業務で自動車を利用する企業にとって、営業ナンバーは重要なものです。
特に運送業を営む企業において、営業ナンバーは必ず取得しなければなりません。
しかし、営業ナンバーには複数の種類があり、取得条件や取得方法も理解する必要があります。
本記事では営業ナンバーの取得条件や取得方法に加え、必要な書類などについても解説します。
営業ナンバーを取得する際の参考にしてください。
スマホやタブレットでの受講も可能
目次
営業ナンバーとは
営業ナンバーとは、事業用の自動車に取り付けられるナンバープレートであり、「事業用ナンバー」とも呼ばれます。
ナンバープレートは自動車に必ず取り付けなければならないものですが、用途によって種類が分かれます。
ナンバープレートの主な種類は以下のとおりです。
- 白ナンバー……自家用自動車(普通車)
- 黄色ナンバー……自家用自動車(軽自動車)
- 黒ナンバー……貨物軽自動車
- 緑ナンバー……事業用自動車
- 青ナンバー……外務省が統括する自動車
以上のうち、黒ナンバーと緑ナンバーが営業ナンバーに該当します。
営業ナンバーは、バスやトラックなど人や貨物を運ぶための事業用自動車を運用する際には必ず取得しなければなりません。
そのため、運送業を営む企業であれば、取得方法を把握する必要があります。
営業ナンバーの種類と取得条件
本章では営業ナンバーの種類と、それぞれの取得条件について解説します。
取得を目指すなら、事前に確認しましょう。
黒ナンバー
黒ナンバーは、貨物軽自動車運送事業に使われる自動車に取り付けられる営業ナンバーです。
黒ナンバーが取り付けられる自動車は、軽トラックや軽バンなどの軽貨物車です。
黒ナンバーの取得条件は、以下のように設定されています。
- 該当する車両が1台以上ある
- 営業所・休憩所・車庫を所有している
- 運送約款を定めている
- 運行管理などの管理体制を整えている
- 損害賠償能力を有している
後述する緑ナンバーの取得条件も同様ですが、営業ナンバーは該当する車両以外にも満たすべき条件がある点には注意しなければなりません。
営業所と併設して車庫を設置したり、損害賠償能力を確保するために保険に加入したりするなど、さまざまな準備が必要です。
なお、運送約款は国土交通省のWebサイトにテンプレートがあるため、そのまま流用できます。
緑ナンバー
緑ナンバーは、トラックやバスのような事業用自動車に取り付けられる営業ナンバーです。
以下のように、緑ナンバーの取得条件は黒ナンバーよりも複雑な点に注意しましょう。
- 5台以上の稼働している事業用自動車がある
- 経営者に運送業の許認可取り消し・懲役や禁固を受けた経験などがない
- 運行管理者・整備管理者が選任されている
- 事業所・休憩所・車庫(駐車場)を所有している
- 適切な運転免許を持ったドライバーがいる
- 事業に必要な資金を所有している
- 役員法令試験をパスした役員(個人事業主の場合は事業主)が在籍している
以上の条件を満たしていなければ、緑ナンバーの取得審査はパスできません。
営業ナンバーを取得するメリット
営業ナンバーの取得にはさまざまなメリットがあります。
ここでは、営業ナンバーが企業やビジネスにもたらすメリットについて解説します。
社会的な信用を得やすい
営業ナンバーの取得は、企業の社会的な信用を得る上で重要です。
営業ナンバーは運送業を開業する上で不可欠であり、新規事業として運送業を手がけるなら必ず取得しなければなりません。
営業ナンバーを取得するだけでも、正式な手続きを完了している企業として認識されるため、顧客からの信頼度が高まります。
営業活動の助けになる
営業ナンバーの取得は営業活動を拡大する際にも役立ちます。
営業ナンバーを取得すれば、新規事業として運送業の開業が可能です。
特に、緑ナンバーは運送業者を選ぶ目安となるものです。
公共機関や大手企業は緑ナンバーの有無で業者を選別するため、取引先を拡大する上でも欠かせません。
企業の成長を目指すなら、営業ナンバーの取得は役立ちます。
自動車税・重量税が安くなる
営業ナンバーの取得は、自動車税・重量税が安くなる点もメリットです。
緑ナンバー・黒ナンバーは、白ナンバーや黄色ナンバーより自動車税や重量税が低く設定されています。
運送用の自動車の台数が多いと、管理費や維持費が増大するため、企業にとって多大な負担になります。
しかし、営業ナンバーを取得すればコストの抑制が可能です。
黒ナンバーの取得方法
ここでは黒ナンバーの取得方法を解説します。
必要書類や提出先についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
1.必要書類を用意する
まずは、黒ナンバーを取得する上で必要な書類を用意しましょう。
必要書類は以下のとおりです。
- 対象となる車両の車検証(コピー可)
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書
- 事業用自動車等連絡書
- 貨物軽自動車運送事業運賃設定届出書
- 運賃料金表
以上のうち、貨物軽自動車運送事業経営届出書・事業用自動車等連絡書・貨物軽自動車運送事業運賃設定届出書は、国土交通省や運輸局のWebサイトからテンプレートをダウンロードできます。
運賃料金表も運輸局がテンプレートを配布している場合があるので、あらかじめ調べておきましょう。
2.必要書類を作成する
必要書類を用意したら、それぞれに必要事項を記入します。
