BCP対策とは?策定のメリットや作成手順について解説

BCP対策とは、企業が緊急事態の際に、できるだけ早期に事業を復旧させるための計画のことです。

日本は他国と比較して自然災害が多く、いつ緊急事態に直面してもおかしくないことから、BCP対策を検討する企業も増えつつあります。

これからBCP対策に取り組もうと考えている企業の中には「具体的な策定方法がわからない」と困っている企業もいるのではないでしょうか。

本記事では、BCP対策の策定をはじめる方に向け、BCP対策の概要やメリット、策定の手順などについて解説します。

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BCP対策とは

BCP対策とは、緊急事態に直面した際の被害を最小限に抑え、早期に事業の復旧・継続するための対策をまとめた計画のことです。

企業は、常にさまざまな緊急事態に直面する可能性があります。

緊急事態の例

・自然災害
・感染症の流行
・サイバー攻撃
・従業員による事件・事故
・テロ

どのような対策もしていない状態で緊急事態に見舞われた場合、事業がすべて止まってしまう可能性が高く、最悪の場合は倒産にもつながります。

事業の縮小や倒産などのリスクを防ぎ、従業員の生命や生活を守るためにも、BCP対策の策定は企業にとって非常に重要であると言えるでしょう。

BCP対策の目的・必要性

BCP対策の目的は、あらゆる緊急事態に対しても事業を継続できる体制を整え、従業員の生命や生活を守り、顧客や取引先からの信頼を得ることです。

日本は自然災害の多い国といわれており、近年でも多くの災害に見舞われています。

過去20年間で発生した主な自然災害

2011年3月 東日本大震災
2014年8月 豪雨による広島市の土砂災害
2016年4月 熊本地震
2018年7月 西日本豪雨
2019年10月 台風19号
2022年3月 福島県沖地震
2024年1月 能登半島地震

ほかにも、アメリカでのテロ事件や新型の感染症など、ここ数十年の間に予想もつかないような緊急事態が繰り返し発生しており、いつ自分たちが緊急事態に直面してもおかしくありません。

以上ことから、BCP対策は企業存続に重要な施策の一つであり、早急に策定する必要があると言えるでしょう。

BCPとBCM・災害対策との違い

BCP対策と混同されやすい言葉として「BCM」「災害対策」などがあります。

意味合いとしては近い部分もありますが、異なる部分も少なくありません。

BCPとBCM・災害対策の違いについて解説します。

BCMとの違い

BCPとBCMの違いは、BCPが「事業継続のための計画」であるのに対し、BCMは「その計画をマネジメントすること」を指している点です。

出典:「事業継続ガイドライン第三版(内閣府)」を加工して使用

BCP対策はただ計画を立てれば終わりというものではなく、いざというときに実際に効果のあるものでなければなりません。

定期的に内容を見直して、変更や改善を繰り返すことで、BCPをより実効的なもの変えていくのがBCMです。

災害対策との違い

BCPと災害対策には「目的」と「対象」に違いがあります。

防災対策の目的は、人や資産への被害を防ぐための対策であるのに対し、BCPは事業継続や早期復旧が目的です。

また、災害対策は名前の通り地震や洪水などの自然災害に対する備えであるのに対し、BCPでは自然災害にくわえ感染症の流行やサイバー攻撃など、あらゆる緊急事態を対象としています。

BCP対策実施のメリット

BCP対策の実施には「事業継続能力の向上」だけでなく「社会的信用の向上」「部署間のつながりが強くなる」などのメリットがあります。

緊急時における事業継続能力の向上につながる

BCP対策を通じて有事に備えておくことで、緊急事態の被害を最小限に抑えて、早期に事業の復旧・継続が可能となります。

突発的な緊急事態に対して、指標もなしに適切な対応がとれるケースは多くありません。

初動対応が非常に重要な緊急事態において、誰がどのように行動するかが決められており、迷いなく動ける点は、BCP対策の大きなメリットと言えるでしょう。

社会的信用の向上につながる

BCP対策をおこなうことで、周囲から「リスク管理をしっかりとしている企業」と認識され、社会的信用の向上につながります。

有事に備えてBCP対策をおこなっていれば「自然災害への備えができている企業」「普段からリスク管理がしっかりしている企業」などのイメージを、消費者や取引先に与えられます。

