2023年12月1日から、道路交通法が改正され、検知器を用いたアルコールチェックが義務化されました。
この法改正に伴い、安全運転管理者の罰則も強化されました。
裏を返せば「交通安全の推進において、安全運転管理者の重要性が高まった」といえます。
本記事では、安全運転管理者の罰則と法令遵守のポイントについて解説します。
法改正に伴い、安全運転管理者の業務や社内ルールの見直しをお考えの場合は、ぜひ参考にしてください。
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目次
安全運転管理者制度とは
安全運転管理者制度とは、一定台数以上の自動車を使用する事業者などに対し、自動車の安全な運転に必要な業務をおこなうものとして、安全運転管理者の選任を義務付ける制度です。
企業が保有する車両や運転者を適切に管理することで事故発生を防止し、交通安全を確保するために設けられました。
以下の条件に該当する事業者は、安全運転管理者の選任が必要です。
- 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用している
- その他の自動車を5台以上使用している(自動二輪車は1台を0.5台として計算)
一定台数以上になると、安全運転管理者の業務を補助する副安全管理責任者も選任しなければなりません。
また、誰でもなれるわけではなく、内閣府令で定められた選任要件を満たしている必要があります。
さらに、選任要件に該当する事業所が複数ある場合、事業所ごとに安全運転管理者を選任しなければなりません。
このように、安全運転管理者の選任に関しては、さまざまな決まりがあります。
以下の記事で安全運転管理者の選任基準や業務内容について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
安全運転管理者の罰則
安全運転管理者には、違反行為に対する罰則が設けられています。
2022年10月の道路交通法改正によって、罰則の追加と罰金の引き上げが実施されました。
選任義務違反
1つ目の罰則は、選任義務違反です。
選任義務の対象であるにも関わらず安全運転管理者を選任していない場合、企業や事業所は行政機関などから警告、是正措置、罰則などの措置を受ける可能性があります。
罰則は、50万円以下の罰金です。
以前は最大5万円以下の罰金でしたが、2022年10月の法改正によって大きく引き上げられました。
参考:道路交通法第七十四条の三、道路交通法第百十九条の二|e-GOV法令検索
解任命令違反
2つ目の罰則は、解任命令違反です。
安全運転管理者が業務を適切に遂行できないと判断された場合や法令違反などの不適切な管理が明らかになった場合、行政機関から安全運転管理者の解任命令が発令されます。
その解任命令に従わずに選任の状態を続けたり、同一人物を再任したりすると、50万円以下の罰金が科されます。
選任義務違反と同様に、解任命令に違反した場合の罰金も、2022年10月の法改正によって5万円以下から50万円以下に引き上げられました。
参考:道路交通法第七十四条の三 第六項、道路交通法第百十九条の二|e-GOV法令検索
是正措置命令違反
3つ目の罰則は、2022年10月の法改正で新しく追加された罰則で、是正措置命令違反です。
規定を遵守せず安全運転が確保されていないと判断された場合、公安委員会から事業者などの自動車の使用者に対して是正措置命令が発令されます。
是正措置命令が発令されたら、自動車の使用者は是正措置命令に含まれる改善要求や対応策を適切に実施しなければなりません。
この是正措置命令に従わなかった場合、50万円以下の罰金が科せられます。
参考:道路交通法第七十四条の三 第七項、道路交通法第七十四条の三 第八項、道路交通法第百十九条の二|e-GOV法令検索
選任解任届出義務違反
4つ目の罰則は、選任解任届出義務違反です。
安全運転管理者や副安全運転管理者の選任・解任をおこなった際は、15日以内に管轄の公安委員会に届出なければなりません。
この届出を怠った場合、選任解任義務違反と見なされます。
罰則は、5万円以下の罰金です。
以前は2万円以下の罰金でしたが、2022年10月の法改正によって引き上げられました。
参考:道路交通法第七十四条三 第五項、道路交通法第百二十条の二 第三項|e-Gov法令検索
安全運転管理者の罰則が強化された背景
安全運転管理者の罰則が強化された背景には、千葉県八街市で発生した交通事故があります。
2021年6月に、下校中の児童の列に飲酒運転のトラックが突っ込み、5人が死傷する事故が発生しました。
このドライバーは日頃から業務中の飲酒を繰り返しており、上司の注意にも耳を傾けていなかったことが、事故後の調べでわかっています。
さらに、このドライバーの雇用主である事業者は、安全運転管理者を選任していませんでした。
飲酒運転による交通事故がなくならない中でこの痛ましい事故が発生したことにより、安全運転管理者の重要性が見直され、罰則が強化されました。
また、検知器を用いたアルコールチェックも義務化されています。
安全運転管理者を選任した際の届出方法
安全運転管理者を選任した際は、15日以内に管轄の公安委員会に届出なければなりません。
期限を守らなければ、選任解任届出義務違反となってしまいます。
忘れずに提出するようにしましょう。
届出方法
安全運転管理者を選任した際、書類の提出方法は以下の3つです。
