近年IoTの活用が普及していますが、自動車のIoT化とも呼ばれる「テレマティクス」をご存知でしょうか。
テレマティクスは車両のデータをリアルタイムで収集し、運行状況やドライバーの行動を分析することが可能です。
本記事では、テレマティクスの基礎からメリット・デメリット、活用事例までを詳しく解説します。
自動車とIoTを融合させ、さまざまなデータを活用することで、革新的なサービスが生み出されようとしています。
自動車産業の最新技術を知りたい企業の管理者の方は、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
テレマティクスとは
テレマティクスと聞いても、具体的なイメージが湧かない人は少なくありません。
IoTの活用・普及で注目を集めるテレマティクスの基礎知識について詳しく紹介します。
テレマティクスの基本的な仕組み
テレマティクスとは、「テレコミュニケーション(通信)」と「インフォマティクス(情報処理)」を組み合わせた造語です。
自動車など移動する物体に通信システムを搭載し、リアルタイムで情報収集や発信をすることで、さまざまなサービスを提供します。
テレマティクスには、TCU(テレマティクス制御ユニット)という装置が使用されています。
TCUは自動車と外部ネットワークとの情報通信を双方向でおこなう、テレマティクスの中核となる通信ユニットです。
自動車と通信をおこなう本格的な双方向通信技術として、以下のサービスがテレマティクスで実現しました。
- エアバックとの連動による自動緊急通報
- 車両盗難時の追跡
- 天気・交通情報のリアルタイム取得
- 車両の位置情報や走行履歴、稼動状況の把握
ネットワークを使った双方間の通信は、ドライブレコーダーや車両管理システムなど、さまざまなテクノロジーに活用されています。
テレマティクスの歴史
テレマティクスの歴史は、自動車産業と通信技術の進化に密接に結びついています。
1990年代に入るとGPSを利用したカーナビゲーションが開発され、現在位置をリアルタイムで表示できるようになりました。
GPSの技術は年々発展を遂げ、現在では位置情報の正確性と速度が飛躍的に向上しています。
その後もテレマティクスは、安全運転支援システムや車両管理システムなど、さまざまな用途で活用されています。
テレマティクスと似た用語の違い
5GやAIなどの技術革新により、より高精度な情報収集・分析が可能となるため、テレマティクスの機能や活用範囲が飛躍的に広がることが期待されています。
テレマティクスと混同されやすい用語と違いについては、以下の表を参考にしてください。
IVI(車載情報システム) | ・車載ディスプレイやタッチパネルを使って、音楽やナビゲーション、電話などの情報を提供するシステム ・テレマティクスと異なり、通信機能は必ずしも備えていない |
コネクテッドカー | ・インターネットに接続できる自動車を指す ・テレマティクス機能に加え、IVIシステムや自動運転支援システムなどの機能を備えている場合もある ・テレマティクスの概念をより広げた用語 |
ITS (高度道路交通システム) | ・道路や車両、情報通信技術などを連携させて、交通の効率化や安全化を図るシステム ・テレマティクスは、ITSを構成する重要な要素のひとつ |
最新技術を使用したドライブレコーダー | ・事故や危険運転の証拠記録を目的としたシステム |
テレマティクスを導入するメリット
車両管理の効率化や運行コストの削減など、テレマティクスを導入することで得られるメリットについて解説します。
車両管理の効率化
テレマティクスでは車両の稼働状況を可視化でき、効率的な車両管理が実現します。
従来は、手動で車両の記録や管理をしていました。
テレマティクスなら、インターネット経由で車両の位置情報や走行距離、走行時間、速度などの運行データを確認することが可能です。
それにより、現在地や到着予定時刻、長時間運転の有無などの情報をリアルタイムで把握できます。
クラウド上で車両の稼働状況を可視化できるため、社内や離れた場所にいても、効率的な車両管理が実現できます。
業務効率の向上
テレマティクスは、営業効率の向上など業務の効率化を図れます。
リアルタイムで車両の位置情報をモニタリングできるため、道路状況から渋滞を予測し、よりスムーズな配車や営業活動の遂行が可能です。
また、運転日報や業務記録簿の作成が自動化されるので、従業員の事務作業への負担が軽減されます。
運転日報の自動作成は、手書きによるミスや漏れを防ぎ、安全運転管理者の業務負荷を軽減する効果も期待できます。
安全運転の促進
テレマティクスは急ブレーキや急発進などの危険運転を検知し、事故防止につなげられます。
運転データの分析により、客観的な事実に基づいた適切な安全運転の指導が可能です。
テレマティクスで危険運転を監視することで、ドライバーの安全運転に対する意識が向上します。