他社が取引先を選定する際、条件がほぼ同じであれば「BCP対策の実施」が決め手となる可能性もあるでしょう。

部署間のつながりが強くなる

部署間のつながりが強くなりやすい点も、BCP対策実施のメリットです。

BCPを策定するためには、部署間で情報を共有する必要があるため、協力体制を構築する必要があります。

策定の過程で部署間のコミュニケーションが活発化するため、結果として部署間のつながりや組織全体の一体感が強くなるでしょう。

車両・ドライバーにかかわるBCP対策

トラックやタクシーなどの事業用自動車に限らず、社用車を使用する機会がある企業は、車両・ドライバーに対するBCP対策もしっかりと検討しておきましょう。

具体的な対策の一例として、以下などが挙げられます。

  • 車両管理システムの導入
  • 電気自動車や非常用電源の導入
  • PHV・HV車など家庭用電源ソケットを装備している車両の導入
  • 緊急時の行動指針策定(道路の寸断、渋滞で身動きが取れないなど)

緊急事態による混乱の最中、ドライバー一人ひとりに連絡を取り、安否確認をおこなうのは簡単ではありません。

その点、車両位置をリアルタイムで把握できる車両管理システムを導入していれば、いざというときであっても、素早く正確に位置や状況を把握できます。

また、自然災害発生時は道路の損傷や渋滞により、身動きが取れなくなるケースも少なくありません。

電気自動車は給電システムとしても使えるため、導入しておくことで、緊急時におけるモバイル機器の充電や明かりの確保などに利用できます。

有事の際に、ドライバーがあせらず適切に行動できるよう、緊急事態発生時における対応や、機器の使用方法を定期的に教育するのも重要です。

BCP対策を策定する際の参考資料

BCP対策を策定する際は、内閣府や中小企業庁から出されている「BCPガイドライン」を参考にするのがおすすめです。

「事業継続計画策定ガイドライン」は、基本の考え方から教育内容までの一連の流れが全50ページで網羅されています。

BCP対策について詳しく知れますが、資料が多く表現方法もやや専門的であることから、専門家や一定の知識を持つ方向けの内容と言えるでしょう。

一方で「中小企業BCP策定運用指針」は、利用者の知識レベルに応じて4つのコースが用意されています。

また、表現も比較的わかりやすいため、今からBCP策定に取り組む方におすすめの内容となっています。

BCP対策を策定する手順

BCP対策の策定手順を5つのステップに分けて解説します。

これからBCP策定に取り組む方は、ぜひ参考にしてください。

1.基本方針の設定

まずは、基本方針の設定です。

企業の経営理念や基本方針、ミッションなどを基にBCP対策の基本となる方針を設定します。

基本方針の一例
・従業員の人命・生活を守る
・取引先や顧客との信用を守る
・地域の経済基盤を守る

基本方針は、BCP対策の方向性を決定づけるものであるため、しっかりと内容を吟味して設定するようにしましょう。

2.中核事業の選定

基本方針が決定したら「中核事業」の選定をおこないます。

中核事業とは、緊急時に事業を継続するにあたって最も優先すべき事業のことです。

中核事業の例
・最も売上を上げている事業
・遅延による影響が非常に大きい事業
・ステークホルダーの信頼を維持するために必要な事業

3.リスクを抽出する

企業にとって「実際に起きたら困る緊急事態」を抽出します。

具体的に緊急事態を抽出しておくことで、効果的に対策を立てられるようになります。

緊急事態を抽出する際は、想定されるリスク(損害)についてもあわせて検討しておくと良いでしょう。

緊急事態の例としては、自然災害やウイルスの流行のほか、サイバー攻撃や従業員による不祥事などが挙げられます。

4.リスクに優先順位を設定する