- 管轄の警察署の交通課窓口に持って行く
- 管轄の警察署の交通課に郵送する ※一部の都道府県では対応していません
- オンラインで申請する
現在は利便性向上を目的に、以下のWebサイトからオンラインで提出することが可能です。
リンク:警察行政手続きサイト
必要書類
安全運転管理者の届出に必要な書類は以下のとおりです。
- 届出書(安全運転管理者の選任の届出に対応するもの)
- 運転記録証明書
- その他必要な書類(都道府県警察の手続きサイトにてご確認ください)
選任届出書は警察署のホームページで広報しているケースが多いので、事業所がある都道府県の警察署ホームページを確認してみましょう。
運転記録証明書は自動車安全運転センターで発行できますが、交付手数料として670円が必要です。
また、都道府県によってはこれらの書類のほかに、住民票または運転免許証の写し、履歴書が必要な場合もあります。
どのような書類が必要か、必ず申請前に確認しておいてください。
安全運転管理者の変更・解任について
次に、安全運転管理者を変更・解任した際のルールを紹介します。
これらのルールも法令遵守に関わる、大切なものです。
変更・解任に関する届出
安全運転管理者を変更・解任した場合も、15日以内に管轄の公安委員会に届出なければなりません。
以下のケースでは特に注意しておきましょう。
- 変更:人事異動や前任者が退職した場合
- 解任:自動車の台数が減って安全運転管理者の選任義務の対象から外れた場合
事業者に関する情報の変更
以下のような事業者情報が変わった場合も、変更届を提出しなければなりません。
- 事業者の名称
- 事業者の住所
- 自動車台数
- ドライバーの人数
変更届の提出先は管轄の警察署の交通課、またはオンラインです。
現在の警察署とは異なる管轄に移転する場合は、移転先の管轄警察署に提出しましょう。
なお、変更届は警視庁のホームページからダウンロードできます。
リンク:安全運転管理者|警視庁
安全運転管理者講習の受講について
安全運転管理者や副安全運転管理者は、年に1回、法定講習を受講しなければなりません。
講習では安全運転に必要な知識や法令に関する知識などを学びます。
受講しなかった場合の罰則はありませんが、講習内容には最新の法改正や交通事故事情などが含まれるため、情報のアップデートができず、結果として罰則や処分の対象となる可能性があります。
安全運転管理者講習の日程は各都道府県の警察署などで公開されているので、必ず確認してください。
安全運転管理者が業務を怠ることによるリスク
安全運転管理者が業務を怠ると、自社だけでなく、地域社会にもリスクがおよびます。
また、CSR(企業の社会的責任)を果たしていないとみなされ、信頼低下を招く恐れがあります。
確実に業務を遂行し、交通安全を守れるようにしましょう。
飲酒運転の見逃しによる交通事故の発生
特に大きなリスクは、飲酒運転の見逃しによる交通事故の発生です。
安全運転管理者が業務を怠ると、防げるはずの飲酒運転を見逃してしまい、取り返しのつかない大事故につながるリスクがあります。
例えば、前日に飲酒した社員の体内にお酒が残っている場合を考えてみましょう。
安全運転管理者の業務である「検知器を用いたアルコールチェック」を怠ってしまうと、お酒が残ったまま運転業務にあたり、悲惨な事故につながるリスクがあります。
このようなリスクを常に頭に置き、日々の業務を確実に遂行しましょう。
法令違反
安全運転管理者は、社員に法令遵守を促す立場にあります。
しかし、業務を怠ると違反行為を見逃してしまう可能性があり、企業や事業所が法的な罰則を受けるリスクがあります。
自社の信頼の低下
安全運転管理者が業務を怠ったことが原因で交通事故が発生すると、企業や事業所としての責任が問われます。
その結果、お客様や取引先から「信頼できない会社」と見なされてしまうこともあるでしょう。
1度信頼を失うと回復するのは難しく、企業の存続にも大きな影響を与えてしまいます。
安全運転指導
安全運転管理者の業務の1つに「運転者に対する安全運転指導」があります。
しかし、専門家ではない安全運転管理者にとっては難しい業務かもしれません。
どのように安全運転教育をおこなえばいいかわからない場合は「JAF交通安全トレーニング」をご検討ください。
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まとめ:安全運転管理者には4つの罰則がある
安全運転管理者には、4つの罰則が設けられています。
これらは2022年10月の道路交通法改正に伴って強化されました。
「飲酒運転の根絶に向けて、安全運転管理者の重要性が見直された」といっても過言ではないでしょう。
ただし、忘れてはならないのは、安全運転管理者を選任して業務を確実に遂行する必要がある理由は「罰則を受けないため」ではなく「交通安全で会社や従業員はもちろん、地域社会も守るため」です。
安全運転管理者の役割や法令を確認して運用方法や社内ルールを見直し、より一層の安全運転推進に励みましょう。
なお、JAFメディアワークスでは、安全運転管理者の仕事内容や選任方法についてまとめた資料「安全運転管理者の解説本」を提供しています。
安全運転管理者について理解できる内容となっているので、ダウンロードして、日々の安全運転にご活用ください。
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