「安全運転5則」をご存知でしょうか?
教習所や免許更新時の講習などで聞いたことがある方もいるでしょう。
本記事では、安全運転5則の内容と、交通安全意識の向上に有効な方法を紹介します。
社用車を保有する企業にとって、従業員への安全運転の徹底は必要不可欠です。
自社の交通安全意識の向上のために、ぜひ参考にしてください。
年齢別に見る事故傾向とその対策を解説します!
そもそも「安全運転」とは

安全運転とは、交通ルールや一般常識に基づき、ほかの道路利用者などに気を配りながら、交通事故を起こさないように努める運転のことです。
道路交通法では以下のように定められています。
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
引用元:道路交通法第七十条
このように、安全運転はすべてのドライバーに義務付けられています。
さらに、単に交通事故を起こさない運転をするのではなく、
- 法律知識の把握
- 交通ルールの遵守
- 周囲への配慮
をした上で、具体的な運転行動に落とし込むことが求められます。
車を運転する機会があるのであれば、公私に関わらず、安全運転を徹底しましょう。
安全運転5則とは

1980年、10年ぶりに交通事故による死者数が増加する兆しが見えたため、交通死亡事故防止を徹底すべく、全国交通安全運動が春と秋以外に夏にも実施されました。
安全運転5則は、そのキャンペーン期間中に、警察庁によって定められたスローガンです。
今では、教習所や免許更新時に学ぶ「安全運転の基本」となっています。
1つずつ紹介していくので、それぞれの項目がなぜ大切なのか、改めて確認しましょう。
①安全速度を必ず守る
安全速度とは、道路状況に応じて安全に運転できる速度のことです。
法定速度や制限速度とは必ずしも一致しないので注意してください。
安全速度は、見通しの良し悪しや通学路付近を走行するとき、悪天候時の走行など、状況に応じて変わります。
例えば、激しい雨が降っているときに、制限速度が時速50キロの道路を走行している状況を想像してみてください。
この場合、時速50キロで走行すると前が見えにくくなってしまうのであれば、安全速度は時速50キロを下回ることとなり、制限速度と一致しません。
時速30キロや時速40キロなど、視界が確保でき、安全に走行できる速度が安全速度となります。
②カーブの手前でスピードを落とす
カーブの手前ではスピードを落とし、余裕を持って曲がれるようにしましょう。
カーブは見通しが悪くなる上に、スピードを出しすぎていると
- 遠心力で曲がりきれない
- 対向車線にはみ出してしまう
といったリスクが生じます。
また、車両の重心の位置によっては、荷崩れリスクが高まってしまうため、荷物の積み方にも注意しましょう。
③交差点では必ず安全を確かめる
交差点にはさまざまなリスクが潜んでいます。
代表的なものは、右左折時の対向車や自転車、歩行者です。
また、信号のない見通しの悪い交差点は死角が多く、出会い頭の交通事故が起こりやすくなります。
そのため、交差点では周囲の状況をよく確認して走行しましょう。
日本損害保険協会は、人身事故が多発した交差点について毎年調査をおこない、「全国交通事故多発交差点マップ」にまとめています。
下記のリンクは最新調査(2025年)の発表をまとめた記事となっているので、近くに危険な交差点はあるかどうかなど、ぜひ参考にしてみてください。
また、その情報を社内で共有することで、安全運転の推進につながるでしょう。
参考:全国交通事故多発交差点マップ|一般社団法人日本損害保険協会
④一時停止で横断歩行者の安全を守る
信号のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしている場合、車は一時停止しなければなりません。
道路交通法では、以下のように定められています。
車両等は、横断歩道又は自転車横断帯に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
引用元:道路交通法第三十八条
JAFが毎年実施している「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」では、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は45.1%(2024年調査結果)に留まりました。
年々改善傾向にあるものの、一時停止せずに通過している車が半数以上というのが現状です。
車は横断歩道の手前では停止できる速度で走行しなければならず、渡ろうとしている歩行者がいる場合は、歩行者が渡り終えるまで停止しなければなりません。
横断歩道の手前では減速して歩行者の有無を確認し、歩行者がいる場合は停止するようにしましょう。
信号機のない横断歩道での一時停止についてもっと知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
参考:信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2024年調査結果) | JAF
⑤飲酒運転は絶対にしない
飲酒時には、安全運転に必要な情報処理能力、注意力、判断力などが著しく低下した状態になるため、飲酒運転は絶対にしてはいけません。
飲酒運転をおこなったドライバーはもちろん、同乗者や酒類を提供したお店の人も厳罰に問われる可能性があります。
警察庁の調査によると、令和6年中(2024年)の飲酒運転による交通事故件数は2,346件あり、そのうちの140件は死亡事故です。
飲酒有無別の死亡事故率を見ると、飲酒運転の死亡事故率は飲酒なしの約7.4倍と極めて高い数字となっています。
「飲んだら乗るな」を徹底することが大切です。
なお、2023年12月1日から、企業にはアルコール検知機を用いたアルコールチェックが義務化されています。
以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」|警察庁
高速道路安全運転5則とは

