2023年12月から、一定台数以上の白ナンバーの社用車を使用している企業に対して、アルコール検知器を用いたアルコールチェックが義務化されました。
しかし、
- アルコールチェック義務化の内容が知りたい
- アルコールチェックを怠った場合の罰則が知りたい
といった疑問を抱えている方も多いでしょう。
本記事では、アルコールチェック義務化の内容や、怠った場合の罰則について解説します。
対象企業がやるべき対応もまとめているため、ぜひ参考にしてください。
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目次
アルコールチェックの義務化とは
企業におけるアルコールチェックの義務化は、2011年から始まりました。
当初対象だったのは、旅客自動車運送事業や貨物自動車運送事業などの「緑ナンバー」の車を使用する企業だけです。
しかし、昨今の道路交通法改正により、白ナンバーの社用車を一定台数以上使用する企業に対しても、アルコールチェックが義務となりました。
アルコールチェックが義務化された背景
緑ナンバーに対するアルコールチェックが義務化されたことで、飲酒運転による交通事故件数は減少傾向となりました。
しかし、2023年の交通事故件数が2,300件を超えるなど、依然として飲酒運転の根絶にはいたっていません。
2021年6月には、白ナンバーの車にもアルコールチェックが拡大されるきっかけのひとつとなる事故が発生しています。
下校中の小学生5名が飲酒運転のトラックにはねられて死傷しました。
加害者のトラックは白ナンバーで、この当時、運転前にアルコールチェックをおこなう義務はありませんでした。
2022年4月の道路交通法改正で、白ナンバーにもアルコールチェックが義務化されましたが、この事故がきっかけのひとつといわれています。
アルコールチェック義務化の内容
アルコールチェック義務化の内容は以下のとおりです。
2022年4月から義務化された内容 | 運転前後の運転者に対し、酒気帯びの有無について目視等で確認(道路交通法施行規則九条の十第六号) 酒気帯びを確認した内容を記録し1年間保存(道路交通法施行規則第九条の十第七号) |
2023年12月から義務化された内容 | アルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認(道路交通法施行規則第九条の十第六号) アルコール検知器を常時有効に保つこと |
アルコール検知器を用いたアルコールチェックは、当初は2022年10月から実施される予定でした。
しかし、半導体不足の影響で2023年12月に延期になっています。
また、「常時有効」とは、アルコール検知器が正常に作動し、故障がない状態に保つという意味です。
対象となる企業
道路交通法改正により、新たに検知器によるアルコールチェックの対象となった企業は、以下のいずれかを満たす企業です。
- 乗車定員が11名以上の自動車を1台以上使用している
- その他の自動車を5台以上使用している
※ただし、大型自動二輪車または普通自動二輪車は0.5台としてカウントする
スクールバスやホテルの送迎車などの大人数が乗れる車を1台でも使用している場合や、営業などに使う社用車を5台以上使用している場合は、検知器によるアルコールチェック義務化の対象になっている可能性があります。
自社が対象に含まれているか、必ず確認しておきましょう。
なお、アルコールチェックの具体的なやり方については、以下の記事で詳しく解説しています。
アルコールチェックの流れが知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
アルコールチェック義務違反等による罰則
アルコールチェック義務違反と見なされると、罰則が科される可能性があります。
また、従業員が飲酒運転や酒気帯び運転をしてしまった場合、ドライバーだけでなく、企業の代表者や管理者に罰則が科される恐れがあります。
アルコールチェックを怠った場合の罰則
アルコールチェックを怠った場合、現時点では直接的な罰則は設けられていません。
しかし、安全運転管理者の義務違反と見なされ、是正措置命令が出される可能性があります。
そして是正措置命令に対して適切な対応を取らなかった場合、50万円以下の罰金が科されることがあります。
第七十四条の三(安全運転管理者等)第一項若しくは第四項の規定に違反し、又は同条第六項若しくは第八項の規定による公安委員会の命令に従わなかつたときは、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
引用元:道路交通法 第百十九条の二
アルコールチェックの実施と記録・保存は、安全運転管理者の業務のひとつなのです。
確実に実施しましょう。
従業員が飲酒運転・酒気帯び運転をした場合の罰則
もし、従業員が飲酒運転・酒気帯び運転をしてしまった場合、ドライバーだけでなく、企業の代表者にも罰則が科される可能性があります。
