
(※1,2)
3年以下の懲役または50万円以下の罰金
酒酔い運転数値の基準はなし35点免許取消し
欠格期間3年
(※1,2)
5年以下の懲役または100万円以下の罰金

※1: 前歴及びその他の累積点数がない場合
※2:欠格期間とは運転免許の取消処分を受けた者が運転免許を再度取得することができない期間

出典:みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」|警察庁Webサイト

酒気帯び運転の基準値

酒気帯び運転とは、アルコールを摂取した状態で車両を運転することです。

酒気帯び運転の罰則対象となる基準値について、道路交通法施行令では以下のように定められています。

法第百十七条の二の二第一項第三号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液一ミリリットルにつき〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラムとする。

引用:道路交通法施行令第四十四条の三

呼気中のアルコール濃度が0.15mg/L以上含んだ状態で自動車を運転した場合、酒気帯び運転と判断されます。

酒酔い運転の基準値

酒酔い運転とは、アルコールの影響により正常な運転ができない恐れがある状態で運転をすることです。

酒酔い運転の基準は、呼気中アルコール濃度に関わらず、以下のような認知能力が低下しているかどうかで判断されます。

  • まっすぐ歩くことができない
  • 明らかに呂律が回っていない
  • 質問に対する受け答えがまともにできない
  • 車線のはみ出しや蛇行運転
  • 不必要な急ブレーキや急発進
  • 標識や信号無視

少量のアルコールでも、運転操作に影響を与える可能性は否定できません。

アルコールチェッカーの数値が基準値以下でも、アルコールを摂取した後の運転は避けましょう。

アルコールチェックの基準値を超えて運転した場合の罰則

アルコールチェッカーによって測定されるアルコール量によって、行政処分や罰則の内容が変わります。

アルコールチェックの基準値を超えて運転した場合の罰則を確認しましょう。

酒気帯び運転

酒気帯び運転では、アルコールの量によって処分が異なります。

アルコールの量(呼気1L中)違反の点数免許の処分
0.15mg/L以上0.25mg/L未満13点免許停止処分・90日間(前歴およびその他の累積点数がない場合)
0.25mg/L以上25点免許取消処分・欠格期間2年間

罰則は以下のとおりです。

ドライバー・車両等の提供者3年以下の懲役または50万円以下の罰金
酒類の提供者・車両の同乗者2年以下の懲役または30万円以下の罰金
出典:警察庁

厳しい罰則が科される対象は、ドライバーだけではありません。

車両の提供者や酒類の提供者、同乗者も罰則対象となります。

酒酔い運転

酒酔い運転の行政処分は以下のとおりです。

  • 違反点数35点
  • 免許取消処分(欠格期間3年間)

刑事罰は以下を参考にしてください。

ドライバー・車両等の提供者5年以下の懲役または100万円以下の罰金
酒類の提供者・車両の同乗者3年以下の懲役または50万円以下の罰金
出典:警察庁

酒酔い運転は酒気帯び運転より重い違反とされ、どちらもドライバー、車両の提供者や酒類の提供者、同乗者にも罰則が及ぶ場合があります。

【修正】従業員の飲酒運転により企業が負う責任

当たり前のことですが、飲酒をしているドライバーの運転を容認したり、運転を命じたりしてはならず、安全運転を徹底させるのが事業所の責任です。

そのため、従業員が飲酒運転をした場合、企業も一定期間の事業停止処分や車両使用の停止処分を受ける可能性があり、社会的信用を失うリスクもあります。

飲酒運転を防止するために、安全運転の徹底とアルコールチェッカーによる確認が事業所に求められています。

ここからは、従業員が飲酒運転をした場合に企業が負う責任について解説します。

※参考:自動車運送事業者における 飲酒運転防止マニュアル │国土交通省物流・自動車局

【追加】刑事責任

従業員の飲酒運転を容認していた場合や、従業員が飲酒運転をする可能性があるにも関わらず運転をさせていた場合、企業は「車両提供罪」に該当し罰せられます。

具体的には、以下の罰則を科せられます。

ドライバーが酒気帯び運転3年以下の懲役または50万円以下の罰金
ドライバーが酒酔い運転5年以下の懲役または100万円以下の罰金
出典:警視庁

【追加】民事責任

従業員が業務中におこなった飲酒運転によって事故を起こした場合、従業員だけではなく企業も被害者に対し賠償責任を負います。

なぜなら、民法および自動車損害賠償保障法によって以下のように定められているためです。

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

引用:民法第七百十五条

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。

引用:自動車損害賠償保障法第三条

事故の状況にもよりますが、交通事故による損害賠償は高額となるケースも少なくありません。

また、飲酒があれば、事故の保障に保険が適用されなくなります。

従業員の安全を守ること、事故による被害者を出さないことが大前提ですが、企業が経済的負担を負わないためにも、飲酒運転をさせないことが重要です。

【追加】行政責任

自家用車両を運用する企業においてドライバーが飲酒運転や運転をおこなった場合、アルコールチェックの義務違反と見なされる可能性があります。

アルコールチェックの義務違反に対する直接的な罰則は、2025年3月現在では設けられていません。

しかし、安全運転管理者の義務違反と見なされ、是正措置命令が出される可能性があり、命令に対して適切な対応を取らなかった場合、50万円以下の罰金が科されることがあります。

