安全運転管理者は、年に1回、公安委員会が実施する安全運転管理者講習を受けなければなりません。
しかし、安全運転管理者講習について、以下のような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
- 講習の内容や流れはどうなっているのか?
- 費用はいくらかかるのか?
- 受講しなかった場合に罰則はあるのか?
本記事では、安全運転管理者講習の内容や注意点について解説します。
受講しなかった場合の罰則もまとめているため、ぜひ参考にしてください。
スマホやタブレットでの受講も可能
目次
安全運転管理者とは
安全運転管理者とは、安全運転の推進や交通事故の防止に向けて必要な指導・管理業務をおこなう者のことです。
企業が保有する車両を適切に管理・監督することで事故の発生を防止し、従業員や一般の人々の安全を確保するために設けられました。
一定台数以上の車両を保有する事業者には、安全運転管理者を選任することが、道路交通法で定められています。
出典:道路交通法第七十四条の三
近年では、道路交通法改正によるアルコールチェック義務化に伴い、安全運転管理者の業務が拡充されました。
そのため、「安全運転管理者の役割や重要性について再認識した」「新たにアルコールチェックの対象となったため、安全運転管理者を選任した」という企業も多いでしょう。
最初に、安全運転管理者の基本事項を紹介します。
安全運転管理者の選任基準
以下の条件に当てはまる事業所は、安全運転管理者を選任しなければなりません。
- 乗車定員が11名以上の自動車を1台以上使用している
- その他の自動車を5台以上使用している
※ただし、大型自動二輪車または普通自動二輪車は0.5台としてカウントする
また、以下のケースに当てはまる場合は、安全運転管理者の業務をサポートする「副安全運転管理者」の選任も必要です。
- 自動車の台数が20台以上40台未満の場合:副安全運転管理者を1人選任する
- 自動車の台数が40台以上の場合:20台を増すごとに副安全運転管理者を追加で1人選任する
安全運転管理者の資格要件
安全運転管理者の主な資格要件は以下のとおりです。
- 20歳以上の者(副安全運転管理者が選任される場合は30歳以上)
- 自動車の運転の管理に関し2年以上の実務経験を有する者
安全運転管理者の業務内容
安全運転管理者は、以下の9つの業務を担当します。
- 運転者の状況把握
- 安全運転のための運行計画の作成
- 長距離、夜間運転時の交代要員の配置
- 異常気象時等の安全確保の措置
- 点呼等による運転者の状態確認
- 運転者の酒気帯び有無の確認
- 酒気帯び確認の記録と保存
- 運行日誌の備え付けと記録
- 運転者に対する安全運転指導
安全運転管理者は、これらの業務を通じて安全運転の推進や交通事故の防止に取り組み、社内の交通安全意識の向上を目指します。
なお、安全運転管理者の詳しい業務内容や届出方法などは、以下の記事で詳しく解説しています。
「安全運転管理者について詳しく知りたい」という場合は、ぜひ参考にしてください。
安全運転管理者講習とは
安全運転管理者講習とは、公安委員会が安全運転管理者に対して実施する講習のことです。
道路交通法で受講が義務付けられており、年に1回、必ず受講しなければなりません。
講習の内容
安全運転管理者講習では、以下の内容を教本や動画などの教材を用いて学びます。
- 自動車および道路の交通に関する法令の知識
- 自動車の安全な運転に必要な知識
- 自動車および運転者に対する交通安全教育に必要な知識・技能
- 安全運転管理に必要な知識・技能
開催日程
安全運転管理者講習の開催日程は、各都道府県の警察本部や安全運転管理に関する協会のホームページで確認できます。
具体例として、以下の5つを紹介します。
- 東京都:安全運転管理者等法定講習(警視庁)
- 大阪府:安全運転管理者制度・安全運転管理者等講習について(大阪府警察)
- 愛知県:法定講習(公益社団法人愛知県安全運転管理協議会)
- 宮城県:安全運転管理者講習(一般社団法人宮城県安全運転管理者協会)