基本的に、書類に記載されている項目に沿って記入すれば問題ありません。
ただし、運賃料金表は運賃割増率など、扱う荷物に応じて料金が変動する設定を導入することが基本です。
そのため、細かい計算をしなければなりません。
また、休日割増・深夜割増・早朝割増など、業務を行う時間帯によって料金が変動する設定にする場合も、細かい計算が必要です。
3.運輸支局・軽自動車検査協会に必要書類を提出する
必要書類の作成が完了したら、運輸支局や軽自動車検査協会に提出しましょう。
必要書類を運輸支局に提出すると、当日中に運輸局から押印された事業用自動車等連絡書を受領できます。
その後、事業用自動車等連絡書を軽自動車検査協会に提出しましょう。
この際、以下の書類が追加で必要になります。
- 申請依頼書
- ナンバープレート
- 車検証(原本)
- 履歴事項全部証明書(法人の場合)
- 住民票(個人事業主の場合)
4.黒ナンバーを受け取る
黒ナンバーの審査は時間がかかりません。
軽自動車検査協会で必要書類を提出すれば、当日中に黒ナンバーを受け取れます。
緑ナンバーの取得方法
緑ナンバーの取得方法は以下のとおりです。
黒ナンバーの必要書類やプロセスとは異なるため、注意しましょう。
以下は、一般貨物自動車運送事業をおこなうための申請は完了し、これから緑ナンバー取得をする場合の必要書類になります。
1.必要書類を用意する
緑ナンバーの主な必要書類は以下のとおりです。
<1.輸送課窓口>
- 事業用自動車等連絡書
- 車検証(コピー可)
- 手数料納付書
<2.登録窓口>
- 事業用自動車等連絡書
- 車検証原本
- 譲渡証明書
- 委任状(委任する場合)
- 手数料納付書
- OCRシート
<その他、必要になる可能性がある書類>
- 賃貸貸借契約書
- 残高証明書
- 登記簿謄本
- 会社定款(コピー可)
- 決算書(コピー可)
- 役員全員の履歴書
- 営業所・車庫の平面図、あるいは配置図
- 運行管理者の履歴書と合格証(コピー可)
- 整備管理者の履歴書と資格者手帳(コピー可)
- 営業所・休憩所・車庫の写真
- ドライバーの免許証(コピー可)
- 社会保険に加入している証拠書類
- 譲渡証明書(車両の所有者と運送業許可申請者が違う場合)
- 委任状(車両の所有者と運送業許可申請者が違う場合)
緑ナンバーは、黒ナンバーより提出する書類が多い点には注意しましょう。
なお、新車登録や名義変更など、ケースにより必要になる書類が異なるため注意してください。
2.運輸局へ提出する
書類を作成したら運輸局、あるいは地方運輸支局の窓口に提出しましょう。
書類に不備がなければ、そのまま審査が開始されます。
3.役員法令試験を受ける
書類の提出と並行して、役員法令試験も受けましょう。
役員法令試験は2カ月に1回の頻度で実施されます。
営業ナンバーを取得するには、最低でも常勤役員1名が法令試験に合格する必要があります。
4.審査を受ける
運輸局の審査は、結果がわかるまで時間がかかる点に注意しなければなりません。
審査は約3~5カ月かかります。
5.登録免許税を支払う
無事に審査を通過したら、運送業の許可を得られますが、その際に登録免許税を支払わなければなりません。
営業ナンバーを取得する場合、登録免許税は12万円です。
速やかに運輸局へ入金しましょう。
6.追加の必要書類を提出する
登録免許税を支払ったら、緑ナンバーが発行されます。
さらに選任届や運輸開始届出書など追加の書類を提出すれば、すべての手続きが完了します。
営業ナンバーを取得する際のポイント
営業ナンバーをスムーズに取得するなら、いくつかのポイントに留意しなければなりません。
ここでは営業ナンバーを取得する上で意識すべきポイントについて解説します。
半年~1年前から準備する
営業ナンバーの取得には一定以上の時間がかかります。
特に緑ナンバーは審査の期間が長く、事前準備も含めれば取得まで1年近くかかることも珍しくありません。
万全の体制で取得するためにも、半年〜1年程度前から準備を進めましょう。
保険選びに注意する
営業ナンバーの取得において、保険選びは重要です。
賠償責任能力を確保する上でも、黒ナンバー・緑ナンバーに関わらず任意保険の加入は必須です。
加入する際は事業者向けの補償がある保険を選びましょう。
なお、事業者向けの保険や特約は一般向けより保険料が高い傾向があります。
保険料が高額過ぎると継続が負担になるため、適度な金額のものを選びましょう。
必要があれば行政書士に依頼する
営業ナンバーを取得するには、さまざまな書類を作成を作成しなければなりません。
Web上でテンプレートはダウンロードできるものの、初めて取得する際は書き方がわからず苦戦することも想定されます。
書類作成に自信がない場合は、行政書士に依頼しましょう。
行政書士なら書類作成を代行してくれるので、スムーズに手続きを進められます。
まとめ:営業ナンバーの取得は余裕を持って計画を立てよう
営業ナンバーは黒ナンバーと緑ナンバーがあり、いずれも運送業を営む上で不可欠なものです。
しかし、営業ナンバーを取得する際は、手続きの流れはもちろん、取得の条件や必要書類など、把握しておくべき事柄が多くあります。
スムーズに営業ナンバーを取得する上でも、あらかじめ必要な情報は調べておきましょう。
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