厳罰化されたスマホ運転の罰則とは?即免停、懲役刑もありえる運転中のながらスマホを徹底解説

「スマホ運転」とは、スマートフォンを運転中に利用することを指します。

運転に集中しなければならない状況にもかかわらず、突然かかってくる電話への対応、目的地までのナビアプリ操作、急ぎのメールやチャット確認、移動中にかけている音楽アプリの曲送り、などスマホをちょっと操作したい時、ありますよね。

しかし、一瞬だけ…と、操作に気を取られた結果、安全確認などが疎かになり、重大な交通事故を引き起こす可能性があります。

本記事では、厳罰化されたスマホ運転の罰則について詳しく解説していきます。

自身が違反者にならないために、ぜひ参考にしてみてください。

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現代社会で活用されるスマホ

スマホは、現代社会を生きる人にとって、なくてはならない存在と言えるでしょう。

今や、公私を問わず、ビジネスからプライベートまで実生活から切り離しずらいアイテムとなっています。

特にビジネスツールとしては、この10年で目まぐるしい進化を遂げた結果、広く業務用として活用されるまでになりました。

スマホ運転は仕事中にも起こり得るか

たとえば物流の世界では、顧客管理やルートナビ、発注や納品確認用などを行うためのITツールとしても、スマホが最大限活用されています。

豊富に成長したビジネス向けアプリケーションによって、単純な業務を行うのであれば、もはやパソコン不要となるケースも見受けられ、スマホ1台あれば一通りこなせてしまう時代になりました。

そういった背景もあり、「スマホ運転」は業務上でも、従業員が起こしやすい違反行為のひとつであると言えるでしょう。

特に違反した際の重い罰則については、懲役や一発免停の可能性もあり、社用車や営業車などを運転する人だけでなく、その周りでサポートする人にとっても、深く理解しておきたい知識です。

運転中のスマートフォン操作・注視は重大な違反行為に

スマホ運転とは、スマートフォン(スマホ)を運転中に利用することを指します。

いわゆる「ながら運転」の一種で、これに起因する重大な交通事故が特に相次いで発生している状況から、警視庁は、令和元年(2019年)12月1日より道路交通法を改正し、スマホ運転への罰則を強化しました。

スマホの普及率

近年、爆発的に利用者が増えたスマートフォン。

日本国内では携帯電話利用者のうち、96.3%(※)もの人がスマホを利用しています。

老若男女問わず、スマホ化の波が押し寄せており、会社員であれば、業務用のビジネスツールとして支給される会社も多くなりました。

参照:スマートフォン比率96.3%に:2010年は約4% ここ10年で急速に普及|モバイル社会研究所

道路交通法改正「ながらスマホ」厳罰化の背景

そんな中、スマホ運転、いわゆる「ながら運転」が社会問題化しました。

2016年、GPS連動型スマートフォンゲームをしながら走行していたトラックに、小学生が轢かれ死亡した悲惨な交通事故のニュースはまだ記憶に新しいところです。

社会問題となった背景には、スマホ運転に起因する交通事故発生率の増加が関係しています。

死亡・重傷事故の推移に注目

道路交通法が改正前から改正後にかけての、携帯電話等使用による交通事故発生状況を見てみましょう。

出典:やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用 |警察庁

2024年に発表されたデータによると、ながらスマホなどを起因とした年間122件もの死亡・重傷事故が起きています。この数字は、第1当事者、つまり事故過失が大きい方が自動車だった場合の統計データです。

改正が行われたのが令和元年12月ですから、令和元年はまだ改正前の数字です。その年の発生件数が105件と全死亡事故のうち1.15%とスマホの普及によって上昇傾向にありましたが、法改正により罰則が強化されたことで、翌2年は半数ほどに留まっているのがわかります。しかし、現在にかけて上昇の一途にあり、昨年のデータでは改正前の最高値を上回る数字となってしまっているのです。

近年、スマホが普及してからの死亡・重傷事故は、最も高い割合を更新し続けているのが現状です。

ハンドルを預かるドライバーや同乗者に至るまで、スマホ運転について危険な行為であると再度認識し直さなければなりません。

「ながらスマホ」に関する罰則強化の概要

2019年の法改正で罰則強化が行われました。概要は下記です。

  1. スマホなどの操作に対する罰則強化::運転中のスマートフォンや携帯電話の操作に対して、過料が従来の5万円以下から10万円以下または6ヶ月以下の懲役に引き上げられました。
  2. 免許停止の対象拡大:ながら運転による事故が発生した場合、反則金制度の対象外、刑事処分となり、違反点数が6点の運転免許停止対象となります

道路交通法の携帯電話使用違反について

道路交通法上では、ながらスマホ運転についてどう書かれているのでしょうか。

条文を抜粋して紹介します。

法律条文にはどう書かれている? 