緊急事態の限られたリソースで効果的に事業がおこなえるよう、対応するリスク(損害)に優先順位をつけます。

優先順位をつける際は、以下のポイントを基準として総合的に判断するようにしましょう。

  • リスクが発生する頻度
  • リスク発生時の深刻度

5.具体的な対策を決める

最後の手順は、優先度の高いリスクに絞った対策を決めることです。

具体的な作成方法としては、最初に緊急事態から復旧が完了するまでの期間を以下の3つの段階に分けます。(詳しくは次の段落で解説)

  • 被害状況の把握
  • 応急対応の実施
  • 通常営業への復旧

次に、各段階において以下に挙げる5つの視点で、どのような対応をするのか細かく設定します。

  • 人的リソース
  • 施設・設備
  • 資金・資材調達
  • 体制・指揮系統
  • 情報

緊急事態が起きると、誰もが突然のことに驚き適切な判断が難しくなるため、具体的に細かく内容を策定して動き方を明確にしておかないと、初期対応が遅くなる可能性があります。

そのため、BCP対策を策定する際は「誰が指揮をして実際に行動するのは誰か」など、できる限り細かく具体的に決めておくことが重要です。

緊急事態発生~復旧までの流れ

緊急事態発生から復旧までの期間を時系列で大まかに分けると「被害状況の把握」「代替手段による応急対応」「通常営業への復旧」の3つです。

各タイミングにおけるBCP対策のポイントについて解説します。

1.被害状況の把握

緊急事態が発生した直後の段階ですべきことは「確認」です。

緊急事態による被害が、どのようなものなのかを正確に把握することで、事業の早期復旧につながります。

主な確認内容は以下の通りです。

  • 従業員の安否
  • 建物や車など物的損害の確認
  • システムなどの基盤被害の確認

近年では安否確認ツールなど、緊急時にスムーズに素早く従業員の安否を確認できるツールも提供されているので、いざというときのために用意しておくのも良いでしょう。

また、避難先や連絡手段など、できるだけ細かく対策を決めておくことも重要です。

2.代替手段による応急対応

次の段階で重要なのは、早期に事業を開始するための代替手段の入手方法をしっかりと検討しておくことです。

緊急事態発生時には、人員や設備などが不足することが想定されるため、人やモノが少ない中でどのように代替できるのか検討した上でBCP対策をおこないましょう。

有効な対策の一つとして「リモートワーク環境の構築」が挙げられます。

リモートワークの環境が整っていれば出社せずとも業務ができるため、従業員の安全を守りつつ人的リソースの確保が可能です。

3.通常営業への復旧

この段階のポイントとしては、通常営業へ復旧するための手順や対策を整え、できるだけ早く通常営業に戻せるよう準備しておくことです。

対策を検討する際は、以下の2点をメインに考えると良いでしょう。

  • 車や設備、建物などのハード面
  • サーバーやネットワークなどのソフト面

現在のビジネス環境において、特に重要なのが通信環境の復旧・維持です。

クラウドサービスなどを利用して、緊急時でもすぐに通信ができる環境を整えるとともに、重要なデータを取り出せるように準備しておくのも有効です。

まとめ:実効的なBCP対策を策定して緊急事態から従業員や企業を守ろう

BCP対策をしておくことで、緊急事態発生時の被害を最小限に抑え、従業員の生命や生活を守ることができます。

また「リスク管理がしっかりしている企業」と、取引先や顧客から認識されやすくなり、社会的信用の向上にもつながります。

しかし、BCP対策は策定するだけではあまり効果はありません。

現状に合わせて、策定内容の改善や従業員への教育を繰り返し、実効的な内容にしていくことが重要です。

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