高速道路での交通事故防止のために「高速道路安全運転5則」という原則もあります。
高速道路安全運転5則が生まれたきっかけのひとつは、1979年7月、東名高速道路下り線で発生した「日本坂トンネル火災事故」です。
死者7人・負傷者2人・焼失車両173台という痛ましい事故が発生しました。
さらに、その後も多重追突事故が相次いで6件発生したため、交通事故を抑止する目的で、高速道路安全運転5則が定められました。
1つずつ紹介していくので、改めて確認してみましょう。
①安全速度を守る
スピードが速くなると視野が狭くなり、重大事故につながるリスクが高まります。
そのため、道路状況に応じた安全な速度で走行しましょう。
また、高速道路では天候や路面状況などによって臨時の速度規制がおこなわれることもありますので、規制に合わせた安全な速度で走行するようにしましょう。
また、高速域での急ハンドルは車両のコントロールを失うきっかけにもなりえるので、ハンドルを切る角度は指2〜3本分に留めておきましょう。
②十分な車間距離を取る
車間距離が不十分だと、とっさの急ブレーキや前方車両との速度差などが原因で、追突事故につながりやすくなります。
そのため、前方車両と十分な車間距離を保って走行する必要があります。
十分な車間距離を測る方法として、「距離」ではなく「車間時間で測る」方法が、警察や交通心理学会などから推奨されています。
前のクルマが通過した地点をゼロ基準とし、自分のクルマが同じ地点に到達するまでの秒数を数えることによって安全な車間距離を確保しようという方法です。
通過地点の目安として、標識や道路のつなぎ目などをわかりやすい基準点を設定し、前方車両がそこを通過してから自車が同地点に至るまでの時間を計ります。
| 速度 | 車間時間 | 車間距離 |
|---|---|---|
| 40km/h | 2秒以上 | 22.2m以上 |
| 60km/h | 2秒以上 | 33.3m以上 |
| 80km/h | 3秒以上 | 66.7m以上 |
| 100km/h | 3秒以上 | 83.3m以上 |
高速道路上(速度指定のない区間に限る)では最低速度が50km/hですので、最低でも「2秒以上」、そこから速度が上がる場合には「3秒以上」の車間時間を取ることで、万が一の際、追突する可能性を抑えることができるので覚えておくとよいでしょう。
ここで大事なのは2秒の計り方です。いつも通り1、2、と数えると早くなってしまう恐れがあります。ゆっくりと「01(ゼロイチ)、02(ゼロニ)」と数えてください。
秒数の前にゼロを付けることで、より正確に2秒以上の車間距離を取ることができます。
また、雨の日は「視界不良」「滑りやすい」「高速走行」といった状況から特に注意が必要で、乾いた路面と比べ2倍程度の車間距離が必要といわれていますので、天候や路面状況も考慮するようにしましょう。
③割り込みをしない
急な割り込みは、相手の車に急なハンドル操作や急ブレーキを強いることになるため、非常に危険です。
進路変更をする際は、十分な車間距離を確保して、ウインカー合図→サイドミラー確認→目視確認の順で、スムーズにおこないましょう。
無理な割り込みは、他車の急ブレーキ・急ハンドルを誘発し、重大事故を引き起こしかねないので絶対止めましょう。
なお、追越車線以外からの追い越しは交通違反となるため、注意してください。
④わき見運転をしない
高速道路の交通事故原因は、わき見運転などの前方不注視が多くを占めます。
その理由のひとつに高速道路上では、信号がなく単調なため漫然と運転しがちなことが挙げられます。
工事や事故による交通規制の影響により、急に渋滞が発生することもあるので、高速道路走行中に気を抜いてはいけません。
時速100キロでは、1秒間に約30mもの距離を進んでしまうため、スマートフォンやカーナビなどに一瞬でも気を取られると思わぬ重大事故につながる可能性があります。
一瞬の油断が大きな事故につながることを意識して、わき見運転をしないようにしましょう。
⑤路肩走行をしない
救急車やパトカーなどの緊急車両は、路肩を走行する場合があります。
そのため、たとえ渋滞時であっても、緊急車両の走行を妨げないように、路肩は走行しないようにしましょう。
ただし、高速運転中にドライバーの体調不良や車に異常が発生した場合には、路肩に退避して救助を待つことができます。
安全運転への意識を高める方法