道路交通法、第四章「運転者及び使用者の義務」の中で、携帯電話使用違反についてこう書かれています。

(運転者の遵守事項)

第七十一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。

 五の五 自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第四号において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第一項第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第四号において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。

スマホを使用する場面に置き換えてこの条文を簡潔に読み解いてみましょう。

要するに「車が動いている時にスマホを手で持ったり注視してはならない」ということが書かれていることがわかります。

もし捕まったらどうなる?罰則・罰金・違反点数について詳しく

それでは、スマホ運転で捕まったらドライバーや運転免許はどうなるのでしょうか。

携帯電話使用違反には2種類あり、「交通の危険」と「保持」に分けられます。

それぞれ、罰則や罰金、反則点数に大きく違いがあるので、条件と共によく確認してみましょう。

携帯電話使用等(交通の危険)の罰則・罰金

運転中にスマホなどを使用し、通話、画像注視した結果、交通事故等を起こして交通の危険を生じさせた場合は、「携帯電話使用等(交通の危険)違反」となります。

携帯電話使用等(交通の危険)の行政処分と刑事処分 

行政処分違反点数6点(免許停止)
反則金原付車非反則行為となり、全て罰則を適用する
二輪車
普通車
大型車
刑事処分罰則1年以下の懲役または30万円以下の罰金

改正前は3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金でしたが、改正後は1年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。反則金制度の対象外となり、すべて罰則の対象となります。違反時の点数は一発で免許停止となる6点と、重い処罰が下されます。

携帯電話使用等(保持)の罰則・罰金

危険が発生しなかった場合でも、運転中にスマホ等を使用して画像注視する行為は「携帯電話使用等(保持)違反」となります。

携帯電話使用等(保持)の行政処分と刑事処分

行政処分違反点数3点
反則金原付車12,000円
二輪車15,000円
普通車18,000円
大型車25,000円
刑事処分罰則6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金

改正前は5万円以下の罰金でしたが、改正後は懲役の項目が追加され、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。

「携帯電話使用等(保持)違反」の場合は反則金制度の対象となり、大型車は25,000円、普通車は 18,000円、二輪車は15,000円、原動機付自転車は12,000円となります。違反時の点数は3点です。

そもそもなぜスマホを利用してはいけない?

そもそも、なぜ運転中にスマホを利用してはいけないのでしょうか。

令和5年のデータをもとに、その理由を解説します。

注意力の欠如に直結する

それは安全運転に最も必要である「注意力の欠如」につながるからです。

下のグラフを見てみましょう。

出典:やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用 |警察庁

令和5年(2023年)の交通事故統計から死亡事故率を見ると、携帯電話等を使用した場合は、使用していない時と比べて、約3.8倍も高くなっていることがわかります。

運転中の見落としが増えたり、ブレーキ操作が遅れてしまうことが情報処理能力の実験によってわかっています。

現代において、多くの人はスマホ操作に慣れています。しかし、人間の注意力には限界があります。運転にも慣れている人であっても、同時にスマホ操作を行うことは決して容易ではありません。

画面を見ている間に自動車はどのくらい進んでいるか

この表は、自動車が2秒間に進む距離を示したものです(運転者が画像を見ることにより危険を感じる時間は運転環境により異なりますが、各種の研究報告によれば、2秒以上見ると運転者が危険を感じるという点では一致しています)。

出典:やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用 |警察庁

時速60キロで走行していた場合、2秒間で約33.3メートル(注)進んでしまうことがわかると思います。

スマートフォンの画面を少し見ていた、そんな一瞬の間に、歩行者が道路を横断したり、前の車が渋滞などで停止していたら事故を起こしてしまう可能性があります。

運転中の言い逃れどこからどこまでがダメ?一例を紹介

ながら運転に該当する携帯電話使用等違反とは、運転中のスマートフォンを操作するだけでなく、運転中にカーナビの操作を行ったりと、運転以外の行為を行うことを指しています。

スマートフォンを使って車を運転しながら場所を調べたりはもちろん、通信端末であるスマホを手に持って運転していても「携帯電話使用等(保持)」違反の対象になります。

その状態で、万が一交通に危険を及ぼした場合は「携帯電話使用等(交通の危険)」として重大な危険行為として処罰の対象となるのです。

ここではドライバーから出るよくある質問に答えていきます。

信号待ち中のスマホ操作について

信号待ちなどで、運転する車両が停止しているときにスマホ操作を行うことは携帯電話使用違反に該当するのでしょうか。

道路交通法の条文には「当該自動車等が停止しているときを除き〜」とあるため、厳密には違反には該当しないといえます。

しかし、交差点内の様子や周囲の安全確認が疎かになってしまう可能性があり、携帯電話使用違反以外の道路交通法に触れる可能性があります。

運転中にスマホを操作しなければならない場合には、必ず安全な場所に停車させてから行うようにしましょう。

スマホスタンドに固定した場合の操作について

カーナビの操作なら違反にならないと勘違いする人が少なからずいるようです。

それに伴い、スマホを専用スタンドに設置すれば手で保持していないことになると、これも違反にならないと考える人がいます。

カーナビや、スマホスタンドに設置しているスマホを運転中に操作したり、注視することは、前方の交通状況から注意が離れてしまうので、携帯電話の使用等と同じく危険な行為とされ、違反の対象になります。

ハンズフリーで電話に出るのは違反?