アルコールチェッカーの正しい取り扱い方

アルコールチェッカーは飲酒運転の防止に効果的なツールですが、正しく使用しなければ意味がありません。

アルコールチェッカーを正しく使用するためのポイントを解説します。

原則対面でおこなう

アルコールチェックは原則として対面で行います。

アルコールチェッカーを使用する場合でも、目視による確認は欠かせません。

確認者は、以下の項目に注意しましょう。

  • ドライバーの顔色
  • 呼気のにおい
  • 声の調子
  • 目視等で異常がないか

対面確認が難しい場合は、以下の方法で代替が可能です。

  • カメラやモニターでドライバーの顔色や声の調子、アルコールチェッカーの測定結果を確認する
  • 携帯電話や業務用無線でドライバーと直接対話してドライバーの声の調子を確認し、アルコールチェッカーの測定結果を報告させる

アルコールチェッカーの数値だけではなく、目視でドライバーの状態を確認しましょう。

数値が基準値以下でも残存している微量のアルコールが運転に影響したり、故障により誤った数値が出たりする可能性があります。

ドライバーの様子を総合的に判断することが重要です。

運転前後にアルコールチェッカーを使う

アルコールチェッカーは運転前と運転後の計2回使用する必要があります。

運転前の確認に加え、運転中の飲酒がなかったことを運転後に再度確認するためです。

アルコールチェックのタイミングは、運転直前や直後である必要はありません。

出勤時や退勤時など、業務の開始前や終了後の適切なタイミングで実施できます。

丁寧に息を吹きかける

アルコールチェッカーは、センサー部分で呼気中のアルコール濃度を検知します。

誤検知やエラーを防ぎ、正しい測定結果を得るためにも、以下の点に注意して息を吹きかけましょう。

  • しっかりと息を吹きかける
  • 風が当たらない場所で測定する
  • 吹き込み口に唇を密着させる
  • 一定時間、息を吹き続ける

アルコールチェッカーは、適切に使用しなければ正確な測定ができません。

吹きかけ式やストロー式、マウスピース式などアルコールチェッカーのタイプによって使用方法は異なります。

正確な数値を把握するためにも、事前に取扱説明書を確認し、従業員に適切な使い方を周知しましょう。

アルコールチェッカーで数値を測る時の注意点

アルコールチェッカーはアルコール以外にも、飲食物や喫煙などに反応する場合があります。

想定外のアルコール検出によるトラブルを防ぐため、アルコールチェッカーで数値を測る時の注意点について説明します。

測定前に口をすすぐ

誤検知を防ぐためにも、アルコールチェック前には口をすすぎましょう。

口内に飲食物が残っていると、アルコールチェッカーが誤検知する可能性があるからです。

ただし、アルコールタイプの洗口液はアルコール濃度が高いため、誤検知の原因となり得ます。

口をすすぐ際はアルコール成分の入った洗口液は避け、水でうがいするのがおすすめです。

測定前の飲食を控える

アルコールチェックの前は、できるだけ飲食を控えましょう。

飲食直後は、呼気中のアルコール濃度が一時的に高くなることがあります。

アルコールチェッカーに反応する可能性があるアルコール以外の飲食物

  • 味噌汁・パンなどの発酵食品
  • ミント系のガム
  • 歯磨き粉
  • ウイスキーボンボンなどのアルコールを含むチョコレート
  • 味付けにブランデーなどが使用されているドライフルーツ
  • 日本酒を使用している加工食品
  • 栄養ドリンクやノンアルコールの飲料

