運転日報とは、業務で使用する社用車の運行記録を残すための書類です。
運転者名や走行日時、走行距離などの情報が記録として蓄積されるため、安全性の確保や社用車運用の効率化につながります。
一部の事業者は、この運転日報の記録・保管が義務付けられています。
そのため、正しい知識にもとづいた運転日報の適切な管理が必要です。
本記事では、運転日報のルールや作成方法を解説します。
自社の安全運転管理体制を強化したい方は、参考にしてください。
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目次
運転日報の記録・保管の義務について
社用車の運転日報は、「貨物自動車運送事業輸送安全規則・旅客自動車運送事業運輸規則・道路交通法施行規則」の3つの規則によって記録・保管が義務付けられています。
条件に該当する企業や事業所は、書面での記録または電磁的記録が必須です。
ここでは、3つの規則の内容や違いを解説します。
貨物自動車運送事業輸送安全規則
貨物自動車運送事業輸送安全規則とは、国土交通大臣や地方運輸局長の認可を得た「貨物自動車運送事業者」に向けたルールです。
同規則の第八条において、運転日報の作成と1年間の記録保持が義務付けられています。
貨物自動車運送事業者における運転日報の管理は、原則として運行管理者が担います。
運行管理者に関しては貨物自動車運送事業輸送安全規則の第十八条に定められており、事業用自動車を5両以上保有している営業所は必ず選任しなければなりません。
なお、営業所ごとに選任する運行管理者の数は、「当該営業所の保有車両 ÷ 30 + 1(小数点以下切り捨て)」の計算式で求めます。
例えば、当該営業所の保有車両が40両の場合、「40 ÷ 30 + 1」で2名の選任が必要です。
旅客自動車運送事業運輸規則
トラックを使用して荷物を運送する「貨物自動車運送事業者」に対し、バスやタクシーといった旅客を運送する事業者は「旅客自動車運送事業者」にあたります。
旅客自動車運送事業者の場合、旅客自動車運送事業運輸規則の第二十五条に運転日報に関するルールが明記されています。
貨物自動車運送事業者と同様、旅客自動車運送事業者も運転日報の作成と1年間の記録保持が必要です。
運行管理者が運転日報を管理する点も貨物自動車運送事業者と変わりませんが、「乗合・貸切・乗用・特定」の事業種別によって、選任義務の条件が異なります。
事業種別 | 運行管理者の選任が必要な営業所 | 選任すべき運行管理者の数 |
---|---|---|
一般乗合旅客自動車運送事業 | 【以下すべてに該当する営業所】 ・乗車定員11人以上の事業用自動車を保有 ・乗車定員10人以下の事業用自動車を5両以上保有 | 「当該営業所の保有車両 ÷ 40 + 1(小数点以下切り捨て)」の計算式で求める |
一般貸切旅客自動車運送事業 | 【以下のいずれかに該当する営業所】 ①事業用自動車を19両以下保有 ②事業用自動車を20両以上99両以下保有 ③事業用自動車を100両以上保有 | 【左記①~③によって選任者数が異なる】 ①原則2名だが、当該営業所の保有車両5両未満で、地方運輸局長の認可があれば1名 ②「当該営業所の保有車両 ÷ 20 + 1(小数点以下切り捨て)」の計算式で求める ③「(当該営業所の保有車両 - 100)÷ 30 + 6(小数点以下切り捨て)」の計算式で求める |
一般乗用旅客自動車運送事業 | 事業用自動車を5両以下保有 | 「当該営業所の保有車両 ÷ 40 + 1(小数点以下切り捨て)」の計算式で求める |
特定旅客自動車運送事業 | 【以下すべてに該当する営業所】 ・乗車定員11人以上の事業用自動車を保有 ・乗車定員10人以下の事業用自動車を5両以上保有 | 「当該営業所の保有車両 ÷ 40 + 1(小数点以下切り捨て)」の計算式で求める |
道路交通法施行規則
貨物自動車運送事業者や旅客自動車運送事業者でなくても、安全運転管理者の設置が義務付けられている事業者は、運転日報を記録・保管しなければなりません。
参考:道路交通法施行規則の第九条の十|e-Gov
事業所ごとに以下のいずれかの要件に該当する場合は、安全運転管理者の選任が必要です。
- 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用している事業所
- そのほかの自動車を5台以上使用している事業所
安全運転管理の業務には、運転日報の備え付けと記録以外に、適切な車両運行計画の作成や安全運転指導、検知器によるアルコールチェックなども含まれています。
参考:安全運転管理者制度の概要|警察庁
運転日報に記載すべき内容
運転日報に記載すべき内容は、貨物自動車運送事業者と旅客自動車運送事業者、それ以外の社用車を保有する事業者によって異なります。
ここでは、運転日報の具体的な記載内容を紹介します。
貨物自動車運送事業者
貨物自動車運送事業者の場合、貨物自動車運送事業輸送安全規則の第八条で記載すべき内容が定められています。
