職場でできる交通事故防止対策とは?取り組みの具体例をまとめて紹介

交通労働災害の中でも、多くの死亡事故が発生しているのが自動車の運転業務です。

企業は交通事故のリスクに備えて、交通事故防止への取り組みを強化することが重要といえます。

しかし「交通事故防止への取り組みに向けて職場で何ができるのか」と課題を抱えている企業も少なくありません。

本記事では、職場でできる交通事故防止対策をまとめました。

業務中の交通事故は、従業員のみならず人命を脅かすものであり、企業にも法的および社会的な責任を問われる可能性があります。

事業所の代表者や安全運転管理者は、ぜひ参考にしてください。

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職場で起きた交通事故の件数

職場で発生する労働災害にはさまざまなものがあります。

厚生労働省は、令和5年1月1日から令和5年12月31日までに発生した労働災害の集計を発表しました。

労働者の死亡災害の中でも交通労働災害(交通事故・道路)は、墜落・転落に次いで2番目に多く全体の約2割ほどです。

また、交通労働災害は、運輸交通業や道路貨物運送業などの、いわゆる「職業ドライバー」だけでなく、製造業や建設業などその他の業種でも業務中の交通事故は発生しています。

そのため、業種を問わず、従業員への安全運転教育が重要といえます。

交通事故が起きやすい理由

職場で交通安全を推進するためには、交通事故が起きやすい理由を把握するのが大切です。

交通事故が起きやすい理由を紹介します。

ドライバーの不注意

警察庁交通局交通企画課の交通事故統計月報によると、令和6年の交通死亡事故の原因としてもっとも多いのが安全運転義務違反で、全体の約半分である99件でした。

この中で顕著なのが、ドライバーの不注意によって起きる事故です。

安全運転義務違反に該当する具体的な運転行動は、下記のとおりです。

  • 死角にいた歩行者や他車両の存在を見落としてしまう安全不確認
  • 漫然運転や脇見運転などの前方不注意
  • 周囲の人や車の存在に気付きながらも注視を怠る動静不注視

