「自転車だからお酒を飲んでも大丈夫だろう」と思っていませんか?
実は、それは大きな誤解です。
自転車の飲酒運転は、法律で厳しく禁止されている行為であり、場合によっては罰則や逮捕の対象となることもあります。
しかし、具体的な罰則内容や違法行為の範囲について正確に理解している方は少ないかもしれません。
この記事では、2025年の最新情報を基に、自転車の飲酒運転に関する罰則や法改正について徹底解説します。
自転車通勤をしている従業員がいる企業や、業務で自転車を使う機会がある企業の方は、ぜひ参考にしてください。
アルコールチェック義務化に備える!
目次 [非表示]
自転車の飲酒運転は違法行為

酒気帯び運転等の禁止について、道路交通法では以下のように明記されています。
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
引用元:道路交通法第六十五条|e-Gov法令検索
自転車は運転免許が不要で、年齢や性別を問わず誰もが運転できる乗り物です。
多くの人が日常の移動手段として使っていますが、自動車やその他の車両と同じく、道路交通法を守って正しく運転することが求められます。
自転車は「軽車両」扱い
自転車は法律上、「軽車両」として扱われます。
道路交通法では、酒気を帯びて車両等を運転することを禁じており、自転車もその対象となります。
したがって、自転車の飲酒運転も法律違反です。
軽車両 次に掲げるものであって、移動用小型車、身体障害者用の車及び歩行補助車等以外のものをいう。
イ 自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含み、小児用の車(小児が用いる小型の車であつて、歩きながら用いるもの以外のものをいう。次号及び第三項第一号において同じ。)を除く。)
引用元:道路交通法第二条十一項|e-Gov法令検索
自転車利用者は多くいますが、運転免許が不要なことから、自動車に比べて交通ルールの順守や飲酒運転の危険性に対する意識が低くなりがちです。
そのため、自転車通勤者がいる企業は、従業員に法令を守って運転を徹底させるとともに、飲酒運転や事故を未然に防ぐための対策を講じることが求められます。
他人に飲酒運転を促す行為も違法
自転車の飲酒運転に関して、直接運転する人だけでなく、他人に飲酒運転を促す行為も違法とされています。
2024年の法改正により、自転車の提供者や酒類を提供した人も罰則の対象となりました。
第六十五条 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
引用元:道路交通法第六十五条|e-Gov法令検索
2 何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
3 何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
自転車の飲酒運転に対する罰則

自転車の飲酒運転に対する罰則は、近年の法改正により厳格化されています。
特に、2024年の法改正では、自転車の「酒気帯び運転」にも罰則が適用されるようになりました。
以下では、具体的な罰則内容や法改正のポイントについて詳しく解説します。
法改正により自転車の酒気帯び運転も罰則の対象に
2024年11月1日から施行された改正道路交通法により、自転車の酒気帯び運転に対しても罰則が科せられるようになりました。
これまでは主に「酒酔い運転」に対する罰則が中心でしたが、法改正によって酒気帯び運転も厳しく取り締まられます。
また、飲酒した人に自転車を提供したり、自転車の運転者に酒類を提供したりといった「ほう助」にも、罰則が設けられました。
具体的には以下のとおりです。
飲酒運転の種類 | 罰則内容 |
---|---|
酒気帯び運転 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
酒酔い運転 | 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
ほう助(車両提供) | 自転車の提供者に3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
ほう助(同乗・酒類提供) | 同乗者・酒類の提供者に2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
出典:2024年11月自転車の「ながらスマホ」が罰則強化!「酒気帯び運転」は新たに罰則対象に! | 政府広報オンライン
「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の違い
飲酒運転には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2つがあり、それぞれ異なる基準と罰則が設定されています。
酒気帯び運転は、呼気中のアルコール濃度が一定以上である場合に該当しますが、酒酔い運転はアルコールの影響で正常な運転ができない状態を指します。
具体的には以下のとおりです。
- 酒気帯び運転: 呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上、または血液中のアルコール濃度が0.3mg/L以上の状態での運転
- 酒酔い運転: アルコールの影響で運転が困難な状態での運転
酒酔い運転は、「呂律が回らない」「まっすぐ歩けない」など、見た目や行動から明らかに泥酔していると判断される状態です。
判断力の著しい低下により交通事故を引き起こす危険性が非常に高いため、酒気帯び運転より重い罰則が科されます。
自転車の飲酒運転で運転免許の停止処分を受ける可能性もある
自転車の飲酒運転は、運転免許を持っている場合、その免許に影響を及ぼす可能性があります。
特に酒酔い運転の場合、重大な交通違反とみなされ免許の停止処分となるケースもあります。
免許(仮免許を除く。以下第百六条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなったときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなった時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止できる。
(中略)
八 前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき。
引用元:道路交通法第百三条|e-Gov法令検索
この条文では「自動車等」に該当する具体的な車両の種類は明記されていません。
しかし、自転車は軽車両に分類されるため、「自動車等」に含まれると解釈できます。
例えば、自転車で飲酒運転をして人身事故を起こした場合、交通モラルが低いとみなされ、将来的に自動車でも飲酒運転をする可能性が高いと判断されかねません。
その結果、この法律を根拠に運転免許の取り消しや停止といった処分が下されることも考えられます。
自転車の「ながらスマホ」に対する罰則も強化
自転車の「ながらスマホ」とは、スマートフォンを手に持って通話しながらの運転や、運転中にスマートフォンに表示された画面を注視することを指します。
「ながらスマホ」の行為も、危険運転として罰則の対象となります。
罰則の内容は、以前は「5万円以下の罰金」でしたが、2024年11月以降は以下のようになりました。
自転車運転中に「ながらスマホ」をした場合 | 6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金 |
自転車運転中の「ながらスマホ」により交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合 | 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
出典:2024年11月自転車の「ながらスマホ」が罰則強化!「酒気帯び運転」は新たに罰則対象に!|政府広報オンライン
法改正で飲酒運転も自転車運転者講習制度の対象に