出勤前に蒸しパンを食べた高槻市のバスのドライバーが、アルコールチェックに検知された事例もあります。

正確な測定値を得るためには、飲食後20〜30分程度時間を空けて、水でうがいをしてから測定するのがおすすめです。

前日の飲酒に考慮する

前日に大量のアルコールを摂取した場合、翌朝でも呼気中のアルコール濃度が基準値を超えている可能性があります。

安全運転のためにも、以下の点に注意しましょう。

  • 前日に大量のアルコールを摂取した場合は、翌朝の運転は控える
  • 翌朝に運転する予定がある場合は、前日の飲酒量を控えめにする

アルコールの代謝速度は個人差があるため、自身の体質に合わせて適切な飲酒量を判断することが大切です。

二日酔いの状態だと、呼気中のアルコール濃度が基準値を超えている可能性があります。

睡眠中はアルコールの代謝が遅くなるため、「よく寝たから大丈夫」と過信してはいけません。

飲酒が翌日の運転にどのような影響を与えるかについて検証したところ、以下のような結果が明らかになりました。

  • まっすぐ走れない
  • 急加速
  • 運転操作の乱れ
  • 視野が狭くなる

運転の操作ミスや確認・判断ミスは、飲酒した翌日まで続きます。

二日酔いの場合は、運転を控えるようにしましょう。

※参考:飲酒による運転への影響は翌日まで続くのか?(JAFユーザーテスト) | JAF

【追加】薬を服用するタイミングを考慮する

アルコールチェッカーで計測する際は、薬を服用するタイミングを考慮する必要があります。

一部の薬にはアルコールが含まれているものもあり、服用後に計測した場合、薬に含まれているアルコールが検知される可能性があるためです。

普段から薬を服用している従業員や、通院をしている従業員がいる場合は、薬の服用による影響を薬剤師や医者に確認するように伝えておくと良いでしょう。

【追加】周辺の環境に注意する

アルコールチェッカーで正確な数値を測定するためには、周辺の環境にも注意が必要です。

例えば、以下のような環境では正しい測定ができない可能性があります。

喫煙環境タバコの煙による誤検知が発生する可能性がある
アルコール濃度の高い場所消毒用アルコールやアルコールを含む製品が近くにあると数値に影響を与える可能性がある
極端に温度が高い・低い場所アルコールチェッカーは精密機器のため高温多湿や極端な低温下では正常に動作しない可能性がある


アルコールチェックを実施する際は、これらの環境を避けて測定すると良いでしょう。

【追加】アルコール検知器のタイプによって精度が異なる

アルコールチェッカーには、主に「半導体ガス式」「電気化学式」の2つのタイプがあり、それぞれ特徴が異なります。

半導体ガス式は、コストパフォーマンスが高く手軽に入手できる反面、アルコール以外の物質にも反応しやすく電気化学式と比べて精度が低いことが多いです。

その一方で、電気化学式は半導体ガス式よりも高価である反面、アルコール以外にはほとんど反応しないため、より正確なアルコールチェックが可能です。

アルコール検知器を購入する際は、予算や業務における車両の使用頻度や台数などを考慮して、自社に適したタイプを選ぶと良いでしょう。

アルコールチェッカーで数値が検出された場合の対応

アルコールチェッカーによる測定で、アルコールが検出された場合の対応を紹介します。

運転前の確認でアルコールが検出された場合、その従業員は自動車等の運転ができません。

呼気からアルコールが検出されたということは、体内にアルコールが残留している状態であり、飲酒運転に該当するからです。

運転業務はさせずにほかの業務にあたらせてください。

従業員一人ひとりに飲酒運転の危険性を認識させ、事業所全体で飲酒運転を防ぐ努力をしましょう。

アルコールチェッカーのメンテナンス方法

アルコールチェッカーを正しく使うためには、メンテナンスが必要です。

こまめな日常点検整備やメンテナンスによって、アルコールチェッカーの誤作動や故障を発見しましょう。

国土交通省は以下のようなメンテナンス方法を定めています。

毎日の持ち出し前におこなう点検

  • 電源が入ることを確認する
  • アルコールチェッカーに損傷がないかをチェックする

週に1回以上おこなう点検

  • アルコールチェッカーが酒気帯びの有無を正しく検知できていることを確認する

アルコールチェッカーが正しく検知できるかどうかは、以下の方法で確認しましょう。

  1. 酒気を帯びていない人が水で口をゆすいだ後、2〜3分待ってからアルコールチェッカーで測定し、結果が0となることを確認する
  2. 同じ人が再度水で口をゆすぎ、アルコールを含んだ洗口液などを口内に数プッシュ噴霧する。口を開けた状態ですぐにアルコールチェッカーで測定した際に、アルコールを検知することを確認する

出典:自動車運送事業におけるアルコール検知器の使用について | 自動車総合安全情報(国土交通省)

アルコールチェッカーのセンサーは経年劣化します。

定められた使用回数や耐用年数を超えた場合は、センサーの交換が必要です。

アルコールチェッカーの購入時にセンサーの交換時期や方法を確認し、メンテナンスの時期に余裕を持つことをおすすめします。

センサー交換ができないタイプの場合は、本体ごと買い替えなければなりません。

アルコールチェッカーが正常に検知できないと飲酒運転につながりかねないため、点検・メンテナンスは必ず実施するようにしましょう。

まとめ:アルコールチェッカーの検出値を過信せずに安全運転を確認しよう

一定以上の社用車を保有する事業所には、アルコールチェッカーを使用した安全運転管理をおこなうことが義務付けられています。

ただし、アルコールチェッカーの故障や誤検知により、アルコールが検知される場合もあります。

アルコールチェッカーの検出値のみならず、対面でドライバーの状態をきちんと確認しましょう。

また、アルコールチェッカーを有効な状態に保ち、正確に測定するためには日頃のメンテナンスと定期的な点検が欠かせません。

正しい使い方や測定時の注意点を社内で共有し、きちんとアルコールチェックを行いましょう。

アルコールチェック義務化に備える!

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アルコールチェック義務化のすべて

アルコールチェックの義務化の概要をわかりやすく説明しながら、企業として対応が必要になることを解説していきます。添付してあるアルコールチェックの記録簿テンプレートをご活用ください。