具体的な罰則は以下のとおりです。
車両等を運転した者(運転者) | 車両等を提供した者(事業所、管理者) | 酒類を提供した者または同乗した者 | |
---|---|---|---|
運転者が酒酔い運転をした場合 | 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
運転者が酒気帯び運転をした場合 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
また、企業は運行供用者責任と使用者責任に問われる可能性もあります。
- 運行供用者責任:自動車の運行・管理によって利益を得ている企業は、交通事故により第三者に損害を与えた場合、従業員と連帯して損害賠償責任を負う(出典:自動車損害賠償保障法第三条)
- 使用者責任:事業のために雇用している従業員が交通事故を起こした場合、企業も従業員と連帯して損害賠償責任を負う(出典:民法第七百十五条)
なお、従業員が飲酒運転・酒気帯び運転をしてしまうと、企業としてのイメージも著しく悪化します。
最悪の場合、事業停止や経営破綻も考えられるでしょう。
事故防止や安全運転を第一としたうえで、たった1回の見過ごしで大きなリスクにつながらないよう、アルコールチェックは確実に実施しましょう。
アルコールチェック義務化の対象企業がやるべき対応
新たにアルコールチェック義務化の対象企業となった場合、やるべき対応をとっておかないと、交通安全に支障が生じるうえに、罰則が科される恐れがあります。
おこなうべき対応として、アルコール検知器の導入や記録簿の運用体制の整備など、具体的な内容について紹介します。
安全運転管理者の選任
まずは、安全運転管理者を選任しなければなりません。
安全運転管理者を選任しなければならない企業の条件は、
- 乗車定員が11名以上の自動車を5台以上使用している
- その他の自動車を5台以上使用している
と、アルコールチェックの対象となる企業の条件と同じです。
社用車を20台以上使用する企業では、所定の人数以上の副安全運転管理者も選任しましょう。
条件に該当するにも関わらず安全運転管理者を選任していない場合は、使用者(企業の経営者など)に3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
また、安全運転管理者の仕事内容や選任基準は、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてください。
アルコール検知器の導入
アルコール検知器を導入しましょう。
アルコール検知器には、据え置きタイプと持ち運びに便利なハンディタイプの2種類があります。
また、安全運転管理者は、アルコール検知器を適切に管理しなければなりません。
そのため、管理しやすく、使いやすいものを選びましょう。
アルコールチェック記録簿の作成・保管体制の整備
アルコールチェックは実施するだけでなく、その結果を適確に記録し、1年間保存しなければなりません。
そのため、企業全体で協力し、管理体制を整備する必要があります。
安全運転管理者を中心に、
- アルコール検知器の保管場所
- アルコールチェックの手順
- 記録簿の保管方法
- 酒気帯びが確認されたときの対応
などを明確にしておきましょう。
記録簿の様式は指定されておらず、紙でもデータでも構いません。
また、役所や警察署への提出義務もありません。
しかし、万が一交通事故を起こしてしまった場合は、提出を求められる可能性があります。
そのため、確実に保管できる体制を整えておきましょう。
なお、アルコールチェックの記録簿については、以下の記事で詳しく解説しています。
記載内容や保管方法を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
従業員への交通安全教育
企業全体でアルコールチェックを徹底するには、従業員の協力が欠かせません。
すべての従業員がアルコールチェックの重要性や飲酒運転の危険性を理解することが重要です。
定期的な研修や安全運転教育を実施するなどして、企業全体で交通安全意識の向上を目指しましょう。
まとめ:徹底したアルコールチェックで違反ゼロに!
2023年12月1日から、アルコール検知器を用いたアルコールチェックが義務化されました。
アルコールチェックを怠った場合の罰則は現時点ではありませんが、安全が脅かされる上に、企業が責任を問われる可能性があります。
また、万が一従業員が飲酒運転や酒気帯び運転をしてしまうと、企業の代表者にも罰則が科される恐れがあり、企業イメージの低下も免れません。
リスクマネジメントの観点からも徹底したアルコールチェックをおこない、違反をゼロにして、安全を守って自社の信頼アップにつながるようにしましょう。
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