2024年の道路交通法改正により、自転車の飲酒運転も「自転車運転者講習制度」の対象となりました。
自転車運転者講習制度とは
自転車運転者講習制度は、交通ルールを守らずに危険行為を繰り返す自転車運転者に対して、安全講習の受講を命じる制度です。
2015年に導入され、自転車運転で3年以内に2回以上の危険行為を反復しておこなった者に適用されます。
「危険行為」とは、具体的には以下の16の行為のことです。
- 信号無視
- 通行禁止違反
- 歩行者用道路徐行違反
- 通行区分違反
- 路側帯進行方法違反
- 遮断踏切立入り
- 優先道路通行車妨害等
- 交差点優先車妨害等
- 環状交差点安全進行義務違反等
- 指定場所一時不停止等
- 歩道通行時の通行方法違反
- 制動装置(ブレーキ)不良自転車運転
- 酒気帯び運転等
- 安全運転義務違反
- 携帯電話使用等
- 妨害運転
自転車運転者は、自身が居住する都道府県の公安委員会から受講命令を受け、指定された運転免許センターなどで講習を受けることになります。
講習の所要時間は3時間で、交通ルールの順守や安全運転の大切さについて学びます。
実技はおこなわれませんが、テストやディスカッションが含まれるのが特徴です。
さらに、受講の際には6,000円の手数料がかかります。
自転車運転者講習を受講しなかった場合の罰則
自転車運転者講習は義務であり、受講命令を受けた者は、都道府県公安委員会が講習命令書を交付した日から3カ月以内に受講しなければなりません。
受講命令を無視して受講しなかった場合、5万円以下の罰金が科されます。
また、交通ルールを学び直す貴重な機会を逃してしまいます。
違反や事故を繰り返さないためにも、受講命令に従い、しっかりと受講することが大切です。
飲んだら乗るな!自転車の飲酒運転を防ぐための3つの対策

自転車の飲酒運転は、思わぬ事故や法的な問題を引き起こす可能性があります。
ここでは、自転車の飲酒運転を防ぐために有効な3つの対策を紹介します。
交通安全教育を実施する
自転車の飲酒運転を防ぐためには、交通安全教育を継続的に実施することが効果的です。
交通安全教育では、飲酒運転の危険性や法律についての知識を深めることで、参加者の意識を高められます。
特に、自転車通勤や業務で自転車を使用する企業では、積極的に講習会を開催し、従業員に対して啓発活動をおこなうことが重要です。
飲酒運転に対する社内処分を明確にする
飲酒運転に対する明確な処分を設定することも有効です。
例えば、飲酒運転をおこなった場合の懲戒処分や、再発防止のための研修参加を義務付けるなど、具体的な措置を設けることで、従業員の意識を高められます。
また、社内での周知徹底を図り、全員が理解した上で責任を持つことが求められます。
アルコールチェッカーを導入する
アルコールチェッカーを導入することも、自転車の飲酒運転防止に役立ちます。
特に、業務で自転車を使用する従業員がいる場合、出社時や業務開始前にアルコールチェッカーを使用することで、飲酒の有無を確認できます。
これにより、飲酒運転を未然に防ぎ、安全な業務遂行を促進することが可能です。
なお、以下の記事でアルコールチェッカーの使い方を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
これらの対策を講じることで、自転車の飲酒運転を効果的に防ぐことが可能です。
安全意識を高める取り組みは、個人だけでなく、組織全体で推進することが重要です。
まとめ:自転車の飲酒運転は重大な違法行為

自転車の飲酒運転は法律で禁止されており、罰則が適用される重大な違反行為です。
自転車は「軽車両」に分類されているため、自動車などと同様に法律の対象となります。
飲酒運転は、自分自身の生命を危険にさらすだけでなく、他人にも多大な迷惑をかける可能性があります。
「飲んだら乗らない」を肝に銘じて、常に安全運転を心がけましょう。
なお、飲酒運転を防ぐためには、企業の担当者がアルコールチェックについて把握しておくことが重要です。
JAFメディアワークスでは、アルコールチェックの概要やテンプレートをまとめた資料を配布しています。
以下のバナーからダウンロードできるので、ぜひご活用ください。
アルコールチェック義務化に備える!