- 福岡県:安全運転管理者等講習会(一般財団法人福岡県交通安全協会)
また、講習時間は以下のとおりです。
- 安全運転管理者:6時間以上10時間以下
- 副安全運転管理者:4時間以上8時間以下
多くの場合、午前10時頃から午後5時頃までの6時間(休憩時間を除く)でおこなわれることが多く、1日がかりとなります。
また、月に1〜10回程度開催されており、ここ数年ではオンライン受講が可能な地域も増えています。
持ち物
安全運転管理者講習に必要な持ち物は以下のとおりです。
- 講習通知書
- 安全運転管理者証、運転免許証などの本人確認書類
- 講習手数料
- 筆記用具
講習通知書は、講習日の1カ月以上前に、各事業所宛に発送されます。
また、会場では本人確認が実施されます。
本人であることが確認できないと受講できないので、必ず安全運転管理者証を持参しましょう。
なお、都道府県によっては安全運転管理者証を廃止していることがあります。
その場合は、運転免許証などの本人確認書類が必要です。
講習手数料
安全運転管理者講習の講習手数料は以下のとおりです。
- 安全運転管理者:4,500円(非課税)
- 副安全運転管理者:3,000円(非課税)
各都道府県発行の収入証紙を購入して、講習手数料を納付する場合がほとんどです。
ただし、講習会場で収入証紙を販売していないこともあるため、事前に収入証紙を購入しておくことをおすすめします。
また、同封の納付用紙により手数料収納取扱金融機関で講習手数料を事前納付するよう指示される場合もあります。
そのため、支払い方法は事前によく確認しておきましょう。
安全運転管理者講習の流れ
安全運転管理者講習を受講するには、事前にいくつかの手続きが必要です。
ここからは、安全運転管理者講習の流れを紹介します。
1.安全運転管理者を選任したことを届け出る
安全運転管理者を選任したら、15日以内に都道府県公安委員会に届け出なければなりません。
申請書の提出方法は以下のとおりです。
- 事業所を管轄している警察署
- オンライン(警察行政手続サイト)
申請書は各都道府県の警察署のホームページに掲載されていることが多いため、まずは事業所のある都道府県の警察署のホームページを確認してみましょう。
なお、部署異動や転勤によって安全運転管理者が変わる場合や、社用車の台数が減って安全運転管理者を解任する場合も、公安委員会に届け出る必要があります。
特に安全運転管理者を変更する場合は注意が必要です。
先に届け出ておかないと新たな安全運転管理者が講習を受けられないので、変更後すぐに届け出るようにしてください。
2.公安委員会から法定講習通知書が届く
次に、公安委員会から安全運転管理者宛に、以下の書類が届きます。
- 講習通知書
- 申込書
- 講習手数料の納付書
講習通知書には、開催日などの詳細が記載されています。
開催日については、受講日が指定されている場合と、複数の開催日の中から希望日を選択できる場合があります。
どうしても指定日に受講できない場合は、予備日が設定されていたり、オンライン受講ができたりするため、対応を確認しましょう。
また、講習手数料は、指定された方法で納付してください。
3.安全運転管理者講習を受講する
申し込みを済ませたら、安全運転管理者講習を受講します。
最近では会場受講だけでなく、オンライン受講も増えています。
オンライン受講は会場への移動にかかる手間やコストを抑えられますが、以下の点に注意してください。
- 事前に登録や講習手数料の支払いを済ませておく
- 使用するWeb会議システムのアプリのインストールや接続状態を確認しておく
会場で受講する場合は、通知書や講習手数料の収入証紙など、必要な持ち物を忘れないようにしましょう。
また、講習は長時間に及ぶため、水分補給用の飲料も持参してください。
安全運転管理者講習の注意点
安全運転管理者講習の注意点を紹介します。
知らないと受講できなかったり、再受講になったりするので、必ず目を通しておいてください。
代理受講は認められていない
安全運転管理者講習では、代理受講は認められていません。
安全運転管理者本人が受講する必要があります。
