厚生労働省が発表している、交通労働災害防止のためのガイドラインにもあるように、会社には従業員が交通事故を起こさないための対策が求められています。
しかし、「交通事故に気をつけて」と言うだけでは不十分です。
具体的に事故を起こさないようにするための対策を取らなければなりません。
本記事では、会社が自動車事故を起こさないための対策をすべき理由と、具体的な対策をご紹介します。
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目次
会社が事故を起こさないための対策をすべき理由
そもそも「なぜ会社が事故を起こさないための対策をしなければいけない」のか、明確に理解できていない方もいるかも知れません。
従業員が交通事故を起こすと、人命を脅かすだけでなく会社にもリスクがあります。
まずは、会社が事故を起こさないための対策をすべき理由をご紹介します。
従業員の安全確保
最初の理由は従業員の安全のためです。
自動車の運転には交通事故のリスクがあり、ひとたび事故になればドライバーも接触した相手も命を落とす可能性があります。
実際に政府が発表している『道路の交通に関する統計』では2023年に2,678名の方が交通事故で命を落としています。
従業員や周囲の人の安全を守るためにも、事故を起こさないための対策が重要です。
※出典:道路の交通に関する統計.交通事故死者数について│政府統計の総合窓口(e-Stat)
法的リスクの回避
従業員が交通事故を起こすと、会社は以下2つの責任を問われる可能性があります。
- 使用者責任
- 運行供用者責任
使用者責任とは、従業員が第三者に加えた損害を賠償する責任のことです。
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
引用:民法第七百十五条
また、運行供用者責任では、自動車を管理し運行によって利益を得ている者は、運行による交通事故の損害を賠償する責任があります。
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。
引用:自動車損害賠償保障法第三条
以上のように、従業員が交通事故を起こすと、会社も責任を負わなければなりません。
リスクを回避するためにも、交通事故を起こさないための対策が必要です。
経済的損失の防止
交通事故を起こさないための対策は、経済的損失を防ぐことができます。
なぜなら従業員が交通事故を起こすと、以下のような損失があるからです。
- 損害賠償
- 自動車保険の保険料が増額
- 事故対応に時間を奪われる
- 従業員の怪我により業務に支障をきたす
- 会社の信頼低下
損害賠償などの直接的な損失もあれば、信頼低下などの間接的な損失もあります。
損失を出さないためにも、交通事故を未然に防ぐことは重要です。
交通事故が起こる原因
交通事故が起こる原因をご紹介します。
原因を知ることで、より具体的な対策ができます。
安全運転の意識不足
ドライバーの安全運転意識が低いことも、交通事故が起こる要因の一つです。
令和5年の法令違反別死亡事故件数ワースト5は以下のとおりです。
- 漫然運転
- 安全不確認
- 運転操作不適
- 脇見運転
- 歩行者妨害等
ご覧のとおり、危険運転や無謀運転だけが事故の原因ではありません。
少しの不注意で、誰でも交通事故を起こす可能性があります。
日頃から安全運転を心がけることが、交通事故を減らすには重要です。
※出典:道路の交通に関する統計ー3-2-1原付以上運転者(第1当事者)の法令違反別死亡事故件数の推移
道路、周辺環境の影響
道路や周辺環境の影響により、交通事故のリスクが高まります。
具体的には以下のような状況です。
- 雨や霧など視界不良
- 路面の凍結
- 暗闇、強風など
道路や周辺環境によって、普段よりスピードを落とすなどの対応が必要です。
自動車の整備不良
自動車の整備不良も交通事故を引き起こします。
例えば、以下のような状況での運転を想像してみてください。
- ブレーキの故障
- タイヤのパンク
- エンジンの故障
- ミラーの調整不良
危険なことが容易に想像できるはずです。
交通事故を起こさないためには、自動車を日頃から整備しておかなければいけません。
会社が実施すべき事故を起こさないための対策
従業員が交通事故を起こさないために、会社が実施すべき具体的な対策をご紹介します。
交通安全教育の実施
ひとつめの対策は、交通安全教育の実施です。
先ほど解説したとおり、安全運転意識の低さは交通事故の原因になります。
交通安全教育の実施によって従業員の安全運転意識が向上したら、交通事故の削減にもつながります。
交通安全教育には、『JAF交通安全トレーニング』をご活用ください。
『JAF交通安全トレーニング』では、JAFが長年培った交通安全の知見とノウハウをeラーニング形式で学ぶことができます。
スマホやタブレットで都合良いときに受講できるため、外部の講習を受けに行くような手間がかかりません。
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安全運転管理者の選任