漫然運転や脇見運転、安全不確認などの運転行動は、ベテランドライバーでも起こり得ます。

運転技能や経験値では問題がないベテランドライバーでも、自分の運転が交通ルールに即しているか、安全確認が十分にできているかを振り返る機会が大切です。

運転技能の未熟さ

交通事故の原因の一つに、ドライバーの未熟な運転が挙げられます。

運転技能が未熟なドライバーは、不注意や確認不足から、ブレーキやハンドル操作などの対応が遅れがちです。

その結果、後続車との追突や車線変更時の接触などが発生しやすくなります。

若年層や運転初心者などの不慣れな運転者は、経験からくる予測が十分ではない場合があるため、安全運転に必要な判断力や減速などの適切な操作が遅れる可能性も否めません。

また、交通ルールや交通状況に対する理解が浅いため、道路上での予期せぬ出来事に対応できず、事故を引き起こすリスクが高まります。

事故リスクが高い場所

交通事故が発生しやすい場所には特徴があります。

交差点では右折・左折や車線変更、合流などの様々な通行者が存在するため、事故が発生する確率が高い傾向です。

その他見通しが悪く死角が多い場所や、直線道路の高速走行が要因となる事故は起こり得ます。

そのため、事故リスクが高い場所では、より慎重に運転しなければなりません。

職場では、ドライバーに対して交通安全を促す取り組みが必須です。

交通事故が頻発する時間帯

警視庁の調査により、17時台〜19時台の日没前後である「薄暮」の時間帯は、自動車と歩行者が衝突する事故が多いことが明らかになりました。

薄暮の時間帯は周囲が見えにくくなり、ほかの車や歩行者を見つけるのが難しくなるためです。

また、周囲からも自分の車が認識されにくくなります。

交通事故防止に向けて早めにライトを点灯し、自車の存在を周囲に知らせるなどの取り組みが欠かせません。

その他にも、朝の通勤時間帯は多くの車が道路を利用するため、混雑や運転の焦りから交通事故が発生しやすくなります。

職場で交通事故が発生した場合の企業へのリスク

従業員が交通事故を起こすと、人命を脅かすだけでなく、企業にはさまざまな損失が生じます。

まず、事故当日の従業員の業務に影響が及ぶ可能性があります。

事故処理や関連手続きに時間が割かれることで、業務の遅延や停滞が発生するリスクは避けられません。

交通事故を起こしたドライバー本人は、下記のような責任を負います。

  • 損害賠償による民事上の責任
  • 罰金や懲役など刑事上の責任
  • 免許停止や取り消しなど行政上の責任

業務中に起きた交通事故であれば、企業が事故の責任を問われ「使用者責任」と「運行供用者責任」を負うことになります。

つまり、交通事故を起こした従業員のみならず、企業も交通事故の被害者に対して賠償責任を負わなければなりません。

また、金銭面の負担だけでなく、社会的信用も損なわれる可能性もあります。

企業は常にリスク管理に努め、対策を講じることが必須です。

安全運転教育の充実によって、交通事故のリスクを最小限に抑えることが重要といえます。

職場でできる交通事故防止対策とは

従業員の安全を守り、経営や財務上の企業リスクを避けるためにも、交通事故を防止する取り組みは必須です。

職場でできる交通事故防止対策を紹介します。

安全運転へのモラル形成

職場における交通事故防止の取り組みは、ドライバーに対して法令遵守と安全意識の重要性を徹底することが不可欠です。

どれほどドライバーの運転技術が高くても、安全を重視しなければ事故リスクが高まります。

ドライバーには、交通法規の遵守と安全運転に対する真摯な姿勢が欠かせません。

自家用車・社用車を問わず車通勤をおこなっている企業にとって、運転モラルの向上は事故リスク回避に必須です。

定期的な安全教育やトレーニングを通じて、交通安全意識を高めることが重要といえます。

危険予測トレーニング

運転における危険予知トレーニングも、職場でできる交通事故防止対策に効果的です。

危険予知トレーニングとは、実際の運転シーンから、最も注意すべき危険なポイントを探すトレーニングです。

運転中の危険要因を早期に発見し、交通事故を回避する認知力や判断力と危険を予測する習慣を身につけられます。

例えば、視覚による認知だけでなく、見えていない死角に潜む危険を予測することで安全な判断ができるようになります。

また、運転にかかわる、認知、予測、判断、操作の一連の行動には、心身の健康状態を整えることも大切です。

ドライバーの健康管理や適切な休息、睡眠時間の確保も含め、さまざまな取り組みを通じて、交通事故の予防に努めましょう。

実車指導

交通事故防止の取り組みとして、実車指導をおこないましょう。

社外での実車指導は、自動車教習所などが企業向けの研修を提供しています。

一方で社内の実車指導では、上司や安全運転管理者が添乗指導をおこなうことが一般的です。

外部講習を受けて運転指導員に認定された従業員が指導を担当する場合もあります。

実車指導の目的は、ドライバーが気付きにくい運転傾向を洗い出し、安全運転を徹底させることです。

車間距離が狭いなどの運転に関する問題点を指摘し、実践的な指導を通じて改善を促しましょう。

適切なフィードバックは、職場での交通事故リスクを減らし、安全な運転環境を整えることに役立ちます。

ヒヤリハットの共有

ヒヤリハットの共有は、職場での安全意識を高める重要な取り組みです。

ヒヤリハットとは、運転中にヒヤリとする出来事の中でも、幸いにも事故に至らなかった出来事を指します。

ハインリッヒの法則をご存じでしょうか。

1件の大規模な事故の背景には、29件の小規模な事故と300件のヒヤリハットが存在するという考え方です。

厚生労働省もヒヤリハットを安全管理の知識として紹介しており、職場全体の安全意識向上に役立ちます。

ドライブレコーダーなどで撮影した事故やヒヤリハットの映像を社内で共有することで、当事者意識が強くなり、安全運転への意識が高まります。

社内の定例会議や朝礼で事故やヒヤリハット事例を共有するのもおすすめです。

さらに、交通事故への注意喚起をおこなうだけでなく、当日の天気や道路状況を伝えれば、事故リスクの低減につながります。

また、従業員同士で危険情報を共有し、業務の運転ルートやエリアマップに記入した「交通ヒヤリマップ」の作成も効果的です。

管理者においても、運転前の注意喚起や指導に活用できます。

ドライブレコーダーの設置

職場での交通事故防止対策において、ドライブレコーダーの設置は効果的な方法です。

ドライブレコーダーは事故に関するリアルな場面を客観的に記録するため、運転行動の分析やフィードバックにもおすすめです。

運転データを基に、個々のドライバーに適切なアドバイスや指導をおこなうことで、安全運転意識の向上や事故発生率の低減につながります。

また、社用車を使用する従業員にとっては、記録されている意識が働くことで、危険運転を抑止する効果も期待できます。

継続的な安全運転教育の実施

継続的な安全運転教育の実施は、職場での交通事故防止対策の重要な要素です。

例えば、定期的な安全運転教育プログラムの実施が挙げられます。

従業員に対して交通法規や安全運転の重要性を定期的に啓発し、安全意識を持続させる働きかけができます。

新入社員向けの基礎的な安全運転教育や事故を起こした従業員へのトレーニング、安全運転管理者向けのリーダーシップトレーニングなども効果的です。

企業の状況や要望に応じて、柔軟かつ効果的なプログラムを検討しましょう。

社内で安全運転教育を実施するなら、「JAF交通安全トレーニング」がおすすめです。

JAF交通安全トレーニングは、企業・団体向けにJAFが長年培った交通安全ノウハウを配信しています。

短時間で学べるコンテンツが豊富で、従業員の交通安全の意識を高めるのに効果的です。

スマホやタブレットでの受講も可能

まとめ:職場で交通事故防止対策を実施し交通安全に対する意識を向上させよう

従業員の交通事故や違反を未然に防ぐためには、継続的な安全教育や取り組みが欠かせません。

具体的には、安全運転に関するモラルの形成や危険予測トレーニング、ドライブレコーダーの設置などの交通事故防止対策がおすすめです。

継続的に取り組むことで、従業員の意識向上や安全運転の推進が図られます。

業務中の事故は被害者の賠償責任だけでなく、企業の評判や信頼性にも影響を与えるかもしれません。

会社の経営を守る上でも、職場での交通事故防止対策は、積極的に取り組みましょう。

スマホやタブレットでの受講も可能

JAF交通安全トレーニング

毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。