前述の通り、注意しなければならないのは、人事異動などで安全運転管理者が変わったときです。
タイミングによっては前任者の名前で通知書が届くことがありますが、そのままでは講習を受けられません。
すぐに管轄の警察署で安全運転管理者の変更手続きをしてから、安全運転管理者講習を受講するようにしてください。
途中退席や中抜けをすると再受講になる
安全運転管理者講習は、途中退席や中抜けもできません。
仮に途中退席や中抜けをした場合は、再受講となり、講習手数料も還付されない可能性もあります。
また、遅れた場合も受講できない可能性があるため、余裕をもって到着できるようにしておきましょう。
駐車場の有無を確認しておく
駐車場の有無も事前に確認しておきましょう。
会場によっては駐車場が確保されておらず、公共交通機関でのアクセスが推奨されている場合があるからです。
どうしても車で行く必要がある場合は、周辺の駐車場を調べておきましょう。
安全運転管理者講習を受講しなかった場合の罰則
安全運転管理者講習を受講しなかった場合の罰則はありません。
しかし、講習内容には最新の法改正や交通事故事情などが反映されているため、受講しないと情報のアップデートができず、結果として罰則や処分の対象となる場合があります。
例えば、2023年12月から、アルコール検知器を用いたアルコールチェックが義務化されました。
安全運転管理者講習を受講しなかった場合、このような最新の情報を入手できない可能性があります。
そして、事業所内で実施できていなかった場合、事故防止や安全運転ができていないとして、罰則や処分の対象となる可能性があります。
つまり、受講しないことによる直接的な罰則はありませんが、結果として罰則や処分の対象となる可能性があるのです。
安全運転管理者が果たす役割は今まで以上に重要になっている
2023年の道路交通法改正により、安全運転管理者に対する罰則が強化されました。
企業の安全運転の確保という観点から、安全運転管理者の責任が見直されたことが理由です。
改正前後の罰則の変化は以下のとおりです。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
安全運転管理者および副安全運転管理者の選任義務違反 | 5万円以下の罰金 | 50万円以下の罰金 |
安全運転管理者等の選任解任届出義務違反 | 2万円以下の罰金 | 5万円以下の罰金 |
安全運転確保のための是正措置命令違反 | 新設 | 50万円以下の罰金 |
安全運転管理者を選任しなかったり、選任や解任の届出を15日以内に提出していなかったりした場合の罰金が引き上げられました。
また、新たに是正措置命令の規定が設けられ、規定を遵守せず安全運転が確保されていないと見なされた場合、都道府県の公安委員会が是正措置命令を出せるようになりました。
この是正措置命令に対して適切な対応を取らなかった場合、50万円以下の罰金が科されます。
このように、安全運転管理者の役割や責任は、今まで以上に重要になっています。
自社の交通安全を担う責任者として、必ず安全運転管理者講習を受講し、職務を全うしましょう。
まとめ:安全運転管理者講習は必ず受講しよう
安全運転管理者講習は、年に1回、必ず受講しなければなりません。
受講しないと、最新の法改正や交通事故事情についての情報を自社に反映できず、結果として自社の交通安全に悪影響が出る可能性があります。
特に近年は、検知器を用いたアルコールチェック義務化に伴い、安全運転管理者の役割や重要性が再認識されています。
事故防止や安全運転を継続し、安心してビジネスが続けられるように、必ず安全運転管理者講習を受講してください。
なお、安全運転管理者の業務のひとつに「運転者に対する安全運転指導」があります。
通常業務のほかに、安全運転指導の資料や教材準備が思うように進まないこともあるでしょう。
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従業員への安全運転指導にも、ぜひご活用ください。
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