ハンズフリー装置を使用しての通話は手に持って通話を行わない限りは違反に当たらないと言えます。

しかし、運転中の注意力が著しく低下し、漫然運転につながります。

事故を引き起こすおそれがあるので、十分注意しましょう。

また、ハンズフリー装置を使用するときは、サイレンやクラクションなど周囲の音が聞こえるようにしなくてはなりません(都道府県によっては条例違反になる場合があります)。

携帯ゲーム機の操作なら違反じゃない?

スマホアプリのゲームはもちろん、市販されている携帯用ゲーム機を操作することも違反の対象です。

スマホやガラケーなど、携帯電話のように通信機器でなければ見逃されると勘違いする人もいるようですが、これも操作をするために画面を注視したりしなければならない、かつネット通信により通話が可能なデバイスなので、無線通話装置として解釈され、違反に当たると考えられます。

危険ですので、絶対に運転中には操作しないようにしましょう。

社用車・営業車・商用車で「ながらスマホ」はさらなるリスクも

営業車や社用車に会社名が書かれている場合も多く、周囲を走行しているドライバーが、運転中のながらスマホに気づいた場合、自社の評判を落としかねません。また警察への通報やクレームの原因にもなります。

また、スマホ運転をしながら事故を引き起こせば一発免停。直ちに刑事処分となり、その後の仕事にも影響が出ることは確実となります。

前述したように、重大な交通事故となる可能性がグンとあがることも踏まえ、運転中は絶対に操作しない、させないように徹底しましょう。

業務上、通話が必要な場合が事前にわかっていれば、外部ハンズフリー機器や制御アプリケーションの活用を検討するべきです。

最近の車種であれば、Bluetoothで車のナビシステムと接続できるように設定しておくことができ、なお安心です。

スマホ運転に対する社内教育の必要性

脇見運転事故は年間で約3万6499件(2011年)起きており、そのうちほとんどがスマートフォンの使用によるものです。

特に若い年齢のドライバーで増加傾向にあります。

そこで、安全運転管理上、従業員へのスマホ利用を指導することは、必要不可欠な社内教育項目となります。

しかし、いつも身近にあるスマートフォンを禁止するにも、その利便性の高さから意識向上が難しく、安全な運行管理を担う方にとって大きな悩みのタネであることも多いのではないでしょうか。

定期的に教育の場を設けることが困難な企業には、eラーニングシステム「JAF交通安全トレーニング」がおすすめです。

JAF交通安全トレーニングでは、スマートフォンやPCなどがあれば誰でも好きなタイミングで学習できます。

また、管理者は誰がどこまで学習したかを確認できるので、従業員の学習状況を簡単に把握できます。

「従業員に安全運転教育をおこないたいけどよい方法がわからない」とお悩みの方は、JAF交通安全トレーニングの利用を検討してみてください。

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まとめ:運転をしている時は絶対にスマホをいじらない

本記事では、スマホ運転の厳罰化された罰則やリスクについて解説しました。

運転中にスマホが鳴ったら? これを読んでいるあなた自身も決して例外ではありません。

運転をする時は、スマホを絶対にいじらない。操作は安全な場所に停車してから行うことが大切です。

スマホなどを使用していない時の交通事故に比べ、約4倍も死亡事故に直結する可能性があるなど、警察にバレなければ大丈夫で済まされる違反行為ではないことを理解しましょう。

それを行うことのリスクをしっかりと頭に入れ、日々の交通安全に活かしてみてください。

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JAF交通安全トレーニング

毎日の学習で交通安全意識の向上へ。通勤・通学・あらゆる事故を減らしたい。そんな想いからJAFが長年培ってきた交通安全のノウハウをeラーニング「JAF交通安全トレーニング」として教材化しました。
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オノデラマコト
1991年生まれ、東京生まれ東京育ち。グラフィックデザイナーとして就職するも、気づけば乗り物全般に濃く携わる編集者の道へ。出版社を渡り歩き、独立後は若年層向けの雑誌創刊や、メディアローンチを手がけるなど、特にZ世代への訴求方法を模索。交通安全普及を考える一方で、映像分野にも明るく、マルチなコンテンツクリエイターとしても活動している。