危険運転は多くの交通事故の原因となり、人命や安全を脅かすだけでなく、企業にとって重大な損害や責任問題につながることがあります。
そこでこの記事では、危険運転の定義と、それに関連する法律について詳しく解説し、企業として実践すべき具体的な対策をご紹介します。
飲酒運転やあおり運転などの危険行為を未然に防ぐための知識と方法を学び、社員と社会の安全を守るための取り組みを強化しましょう。
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目次
危険運転とは?
危険運転とは、ドライバーが正常な運転をおこなえない状況や、極端に高速度での運転、または意図的に赤信号を無視するなど、重大な交通リスクを引き起こす行為を指します。
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の第二条では、危険運転致死傷罪に該当する8つの要件が定められています。
- アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
- その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
- その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
- 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
- 車の通行を妨害する目的で、走行中の車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
- 高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行をさせる行為
- 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
- 通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態での運転や、制御不能な高速度での運転、ほかの車両や歩行者の通行を妨害する目的での危険な運転などが対象です。
これらの要件を満たす行為によって、人を負傷させた場合には最大で15年以下の懲役刑、人を死亡させた場合には1年以上の有期懲役刑が科せられます。
出典:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
危険運転に関連する法律
交通事故を防ぐために、危険運転に対する法律は年々強化されています。特に飲酒運転やあおり運転などの行為は、社会問題化しており、厳しい罰則が設けられています。
危険運転による事故を避けるため、関連する法律を把握しておきましょう。
飲酒運転などの厳罰化から生まれた危険運転致死傷罪
かつて、自動車運転中に過失で人を死傷させた場合には、刑法の「業務上過失致死傷罪」が適用されていました。
しかし、特に飲酒運転による悲惨な交通事故が頻発し、社会的な問題となっていたことから、危険な運転行為に対する厳しい処罰を求める声が高まりました。
その結果、2001年の刑法の一部改正により、「危険運転致死傷罪」が新たに設けられています。
危険運転致死傷罪は、アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態での運転や、制御不能な高速度での運転など、危険性の高い行為によって、人を死傷させた場合に適用されます。
あおり運転を取り締まる妨害運転罪
近年、あおり運転による危険な行為が社会問題化し、重大な事故を引き起こすケースが増加しました。
これを受け、令和2年6月10日に公布された「道路交通法の一部を改正する法律」により、妨害運転、いわゆる「あおり運転」を取り締まる「妨害運転罪」が新たに設けられました。
この改正により、妨害運転をおこない、著しい交通の危険を生じさせた場合には、懲役5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
さらに、あおり運転をおこなった者に対しては、運転免許の取り消しという厳しい処分が科されます。
危険運転をしない/させないための対策
企業において、従業員の危険運転を未然に防ぐためには、さまざまな対策が必要です。
ここでは、ドライバー教育やテクノロジーの活用など、実践すべき具体的な対策について解説します。
ドライバー教育の強化
社内で定期的な安全運転講習を実施することで、ドライバーは最新の法規制や安全運転の重要性について再認識し、日常の運転に反映させられます。
さらに、新入社員に対しては、入社時に徹底的な安全運転トレーニングをおこないます。
安全運転の基本や企業の運転規則をしっかりと指導し、安全運転への意識を高めましょう。
継続的にドライバー教育をおこなうことにより、全すべてのドライバーが安全意識を持ち、危険運転を未然に防ぐ能力を高められます。
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テクノロジーの活用
ドライブレコーダーや車両管理システムといったテクノロジーを活用することも有効です。
ドライブレコーダーは、運転中の状況を詳細に記録できるため、万が一の事故やトラブル時の証拠となります。
また、ドライブレコーダーが設置されていることを示すステッカーを車両に貼ることで、あおり運転などの悪質な行為の抑止にも効果的です。