運行コストの削減
リアルタイムで車両の運行データを管理できるテレマティクスは、無駄な運行を減らし、運行コスト削減に直結します。
また、適切な配車により管理コストを抑えることも可能です。
余剰車両を削減できれば、ガソリン代削減や保険料の値下げにつながるなどコスト削減効果が期待できます。
事故対応の迅速化
テレマティクスの機能を有するドライブレコーダーを活用すれば、事故時に自動で位置情報や事故映像が送信され、事故状況を正確に把握できます。
事故直後のドライバーは動転しがちですが、そうした状況でも正確な事故状況を把握でき、迅速な初期対応が可能です。
また、保険会社と連携したテレマティクスサービスでは、AIによる事故検知や自動で救急車の手配、保険会社への連絡などができます。
事故発生直後でもスムーズな対応ができるため、被害の拡大防止や適切な保険手続きにも効果的です。
テレマティクスを導入するデメリット
テレマティクスは業務効率化や安全運転促進などのメリットが大きいものの、一方で導入コストがかかる、プライバシーの問題などデメリットもあります。
テレマティクスを導入するデメリットについて詳しく解説します。
導入コストが発生する
テレマティクスを導入するにあたっては、初期費用および月額費用の負担が必要です。
初期費用にはデバイスの購入費や取り付け工賃などがあり、費用は導入企業や提供サービスによって異なります。
さらに月々の通信費やシステム利用料がかかるため、多くの車両を所有する企業ほど導入コストは高額になります。
費用対効果を算出した上で、予算内での運用計画を立てましょう。
個人情報漏洩のリスクがある
テレマティクスではドライバーの個人情報を含む車両の運行データを扱うため、システムへの不正アクセスなどによる情報漏洩が懸念されます。
個人情報の流出は企業イメージを著しく損ない、法的な問題にもつながるため、情報セキュリティ対策は必須です。
また、テレマティクスで収集・管理する位置情報や運転データは、従業員が反発する恐れもあります。
位置情報や走行状況が常に管理されることに対して、従業員から反発する声が上がるかもしれません。
従業員には導入の目的や情報管理方法、プライバシー保護への配慮などを十分に説明し、理解を得ましょう。
情報漏洩リスクを軽視せず、セキュリティー対策も確認し、導入機器を選定することが求められます。
テレマティクスの活用事例
自動車業界ではテレマティクスの活用が進んでいます。
テレマティクスの技術を活用し、自動車の安全性や利便性を向上させることを目的とした事例を紹介します。
車両管理システム
テレマティクスを活用した車両管理システムは、単なるドライブレコーダーとは異なり、さまざまな機能を備えています。
危険運転の検知やリアルタイムの車両位置情報の把握、走行履歴の記録などにより、車両の一元管理と効率的な運行管理を両立させることが可能です。
シガーソケットに装着するタイプやドライブレコーダー一体型など、目的や用途に合わせて選択できるのも魅力です。
社用車を複数台使用する企業であれば、ドライバーの免許証情報から車検情報まで、あらゆる車両関連情報を一括管理できます。
車両管理に関する管理者の業務負担を大幅に軽減できるシステムといえます。
自動車保険
テレマティクスは、自動車保険の分野でも活用が進んでいます。
テレマティクス保険は、テレマティクスで記録された日々の運転情報を保険会社が取得・評価し、保険料に反映するサービスです。
テレマティクス保険には、走行距離連動型と運転行動連動型の2種類があります。
- 走行距離連動型:走行距離の短さに応じて保険料を算定する方式
- 運転行動連動型:走行速度や急ブレーキ、急停止などの運転特性を判定し、ドライバーごとの事故リスクにより保険料を算定する方式
安全運転を心がけると保険料が割安になるため、テレマティクス保険はドライバーの安全意識向上や事故削減にもつながります。
テレマティクス端末を利用して、衝撃を検知した際に自動で緊急通報するサービスや警備員の出動要請に活用するなど、新たな付加価値サービスの提供も始まっています。
まとめ:テレマティクスの最新動向を把握し車両管理の効率化に役立てましょう
テレマティクスは、社用車管理の効率化や従業員の安全性向上、運行コスト削減などさまざまなメリットが期待できます。
一方で、プライバシーの問題や過剰な監視につながるなど、注意すべき点があることも把握しておきましょう。
テレマティクスの普及は現在進行中ですが、IoT技術の進化に伴い、テレマティクスを活用した新しい便利なサービスがさらに登場してくることが予想されます。
企業の管理者はテレマティクスの最新動向を注視しながら、社用車の管理や従業員の安全運転への意識向上など社内体制を整備しましょう。
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