安全運転5則以外にも、交通安全意識を高める方法はあります。
安全運転5則を理解した上で以下に紹介する方法を用い、自社の交通安全意識の向上を目指してください。
標語・スローガンを作成する
交通安全に関する標語やスローガンを見たことがある人は多いでしょう。
標語・スローガンはわかりやすく覚えやすい言葉であることが多く、ドライバーの交通安全意識を高め、交通事故の防止効果が期待できます。
以下の団体では交通安全に関する標語・スローガンを募集しています。参考にしてみてはいかがでしょうか。
もちろん、社内で交通安全に関する標語・スローガンを募集し、従業員が目にしやすい場所に掲示したりするのも良いでしょう。
標語やスローガンといった誰の目からも一目でわかりやすい安全運転目標を掲げることで、ドライバー一人ひとりの交通安全意識が高まり、企業の安全風土の醸成、生産性向上にもつながるはずです。
もっと細かく安全運転目標の決め方について知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
運転適正診断を実施する
運転適性診断とは、ドライバー個人の特性や傾向を客観的に分析するためのテストです。
例えば、「~~な傾向があるため、○〇を意識しましょう」のように、個人の特性や傾向をふまえたアドバイスが受けられます。
具体的には、以下の項目について診断します。
- 注意力
- 判断力
- 協調性
- リスク許容度
- ストレス耐性
運転適性診断の結果を基に、一人ひとりに適切な指導やアドバイスをおこなうことで、交通安全意識の向上や事故防止が期待できるでしょう。
交通事故やヒヤリハット事例を共有する
交通事故やヒヤリハットの事例を共有することは、企業の交通安全意識の向上においてよく用いられる手段のひとつです。
具体的な事例を共有することで一人ひとりに当事者意識が芽生え、交通安全意識を高められます。
なお、社内で共有する際は、交通事故やヒヤリハットの原因や経緯、再発防止策などを詳しくまとめるようにしましょう。
危険箇所を可視化した「交通事故・ヒヤリハットマップ」の作成も効果的です。
安全運転講習会に参加する
安全運転講習会とは、安全運転に関する知識や技術を学べる講習会です。
座学に加え、実車を使った技術指導もおこなわれるため、安全運転の基本や重要性を再認識できます。
運転に慣れていない新人ドライバーやペーパードライバーにとっては、運転への不安を解消する良い機会となるでしょう。
また、運転に慣れているベテランドライバーも、運転技術の基本を見直し、改めて安全運転の重要性を認識できます。
交通安全教育を実施する
企業活動の中で発生する交通事故は、従業員の安全以外にも企業にさまざまなリスクが発生します。
社内で交通安全教育を実施することで、従業員の交通安全意識向上が期待できることに加え、リスク回避の方法としても有効な施策となります。
具体的な方法としては、外部講師を招いた交通安全講座やeラーニングの受講があります。
昨今、交通安全教育の指導方法が多様化しているため、自社に合った形式を選ぶようにしましょう。
なお、企業がおこなう交通安全教育については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ:普段から安全運転5則を心に留めて運転しよう

安全運転の推進は、すべてのドライバーに義務付けられています。
安全運転5則を理解することは、安全運転推進の第一歩です。
公私問わず運転時にはいつも意識できるよう、必ず理解するようにしてください。
なお、従業員の交通安全意識を高めるためには、安全運転5則を理解した上で、自社に合った交通安全教育を取り入れるのがおすすめです。
そして、その教育は一時的ではなく、継続的におこなうことが重要です。
交通安全教育でお悩みの方には、「JAF交通安全トレーニング」(JAFトレ)をおすすめします。
JAFトレは、長年ロードサービスを提供するJAFが蓄積してきた交通安全ノウハウを結集させた交通安全教材として、企業・団体向けに交通安全意識を高めるコンテンツを配信しています。
時間や場所を選ばず、スマホやパソコンを利用してWEB上で学習できる教材なので、受講者は受講意欲を維持しやすく、受講者それぞれにあったペースで学ぶことができます。
また、パソコン操作に不慣れな方でも直感的に操作できる管理者機能を備えているため、受講者の学習状況が確認が容易で、個別の指導・教育に活かすことも可能です。
この記事で紹介した「安全運転5則」を社内で共有し取り入れた上で、継続的な安全運転教育を実現するためにJAFトレの併用をおすすめします。ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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