安全運転管理者とは、安全運転の責任を負う指導者・管理者のことで、一定台数以上の自動車を使用する会社に選任の義務があります。
以下に当てはまる会社は、安全運転管理者の選任をしなければいけません。
- 乗車定員が11人以上の自動車を1台以上利用
- その他の自動車を5台以上利用
要件を満たしているのに選任をしなければ、罰則もあるので気をつけましょう。
また、安全運転管理者の具体的な業務内容は『道路交通法施行規則』で定められている以下です。
- 運行者の状況把握
- 安全運転のための運行計画の作成
- 長距離、夜間運転時の交代要員の配置
- 異常気象時等の安全確保の措置
- 運転者の酒気帯び有無の確認
- 酒気帯び確認の記録と保存
- 運行日誌の備え付けと記録
- 運転者に対する安全運転指導
くわえて『安全運転管理者等法定講習』の受講も義務付けられています。
安全運転管理者を選任し、従業員の交通事故対策に努めましょう。
安全運転管理者制度の詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。
交通ヒヤリハット事例の共有
交通ヒヤリハット事例を社内で共有すれば、交通事故を防ぐのに有効です。
交通ヒヤリハットとは、交通事故には至らなかったものの、事故になりうる可能性があった場面を指します。
例えば以下などです。
- 前の車に続いて走行していたが、さらに前方で渋滞が発生しており、追突しそうになった。
- 交差点を右折する際、死角から自転車が現れ、慌てて急ブレーキをかけた。
- 住宅街を走行中、路肩に止まっていた自動車の陰から子どもが急に飛び出してきたため、急ブレーキをかけた。
事例を社内で共有すれば、ほかの従業員も気をつけられます。
具体的なヒヤリハットの事例や対策は、こちらの記事をご覧ください。
基本的な事故を起こさないための心構え
最後に普段から意識しておきたい、基本的な交通事故を起こさないための心構えをご紹介します。
安全速度を守る
交通事故を起こさないためには、安全速度を守ることが大切です。
警視庁の調べによると、規制速度を超過した交通事故の死亡事故率は、超過しない死亡事故率の9.2倍です。
また安全速度とは、道路状況に合わせて安全に走行できる速度のことで、法定速度とは違うので注意しましょう。
例えば以下が安全速度での走行です。
- 雨が降っているので速度を落とす
- 横断歩道を走行するときは、速度を落とす
- 住宅街を走行中、信号のない交差点に差し掛かるので速度を落とす
安全速度を守ることが、身を守ることにつながります。
車間距離を保つ
十分な車間距離を保つことで、交通事故を防げます。
なぜなら車間距離が不足すると追突事故の原因になるからです。
道路交通法第二十六条にも以下のように記載されています。
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
引用:道路交通法第二十六条
具体的には前方の自動車と3秒以上の車間距離が適切とされています。
3秒間で進む距離は以下です。
速度 | 3秒間に進む距離 (安全な車間距離) |
---|---|
40km/h | 33.33m |
50km/h | 41.67m |
60kn/h | 50.01m |
速度が速くなるほど安全な車間距離も長くなるため、十分な車間距離を確保して運転するようにしましょう。
脇見運転をしない
脇見運転をしないことも大事です。
先ほど解説したとおり、令和5年の脇見運転での死亡事故件数はワースト4位です。
運転中は以下のことは避けましょう。
- スマートフォンの利用
- カーナビの操作
- 飲食
「一瞬視線を外すだけ」と思っていても、1秒間に自動車は思っている以上に進みます。
速度 | 1秒間に進む距離 |
---|---|
40km/h | 11.11m |
50km/h | 13.89m |
60kn/h | 16.67m |
例えば、この間に通行人が飛び出して来たら、気が付かずに接触してしまうでしょう。
少しの脇見が命取りです。
運転時は運転だけに集中するようにしましょう。
かもしれない運転の醸成
日々の運転では、視覚に認知した事象への対処だけでは安全運転はできません。
- 歩行者が飛び出してくるかもしれない
- 死角から自転車が現れるかもしれない
など、認知できていないが起こりうる危険を予測し、それに備える行動が大切です。
危険予知トレーニングなどで危険感受性を高め、行動に移すことが求められます。
まとめ:事故を起こさないための対策をしてリスクを回避しよう
本記事では交通事故を起こさないための対策を、会社が実施すべき理由とともに解説しました。
従業員が交通事故を起こすと、命の危険があるだけでなく、会社にも法的リスクや経済的損失があります。
従業員に交通事故を起こさせないためには、具体的な対策が必須です。
なかでも交通安全意識の向上が、交通事故を未然に防ぐのに重要です。
従業員の交通安全教育には、危険感受性を高め行動変容を促す『JAF交通安全トレーニング』を活用して安全を守り、会社のリスクを回避しましょう。
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