- 運転者の氏名
- 自動車登録番号
- 車を使用した開始・経由・終了地点と合計距離
- 別の運転者と交替した場合は、その地点と日時
- 休憩や仮眠した場合は、その地点と日時
- 交通事故やトラブルが発生した際は、その概要と原因
- 運行指示書に規定されている経過地での発車・到着日時
そのほか、車両総重量が8トン以上、または最大積載量が5トン以上の車を使用する際は、貨物の積載状況や集貨地点などの情報も記載しなければなりません。
なお、以上のような内容は各運転者が記録するのではなく、運行記録計(タコグラフ)を活用する方法も認められています。
ただし、必須項目で運転記録計では取得できない情報については、運転者各自で記録する必要があります。
旅客自動車運送事業者
旅客自動車運送事業者の場合、旅客自動車運送事業運輸規則の第二十五条で記載すべき内容が定められています。
- 運転者の氏名
- 自動車登録番号
- 車を使用した開始・経由・終了地点と合計距離
- 別の運転者と交替した場合は、その地点と日時
- 休憩や仮眠した場合は、その地点と日時
- 企業側で定められた規定の休憩施設で睡眠した場合は、施設名とその位置
- 交通事故やトラブルが発生した際は、その概要と原因
- 乗車定員11人以上の事業用自動車に車掌が乗務した場合は、その車掌名
- その車掌が別の車掌と交替した場合は、交替時ごとの地点と日時
加えて、一般貸切旅客自動車運送事業者に該当する場合は、運転者ごとに旅客が乗車した区間を記録しなければなりません。
また、一般乗用旅客自動車運送事業者であれば、旅客の乗車区間に加え、車の走行距離計に表示されている業務開始から終了までの走行距離も記録する必要があります。
運行記録計に関する規定は、貨物自動車運送事業者のケースと変わりません。
上記以外の社用車を保有する事業者
貨物自動車運送事業者・旅客自動車運送事業者以外で、安全運転管理者の選任が必要な事業者の場合、道路交通法施行規則の第九条の十にて記載すべき内容が定められています。
- 運転者の氏名
- 運転の開始・終了日時
- 運転した距離
- 検知器を使用したアルコールチェックの記録
- そのほか、運転状況を把握するために必要な事項
また、運行記録計で内容を保存するのであれば、以下の事項を明確にする必要があります。
- 記録時の年月日
- 自動車登録番号
- 運転者の氏名
- 運転区間・区域
運転日報の適切な保存期間
作成した運転日報は一定期間の保存が義務付けられています。
貨物自動車運送事業者や旅客自動車運送事業者といった種別にかかわらず、1年間の保存が必須です。
運転日報の作成・管理方法
運転日報の作成・管理方法に関する明確なルールは定められていないため、紙ベース・電子データベースのいずれでも構いません。
そのため、日報作成に関しては、紙・電子データ・クラウドシステムなどの選択肢が挙げられます。
「導入コストを抑えたい」、あるいは「パソコンの操作に不慣れな従業員が多い」場合は、紙で作成・管理するのがおすすめです。
一方、「取り扱うデータ量が多く検索性が求められる」「保管スペースを削減したい」といった要望があるなら、電子データやクラウドシステムを検討すると良いでしょう。
社用車を正しく運用するには従業員への安全運転教育も重要
運転日報を作成すれば、社用車の利用状況が把握しやすくなるため、事故・危険運転の抑制や燃費向上に向けた施策の推進などにつながります。
それとともに、社用車での事故のリスクを和らげるには、より根本的な方策として安全運転に対する意識醸成が欠かせません。
JAFメディアワークスは、交通安全意識の向上に向けたeラーニング「JAF交通安全トレーニング」を提供しています。
企業ドライバーとしての心構えや、交通事故の削減に向けたノウハウなど、従業員が体系的な知識を習得できるため、安全運転に関するリテラシーの底上げにつながります。
また、管理者向けの機能として、学習履歴や学習進捗率などがわかるダッシュボードが搭載されているのも特徴です。
本格的な安全運転教育をおこないたい管理者の方は、ぜひ一度導入をご検討ください。
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まとめ:運転日報の正しい作成・管理方法を理解しよう
運転日報は事業者の種別によって記載方法が異なるほか、義務対象となる条件にも違いがあります。
ケースバイケースで対応に差が現れるからこそ、しっかりと基礎知識を押さえることが大切です。
日常的に運転日報を記録すれば、運転者の情報や運行状況が即座に把握できます。
結果として万一のトラブルにも対処しやすくなるため、社用車管理の最適化に寄与するのがメリットです。
本記事で紹介した運転日報のルールや作成方法を参考に、まずは対象範囲や要件を固めることから始めてみてください。
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