加えて車両管理システムを導入し、リアルタイムで運転状況を監視することで、危険運転が即座に検知され早期に対応できます。
テクノロジーの力をうまく借りながら危険運転のリスクを低減し、安全な運行を実現しましょう。
社内規則の制定と徹底
危険運転の防止には、企業内部での明確なルール設定とその徹底が不可欠です。
まず、飲酒運転やあおり運転などの危険運転行為に対して、厳格な社内規則を策定することが重要です。
適切な罰則を設けることにより、従業員が危険運転を避けるための抑止力として機能します。
また、規則は一度作って終わりではなく、社会情勢や法改正に対応して定期的に見直すことも重要です。
企業のルールが常に最新の法規制に適合していなければ、安全運転を維持するための効果的なガイドラインとして機能できません。
必要に応じて専門家のサポートを受けながら、規則の制定と更新をおこないましょう。
健康管理とストレス対策
危険運転をしない/させないためには、ドライバーの心身の健康も重要な要素です。
まず、定期健康診断を実施し、運転に支障をきたす可能性のある健康問題を早期に発見し、適切な対応をおこないましょう。
また、ストレス管理プログラムの導入も有効です。
長時間の運転や交通渋滞は、ドライバーにとって大きなストレス要因となり得ます。
そこで、ストレスを軽減し、精神的な健康をサポートするためのプログラムを提供するのも一案です。
例えば、リラクゼーション法のトレーニングや定期的なカウンセリングセッションを設けることが考えられます。
これらの取り組みによって、ドライバーの心身の健康を保ち、安全運転の実践を支援します。
法令遵守の意識向上
企業の車両管理において、ドライバーに法令遵守の意識を高めることは極めて重要です。
まず、法令順守の啓発活動を定期的におこなうことで、ドライバーに法的な責任と義務を再認識させます。
これには、社内セミナーや講習会、法令に関する情報を盛り込んだ社内報の配信などが有効です。
さらに、法規制の最新情報をタイムリーに提供することも欠かせません。
新しい交通法規や規制の改定情報を迅速に共有し、ドライバーが常に最新の法規制に準拠した運転をおこなえるようサポートします。
これにより、ドライバーは日々の運転での法令遵守を意識し、企業全体の交通安全が強化されます。
法令遵守の意識向上を通じて、事故のリスクを低減し、安全な運行を維持しましょう。
危険運転の被害に遭わないための対策
危険運転の被害を防ぐためには、日々の運転での心構えやルートの選択、そして万が一被害に遭った場合の適切な対処法を知ることが重要です。
ここでは、危険運転の被害に遭わないための具体的な対策について説明します。
落ち着いて運転する
危険運転の被害を防ぐためには、常に冷静さを保つことが重要です。
まず、ほかの車両からの挑発や威嚇に対して反応せず、落ち着いて対処することが求められます。
例えば、あおり運転を受けた場合でも、相手に対して挑発的な行動を取らずに、エスカレートを防ぐことで自分や周囲の安全を守れます。
次に、余裕を持った運転を心掛けることも大切です。
十分な車間距離を保ち、急な車線変更や無理な割り込みを避けることで、ほかのドライバーとのトラブルを未然に防ぐことができます。
また、前方の状況を常に確認し、予測した運転をおこなうことで、危険な状況に陥るリスクを減らせます。
運転ルートを工夫する
危険運転の被害を避けるためには、運転ルートの工夫も有効です。
まず、混雑を避けたルート選択が重要です。
交通量の多い時間帯や混雑する場所は、ドライバーのストレスが高まり、あおり運転などのトラブルが発生しやすくなります。
これを避けるために、比較的空いている時間帯やルートを選ぶことで、被害に遭うリスクを減らすことができます。
また、過去にトラブルが多発しているエリアを避けることも有効です。
例えば、頻繁に事故が起こる場所や、あおり運転が報告されているエリアを事前に把握し、これらの危険エリアを避けるルートを計画できると理想的です。
事前にルートを慎重に選び、安全な道を走行することで、危険運転のリスクを最小限に抑えられます。
万が一被害に遭ったときの対処法を知っておく
あおり運転などの危険運転に遭遇した場合、冷静で迅速な対応が安全を守る鍵となります。
まず、すぐに安全な場所に移動することが重要です。
無理に対抗しようとせず、路肩やサービスエリア、パーキングエリアなど、ほかの車両から距離を取れる場所に避難しましょう。
避難後すぐにやるべきことは警察への通報です。
通報時には、あおり運転の状況や相手車両の特徴、現在の位置をできるだけ詳しく伝えることで、迅速な対応を促すことができます。
また、通報する際には、ドライブレコーダーの映像があれば、警察に提供することで証拠として活用できます。
これらの対処法を事前に知っておくことで、万が一のときにも冷静に対応でき、安全を守ることが可能です。
まとめ:危険運転をしない/させないために対策を徹底しよう
危険運転は重大な事故を引き起こし、人命を脅かすだけでなく、企業や社会全体に多大な影響を与えます。
この記事で紹介したように、危険運転の定義や法律を理解し、ドライバー教育やテクノロジーの活用、健康管理などの対策を徹底することで、危険運転を未然に防ぎましょう。
また、万が一の被害に備えた適切な対処法を知ることも重要です。
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